FC2ブログ

新型コロナについての、ある程度のまとめ

 数日前にファイナンシャル・タイムズの翻訳を載せるまで、しばらくブログを書いていませんでした。
 黒川検事定年延長の件で何か書かねば思っているうちに、コロナ禍が始まってしまったわけで。
 個人的には、この騒ぎが始まったとき、正直、私も甘く見ておりました。
 私の知り合いの複数の医療関係の方も、当初、問題がここまで深刻になると思っていた方はほとんどいませんでした。インフルだってたくさん死んでるんだから、マスコミ騒ぎすぎ、的な、アレですね。

 そういう意味では、いまになって、WHOの当初の対応ガー、中国の最初の対応ガー、トランプの最初の対応ガー、と、叩かれていますが、正直、ある程度は、仕方なかったかと思います。

 なんといっても、2009年、大騒ぎしたメキシコ豚インフル(註:現在は、流行性疾患に、特定の国名や動物名をつけることは禁じられていますが、当時はこの名前で人口に膾炙していましたし、H1N1 fluとかA(H1N1)pdm09といっても誰もわからないでしょうから、あえてこの名前で呼ばせていただきます)が、当時の腐敗したメキシコ政府が国内の反政府デモを抑えこむために過大に騒いだ、大山鳴動ネズミ一匹みたいな話だったのと、そもそも、この新型コロナは、当初、中国ではSARS (あるいはそのごく近い変種) と見られていて、このSARSに関しては、2003年に押さえ込んだ経験があるだけに、ことの重大さに気づくのが遅れた、というのはあるようです。

 もっとも、この豚インフルの時ですら、感染研のやり方はひどいものでした。ほとんど意味のない成田検疫に固執し、自前ワクチン開発にこだわってCDCが提供した遺伝子データを抱え込んでいたものです。結果的に豚インフルが、ぜんぜん大した病気ではなかったから良かったようなものの、もし、本当に伝染性や死亡率の高い病気だったら、あのときだって、とんでもないことになっていたはずでした。

(なんで八木がそんなことを知っているのかというと、当時、あれが「メキシコ発の謎の病気」として情報の錯綜もひどかったため、日本の感染症研究者の方からの依頼を受けて、メキシコのジャーナリストや医療関係者、地元の人たちと連絡を取って、情報を集める一方、日本の感染研まわりの事情も聞いたからです)

 ちなみに、あのときの豚インフル騒ぎをモデルに執筆された小説が、医師でもある作家 海堂尊氏の「ナニワ・モンスター」です。タイトルがどうみてもパンデミックを連想させないので、損をしていますが、今読むと、経済封鎖などにも言及されていて、まるで予言の書のようです。(ちなみに、この本に登場する実行力あるナニワ府知事のモデルは、橋下でもましてや吉村でもありません。作家ご本人からそのように伺っています。)

 なお、その頃の日本の感染研の悪弊はいまだに引き継がれていて、「自前のPCR検査」にこだわるあまり、一度に1000件検査できて結果が4時間で出る韓国製キットなどを意地でも使わないし、むしろ、検査能力の低さをごまかすために、「できるだけ検査しない」→「検査しない方がいい理由なるものを必死で吹聴する」という流れになってしまって、そこから方向転換できなくなっている模様なのが現状であります。
 やる気になって、ちゃんと態勢を整えれば、日本でも PCR 検査なんてガンガンできちゃうであろうことは、なぜか外国でだけ使われている日本製の全自動PCR検査機器が存在していたり、慈恵医大病院が自慢しているとおりですね。

 新型コロナ Covid-19 に 話を戻すと、みんな忘れていますが、人から人への感染が確認されたのが、1月18日、中国で最初の死者1名が報告されたのが、2月3日です。
 つまり、武漢で感染爆発が起こる1月21日ごろまでは、みんな、完全に甘く見てたわけです。
(ちなみに、ネトウヨ系の皆さんは、中国隠蔽説が大好きですが、武漢の保健省は、昨年の12月31日に、肺炎が流行っていることに対して、公式に注意を喚起しています
 
 また、新型コロナウイルスが人工のものではあり得ないことは、アメリカの遺伝子疫学研究者が、遺伝子変異をトレースして、Medical Science誌に論文を発表し、ほぼ決着がついた形になっています。
 https://www.nature.com/articles/s41591-020-0820-9
(もちろん、論文1本が決定打になるわけではないので、人工説を補強するような論文で査読を通っているものなど1本もない、と言い換えた方が良いかもしれません)

 そういう意味で、この新型コロナがけっこうやばい、ということが明らかになってきたのは、3月にはいってからでしょう。で、それでも、3月初頭の時期は、80%以上の患者は軽い病状で回復しているという報道から、それならそんなに過剰に騒がなくても、という空気があったのは事実です。
 3月の10日すぎ頃 から、まさかの、急転直下といってもいいほどの世界的な感染爆発とそれにともなう大量死が起こったわけです。

 3月7日にニューヨークタイムズが、当初、中国のロックダウンについて、「影響より害が多い」と嘲笑して、2週間後に真逆の記事を掲載することになりましたが、これを安易に笑うべきではありません。後出しじゃんけんは誰でもできるわけで、その時点では、各地で緊急事態宣言は出ていたとはいえ、各国の感染者数なんて数百人レベルで、死者数だって一桁だったわけです。

 問題は、このコロナの感染力が半端なかったということです。ほとんどの患者は重症化しなかったとしても、感染者数分母がとてつもない数字になれば、当然、死者も跳ね上がるわけですから。そして、肺炎と言いつつ、通常の肺炎の治療法で回復せず、なぜ、患者が死ぬのかさえ、いまだわからない(だから、治療といっても、対症療法を試すことしかできないうえ、その対症療法も「これは明白に効く」みたいなものがない)からです。
 そして、そういう患者が激増したことで、イタリアやスペインで次々に医療崩壊が起こり、ニューヨークも悲惨なことになったわけです。

 もう一度言いますよ。後出しじゃんけんで「最初、ああいってたくせに」みたいな議論は、刻々と状況が変わるようなときには、ほぼ無益です。

 もちろん、政治主導で、早い時期から最悪の事態を想定した対策して見事に押さえ込んだ台湾や、同様に素早い対処で感染爆発から立ち直った韓国は見事で、まさに賞賛に値するのですが、多くの国は「間違えた」わけです。
 問題は、間違えたことではなくて(なぜ、間違えたかは、あとで検証したら良いことで)、間違いが判明した段階で、どうすみやかに軌道修正して、臨機応変に対処するか、ということです。
 そこで、「一週間前はこう言ってたのにw」「朝令暮改」とか言って批判するのは的外れでありましょう。状況が刻一刻と変わっているという事実を認識して、最新の状況に素早く対応する姿勢こそが重要なのです。

※ちなみに、この最新の状況に対応するというのは、過去に言ったことを、そんなことは言ってないとか誤解だとか主張して歴史を修正する、ということではありません。過去の発言なり発表が間違いだったとちゃっちゃと認めて、迅速に軌道修正することです。

 そういう意味では、ヨーロッパやニューヨークで地滑り的な感染爆発が起こって,とんでもない事態になっているのに、まだオリンピックに固執するとか、クラスター対策とかにこだわって、PCR検査をしないとかというのは、まさに、「間違いがわかっても、それを断固として認めないし、軌道修正も断固としてやらない」「状況は刻一刻変化しているのに、一ヶ月前と同じ事をだらだらやってる」「発熱を4日我慢して重症化した死者が続発したら、我慢しろとは最初から言ってないと言い出す」というのが、最悪なわけで、残念ながら、皆さん、もうそれがどこの国のことを言っているか、お気づきでしょう。

 そして、その死亡率について、当初、WHOは2%と見込んでいました。
 季節性インフルエンザの死亡率が0.1%ですから、それでも20倍ということですが、それが、イタリアではなんと13%、米国で5.8%以上に跳ね上がっています。5月5日には、世界中での死者が25万人を突破しました。それどころか、イタリアに至っては、3月の超過死者数が例年より1万人多くて、隠れコロナ死者が実はまだまだいそうだみたいなことになっています。
 スペイン風邪と比べたら、それでもまだ大したことはないじゃないかと思ってる人もいるかもしれませんが、スペイン風邪の流行った1918年は、第一次世界大戦の時代です。大戦でヨーロッパは疲弊し、人々の栄養状態も悪く、そもそも戦争のせいで疫病情報などもちゃんと伝わっていなかったし、言うまでもなく医学水準は段違いに低かったわけです。結核が不治の病だった時代ですからね。
 いまの、100年経って医学が格段に進み、最新の論文がネットでリアルタイムで読める、この時代で、3ヶ月ほどの間に25万人が死んでる、というところ、けっして甘く見ていいものではありません。

 国によって死亡率が極端に違う原因は、まだ不明です。とはいえ、重症化率が高いのは、高血圧・糖尿病・肥満ということは判明しているので、この生活習慣病系の人が、アジアと比べて、ヨーロッパや米国に格段に多いことと、それなりに関連がありそうです。
 無症状感染者がかなり多いらしいということも、判明しています。日本でも慶応医大病院の来院者の5.97%、神戸市立医療センター中央市民病院3%の人に抗体があることがわかって、その人たちが無症状感染者であったなら、死亡率は劇的に低下することになります。
 イタリアや米国も、とんでもない数の無症状感染者がいたとしたら、死亡率は案外、2%以下どころか、1%以下なのかもしれません。
 将来的に、各国で抗体の保有率の調査が進んでいくことで、リアルな死亡率もわかってくるでしょう。

 ただ、この新型コロナの場合、厄介なのは、死亡率だけではなく、発症して回復したとされる人々にかなりの後遺症が残る例が、これまた多数報告されていることです。重篤化した人は肺胞がかなり破壊されてしまっていて、もう元には戻らないことが確認されていますし、軽症レベルであった人でも、ダイビングなどの激しいスポーツなどがもうできなくなる可能性があります。
 http://www.sbmhs.be/2020%200412%20Position%20of%20the%20BVOOG.pdf
 https://www.rainews.it/tgr/tagesschau/articoli/2020/04/tag-Coronavirus-Lungeschaden-Forschung-Uniklinik-Innsbruck-6708e11e-28dc-4843-a760-e7f926ace61c.html
 
 また、症例が増えるにつれ、このウイルスは、肺に最も重篤な被害を与えるケースが圧倒的である一方、さらに心臓や血管、腎臓、腸、脳など多くの臓器にまで到 達し、腎不全や心臓疾患、脳卒中を起こすことも確認されています。子供の血管炎症である川崎病そっくりの症状を示す子供たちが Covid-19に感染していたことも判明しつつあります。
 そういったことから、ウイルスが血管にとりついてそこから攻撃しているのではないかという考え方が有力になってきています。
 味覚障害や嗅覚障害が起こることから、脳や中枢神経も攻撃されているのではないか、と考えられてもいます。
 https://www.sciencemag.org/news/2020/04/how-does-coronavirus-kill-clinicians-trace-ferocious-rampage-through-body-brain-toes

 要するに、いまだ、対応に追われていて、研究途上。発症や重篤化のメカニズムが解明されていない。だから、治療法も対症療法しかない。
 それが、この新型コロナの怖いところです。

 ワクチンを期待する報道も多いのですが、今現在開発されているワクチンは、ことごとく、遺伝子解析による RNA ワクチンです。そして、実は、この RNAワクチンは、いまだに実用化に至った例はありません。この新型コロナが、最初の、そして素晴らしい解決になれば、そりゃあ、願ったり叶ったりなんですが、「今まで実用化されたことのない技術」だからこそ、その安全性などについては、慎重に試験されなくてはなりません。私は、間違ってもワクチン反対派ではありませんが、政治家のウケ狙いで、安易に治験を広げるのは怖いことだと思います。
 また、それなら、がんがん抗体検査を実施して、抗体がある人に「免疫パスポート」を発行して、そういう人は自由に出歩いたり、介護に当たったりできるのではないかという議論もありますが、Covid-19に感染して、治癒したあと、再感染しているケースもいくつも報告されています。
 この再感染が、武漢株と欧州株の違いで起こるのか、抗体があっても何度でもかかっちゃうようなものなのかもわかっていません。ヘルペスみたいに、いったん治ってもウイルスが体の神経節かどこかに棲みついて、体の抵抗力が弱ると何度でも再発しちゃうような可能性だって、捨て切れていません。抗体検査は、実質的な死亡率や重症化率を計測するのには有効ですが、抗体があるから安全と言えないのが現状である以上、ワクチンができても、それが効くかどうか、あるいは今年効いたとして、ウイルスがまた変異したら、そっちに効くかどうかなんて、まだぜんぜんわからないというのが残念な事実です。

 要するに、重症化のメカニズムも、再感染のメカニズムもわかっていないので、特効薬とかワクチンのニュースには、安易に飛びつかない方が良いと言うことです。

 とはいえ、コロナ死より経済崩壊の方が多くの死者を出しかねない、というのも、また事実です。ひとつの倒産が連鎖倒産を引き起こすのは目に見えています。それこそ死屍累々になりかねない。コロナが収束したときに、個人店が悉く消滅して、チェーン店しか残っていないような恐ろしい風景は、見たくないものです。
 そして、抗体所有者の多さから、実際の死亡率、それ以上に発症率はかなり低い可能性も出てきます。

 それだけに、現実的には、米山隆一氏が主張されていたように、多くの検査を行って、正確に近い RO 値(基本再生産数=1 人の感染者が生み出す、二次感染者数の平均値)を割り出し、その数値に基づいて、地域ごとに「強い外出制限」を行ったりそれを緩めたりする臨機応変な舵取りを行いつつ、経済的に最も打撃を受ける中小企業や個人営業をしっかり救援する、という政策が合理的かつ現実的なのだと思います。しかしそれには、やはり、為政者がしっかりしていなければなりません。

 政治を軽く見てきた国民が、その高い代償を払わされている感が否めない今日この頃ですが、このまま日本に沈没してほしくないのは、誰しも同じでありましょう。
 こうなってしまった以上、和牛券が撤回され、あれだけ官邸が抵抗していた10万円給付が決まったように、あきらめないで、しっかり声を上げていくことが大切です。






英紙フィナンシャルタイムズ、新型コロナ死亡者数が公式報告よりはるかに高い可能性を指摘

 久々のブログ更新でアレですが、数日前の英フィナンシャルタイムズの記事が非常に衝撃的、かつ、説得力のあるものでしたので、全訳を公開します。(他のメディアがやってくれるかと思ったのですが、見当たらないようですので)

 日本では、現在「感染者数が少ないのは検査をしないから」という見解と、それは陰謀論的な見方であり、死者数の少なさを考えると実際の感染者数も、それほど乖離していないか、日本での致死率は極めて低い、という見解がありますが、後者に冷水を浴びせる内容です。

 以下、翻訳です。オリジナルはこちら。
 Financial Times Global coronavirus death toll could be 60% higher than reported

 なお、私は、英語は専門ではありませんので、誤読などありましたら、ご指摘ください。

英ファイナンシャル・タイムズ 全世界のコロナウイルスによる死亡者数は報告されているよりも60%高くなる可能性がある

14か国でのパンデミックにおけるトータルの死亡者数を本紙が分析したところによると、新型コロナウイルスによる死亡者数は、公式の計上で報告されたものよりも、ほぼ60%高くなる可能性がある。

死亡率の統計によると、これらの地域全体で、同地域、同時期の通常レベルよりも死亡者数が122,000人も超過しており、すでに報告されている77,000人のCovid-19による公式死亡者数よりも、かなり高い。

これらの国で見られた過少報告と同じ事が世界中で起こっていた場合、世界的なCovid-19の死亡者数は、現在の公式の合計201,000人から318,000人もの人数になる。

本紙は、死亡率を計算するために、2020年3月と4月にアウトブレイクが起こった地域の発生週における全死因の死亡者数を、2015年から2019年の同時期の平均死亡者数と比較した。その超過している総計122,000人という数は、該当地域の過去の平均死亡率より50%も多い。

デンマークを除いて、分析対象となったすべての国で、この時期の過剰死者数は、公式のコロナウイルス死者数をはるかに上回っていた。 ウイルスによる公式の死亡統計の正確さは、国が患者の確認のためにどれほど効果的に人々を検査しているかによって制約を受ける。 中国を含む一部の国では、この病気による死亡者数を遡及的に修正している。

本紙分析では、パンデミック中の全死亡者数は、前年同期と比較して、ベルギーで60%、スペインで51%、オランダで42%、フランスで34%増加している。

もちろん、これらの死のいくらかは、慢性的な病気の人々が病院を避けているということに起因した、Covid-19以外の原因であるかもしれない。しかし、最悪のCovid-19のアウトブレイクに苦しんでいる地域で、この過剰死亡率が最も急激に上昇していることから、これらの死亡のほとんどは、単にロックダウンの副作用ではなくウイルスに直接関係していることを示唆しているといえよう。

ケンブリッジ大学のリスク認知学教授であるデービッド・シュピーゲルハルター氏は、例えば、英国での日次統計は病院の死亡のみを計上しているため「極端に低い」と述べた。

「異なる国の間でできる唯一の偏りのない比較は、すべての原因による死亡率を見ることです。 死亡診断書にCovid-19が記載されていない死亡率の上昇については非常に多くの疑問がありますが、必然的にこの流行に何らかの関係があると思われるでしょう」

この過剰死亡者数は、最悪のウイルス流行があった都市部で最も顕著で、一部の地域では報告のメカニズムを完全に圧倒している。これは多くの新興国にとって特に憂慮すべき問題で、過剰死亡率の合計は、公式のコロナウイルス死亡者数よりも桁違いに高いと考えられる。

実際に、エクアドルのグアヤス州では、3月1日から4月15日までに報告されたCovid関連の公式の死者は245人だけだが、この期間中に亡くなった人の総数は、例年よりも約10,200人多く、350%増加している。

ヨーロッパ最悪のアウトブレイクの中心であるイタリア北部のロンバルディア地方では、データが利用可能な約1,700の自治体の公式統計で、13,000以上の過剰死が存在している。これは、過去の平均より155%の上昇であり、この地域で報告されているCovid-19の死者4,348人をはるかに凌駕している。

イタリアのベルガモ市周辺地域は、世界で最悪の増加を記録し、死亡率は通常のレベルより464%高く、ニューヨーク市では200%の増加、スペインのマドリードで161%増加している。

インドネシアの首都ジャカルタでは、埋葬に関するデータは、同時期の平均と比較して1,400件の増加を示している。これは、同時期の公式報告によるCovidの死者90名の15倍だ。

この問題は発展途上国に限定されていない。 イングランドとウェールズでは、4月10日までの1週間の死亡者数は、今世紀で最も多かった。この数字は、過去5年間の同じ週の平均よりも76%高く、同時期に報告されているCovidによる死亡の総数よりも、この過剰死の数が58%高くなっている。

「各国が、急増するパンデミックにどのように対応し、それが人口の健康にどのような影響を与えたかを理解したいなら、最良の方法は、過剰死亡者数を数えることです。」と、ロンドン衛生・熱帯医学学校の疫学教授デビッド・レオンは述べる。

専門家は、ウイルスに特に脆弱な高齢者向け住宅施設でのCovid-19症例の過少報告について警告している。「ケアホーム内のスタッフや入居者を組織的に検査している国はほとんどないようです」とロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのケア政策評価センターの研究員アデリナ・コマス=ヘレラは述べた。

しかし、過剰死亡率の統計から示唆されるパンデミックでの死亡者数の大幅な増加は、それでもまだ控えめなものである可能性が高い。なぜなら、プラハ経済大学人口統計学助教授であるマルケタ・ペチホルドバ氏によれば「ロックダウンのために「交通事故や労働災害などの、多くの状況での死亡率が低下していた可能性がある」からだ。

 日本で、死因調査が極めて杜撰であることは、本業が病理医であり、Ai(死亡時画像診断)の提唱者でもある海堂尊氏の著書「死因不明社会」で詳細に解説されていますが、奇しくも、リテラでも、まさに、このコロナ関連を疑われている死者の診断が行われていないという記事が出ておりますので、こちらも是非、ご一読を。

 LITERA: 隠されたコロナ死者はやはりいた! 日本法医病理学会の解剖医アンケートで「死亡者のPCR検査を拒否された」の回答が多数

 なお、リテラが参照している日本法医病理学会の、すごいアンケート結果というのはこちらです。
 法医解剖、検案からの検体に対する新型コロナウイルス検査状況
 註:日本の解剖率は全死因の2%にすぎませんが、その2%でこの有様、というわけです。

中曽根元首相の訃報に思い出すこと

 中曽根康弘元大臣の死去がトップニュースとなった。
 101歳ということだから大往生だろう。
 豪農の大邸宅に生まれ、戦時中は自ら慰安婦を駆りあつめ、戦後は太平洋戦争の正当化にいそしみ、日本の原子力発電を強力に推し進め、また戦争や核武装が可能になるように改憲を主張し、経済的には新自由主義を積極的に取り入れた。
 まさに、盟友レーガンが、現在の「病める格差社会アメリカ合州国」を作り上げたごとく、現在の日本の惨状への道筋をつけた人物であり、安倍現首相の精神の師といえないこともない。

 ロッキード事件にも関わっていたとされる。
 ロッキード事件というと、田中角栄の5億円の贈賄、というイメージがあるが、実際にはロッキード社の対日工作資金は、約30億円。田中角栄より、むしろ、当時の政界のフィクサーだった児玉誉士夫を通じて流れたカネの方が遙かに莫大だった。そして、児玉と中曽根は昵懇だった。
 https://www.news-postseven.com/archives/20160802_434677.html/2

 にもかかわらず、検察が児玉・中曽根ルートではなく、田中角栄を逮捕する方向に行ったのは、重要証人であった児玉が突然、重度の「意識障害」に陥り、国会喚問が不可能になったからだった。このとき、児玉の主治医だった喜多村孝一が「脳梗塞」であるという診断書を作り、それを疑った国会医師団が児玉邸で事実を確認することになると、それに先回りして、児玉に薬物を注射し、昏睡状態にした事実には、具体的な証言もある。

―― 天野さんは『新潮45』(2001年4月号)に「児玉誉士夫の『喚問回避』に手を汚した東京女子医大」という手記を寄せられています。その中で、児玉誉士夫は重症脳梗塞による意識障害のために国会の証人喚問に応じられないとされたが、児玉の意識障害の原因は、児玉の主治医だった東京女子医大教授の喜多村孝一が薬物を注射したことだと暴露されています。この点について改めて教えていただけますか。

天野 順を追ってお話ししましょう。昭和51年2月5日、朝日新聞の報道により、米国のロッキード社が児玉誉士夫に21億円もの不正な政治献金を行っていたことが明らかになりました。このお金は児玉を通じて政界にも流れた疑いがありました。そこで、国会はロッキード事件の真相を解明するために、児玉の証人喚問を決定したのです。

 ところが、この証人喚問は実現しませんでした。それは、児玉の主治医である喜多村孝一が国会に、「児玉誉士夫は脳血栓による脳梗塞の急性悪化状態にある」という診断書を提出したからです。

 しかし、その数日前には、児玉はゴルフをしており、ゴルフ場内のレストランで支払いレシートが見つかったと言われていました。もしこれが事実であれば、喜多村の診断書は嘘ということになります。国会はその真偽を確かめるべく、独自に医師団を結成し、児玉邸に派遣することにしました。

 ところが、国会医師団の診断結果は驚くべきものでした。児玉は実際に重症の意識障害下にあり、証人喚問は不可能ということになったのです。つまり、喜多村の診断書の内容は正しいということになりました。

 しかし、これには裏がありました。国会医師団が児玉邸に行ったのは2月16日の午後10時頃です。実はその数時間前に、喜多村が先回りして児玉邸に赴き、児玉にフェノバールとセルシンを注射していたのです。

 フェノバールは強力な睡眠剤であり、どうしても眠れない患者や、てんかん発作が起きた患者などに使用する薬です。また、全身麻酔をかかりやすくするための前投薬としても使用されます。セルシンも同じく強力な睡眠剤で、患者が興奮状態で手に負えない場合などに使用されます。これらを同時に使用すれば、昏睡状態が生じ、数時間は当然口も利けなくなります。

 これらの注射によって生じる昏睡状態は、重症脳梗塞による意識障害と酷似しています。もちろん血液や尿を採取すれば、薬物の存在を確認することはできます。しかし、国会医師団はまさか児玉にこのような注射が意図的に打たれているとは思わなかったのでしょう。それ故、彼らが児玉の症状がこのような注射によるものだと見抜けなかったとしても無理はありません。

―― 天野さんはどのようにして喜多村が注射を打ったことを知ったのですか。

天野 喜多村本人が私にそう言ったからです。2月16日の午前中、私は東京女子医大の脳神経センター外来室で患者を診ていました。午前の診療を終え、これから昼食だという時に、私の外来診察室2番に隣接した外来診察室1番の喜多村の診察室から、喜多村の大きな声が聞こえてきました。喜多村は何やらただならぬ様子で往診の準備をしているようでした。

 私が「何をされるのですか」と尋ねたところ、喜多村は「これから児玉様のお宅へ行ってくる」と言いました。喜多村は児玉を呼ぶ際、必ず「児玉様」と呼んでいました。

 しかし、報道では、近く国会医師団が児玉邸に派遣されると言われていました。「国会医師団が児玉邸に派遣されると言われているのに、何のために行くのですか」と問うと、「国会医師団が来ると児玉様は興奮して脳卒中を起こすかもしれないから、フェノバールとセルシンを打ちにいく」と言うのです。……
 
   http://gekkan-nippon.com/?p=9317

 中曽根が逮捕されることもなく、後に大勲位まで受けられたのは、この医師の「功績」が大きいと言っていいだろう。むろん、この喜多村医師は、この児玉昏睡事件の後、中曽根の主治医となっている。

 あらためてよく思い出しておこう。
 日本の原子力政策と新自由主義を全力で推進してきたのは、そういう人物だった。
 そして、その人物を手本としている劣化コピーが、現在の首相なのだと。

桜もさることながら、いま、中南米がすごいことに

 日本では、「桜を見る会」問題が炎上しております。
 桜の花びらのように、次から次から、はらはらと火の粉が飛び散る姿が、もうなんともいえないですが、この件に関しては、郷原先生米山先生の記事が、問題点を実にわかりやすく解説しておられるので、私からはあえて、説明はいたしますまい。

 それにしても、あちら様の言い訳も日ごとに支離滅裂になってきていまして、もう、日本の劣化ぶりを象徴するような状況になってきています。いや、モリカケでの公文書廃棄あたりでもう十分劣化し、詰んでたんですけどね、今回の、言った端から嘘がばれる感て、東大まで出た官僚が、幼稚園児レベルの言い訳が通用すると思っているらしいところが、ほんとに凄いっす。金融緩和が異次元なら、倫理はブラックホールでございますわ。
 まあ、ニューオータニも、アレなことに巻き込まれてしまいましたね。
 5000円で飲み放題付きの立食パーティーができるんなら、うちの会でも来年の総会はあそこで決まりかなと思ったぐらいですし、申し込みが殺到しているんじゃないでしょうか。でもねえ、唐揚げで水増しなんて言われちゃって、あそこのダイニングバー、けっこう私は個人的に好きなんですけど、料理長さんが号泣しておられそうです。ていうか、安く見られそうで、もう接待に使えないじゃんねえ。(笑) それに、ああも現政権とつーかーだってバレちゃうと、会話とか録音されてそうで厭だし。

 でも、それはそれとして、いま、中南米が、ほんとうにすごいことになっているのです。

 ボリビアのクーデターについては先日書きましたが、その後、どさくさまぎれに自称暫定大統領に就任した ジャニーヌ・アニェスが、本来なら、選挙管理内閣として、早々にやり直し大統領選の期日発表をするはずが、(そして、本来なら、それは11月17日の日曜であったはずが)、それどころか、軍にエボ・モラレス支持派のデモの武力弾圧を指示し、キューバの医療団を逮捕拘束、ベネズエラ現政府と事実上断行して、米国の傀儡の自称大統領グァイド野党代表を承認、と、矢継ぎ早に、スーパー極右政策を実施。すでに、政府軍の弾圧で、死者も数十人出ていると。
 もともと、ヘイトツイートなどをしていた疑惑が持たれている人だけに、いまさら驚くべきことではないのですが、一方で、アメリカとヨーロッパの二つのシンクタンクが、ボリビアの選挙結果はそもそも不正でも何でもなかったとして、不正選挙の疑いを煽って反政府デモを引き起こした米州機構を非難する流れも出てきていて、ボリビアの混乱が続くのは必至となりました。

 で、その一方、チリも10月末から、反政府デモが大盛り上がりを見せています。
 こちらは、反・新自由主義デモです。これで、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議も、急遽、開催地変更になりました。

 発端は、地下鉄の値上げ発表で、これは日本でも多少報じられたので、たかが5円ぐらいの地下鉄値上げで、なんでそこまでの騒ぎになるの、なんか裏があるの?....と思われた方も多かったかと思います。
 
 そうなんです。これは発端に過ぎません。
 というか、積もり積もったものが、最後の一滴でコップから溢れた、というアレです。
 新自由主義で格差が進んだ社会で、庶民の人たちが「もうこれ以上は騙されないぞ」と一気に爆発した、という感じ。

 なので、最初、地下鉄駅や工場への放火など暴力的な面ばかりが日本でも報道されましたが、実際には、暴力的なのはごく一部で、しかも、ピニェラ大統領が、地下鉄値上げを凍結を発表した後も、むしろ平和的なデモや抗議行動が、各地に広がっています。

(不思議なことに、もともとかなり暴力色が強かったのに、それがネット動画などの拡散で隠しきれなくなるまでは、徹底して「平和的な抗議行動」と報道されまくっていた香港とは真逆のパターンです)

 まあ、暴力的である、ということを口実にして、チリの現政府は、早々に非常事態宣言と外出禁止令を出して、軍で武力鎮圧しようとしたので、日本の新聞はそれに早々と迎合したってコトでしょうね。ベネズエラなんて、あれだけ争乱があっても、非常事態宣言出したりしなかったんですけどねえ。

 それで、そのチリの抗議行動で、テーマ曲として復活したのが、かつて、軍事クーデターで虐殺された音楽家ビクトル・ハラの作った「平和に生きる権利」です。この歌は、ビクトルが1971年に発表した曲で、本来は、ベトナム戦争への米国の介入を非難した曲です。
 それが、ほぼ半世紀の時代を超えて、米国べったりの政策で民衆を抑圧しようとする政権への抗議の象徴として、蘇ったと。

 この10月25日の抗議行動のビデオを見ていただくだけで、その状況がおわかりになるだろうと思います。
 
 これが Youtube で大拡散されたことで、27日には、チリのジャンルを超えたアーティストたちによる2019年版改訂版歌詞のオフィシャルビデオも登場。

(あら、八木のお友達がいっぱい出ているわ)

 もちろん、チリの団結ソングの定番、「不屈の民」も健在です。それも、こんな感じで。
 
 ということで、日本の報道とは裏腹に、チリの抗議活動に参加しているのは、平和的な人たちが大半であることはご理解いただけたかと思います。こういうのを朝日新聞が報道しないのって、ほんと不思議でなりません。

 という間もなく、昨日はコロンビアで、反政府大デモと全国ストライキです。
 これも、チリと同じく、格差が激化したコロンビアでも、新自由主義を押し進める政府に対しての抗議行動。
 これに関して、チリでやったように「過激派の暴動」「暴力行為」を口実にして、政府側が、非常事態宣言で武力弾圧する事態を避けるために、先手を打って、ボゴダ芸術アカデミーの学生たちが、「私たちは芸術家、過激派じゃない」というテーマ曲を作って、Youtube で大アピール。
 なるほど、軍の介入を防ぐ、新手の手段ですね。それも、芸大の学生と先生たちが総力を結集しただけあって、急遽作ったわりに、ものすごいクオリティの高さなので、必見です。

 などというのもつかの間、前のエントリでも触れたように、左派のラファエル・コレアを追い出して極右化したエクアドルでも、先住民グループを中心に、政府への抗議行動が顕在化しており、一時、首都機能を移転するほどの騒ぎになっていたのですが、その中で、エクアドルの「新しい歌」の代表的グループ、プエブロ・ヌエボの歌手のフアン・パレーデスが、逮捕されるという事態が起こり、全ラテンアメリカの音楽家たちに、事態の拡散と抗議行動を呼びかける触書がまわってきております。
 いまごろ、ラテンアメリカ各地でエクアドル大使館に対しての抗議行動が準備されています。

 ということで、反新自由主義の高まり VS 極右回帰 が熾烈なことになっているラテンアメリカでは、音楽家が表舞台で、正面から、もちろん覆面などしないで、政治にコミットしている、ということをご理解いただけましたでしょうか。

Live Information
12月5日(木) 六本木 Nochero

(東京都港区六本木6-7-9 川本ビルB1) お問い合わせ/03-3401-6801
1st 19:30 2nd 21:00 (入れ替えなし) Charge:2,600円(おつまみ一品付)
アクセス/日比谷線・大江戸線六本木駅より徒歩2分
 2019年も残りわずか。本年最後のNochero定例ライブです。どうぞご期待!
 ギター福島久雄さん。
 ネット予約はこちら http://www.nobuyoyagi.com/event.html



昨日、ボリビアでクーデターがありました

Evo Morales
 昨日、ボリビアでクーデターが起きた。そして、先住民出身の大統領エボ・モラレスが亡命した。

 いやあ、革命とかクーデターのお盛んなラテンアメリカらしいですねえ…. (とか言ってる場合ではありませんよね)
 クーデターではないと主張しておられる向きもありますが、官邸で軍と警察に辞任を強く要求されて、その後、大統領が亡命を余儀なくされているんですから、クーデターでしょうよ。辞任を要求されたその瞬間に、たとえ銃を突きつけられていなかったとしても、自分やそれ以外の多くの人間の命に真剣に関わる問題だと思うから、辞任し、亡命するからで。

 もっとも、背景は、シンプルではない。
 エボは、2006年、先住民としてはじめて大統領になり、先住民の権利向上に尽力した。先住民言語のアイマラ語を公用語化し、国名もボリビア共和国から、ボリビア多民族国家に変更した。劣悪な状態だった貧困層の保健衛生を劇的に向上させ、教育水準を上げ、ボリビアの地下に眠る天然ガスと石油を国有化し、農地改革を行い、大農場主から接収した土地の所有権を先住民に引き渡した。経済政策も成功させ、世界でも最貧国のひとつとされ、しかも極端なまでの格差社会だったボリビアに、曲がりなりにも中間層を生み出した。
 そして、そういう大統領は、当然ながら、既得権益層からは、ポピュリストとレッテルを貼られ、嫌われ、叩かれる。

 しかも、ボリビアは元々、複雑な国である。50年代から2000年代初頭まで、クーデターが頻発し、猫の目のように政権が変わることでも知られた。左派は分裂し、翻弄され、チェ・ゲバラが非業の死を遂げたのが、まさにボリビアであったことは、知られているが、これとて、単に CIA の陰謀が……というような話ではない。当時、ボリビアの共産党も農民も、社会主義革命を目指すゲバラを「敵」と見做し、攻撃する側に加わったのである。  
 貧困率が60%を超える国であったのに、だ。それがゲバラの誤算だった。
 そういう、複雑極まりない背景があることも知っておかなければならない。

 このあたりの、ボリビアの歴史的背景は日本ではほとんど知られていないし、参考資料も少ないのだが、興味のある方は、なんと、海堂尊氏の小説「ゲバラ漂流」に詳しいので、けっこうおすすめできる。ゲバラ漂流

 これはゲバラの生涯とキューバ革命を描いている大作で、現在で4巻まで出ているのに、まだキューバ革命がぜんぜん始まらない(笑)という超大作なのだが、その2巻目が、ちょうどゲバラ青年が、1952年のボリビア革命に巻き込まれるところから始まっていて、ボリビア政界の魑魅魍魎っぷりがじっくりと描かれている。1巻(いわゆる「モーターサイクル・ダイアリー時代」が描かれている)を未読で、ここから初めても面白いので、お薦め。

(このシリーズの良いところは、歴史書で読むと死ぬほど退屈で、しかも頭がこんがらがるラテンアメリカ現代史を、かなりわかりやすく、しかも小説仕立てで面白く読めるところだ。さすがに日本で一番退屈とされる厚生労働省の会議を、面白く読める長編小説に仕立て上げた作家だけのことはある。ただし、小説なので、一部、真っ赤な「作り話」もあるので、そこだけは注意されたいが、かなりおすすめできるラテンアメリカ近代史入門書である)

 話戻るが、まあ、そういう歴史的背景のある国で、エボ・モラレスが圧倒的な支持を得て当選し、数々の社会改革を成し遂げてきたことは、本当に、特筆に値するのだが、当然ながら、就任直後から反対も根強かった。ブッシュなどは、彼を麻薬の売人呼ばわりしたものである。

 さらに言うと、そこでエボは3選した。任期15年。そして4選を狙っての大統領選で躓いた。

 ボリビアの憲法では4選を禁じている。そもそも3選も禁じていたのだが、これは憲法を改正したのだ。これは国民投票の60%以上の賛成で可決された。
 そして、4選目を迎えたわけだが、ここで問題がある。この4選目を可能にするための国民投票は、否決された。つまり、国民はエボの第4期を望まなかった。4選となれば20年。長期独裁だと叩く野党側の主張の方が、国民に受け入れられたことになる。
 にもかかわらず、エボは大統領選を強行し、自ら立候補した。
 その結果、選挙不正があったという話になり、国内で反政府デモが起こる騒ぎとなった。
 この状況に、エボは再選挙の実施を申し出たが、軍と警察が大統領に辞任を要求した、という流れだ。

 そういう意味では、今回の流れは、そう簡単ではない。4選を可能にするための国民投票が否決になった段階で、彼は別の方法を採るべきであった、というのが正論だ。
 後継者をうまく育てることができなかったのが失敗という批判もあるだろう。

 しかし、隣の国のエクアドルで、ラファエル・コレア大統領は、同じく、2度の再選のあと、後継者として育ててきた(つもりだった)副大統領のレニン・モレノに見事なまでに裏切られた。モレノはコレアの全面的支援を受けて当選したにもかかわらず、その後、完全に掌を返して、財界と手を握って新自由主義へと180度の舵を切り、コレアのやってきた改革を次々に潰し、それに反発して反対派をまとめようとしたコレアやその側近をでっち上げの汚職の罪で逮捕しようと試み、亡命に追い込んだ。いわゆる「国の乗っ取り」だ。これがほんの2年前のことである

(ちなみに、先月、エクアドルの首都機能が移転させられるほどに激化した先住民デモは、このモレノ大統領の押し進める新自由主義政策の結果、悲惨なことになった先住民の人たちの抵抗運動である)

 エボが、この事件に無関心でいられるわけがないのは当然だろう。うかつに後継者を決められなかったことも理解できる。
 他にもっとなにかいい方法があっただろうと、口で言うのは簡単だが、実際には難しかっただろう。

 さらに、ここに、日本でも人気の高い、かのウルグアイの「世界一貧乏な」ぺぺ・I ムヒカ元大統領の名言が重なる。
左派は理想で分裂するが、右派は利権で団結する
 
 ああ、真理である。(日本もそうだよね)
 右派の政治家は、相当のことをやらかしていても、利権をばらまける限り、その支持者は離れないし、左派やリベラルの政治家は些細なスキャンダルや疑いで、己の支持者から辞職勧告を突きつけられがちってことだ。

 ボリビアでもこれが起こった。従来、エボを支持していた人たちが、長期独裁だなんだという極右のデモに扇動されて大統領を叩く事態になったわけ。
 それが、警察や軍に大義名分を与えたと。

 まあ、それに加えて、このロイターの記事の「暮らしにゆとりが出るほど、国民は政治指導者の不正に寛大でなくなることがあるのだ。そもそも指導者が良い変化をもたらすのを助けたのであっても」という指摘も、今回の場合、なかなかいいところを突いているといえる。
 
 そのエボが亡命申請をし、瞬殺で受理したのがメキシコのロペス=オブラドール大統領。米州機構に緊急総会を呼びかける と共に、速攻でメキシコ外務大臣自身が護衛を引き連れて、エボの保護にボリビアに向かい、飛行機に乗せて、メキシコに連れ帰った。

その間も、ずっとツイートしてたというのが、とっても今っぽいが、そもそも、30年代メキシコはトロツキーを受け入れ、スペイン市民戦争時は大量のスペイン共和国支持者を受け入れ、その後はアルゼンチンやチリや中米の軍事政権亡命者を受け入れてきたという伝統がある。日本からは佐野碩さんもお世話になっていますね。

 メキシコでは、#BienvenidoEvo (ようこそエボ)というハッシュタグで、お祭り騒ぎの大盛り上がり、というのが現況。ワールドカップ決勝かよ。

 一方で、米ホワイトハウスはというと、速攻でボリビアの政変に祝意を表明し、「ベネズエラやキューバにも波及するように」と表明した。(エクアドルやチリにも、と言っていないところにご注目。これで、この件の意味がよくわかりますね)
 https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/statement-president-donald-j-trump-regarding-resignation-bolivian-president-evo-morales/

 ボリビアでは、今後、まともな選挙が行われるのか。野党統一候補となっていたメサが政権に就いたとして、(選挙では、彼は、天然ガスや石油の民営化は行わないとは言っていましたが)、その後の政策がどうなるのか。
 ちなみに、ボリビアの天然ガスは南米2位、リチウムの埋蔵量は世界一というところも注目ポイントだ。

 これから注視してきたいところである。

エボ・モラエスがメキシコに到着したところのニュース映像

続きを読む

プロフィール

PANDORA

Author:PANDORA
ラテンアメリカと日本を拠点に活動する音楽家・作家 八木啓代のBlog
公式サイト http://nobuyoyagi.com

★CD情報
新作CD”Antes de ti”試聴やご購入はこちらから

★既刊情報
3.11を心に刻んで (岩波ブックレット)
人は、どのような局面において言葉をつむぐか。30人の執筆者が震災を語ったエッセイ集。澤地久枝、斎藤 環、池澤夏樹、渡辺えり、やなせたかしらと並んで八木も寄稿。
刑事司法への問い (シリーズ 刑事司法を考える 第0巻) (岩波書店)
日本の刑事司法の何が問題か、どのような改革が求められているか。刑事法研究者、実務法曹の他、八木も執筆しております。
禁じられた歌ービクトル・ハラはなぜ死んだか(Kindle版)
長らく絶版状態だった書籍をリクエストにより電子書籍で再版いたしました。八木啓代の原点です。
検察崩壊 失われた正義(毎日新聞社)
5刷。この一冊で特捜検察の現実がわかります。
ラテンに学ぶ幸せな生き方(講談社)
なぜラテン人は自殺しないの?に応えて3刷!好評発売中!
キューバ音楽(青土社)
ラテン音楽ファン必読!キューバ音楽のすべてが理論も歴史もわかります。浜田滋郎氏激賞
貧乏だけど贅沢(文春文庫)
沢木耕太郎氏との対談収録

★ライブ情報
6月11日(木)六本木・Nochero
Vo. 八木啓代 G. 福島久雄

ライブ&講演詳細はこちら



nobuyoyagiをフォローしましょう

カレンダー
11 | 2020/12 | 01
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

カテゴリ
検索フォーム
最新コメント
リンク
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
月別アーカイブ
最新トラックバック
  1. 無料アクセス解析