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チリ.....50年前のあの日に寄せて

ところで、ここでちょっと中南米話題。

もうすぐ、9月11日がやってきます。
9.11というと、日本では多くの方の脳裏に浮かぶのは、もちろん、ツインタワービルのテロ事件ですが、中南米の人々にとっては、むしろ、1973年9月11日に起こった事件の方でしょう。

ちょうど半世紀前、50年前のその日、民主的に選挙によって成立したチリのアジェンデ政権が、米国CIAが後援した軍事クーデターによって倒されました。
このクーデターで、サルバドール・アジェンデ大統領が死に追いやられただけではなく、その後、20年近くにわたって、チリでは軍事独裁政権が続き、数千人が殺され、数万人が国外亡命に追い込まれたのです。

この事件が、いまの日本にとって、まったく他人事と言えないのは、このクーデターのあと、軍事独裁政権のもとで、米国シカゴ学派の経済学者らが乗り込んできて、世界で最初の「新自由主義」の実験を行ったのが、実は、このチリだったからです。

現在の日本でも、新自由主義が格差を広げ、雇用や教育の破壊があからさまになってきていますが、それは、実は、1973年以後のチリを見ていれば、そうなることは、とっくの昔に明らかになっていた流れともいえます。

また、チリのクーデター後の軍事独裁政権は、多くの文化人を迫害したことでも知られています。当時、民衆的な音楽文化運動として注目されていた「ヌエバカンシオン(新しい歌)」の著名な音楽家だったビクトル・ハラが虐殺され、多くの音楽家や芸術家も強制収容所に送り込まれたり、亡命に追い込まれたりしたことでも世界に悪名を轟かせました。

ちなみに、ビクトル・ハラについては、私も一冊本を書いていますが、当時、すでに有名な音楽家であった彼は、クーデターの最中で逮捕され、臨時の強制収容所となっていたチリ・スタジアムに連行されるのですが、そこで、歌で他の逮捕者を励ましたという理由で、スタジアム地下に連行され、暴行された上で虐殺されました。
この事件は、世界を震撼させ、当初は「アジェンデ社会主義政権がチリ経済を破綻させ、国内が混乱に陥ったために、軍の将校たちがやむなく決起した」と宣伝されたにもかかわらず、このクーデターの実態を象徴するものであったと言えます。

ちなみに拙著は、現在、電子書籍化しており、KIndleで880円、KIndle Unlimitedなら無料で読めますので、是非、この機会に。

そのチリは、90年に再び、国民投票によって民主化を達成しています。その後、長らく、コンセルタシオン(民主主義のための政党盟約)と呼ばれる、中道右派から左派までの反軍政連合が政権与党となっていました。
それもあって、1990年に国民投票でなんとか民主化を達成したものの、27年間の軍事独裁政権時代で深く刻まれた新自由主義の後遺症をひきずってきていたというのが実情だったのですが、2006年以後、そのような新自由主義のもたらした格差社会や教育ローンに反対する学生たちの運動が全国に広がり、ついに、その学生運動の中から出てきた若い大統領が率いる左派政権が誕生するまでになっています。

その間、ビクトル・ハラ殺害事件についての捜査も始まり、2009年に、殺害の直接の実行犯であった兵士らが逮捕。その後、殺害を命じた軍人たちにも次々に逮捕状が発行され、つい一週間ほど前の、2023年8月28日(チリ時間)、チリ最高裁が、上級将校7人に懲役8年から25年という実刑確定判決を出しました

そして、その翌日朝、つまり、チリ時間29日にその最高刑である懲役25年実刑を科せられた首謀者と言えるエルナン・チャコン元将軍が、収監のため自宅を訪れた検察官の目の前でピストル自殺を遂げるというセンセーショナルな事件も。
https://youtu.be/5dRob6qqxGI?si=MXhEL1VKp-XkAkmA (チリでのTV報道動画)

というわけで、そんな、リアルタイムで熱い中での50年目なのです。
チリ本国でも、チリ大学が「再び起こすまじ(ヌンカ・マス)」週間として、9月中にはトークセッションや写真展、著名な演劇演出家でもあったビクトル・ハラの代表作の再上演など、さまざまな文化プログラムを開催しているほか、当日、9月11日には、国立スタジアムで、ビクトル・ハラゆかりの音楽グループである、キラパジュンやインティ・イリマニ、さらに、軍事政権中に国外追放された人気バンドであるイリャプなどが出演する大イベントが開催予定。
また、メキシコなど、他のラテンアメリカ諸国などでも関連イベントがいくつも行われます。
230911.jpg
ということで、日本でも。

なにもやらないわけにはいかないじゃありませんか。

まさに、新自由主義がチリになにをもたらし、そのチリで格差と学生ローンに追い詰められた学生たちがどう立ち上がり、いったい何が起こったのか。

上記の学生運動まっただ中のチリに留学して以来、まさにその分析をテーマにしてこられた、若き気鋭のラテンアメリカ社会運動論研究者の三浦航太氏と、そしてこの7月から「サンデー毎日」誌上で、あの時代を生き、クーデター直後に謎の死を遂げたチリのノーベル賞詩人パブロ・ネルーダの生涯を描く「雲のごとく ー 詩聖ネルーダ」を連載中の作家の海堂尊氏をトークゲストにお迎えし、さらに、音楽ライブでは大熊ワタルさん(クラリネット他)やこぐれみわぞうさん(歌・チンドン)らのジンタらムータに加え、音楽家・批評家の竹田賢一氏と、ラテンアメリカを拠点に活動してきた八木が加わり、この日のために用意したビクトル・ハラやビオレータ・パラ作品などのスペシャルメニューも交えての豪華なイベントを開催します。

海堂尊氏と言えば、ドラマや映画でも大ヒットした「チーム・バチスタ」シリーズで有名な方ですが、もともとは外科医、さらに病理医として死因究明問題に取り組んで来られた方です。そしてネルーダは、ノーベル賞詩人であるだけではなく、外交官としてスペイン市民戦争を体験し、一時期は有力な大統領候補でもあった(註:アジェンデに統一候補を譲った)政治家で、クーデターの直後、突然死を遂げたことでも知られています。彼の死は長らく病死とされていましたが、これまた、今年の5月になって、彼の墓を発掘し、再調査を行った結果、毒殺であった可能性がかなり高いことがわかってきた、という点でも、海堂氏が興味を惹かれるのは必然なのかもしれません。

音楽の方では、以前から「不屈の民」「平和に生きる権利」などチリ発の抵抗歌が、日本でも演奏されてきたことが、近年、チリ国内でも話題となり、5月には、これらのチリの抵抗歌が世界各地でいかに受容されているかということをテーマにしたドキュメンタリー映画を制作中の研究者らが、ジンタらムータや竹田賢一氏の取材のためはるばるチリから来日、年内に映画の完成が予定されているなど、こちらはこちらでタイムリー。

フリージャズ界隈で知られた前述の「不屈の民」、ソウルフラワーユニオンの日本語詞で再注目を浴びた「平和に生きる権利」に加えて、ビクトル・ハラの美しい器楽曲「ラ・パルティーダ」や、フォルクローレファンの間では有名な「チャラグア」、ビオレータ・パラの「ルンルンは北に去った」などのほか、パブロ・ネルーダの有名な詩も、美しいメロディに乗せてドラマチックに聴いて頂きます。

この50年のイベントは、「『チリに捧ぐ』 もうひとつの9.11 〜軍事クーデターから50年〜 トーク&コンサート」と銘打って、二度とない豪華なトークセッションと音楽を、地球の裏側からチリに捧げるものとなります。

なお、このライブは、どうしてもこの日、おいでになれなかった方のために、アーカイブ配信が決定いたしました!
どうぞ、下記のリンクからご視聴ください。

2023年9月11日(月) 「チリに捧ぐ」 もうひとつの9.11 〜軍事クーデターから50年〜 トーク&コンサート @ LOFT HEAVEN
( 東京都渋谷区渋谷2-12-13 ) お問い合わせ/heaven@loft-prj.co.jp
18:30 Open 19:00 Start
前売り3500円/当日4000円、学割料金2000円(いずれも飲み物代600円別途)
アクセス/JR渋谷駅より徒歩8分。   地図 Google map

【トークセッション】海堂尊 (医師・作家)、三浦航太 (研究者・ラテンアメリカ社会運動論)、
大熊ワタル(音楽家)、八木啓代(作家・音楽家)

【Music】八木啓代(vo)、ジンタらムータ(大熊ワタル cl、こぐれみわぞう vo,per、サルディ佐藤比奈子 pf、関島種彦 vl, mand、関島岳郎 tuba、ふーちん ds)、竹田賢一(大正琴)

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3.11を心に刻んで (岩波ブックレット)
人は、どのような局面において言葉をつむぐか。30人の執筆者が震災を語ったエッセイ集。澤地久枝、斎藤 環、池澤夏樹、渡辺えり、やなせたかしらと並んで八木も寄稿。
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日本の刑事司法の何が問題か、どのような改革が求められているか。刑事法研究者、実務法曹の他、八木も執筆しております。
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長らく絶版状態だった書籍をリクエストにより電子書籍で再版いたしました。八木啓代の原点です。
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