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シンポジウム「コロナ、報道、国産ワクチン その裏側を探る」〜コロナ・ワクチンをめぐる闇(その1)

さて、少し時間が経ってしまいましたが、7月20日明治大学大学院情報コミュニケーション研究科主催で開催されたシンポジウムについて、報告を行いたいと思います。
あまりにも濃い、そしていろいろショッキングな内容も含むものだったため、文章化に時間がかかってしまいましたが、驚くべき話が次々にと明らかになり、是非、ご一読頂きたい濃い内容となっております。

シンポジウム登壇者は、
植地泰之(医師、東中野セント・アンジェラクリニック院長、元アストラゼネカ執行役員、元グラクソ・スミスクライン株式会社ワクチン開発担当副本部長)
海堂 尊(作家、医学博士、福井県立大学客員教授)
川上浩一(理学博士、国立遺伝学研究所教授、専門は遺伝学・分子生物学)
吉田統彦(衆議院議員、医学博士、昭和大学医学部救急医学客員教授、愛知学院大学歯学部眼科客員教授)

という、そうそうたる顔ぶれの方々です。
それぞれ15分程度のミニ講演をして頂いたあと、このご四方での大激論会となったわけですが、まず、最初からはじめましょう。

最初の登壇者は、この日、わざわざ診療を休診して来てくださった東中野セントアンジェラ・クリニック院長の植地泰之ドクター。
なんとこの方、数年前までアストラゼネカ本社の執行役員であり、グラクソ・スミスクラインのワクチン開発担当副本部長でもあったという経歴の持ち主でいらっしゃいます。つまり、世界レベルでの製薬会社側の事情や内幕を誰よりもよくご存じの方です。

ワクチンというものは、病気の予防・あるいは重症化を防ぐ目的で開発されたものであることは、ジェンナーの発見した天然痘ワクチンである牛痘、さらにパスツールの狂犬病ワクチン、コッホの結核のためのBCGワクチンなどの効能で知られています。脳が陰謀論に汚染されている人であっても、こういったワクチンが、19世紀に莫大な死者を出した伝染病から多くの人を救ったことまでは否定できないところでしょう。
しかし、近年、ワクチンを打ったことによる「副反応被害」もまた、取り沙汰されてきています。

植地ドクターが解説してくださったのは、まさにその、ワクチンとその副反応についてでした。

まず、ワクチンを打ったから障害が出るというケースがある一方、ワクチンを打たなかったから病気になるというケースがあるということ。
たとえば、昭和30年代の日本でポリオ(小児麻痺)が大流行したとき、当時のソ連からの緊急輸入で子どもたちにワクチンを打ち、その発生をほとんど止めることに成功した一方で、副反応で障害が残ってしまった子どもも少数ながら出たという史実です。

ワクチンによって、病気で死ぬ可能性があった何千人、何万人を助けることができる。しかし逆に、ワクチンを打ったことによって健康に生きていた子どもが、副反応で障害が残ってしまった...こういうこともあるわけです。

ではどちらを取るのか。
すなわち、病気になって問題が起きてしまうことを避けるためにワクチンを予防接種をとして打てば、必ず副作用で被害が発生し、そこにゼロリスクはあり得ない。しかも、これは誰が被害者になるかは完全にわかることはありえない。

これを、英語で、デビルズ・ロッテリー、「悪魔のくじ引き」というふうに言うのだそうです。
ドイツなど欧米では、キリスト教的な考え方で、その「悪魔のくじ引き」に当たってしまって、ワクチンによる副反応被害を受けた人は、国民全員を守るために犠牲になってくれた、だから国民全体でもって保障してあげなきゃいけないという考え方をするそうです。

一方、日本では、戦争直後の衛生状態も栄養状態も悪かった時代に、GHQ主導で予防接種法が制定され、義務としての予防接種が強行されるようになっていました。

そのような状況の中で、2つの問題が起こります。

1つは、1973年の大腿四頭筋拘縮症事件。山梨や静岡などで、筋肉注射をした子どもが、それが原因で歩けなくなってしまったという医療事故です。これは、その原因が筋肉注射そのものにあったわけではなく、当時の日本の技術レベルと薬品の問題であったことが後に明らかになるわけですが、1976年、日本の学会はできる限り筋肉注射を避けようという勧告を出し、それ以後、日本のワクチン注射は皮下注射が原則となります。

2つめは、予防接種法が制定された直後に、ジフテリアの予防接種で、京都で乳児68人が死亡するという大きな事故がありました。それはワクチンの品質の問題で、これが原因で品質管理国家検定などが始まったのですが、では、ワクチンで何か問題が起きたときに原因は、医師の注射の手技が悪いからなのか、製造物(ワクチンそのもの)の責任なのか、それとも国家検定を行っている国の責任なのか、それとも強制的に打たせているのが悪いのかという議論は、日本の中ではかなり長い間、曖昧なまま行われていることになってきました。

つまり、(必ず出てくる)副反応被害をどう捉えるか、被害者をどう救済するかという点についての議論がきちんとなされてこなかったため、現在、有効とされている副反応被害救済が、1990年の東京高裁の判決に基づいているのだそうです。

この判決とは、厚生大臣の予防接種行政の「過失」に基づく国家賠償責任だという議論でした。不十分な予診のせいで、禁忌者、つまり、ワクチンに対する過敏反応や副反応を起こしやすい人を見つけられなかったのがいけない、という法理による高裁判決に対して、国側が被害者の早い救済のためにあえて控訴を行わなかったために、結果として、これがワクチン副反応の法理として現在も生きている。しかし、そこには、「デビルズ・ロッテリー」に当たってしまった人を救済するという概念はないわけです。

その後、日本は予防接種法を改正し、1994年以後、ワクチン接種が義務から努力義務規定になりましたが、今度は、この日本の別の特殊性が問題になってきます。
現在、外国でのワクチンは筋肉注射が主流なのだそうです。ところが、日本では、1970年代の事故以後、筋肉注射を忌避してきたため、ワクチンも皮下注射のものしか開発してこなかった。ところが皮下注射では注射の位置が浅いため、腫れたり赤くなりやすい。それを避けようとすると、抗原性を抑えた弱いワクチンにならざるをえなかった。そのため、日本製のワクチンは効きが弱く、製薬会社から見れば、外国では売り物にならないものでしかなかった。

一方、ワクチンは、一般的には、子どもに打つものなので事業規模が小さいうえに安価であるうえ、訴訟リスクも高いので、製薬会社にとってはメリットが少ない。なので国からの補助金で細々とやっていたというのが実情で、そこには新規の小さな会社が入る余地もなく、ワクチン開発の専門家も、現在はほとんどいなくなってしまった。
それらの結果として、コロナのワクチンがそうであったように、海外では5人入りとか6人入りとか12人入りのバイアルで供給するというのが普通になっていたのに、その技術も日本にはなく、パンデミック時のワクチン製造に必須である細胞バイオ技術も、日本には独自のものがなく、海外からの輸入技術しかなかった。

つまり、日本は目を覆うレベルでのワクチン後進国だったわけです。そんなところにコロナ禍が到来したわけですね。

ここで、植地ドクターは、治験に関しても触れられます。
ワクチンに限らず、全ての医薬品は、治験を行って、効果や安全性を確認しなければなりません。
そのうちのフェーズⅠは安全性の確認試験、フェーズⅡ は小規模での有効性確認試験と容量設定、フェーズⅢ が実際の検証試験とされています。
なので、製薬会社の新薬開発は、まずフェーズⅠの治験に入るかどうかを検討し、その結果を見て、フェーズⅡを行うか、さらに Ⅲ に上げるかを検討していく。この中で、フェーズⅢ が大規模治験であり、一番費用がかかるので、フェーズⅢに入る前の、フェーズⅠⅡ で効能を見分けたいというのが、普通。

フェーズⅡの結果が有効性が少ないけれど、 Ⅲ で検証しますというようなことを言っているベンチャーなどがいるけれども、「それは、ほぼ嘘です」 と、植地ドクターは断定します。
「なぜかというと、Ⅱ で結果が出ないようなものは、Ⅲ に出したって絶対に結果が出ません。そもそも大規模臨床試験で試験をやらないと効果が出ないようなものは、効果が薄いからです」
さらに、鋭い舌鋒は続きます。
「それからフェーズ Ⅲ の結果を半年も待って発表しないで、ずっと検討しています。と言っているどこかの大学とかいろんなところがありましたけども、そもそも1ヶ月経っても結果発表できないものは、できないんです。こんなものは統計で事前に規定していますから、1週間以内に結果が出るのが当たり前で、それでできなかったらできません。それを1ヶ月も2ヶ月もずっと引き延ばしているのは、それは、統計解析上、負けたからです」
実名こそ出ませんでしたが、このとき、多くの聴講者の人の頭に、まさにそれをやっている、とある会社の名前が浮かんだ....かもしれません。

さらに植地ドクターは続けます。
いま、製薬会社は、世界規模で、新薬の可能性のあるものを鵜の目鷹の目で探している。古くからある薬でも、そこに新しい効果が見つかれば、リポジショニングといって、いくらでも価値が付けられる。なので、古くて安い化合物だから、商売にならないから日本の会社はやらない、製薬会社は手を出さない、なんていうのは大嘘です、と。

過去に比べて格段に情報共有のスピードが上がっている現代、世界中で自分ひとりだけが専門家などということはありえない。
もしそれが一つでも面白いもので可能性があると思ったら、必ず若い研究者が群れて、そこを研究する。
もしも「(世界中で)自分だけが専門家なんです」などと言っている研究があるとしたら、それはもう、みんなに見捨てられて誰も研究しなくなったものを、最後に残った人が一人しかいないということにすぎない。

「特許があるから他に誰もできないんです、他の会社が真似できないんです」と主張する会社もあるけれど、もしそんな有用な特許があるのなら、世界規模の大手製薬会社会社は何億円、何千億円、何兆円でも払ってその特許を使わせてもらう方向に動く。価値のある特許であれば、1つの化合物に対して、2兆円払ったケースさえある。何千億円くらいは普通に払うのだそうで。

なので、特許を持つと称するそのベンチャーの小さな会社が何千億円のお金をもらっていないように、僕の特許だから他に使わせないというようなことは実際にはない。
いまや留学生のネットワークなども強く、今回のコロナワクチン開発でも、世界中で情報が一瞬にして共有されているわけです。

植地ドクターの在籍しておられたアストラゼネカも、またワクチンを作っています。
これは、日本で主に使われたファイザーやモデルナのmRNAワクチンとは違って、ウイルスベクターワクチンです。英国のオックスフォード大学が開発したもので、作るのが非常に簡単で、小さな製造設備で短時間で作れる。だから、パンデミックの初期に、実は、世界中で当初一番多くの国で使われていたのはアストラゼネカのワクチンだった。しかしそれですら、日本には、国内生産のための満足な細胞培養の製造設備はなかったというのが実情だった。

なお、このワクチン生産に関して、アストラゼネカは利益を取っていないとのこと。
アストラゼネカ社としては、当時、コロナ禍のようなパンデミックが起こった場合、一カ国が集中して大量に作るというやり方をすると、ワクチンの争奪戦が起きてしまうことを恐れ、普遍的な技術でどこの国でも作れることを目指していたのですけれども、そういうことは多分あまり報道されていないので、今日ちょっとご説明をさせていただいたという形になります、と締めて、植地ドクターのプレゼンテーションは終わりました。

続いて、国立遺伝学研究所の川上浩一教授です。(続く)

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