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人質司法・司法のトンデモって、実は他人事ではないのですよね

数日前の6月8日、東京地検特捜部が、菅原一秀前経済産業相を公選法違反罪で略式起訴したという速報が流れました。
これを見て、ネット上に検察を称える声もあったが、引っかかってはいけません。
これは、裁判ではどうやっても有罪を免れないのがわかったうえで、そのダメージを最小限にとどめるための忖度丸出しの行為だからです。

この問題のトンデモな経緯は、郷原弁護士のブログに詳しいのですが、ざっと説明するとこういうことになります。

①選挙区で香典を配るなど、露骨な選挙違反をがんがんやってたことが報道されたが、検察はシラっと不起訴にした。
②それに先立ち、その前に、法的に有効な刑事告発状が出ていたにもかかわらず、不受理にして送り返してきた。なぜなら、検察審査会に不服申し立てができるのは告発人だけだからで、告発状を不受理というかたちで「受け取らなかった」ことで、検察審査会に申し立てできないようにするのが見え見えだった。
③怒った告発人が、郷原弁護士に相談。郷原弁護士は、告発状が法的に有効なものである以上、受理しないこと自体が違法なので、検察審査会に申し立てが可能、という法解釈で検審に不服申し立て。
④検審が受理して審査したら、起訴相当議決が出た。

当然、検審には、不利な証拠は出さないなど、検察は徹底して工作してたはずで、それで起訴議決が出たわけですから、よっぽどだったのでしょうね。
それで、もう一回起訴議決が出たら、強制起訴で裁判になります。

裁判になれば、証人尋問もありますし、検察の捜査に問題があれば、それも明らかになる可能性があります。
強制起訴の場合、検察官役は指定弁護士がやりますから、検察の捜査が穴だらけだったり、あるべき証拠がなかったりしたらバレちゃいます。
逆のケースですが、陸山会事件の時は、強制起訴で裁判になったことで、検察が偽の公文書を、それも大量にでっち上げていたことがバレちゃいましたもんね。
菅原氏の場合も、裁判になったら、検察が隠したがっていたことがボロボロ出てくる可能性があった、ということでしょうか。

そこで、あわてて二回目の起訴相当議決→強制起訴、という流れを阻止するために、法廷を開かずにすみ、証人の尋問もなしで書面だけの審理で、Max罰金で済む、略式起訴でごまかそうとしたわけです。
この手口、ご記憶の方も多いでしょうが、麻雀黒川の時にも使っていますね。
よっぽど、公開の法廷で明るみになったら都合の悪いことがあるんでしょうねえ。

というように、いろいろ腐臭が漂っているのが、日本の司法現場です。

そんな矢先に出たのが、この書籍、「人質司法」(角川新書)
人質司法
高野隆弁護士は、カルロス・ゴーンの弁護人としてマスコミに取り上げられ、この本でも、カバーかよと思うぐらい太い帯にゴーンの写真が使われているのですが、本庄トリカブト事件をはじめとする、冤罪の疑いのある刑事裁判に多く携わっている方です。

なので、「ゴーン氏の言い分」を滔々と述べている本ではありません。
むしろ、長年の経験で痛感している日本の刑事司法の歪みっぷりを、ある意味、ぶちまけた本です。

刑事事件なんて、他人事だと思っているかもしれませんが、どう考えても正当防衛だろうみたいな事件で重罪にされそうになったり、ただ道を歩いていただけなのに麻薬を所持していたことにされたりと、ちゃんとした弁護士さんがついていなかったら、「運悪く」で、人生が詰むようなケースがいくつも紹介されていて、いやいや背筋が冷えますよ。

そして、カルロス・ゴーンの逃亡事件は、その、国際的に明らかに異常なレベルの刑事司法を、そのまま、外国人、それも(東電OL殺人事件で冤罪に苦しめられた)ゴビンダさんみたいな貧しいネパールの出稼ぎの方ではなくて、億単位のお金を簡単に動かせるレベルのお金持ちの有名人にぶつけちゃったってことなわけで。
つまり、ドラマじゃないですが、ぜったいにまともな裁判が行われないということをゴーンみたいな人間が確信してしまったら、そら、どんな卑怯な手を使ってでも逃げるやろ。そう仕向けたんはアンタらやで、ということが、淡々と説明されているともいえます。
検察出身の、いわゆる「ヤメ検」弁護士のアレなところも、さらっと触れられています。

私はカルロス・ゴーンのような、贅沢奢侈好きの新自由主義者ははっきりいって嫌いですし、頭のいい人のやる限りなく背任に近いような行為を立証するハードルは相当に高いとは思いますが、だからといって拷問してよいとは思わない。ましてや民主国家を謳う国家が、国際基準で拷問と見做されるような取り調べで、容疑者を有罪にしてしまうようなことはあってはならんのです。

これは、べつに政治家としての小沢一郎を支持していないけど、検察が証拠をでっち上げて政治家を失脚させるようなことはしてはいかんだろう、ましてや、政権交代するかどうかなんていう微妙な時期にそれをやるのは、そっちの方がよっぽど犯罪だろうというのと同じです。

逆に、明らかに犯罪以外の何物でもない、つまりまともに裁判をやったら、裁判官が無罪判決をちょっと書けないような真っ黒黒の事件でも、それを「裁判にかけないため」に不起訴を連発したり、検察審査会に細工したり、あげくにそれでも起訴議決が出ちゃうと、強制起訴逃れのために略式起訴でごまかす、なんてのは、ほんとに「権利の濫用」というのを通り越しています。

民主国家の原則というのは、「法の下の平等」が守られていることです。
政権に近いと、相当のことをやらかしても不起訴になり、そうでないとでっち上げられてでも有罪にされる、なんてのは、民主国家とは到底言えません。

一つだけ救いがあるとすれば、一昔前なら、検察がどんなに暴走していても、メディアが結託していたら(というか、結託度高いので)、一般国民の私たちが実態を知ることは至難でした。
だからこそ、せめてしっかり目を開けて、必要に応じて、きちんと声をあげていかなければということですね。庶民の声なんて微力ではありますが、それでも大きくなれば、怒濤となることもある。ないよりずっとマシなんですよ。
あの黒川だって、SNSがなかったら、いまごろ、堂々と検事総長様だったわけですからね。


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