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新型コロナ感染拡大のもとで、あえておすすめ

  新型コロナが新たな感染爆発のステージに入ったようですね。
 最近になって、後遺症の問題も取り沙汰されるようになってきましたが、新型コロナは、軽症でも、後にきつい後遺症が出る可能性があるなんてのは、外国では4月から報告が上がっていたことで、私だって、5月の段階でプログに書いておりました。
 なにをいまさら、なんですが、それまで、そこのところは「目をつぶって知らないふり」をしてきたんですよね。メディアも、厚労省も。

 で....忘年会や帰省どころではなくなった皆様に、地味だけど、面白い書籍のご紹介です。
 そう。クリスマスケーキみたいな派手さはないんですが、スルメのように、噛んでるとじわじわ旨味がくるような。
 
 山岡淳一郎著 「ドキュメント感染症利権ー医療を蝕む闇の構造」
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 とにかく、現在に至る日本の医療の構造的な問題がよくわかる。
 読み始めてしばらくは、タイトルと内容が乖離しているような印象を持ちます。というのも「利権」という生々しくも腥いタイトルを名乗り、まさに旬の新型コロナ噺で始めておきながら、それは束の間、第一章のそれも23ページ目あたりから、舞台が明治に飛んでしまうからだ。
 で、この明治期のコレラやペストの防疫談がじっくり二章で語られ、さらに第三章で731部隊の暗史が語られます。さらにその次の章が、ハンセン病問題。
 それは、私達が断片的には知っているが、じつはよく知らなかったことを改めて思い知らさせる......つまり、積極的に語られてこなかった近代日本史の暗部の物語だ。それを筆者はよく調べ、調査し掘り起こし、低いが明快な声でじっくりと語る。
 なので興味深い。内容も濃いのではあるが、しかし、タイトルとの乖離を感じてしまったわけだ。
 今の日本の医療が、明治に端を発する霞が関の権力争いや学閥のゆえに、現場の医師たちの良心や覇気とは別のフレームで歪まされてきたことが、切なくもじわじわと迫ってくるものの、「でも、それ、利権と言ってしまうのはちょっと違うのでは?」と思ってしまったからだ。
 しかし、その不満は、最終の第5章で反転する。
 つまり、そこまでが長い前置きなのだ。明治以来の、戦中の、そして戦後の、日本の医療行政の上を覆ってきた「政治」と「官僚主義」の歴史を頭に入れてこそはっきり見える薬害エイズ事件。そして、それはそのまま、現在の新型コロナへの政府対応とも重なってくる。
 そして、エイズ問題あたりから世界を跋扈するワクチン開発利権という異形の怪物とのからみが生々しく理解できるという仕組みになっている。そのあたり、鮮やかである。
 地味ながら、読み応えがあり、ためになる一冊。

 そして、もう一冊。これまた一見地味だけど、ものすごく面白い本。

 市川寛著 「ナリ検 ある次席検事の挑戦」
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 はい。あの、ニコ生史上に残る爆弾発言の主、「検事失格」の市川寛氏です。それも小説です。
 ナリ検というのは、ヤメ検、すなわち、検事から弁護士に転身した法曹を指す、やや揶揄的な表現から持ってきているのは明らかで、本書では、弁護士から検察官に転身した次席検事を主人公として物語が描かれる。
 もっとも、弁護士が選挙で検事になる米国の制度とは違って、日本では、司法修習生からそのまま生え抜きの検事になるのがほぼ慣例なので(例外的に、検察事務官から副検事を経て検事になることもあるが)、弁護士から検事になった例というのはないはずだ。なので、そこはフィクションということ。
 で、この小説の何が面白いかというと、まさに「弁護士の心を持っている検事」が主役として、「検察の常識」と戦っていく話だからだ。
 傍から見れば、なんでそうなるの、という論理展開であっても、検察生え抜きでその世界しか知らない人には、それをおかしいとは思わない。「世間の常識」や「本来の法の趣旨」から明らかに乖離していることであっても、それが見えない。なぜなら、検察の価値観しか知らず、それに染められているからだ。そういう世界の中では、「普通の(まっとうな)価値観」を持っている方が「異常」ということになる。
 いったん起訴と決めたら、絶対に有罪にしなければならない。あとで事実誤認があったことに気づいても、あとで被告に有利な証拠や証言が出てきても、それは黙殺し、最初に決めたレールの上をあくまで走ろうとする。冤罪が起これば、被疑者にとっては一生の問題なのだが、そんなことを顧みられることはない。
 その、まさに冤罪を生みかねない「価値判断」や「基準」が、しかし、それを何の疑問も持たず、むしろそれこそが正義と本気で信じる(そしてもちろん、馬鹿だからなのではなくて、優秀な頭脳を持っている)人たちが、国家権力という威光の剣を自在に振るっているという現実は、前述の「感染症利権」のあとには更に生々しく感じられる。
 地味というのは、これだけ恰好の素材であるにもかかわらず、肝心の事件がいまいち地味だということだ。もしかしたら、その地味さは、筆者市川さんの実体験に即しているからなのかもしれない。
 ただ、せっかく小説なんだから、連続殺人事件とか猟奇犯罪とか、あるいは汚職とか、もうちょっとでかくて派手な風呂敷を広げても良かったのではないかというところが惜しいというか、ちょっと勿体ない。
 もちろん、本書はわざと地味に置いた布石であって、市川氏には二作目・三作目の大構想があるのかもしれない。なんたって設定は抜群に面白いのだから。
 とにかく細部に渡るリアリティはものすごいうえ、検察実務についても詳細に描かれているので、ミステリファンなら読んで絶対に損はない一冊だ。

 そして、三冊目。
 青谷 知己、小倉志郎他 (著)「原発は日本を滅ぼす
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 新型コロナの感染の広がりの中で、検査を受けられずに亡くなった方のニュースが話題となり、一方で、たまりかねたかのように民間が開始した格安のPCR検査に予約が殺到する状況の下、初期に跋扈していた「PCR検査抑制説」つまり、PCR検査には偽陽性や偽陰性が多く信頼性が低いだの、ものすごい職人技が必要なので増やすのは不可能だのといったアレな論議が立ち消えになり、というか、居丈高にそういった主張をしていた人たちが、さりげなくWebページやエントリを削除して逃亡したり、「自分の主張の真意はそうではない」的な逃げに入っている今日このごろ、これって、なんか、あの時と似ていますよねえ。
 原発に関しても、居丈高にその必要性を語り、反対派を嘲笑するような人達がけっこういた(いまでもいます)ものですが、この本は、まさに専門家、つまり、あのフクイチの設計者も含む原発技術者というプロ中のプロが、その手の「俺は知っているんだから、〇〇脳の素人は黙っとけ」系の連中の詭弁やデマや嘘を完全論破している本です。

 ちなみに、アマゾンで、一つ星レビューをつけている方が、「筆者らは原発事故後に180度主張を変えた二枚舌だから本書の内容が信頼できない」と主張していますが、それは明らかなデマです。私は筆者のお一人を個人的に存じていますが、福島原発事故の前から、原発の問題点や危険性についてシリアスな指摘をされていました。(最も当時は、当然ながら、具体的に津波災害を予見していたわけではなく、火災やテロなどを想定しての指摘だったのは仕方がないでしょう)。こういう虚偽まで書いて評価を落とそうとするあたり、まさに「ここに書かれていることが、よっぽど都合が悪い人たち」がいるということですね。

 そういえば、原発事故の前、九州電力だったかの公聴会で、原発賛成派の人が「原発で事故が起こらなかったら、原発反対派は責任を取れるんですか?」なんていう超絶珍妙な論理を吐いていたりしていたものですが、あの人は、福島で事故が起こったあと、いったいどういう責任をとったのでしょうね。

 危機管理をさんざん蔑ろにしたあげく、トラブルが起こると、バックれるか、慌てて責任転嫁、というのって、まさに看護学校や病院の補助金をバンバン削り、新型コロナの危険性がわかってきた初段階でも雨ガッパ集めたり、イソジンうがいがコロナに効くなんていうデマを吹聴し、自分の利権がらみの都構想のために奔走していた挙げ句に、感染爆発を招くと被害者ヅラで自衛隊に泣きつく大阪府知事が再現してくれているようです。ああ、そういえば、そこにもアンジェスとかいう、失笑するしかないような経営状態の会社非現実的なワクチン開発なんていう利権ぽいものがありましたねえ。

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八木さんのような論理的な方にぜひ、
新型コロナ 専門家を問い質す
って本を読んで欲しいです。

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