盗聴が拡大されるぞ!→院内集会「刑訴法等改悪一括法案の論戦から見る 〜国会は、今!〜PART III」

前回エントリに引き続き、8月6日に衆議院第一議員会館で開催された、「盗聴・密告・冤罪NO !」院内集会 「刑訴法等改悪一括法案の論戦から見るー国会は、今! PART III」という集会が開かれたので、引き続き、そのレポートをお届けする。

まず、この集会の前日、なんと急転直下で、衆議院法務委員会において、この刑事訴訟法改正案が、修正可決されてしまった。

しかも、この可決されてしまった修正案というのが、従来、民主党が提案していた「司法取引や盗聴については認めない。可視化についても拡大する」という、いたってまっとうな対案から、ほぼ180度転換・譲歩して、修正といっても、自民党案の形ばかりの微修正にしかすぎない、というより、自民党案ほぼ丸呑みの、修正案とも言えない修正案だったから、参加の皆さん方は「はらわたが煮えくりかえる」思いの方ばかり。
そのせいか、この日は、院内集会であるにもかかわらず、民主党や維新の議員は誰1人として姿を見せていない。

そのような状況の中で、テーマの「盗聴問題」が取り上げられた。

そもそも「盗聴」の範囲を拡大し、また、従来は必須とされていた第三者の立ち会いも、警察関係者(つまり身内)で済ませてしまおうという「お手盛り」の改革案の法制化など、そのこと単独で、しかるべき議論をしなければならない問題であるものを、「刑訴法改正」という形で、一括審議してしまい、しかも、それを「戦争法案」のどさくさまぎれに通過させてしまおうというのだから、姑息極まりない話である。

しかし残念ながらというか、なんというか、それが通ってしまったというわけだ。

ここで、まず、袴田事件弁護団長の西嶋勝彦弁護士の報告。
冤罪事件として有名で、現在、再審中の袴田事件で、今年の4月(最近じゃないか!)、昭和41年の時点で、袴田氏が接見中の弁護士と交わした会話が、盗聴録音されていたことが明らかにされたという。

即時抗告審で証拠開示された(つまり、それまでは再三の請求にもかかわらず、検察側が隠していた)証拠の段ボールの中にあった取り調べのオープンリールテープ(時代だ!)を分析して明らかになったもので、これはもちろん、トンでもない問題だ。

刑訴法39条1項で、被疑者・被告人は、捜査関係者に知られることなく、弁護士と接見する権利が認められているのだが、これを捜査機関が、それはもう堂々と無視したということだからである。

会話の内容は、袴田氏が弁護士に自分の無実をひたすら訴えていたというだけのものであったそうだが、それが問題なのではなく、捜査機関(つまり警察)が、どんな手段を使ってでも(つまり、露骨な違法行為をおこなってまで)袴田さんを有罪にしようとしていたことが明らかになったということだ。

実際に、この袴田事件では、決定的証拠とされた「事件当日に犯人が身につけていたとされるズボン他、5点の衣類」が捏造証拠であることもほぼ明らかになっているが、要するに、「自分たちに都合の良いストーリーで犯人を作り上げる」というようなことを平気でやるのが、残念ながら日本の警察であり、それに同調し、場合によっては、それ以上に暴走するのが検察であるという状況であるにもかかわらず、警察・検察全面性善説に立って、フリーハンドに近い「盗聴」を認めてしまって、どうするんだ.......という話なのである。

続いて、足立関東学院大学名誉教授から、改正した盗聴法の「実施」にあたっての問題点が指摘された。

じつは、現在において、盗聴は、デジタルの世界で行われるものとなる。そのため、法務省はデロイト・トーマツ・コンサルティング株式会社というコンサル会社に、盗聴法の実施にあたっての検証をおこなってもらっていたのである。この費用が1700万というのもアレだが、しかし、デロイト・トーマツ、ちゃんと仕事をして、多くの「実施にあたっての問題点」を指摘してくれていた。

つまり、捜査機関が法律以上に情報を取得するリスクや、適正に作成された原記録とは異なるもの(要するに虚偽記録)を裁判所に提出するリスク、また、捜査機関や裁判所、通信網などを通じての情報漏洩があってはならないということだ。

で、必要なのは、「警察等の捜査機関による不正な情報の取得と原記録の作成ができず」、「裁判所や通信事業者などが、作業ミスによって情報の漏洩などを引き起こさず」、「ハッキングなどで通信内容が傍受されたり漏洩したりしない」システムの構築というわけ。

そのために、デロイト・トーマツでは、かなり高機能なソフトを作りこまなくてはならないこと、そのソフトに必要な機能や条件などを14項目にわたってリスト化しているのだが、その大半が、この改正盗聴法案には反映されていない。

デロイト・トーマツが提案しているレベルのソフトとハードは、その経費が20億から30億円になると見積もられているわけだが、その経費や具体化などについてまともに議論もされずに、この法案が通っちゃったということなのである。

つまり、文字通り、この法案通りに盗聴が開始でもされようものなら、捜査機関の恣意的運用や悪用にも歯止めがかからないだけではなく、セキュリティだだ漏れになる可能性もあるということだ。

さらに、法務省では、サーバ増設などの経費負担を、通信業者に求めるつもりであるらしく、そうなると、通信料金(電話代と携帯代)に跳ね返ってくる可能性がある。

盗聴に関しては、現在、詐欺・窃盗・児童ポルノがらみの組織犯罪に限定とされてはいるが、そんなもの、どこまで拡大解釈されるかわからないし、冤罪は自分には関係ないと思っている人は多いだろうが、どさくさまぎれに盗聴されたものが漏洩するリスクや、果ては、そのために電話代や携帯代が上がるとなれば、我々国民は、実にいいカモということであります。

ここで、日本共産党、清水忠史衆議院議員が大暴露。
まさに寝耳に水のように、この改正刑訴法修正案が通ってしまった経緯について。

これまで、民主党・維新・共産党は、ほぼタッグを組んで、刑訴法改悪に反対していて、この刑訴法改悪を事実上骨抜きにする民主党改正案については共産党も賛成していたこと。
ところが、8月4日ぐらいから雲行きが変わってきて、自民・民主・維新がいきなり修正合意。そして、5日に、もともとの自民党案べったりの修正案が提出されて、これで可決されてしまったこと。
http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000056190.html

この民主党の臆面もない変節の裏には、この改正刑訴法に賛成している日弁連(日本弁護士連合会)の猛烈なロビー活動があり、民主党の主要支持母体である連合などからの圧力があったらしいこと。

では、なぜ、日弁連が、こんな刑訴法改悪に、ロビー活動までして熱烈賛成しているのか。

この刑訴法改正には別の顔があり、問題になっている条件つき可視化や司法取引合法化や盗聴の拡大とは別に、国選弁護を大幅に拡大するという項目がある。
つまり、被疑者国選弁護制度の対象が、被疑者が勾留された全事件に拡大されるのだ。(第37条2、4)
http://www.moj.go.jp/content/001149703.pdf

これによって、年間26億円の税金が日弁連に流れ込む、という、そういうことらしい。
平成の司法改革によって、弁護士が増えすぎて、仕事にあぶれているというこのご時世に「おいしい制度改革」ということか。
つまり、日弁連は26億の金と引き替えに、良識を売ったのである。

いやもう、啞然。

こんな刑訴法改正案、おそらく今日の国会で、問題の修正案が強行採決となるでしょう。
しかし、まだこれで負けではない、と、清水議員。

これからもしつこく声をあげ、反対していくことで、参院での審議を長引かせ、廃案に追い込んでいきましょう、と。
いやもうその通り。

戦争法案の影に隠れて、どさくさまぎれに、このようなトンデモ法改正が行われていることを、私たちは見過ごすわけにはいかない。

単に、(多くの人からは、縁遠いと思われがちな)「冤罪を生まない」、という理念上だけの問題ではなく、それでなくとも、大阪地検特捜部証拠改ざん事件がごく軽い罪にしか問われず、陸山会事件の露骨なまでの検察の「虚偽報告書」事件ですら、身内捜査の不起訴でうやむやにされ、次々に起こる重大冤罪の無罪判決でも、そのような冤罪を生んだ捜査機関の責任についてまともな検証は一切行われないという状況のもとで、司法取引や盗聴が当然という世の中にしてしまったら、それこそ捜査機関の権限がどんどん拡大され、それは、ある意味、戦争法案以上に、私たちにとって「息苦しくて危険な」世の中をつくってしまうことになるからだ。

そして、まさにこのエントリを書いている真っ最中、刑訴法改悪法案は、衆院を通ってしまった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS07H06_X00C15A8EAF000/

日本をトンでもない国にしてしまわないために、めげずに声をあげていくしかないだろう。
そのためにも、戦争法案のかげで、大きな論議を巻き起こすこともなく、どさくさまぎれに通ってしまった、この危険きわまりない刑訴法改悪について、皆さんも、是非、ご注目頂きたい。

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No title

自分の生活のことだけ考え少数派の警告に大多数が耳をかさずに
かつて日本は大東亜戦争に突入していったんだなと思います。
特定秘密法案、特区改悪法、安保法制改正、いずれまた来年に国会で上げられる残業代ゼロ法案、かつての偉人の警告を無視したグローバル化の象徴のTPP参加。
もう皆の足元にまで取り返しのつかない災いの火が、足元にまで及んでいるのです。
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