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シンポジウム「メディア報道の罪と罰〜PC遠隔操作事件と本庄トリカブト殺人事件を追う」

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 お疲れ様でした。
 ばたばたしていたら月が変わってしまいましたが、簡単に11月26日に明治大学リバティホールで開催されたシンポジウムのご報告です。
 今回のテーマは、「メディア報道の罪と罰〜PC遠隔操作事件と本庄トリカブト殺人事件を追う」
 まず、最初の登壇は、PC遠隔操作事件の特別弁護人を務めて下さった野間英樹さんから。野間さんは弁護士ではありませんが、この事件については欠くべからざるITの専門家として、はじめて、弁護団に加わった方です。野間さんから事件の概要を改めてお伺いすると共に、続いて、その筋では著名なITプログラマであり、元Linux協会会長の生越昌己さんにお話しして頂きました。
 犯人片山祐輔氏が保釈中に「真犯人メール」を送ってアリバイ工作をしようと携帯を埋めた瞬間を、行動確認していた警察に目撃され、さらにそれが報道で明らかになって逃亡の後、すべてを自白したことで急転直下の解決を見たPC遠隔操作事件ですが、実際に、片山氏が否認していた間に検察が証拠として出していたファイルスラックの痕跡などは、専門家から見れば到底証拠とはいえないもので、実を言いますと、この事件が否認のままで続いていた場合、それをもって有罪の証拠とするにはかなり無理があるものでした。
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 それを実証するために、検察が片山氏有罪の証拠としているものが、外部の第三者でも作れてしまうことを実証するためのハッカソンを企画していたのが、そもそものこのイベントの企画の始まりです。
 片山氏逮捕で宙には浮いてしまいましたが、「検察が片山氏有罪の証拠としているものが、外部の第三者でも作れてしまう」程度のものだったことには代わりはなく、かえって、一方で、この事件は決して、「やっぱり怪しい奴が犯人だった」「弁護団ざまぁ」のような問題ではなく、アナログな形で解決してしまったことによって、かえってデジタル時代においての客観的証拠とは何か、今後多発するであろうデジタル事件の捜査はどうあるべきかという問題が宙に浮いたものとなってしまったことは残念でした。
 一方で、片山氏が最も恐れていたのは、検察ではなく、他ならぬ弁護団の中にいたITのプロ野間さんの存在でもあったわけです。
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 もう一つの大きな問題は、弁護側が取調べの可視化を要求したことに対して、検察が、「取調べの可視化は被疑者側から要求されてなされるべきではない」という妙な論理で、取り調べを拒否してきたことです。1年ほどの勾留期間中、そのため、片山被告は実質的には3回程度しか取調べを受けることはありませんでした。
 もし、検察が取調べの可視化に応じて、まともな取り調べをやっていたら、もっと早く、片山氏を自白に追い込むことができていたかもしれないのに、取り調べを行わない状態で、中途半端なリークをマスコミに対して行ったために、かえって、片山氏が、検察が決定的証拠を握っていないことに気づいてしまって否認の自信を強めさせ、そのまま公判まで行ってしまったという事件だったことが、このPC遠隔操作事件について、すべての公判や記者会見の他、本人と何度も接見をするなど、ずっとウォッチをしてこられた神保哲生氏の指摘などで明らかになっていきます。
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 一方で、ITの専門家から見ても、決して高度の技量の持ち主ではなかった片山氏。二重人格ということではないにしても、「狡猾で用意周到な犯人」と「間が抜けた実像」の二面性があったことを生越昌己氏が指摘。

 そして、後半の本庄トリカブト事件。
 トリカブトで毒殺されていたはずの被害者が、そもそも毒殺ではなく溺死であることが鑑定で新たに明らかになったことから、再審請求となっているこの事件では「記憶の捏造」が最大のテーマです。つまり、被疑者で有罪判決を受けた八木茂被告は、たった1人の彼の愛人だった女性の証言だけで、死刑判決を受けていたわけですが、その証言そのものが、「思い出さないと全員死刑になる」と脅された愛人女性が、検察官の誘導によって巧妙に「存在しない記憶」を「徐々に取り戻していく」様は、まさにエリザベス・ロフタスの指摘した「植え付けられた虚偽の記憶」であることが高野隆弁護士から訥々と指摘されていきます。
 
 この事実には、コメンテーターの神保哲生氏と森達也氏も、ほぼ啞然。
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 森達也氏からは、ミルグラム実験スタンフォード大学での監獄実験の例も挙げて、普通の人が、ある特定の状況に置かれると、「期待される役割」を演じるようになってしまう例も挙げられて、「記憶」というものの曖昧さと、それを検察官が誘導することによって、無から有が作り上げられてしまう恐ろしさがじわじわ立ち上ってまいりました。
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 高野弁護士からは、さらに、和歌山カレー事件で使われたヒ素についても、「亜ヒ酸の成分は、林真須美被告宅にあったものと犯行に使われていた物自体は同じだったが、それは日本全国どのヒ素も販売元が同じであるため当たり前であって、決定的な証拠といえるものではなく、むしろ、混ざっている不純物が異なるものであった」ことが指摘されます。
 つまり、「有罪にできうる証拠」だけが取り上げられ、「無罪の証拠」は取り上げられない怖さです。
 本庄事件においても、被害者が溺死であるという鑑定がきちんと取り上げられないままに、あやふやな「捏造記憶」による証言で死刑が宣告され、ごく最近になって決定的な鑑定が出たことから、再審が請求されています。
 学生さんの参加が少なかったのは残念でしたが、濃ゆい内容のイベントでした。

(写真:岡部好)

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パネラーの話をまとめると

野間英樹氏の話
この事件が否認のままで続いていた場合、それをもって有罪の証拠とするにはかなり無理があるもの→片山氏が犯人である証拠はない。

生越昌己氏の話
「狡猾で用意周到な犯人」と「間が抜けた実像」→「真犯人」と「片山氏」

森達也氏の話
普通の人が、ある特定の状況に置かれると、「期待される役割」を演じるようになってしまう。→自作自演メールがバレたので「犯人」を演じるようになった。

高野弁護士の話
被害者が溺死であるという鑑定がきちんと取り上げられないままに、あやふやな「捏造記憶」による証言で死刑が宣告。→片山被告が雲取山のUSBを埋めたとする場所を間違えたにも関わらず、そのことをきちんと取り上げないまま、本人が自白しているということで結審

各パネラーの話を総合すると片山氏は犯人ではないことに。

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