あの、皆さん、請願て何かご存じですか?

  一夜明けても、Twitterのタイムラインが山本太郎ネタで埋め尽くされているので、ブログでちょっとコメント。

 まあなんか自民党の下村文科相とかが、田中正造を例に出して、「田中正造が(明治天皇に)直訴して大問題になったことに匹敵するようなこと。こういうことを安易に看過するようなことがあってはならない。非常に重いことだ」から、「議員辞職ものだ。政治利用そのものだ」とか騒いだそうで。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131101-00000519-san-soci

 いや、産経新聞はこういうのを大まじめに記事にしてくれるから大好きです。

 そもそも、戦前の大日本帝国憲法下の天皇と現憲法下の天皇自体、立ち位置が全然違うわけで、それを「匹敵する」というの自体、下村文科相の頭の中は、大日本帝国憲法と日本国憲法、果ては、民主主義というものが根本的にわかっていないのだと思いますが、もっと笑えるのが、教科書でも足尾鉱毒事件の英雄として称えられている田中正造が、引き合いに出されていること。
 
 いや、山本太郎をそこまで褒めなくてもいいと思うんですけど。これ、ひょっとして、非難してるつもりなんだとしたら、相当キテますね。

 さすが、偽学位で有名イオンド大学名誉博士の人を教育再生実行会議に入れ、しかも、こういう学位を金で買って恥とも思わないような人を「同志」と呼ばわるだけのことはあります。

 そもそも、この「事件」って、山本太郎が、園遊会で天皇陛下に手紙を渡したってだけのことでしょう。墨字で書いたりして、パフォーマンスとしては、率直に言って、時代錯誤的でイマイチだなあだと思いましたが、しょせん、お手紙を渡したというだけのことです。
 直訴というのは、(まあ、この言葉は昨日のブログでネタとして使っていますが)、日本の中世・近世に、一般民衆が、公式的な手続きを行わず、直接将軍や幕閣、天皇などに訴状を渡す行為であって、そもそも、訴状じゃないんですから、直訴ではありません

 また、これに請願法を持ち出して、とやかく叩いている阿呆がいるようですが、請願というのは、これまた、「国民が国政に対する要望を述べること」です。
 請願法において、天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない、というのは、単に、現憲法下では天皇は象徴としての意味しかないので、したがって、国政に関与する要望を出されても何もできないので、国政に関与する立法府なり行政府がこれを取り扱うという意味にしか過ぎません。

 しかし、山本太郎氏が天皇に出したのは、そもそも、請願かというと、違うでしょう。おそらく、天皇にあれをしてくれ、こうしてくれ、だれぞを罷免にしろとか、その手の国政に対する要望や政治的対応を求めたわけではないのですから、請願ですらありません。
 であれば、単なる私信にしか過ぎないわけで、請願法すら関係ないわけです。

(もっとも、たとえ請願だったとしても、請願は、憲法第16条で国民の権利として保障されており、何の罰則もありません)

 園遊会に招かれてもいないのに、突撃してSPをはじき飛ばして、天皇をむりやり拉致したとか、渡した手紙にカミソリとか炭疽菌を入れていたとかいうなら話は別ですが、要するに、天皇によって園遊会に正式に招待されている山本太郎が、天皇にお手紙を渡し、天皇はそれを受け取った、というだけの話です。

 こんなもんに処分をだとか議員辞職をだとか騒いでいる人たちは、いったい、どういう頭をしているのでしょうか。
 天皇の政治利用というなら、安倍晋三が「主権回復の日」を強引に実施し、渋る宮内庁を無理矢理ねじ伏せて、「天皇陛下万歳」三唱なんかやる方が、よほど政治利用でしょうし、オリンピック誘致に皇族を利用するのも、政治利用でしょう。
 
 つーか、天皇に招かれた客人が天皇に手紙を渡したぐらいで、議員辞職させられたりしたら、日本てどんな民主国家かよと、世界中で笑いものになるのがわからないのか。そんなことが、どれほど、日本と天皇陛下のイメージを傷つけるかすら、想像できないのでしょうね。

 そういうのを、おそらく一番、望まれないのが、当の今上天皇でいらっしゃることでしょう。

テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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お久しぶりです

お久しぶりです。ずっと以前に京都で塚本さんから紹介していただいたすぎ本です。
素敵な音楽活動を続けおられてなによりです。また、ブログもいいですね!
私は、京都で環境市民というNPOを続けています。
もしよければメールをしてください。

No title

誠に失礼とは思いますがひとつだけ。

「お手紙を渡す」ではなく、「手紙をお渡しする」が国語で習った日本語ですね。

問題の視点はどこにあると思いますか?

わたしは、手紙を渡した”行為”そのものではなく、
”内容”が問題だと捉えます。

実際に被災地を何度も訪れ、被災者の方々に接した人間に対して、
「もっと知ってほしい」などと伝えるのは、失礼以外なにものでもない。

家庭訪問に何度も来てもらってる担任に向かって、
「もっとウチの子のことを見てくれ!」って求めているようなものではないですか?
しかも自分は授業参観すらろくに行きもしないのに。




No title

今回の話を「請願かどうか」に矮小化しているのは疑問です。
請願だったら提出先間違いというだけですし、私信ならば別に問題ないかというわけでもないでしょう。

天皇陛下は別に山本氏個人を招いたわけではありません。
園遊会という公的な行事で、新参議院議員という公的な立場で招かれていた山本議員が、
それまでの先人達が守ってきた天皇陛下に対する礼(不文律)を破ってしまったことが問題なのです。
これは法で裁けるものではないので、請願法云々はそもそもズレている指摘だと思います。

山本議員はTPOが全く分かっていません。
このような「非常識」な人間に国会議員を務める資格があるとは思えないため、
議員辞職を求める声が上がっているのではないでしょうか。

ただし、明確なルールがない以上、山本氏を「処分」するのは難しいと思います。
山本氏が自分を客観視して辞めてもらうのが一番ですが、それができる人は初めからこんなことはしません。

No title

山本議員の行動に疑問を感じはしますが、これを「不敬罪」であるかのごとき騒ぐのが、重大な問題だと思います。園遊会で天皇に手紙を渡してはいけない、という法律もなければルールがあるわけでもありません。したがって、批判されるような筋合いではない。それを、非礼だの議員辞職だのと騒ぐのは、戦前のような「不敬罪」を念頭においているからで、それは、今日の社会にはそぐわない時代遅れで非民主的な態度です。天皇の政治利用だというなら、安倍内閣の主権回復の日に天皇を呼んだことのほうがよっぽど重罪というものでしょう。

以後、慎むように、程度でよいと思います。不敬罪などにはあたらない。
大日本帝国下の日本ではない。天皇陛下を神格化していた時代ではない。
民主主義の名の下に、天皇陛下は象徴としての存在。

No title

性格の悪さが滲み出ているような文

No title

>請願法において、天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない、というのは、単に、現憲法下では天皇は象徴としての意味しかないので、したがって、国政に関与する要望を出されても何もできないので、国政に関与する立法府なり行政府がこれを取り扱うという意味にしか過ぎません。

とありますが、請願法は憲法16条で定められた請願権の手続き規定であって、「憲法7条の天皇の国事行為に関しての請願の規定」が請願法3条になると思います。

No title

天皇を特別視する時代ではなくなってると思う。
園遊会そのものが大げさな国家の政治的パフォマンスでもある訳です。
その場で言葉での意思疎通が難しい場合の文書の手渡しは一種の情報交換の手段として有効なものと考えては如何か。
其れが政治性を帯びるか否かは天皇の対応次第でしょう。
傍目がどうこうと言うのは余計なお世話、と観る向きがあっても理不尽なことではない。

私は八木さんに全く同感です!

私は八木さんに全く同感です!
この大騒動には「一体、、戦前か!?」と非常に気持ち悪いモノを感じました。多分もともと山本氏のこと(主張?)を良く思わない人々が多数いたというのも炎上の一因とは思いますが、、、
昭和末期に日本中が自粛一色となり、はてはコマーシャルまでも音声を消したりするのを見た時にも「はああ、日本てこんな国だったのか?」とビックリしたものですが。
天皇は素晴らしい方と思いますが、かといって「絶対的な恐れ多い存在」として認識し、かつその価値観を他者に強制するというのは一種、原理主義宗教みたいなもののように思えます。日本人て無宗教かと思ってたら、、、  まるでイスラムを冒涜されたと言って怒るイスラム教国のようではないですか。
(ただ私は生まれて半世紀以上になりますが、周りにそういったタイプの人がいたためしはなく、では一体どの辺のレベルでこういうナショナルセンチメントになるのか?というのが不思議ではあります。)
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PANDORA

Author:PANDORA
ラテンアメリカと日本を拠点に活動する音楽家・作家 八木啓代のBlog
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