面白くなってきましたよ:指定弁護士のその論理、検察にそっくりそのままお返しいたしましょう
陸山会事件小沢公判で指定弁護士が、懲役三年の論告求刑。
指定弁護士は、検察審査会の起訴議決に基づいて公訴提起の手続きを行うので、公訴棄却はできないらしいが、無罪論告はできなくはないはず。しかし、そこは指定弁護士に任じられた以上、極悪非道な犯罪者であると気づいていても本人が無罪を主張していれば、それに沿った主張を弁護人としておこなう、というような職業的義務感からなのだろうか、今回、検察官役となった指定弁護士は、無罪論告はしませんでした。
で、この論告をどう解釈するべきかと思っていたら、郷原信郎弁護士がすみやかにメルマガでコメントを書いておられたので、チェック。
http://www.comp-c.co.jp/pdf/20120312.pdf
理路整然と問題点が語られているので、皆様、是非、ご一読を。
ここで、郷原弁護士が指摘しておられるのは、指定弁護士に対して、「『後に引けない立場』にある指定弁護士として、可能な限りの主張・立証を試みたものであり、与えられた立場で最大限の努力を行ったものと評価できる」と、いちおう、花を贈った上で、「今回の論告が、政治資金規正法違反の刑事事件における主張・立証として、通常行われる範囲を超え、従来からの刑事司法の常識を逸脱するものになってしまったことは否定できない」と。
では、その刑事司法の常識を逸脱する論理とは何かというと、簡単に言うと、政治資金規正法の一般的な解釈から逸脱しているということと、なによりも、この共謀認定理論は、まさに陸山会という単なる政治団体を、その存在そのものが犯罪と見なされる過激派テロ組織あるいは暴力団に見立てたものだということ。
具体的には、このような場合の共謀の立証の方法として、具体的謀議自体を全く特定せず、(ア)組織としての方針や意思、(イ)組織内における被告人の地位・立場、(ウ)被告人が、何らかの形で、犯罪の実行を認識していたことについての客観的証拠、の3つを立証することで、共謀を立証するという方法がとられてきた。
その共謀認定理論に基づいて、指定弁護士の論告では、(ア)小沢氏からの 4 億円の現金による資金提供を収支報告書に記載せず、虚偽の記載を行った石川氏らの動機・目的が、小沢氏から多額の資金提供 が行われた事実を秘匿することにあったこと (イ)小沢氏が石川氏らを指揮命令し、犯行を止めることができる立場であったこと (ウ)小沢氏には、4億円の資金提供の事実を隠蔽するために政治資金収支報告書に虚偽の記載を行うことについて確定的認識があった、ということを根拠に、具体的な謀議、報告、了承、指示等の事実が全く特定できなくても、小沢氏に共謀が認められるとしていると。
(ちなみに、この「確定的認識」というのも、単に『ああ、分かった』とか『ああ、そうか』と言ったという程度のことだったりするんですけどね)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111006/trl11100614010015-n3.htm
要するに、こんな論理で、小沢氏有罪判決が出てしまったら、ありとあらゆる団体や組織を弾圧するための恐ろしい前例を作ることになる。となると、これは、例の推認有罪よりはるかに危険としか言いようがないことになります。
その一方で、ここで、もうひとつ重大なことに気がつきました。
ある組織の末端の人間が犯罪を犯したという事実があり、それが上層部の意向に基づいていて、上司も知っていたのではないかと考えられるのであれば、それだけで、「具体的な共謀」の事実を特定し、立証することがまったくできなくても、共謀したことになるとすれば.....。
ここに、田代検事の虚偽報告書と、「検審に提出されなかった70通のメモ」の存在があります。さらに、これを上司がまったくなにも知らなかったわけがない。少なくとも、検審に資料を送るための決裁は受けているはず。
一方で、2010年2月1日に、吉田特捜副部長は「小沢はここで不起訴になっても、検察審査会で裁かれる可能性が高い。その議決は参議院選挙前に出るでしょう。そんなことになって良いのでしょうか」と、石川議員を恫喝している。
http://www.muneo.gr.jp/html/diary201004.html
そして、昨年12月16日の公判で「この件は特捜部と小沢の全面戦争だ。小沢をあげられなければ特捜の負けだ」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111216/trl11121612060003-n7.htm
とキャップが語ったと前田恒彦元検事が公判で証言しているという事実。
さあ、皆さん、面白くなってきましたよ。この論理、そっくりそのまま検察にお返しいたしましょう。
もし、万が一、この論理をもって、大善コートが小沢氏に有罪を宣告したならば、たとえ、具体的な共謀の事実を特定し、立証することができなかったとしても、自動的に、最低でも、吉田特捜副部長と佐久間特捜部長の偽計業務妨害と虚偽公文書作成および行使も、有罪が確定する模様です。
【追記】
それにしても、このメルマガで見る限りでは、郷原氏がもし指定弁護士だったら、どういう論理展開で論告されただろうか、興味ある。どう考えても、無茶な推論積み重ねるしかないだけに、脂汗流して苦渋する姿が見られたのだろうか。そこを突っ込みたいと思っていたら、ご本人からリプライをいただいたので、そちらも掲載。
するりと逃げられた感はないでもないが、郷原氏は、無罪であるべき被告に有罪論告はしないということ。それを聞いて、ちょっと安心したのは確か。
指定弁護士は、検察審査会の起訴議決に基づいて公訴提起の手続きを行うので、公訴棄却はできないらしいが、無罪論告はできなくはないはず。しかし、そこは指定弁護士に任じられた以上、極悪非道な犯罪者であると気づいていても本人が無罪を主張していれば、それに沿った主張を弁護人としておこなう、というような職業的義務感からなのだろうか、今回、検察官役となった指定弁護士は、無罪論告はしませんでした。
で、この論告をどう解釈するべきかと思っていたら、郷原信郎弁護士がすみやかにメルマガでコメントを書いておられたので、チェック。
http://www.comp-c.co.jp/pdf/20120312.pdf
理路整然と問題点が語られているので、皆様、是非、ご一読を。
ここで、郷原弁護士が指摘しておられるのは、指定弁護士に対して、「『後に引けない立場』にある指定弁護士として、可能な限りの主張・立証を試みたものであり、与えられた立場で最大限の努力を行ったものと評価できる」と、いちおう、花を贈った上で、「今回の論告が、政治資金規正法違反の刑事事件における主張・立証として、通常行われる範囲を超え、従来からの刑事司法の常識を逸脱するものになってしまったことは否定できない」と。
では、その刑事司法の常識を逸脱する論理とは何かというと、簡単に言うと、政治資金規正法の一般的な解釈から逸脱しているということと、なによりも、この共謀認定理論は、まさに陸山会という単なる政治団体を、その存在そのものが犯罪と見なされる過激派テロ組織あるいは暴力団に見立てたものだということ。
具体的には、このような場合の共謀の立証の方法として、具体的謀議自体を全く特定せず、(ア)組織としての方針や意思、(イ)組織内における被告人の地位・立場、(ウ)被告人が、何らかの形で、犯罪の実行を認識していたことについての客観的証拠、の3つを立証することで、共謀を立証するという方法がとられてきた。
その共謀認定理論に基づいて、指定弁護士の論告では、(ア)小沢氏からの 4 億円の現金による資金提供を収支報告書に記載せず、虚偽の記載を行った石川氏らの動機・目的が、小沢氏から多額の資金提供 が行われた事実を秘匿することにあったこと (イ)小沢氏が石川氏らを指揮命令し、犯行を止めることができる立場であったこと (ウ)小沢氏には、4億円の資金提供の事実を隠蔽するために政治資金収支報告書に虚偽の記載を行うことについて確定的認識があった、ということを根拠に、具体的な謀議、報告、了承、指示等の事実が全く特定できなくても、小沢氏に共謀が認められるとしていると。
(ちなみに、この「確定的認識」というのも、単に『ああ、分かった』とか『ああ、そうか』と言ったという程度のことだったりするんですけどね)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111006/trl11100614010015-n3.htm
要するに、こんな論理で、小沢氏有罪判決が出てしまったら、ありとあらゆる団体や組織を弾圧するための恐ろしい前例を作ることになる。となると、これは、例の推認有罪よりはるかに危険としか言いようがないことになります。
その一方で、ここで、もうひとつ重大なことに気がつきました。
ある組織の末端の人間が犯罪を犯したという事実があり、それが上層部の意向に基づいていて、上司も知っていたのではないかと考えられるのであれば、それだけで、「具体的な共謀」の事実を特定し、立証することがまったくできなくても、共謀したことになるとすれば.....。
ここに、田代検事の虚偽報告書と、「検審に提出されなかった70通のメモ」の存在があります。さらに、これを上司がまったくなにも知らなかったわけがない。少なくとも、検審に資料を送るための決裁は受けているはず。
一方で、2010年2月1日に、吉田特捜副部長は「小沢はここで不起訴になっても、検察審査会で裁かれる可能性が高い。その議決は参議院選挙前に出るでしょう。そんなことになって良いのでしょうか」と、石川議員を恫喝している。
http://www.muneo.gr.jp/html/diary201004.html
そして、昨年12月16日の公判で「この件は特捜部と小沢の全面戦争だ。小沢をあげられなければ特捜の負けだ」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111216/trl11121612060003-n7.htm
とキャップが語ったと前田恒彦元検事が公判で証言しているという事実。
さあ、皆さん、面白くなってきましたよ。この論理、そっくりそのまま検察にお返しいたしましょう。
もし、万が一、この論理をもって、大善コートが小沢氏に有罪を宣告したならば、たとえ、具体的な共謀の事実を特定し、立証することができなかったとしても、自動的に、最低でも、吉田特捜副部長と佐久間特捜部長の偽計業務妨害と虚偽公文書作成および行使も、有罪が確定する模様です。
【追記】
それにしても、このメルマガで見る限りでは、郷原氏がもし指定弁護士だったら、どういう論理展開で論告されただろうか、興味ある。どう考えても、無茶な推論積み重ねるしかないだけに、脂汗流して苦渋する姿が見られたのだろうか。そこを突っ込みたいと思っていたら、ご本人からリプライをいただいたので、そちらも掲載。
nobuyoyagi なるほどと納得するが、一方でメルマガを読む限りでは、郷原先生がもし指定弁護士でも、無罪論告はされないようだ。その場合、どういう論理展開で論告されるのだろうか、興味ある。
http://twitter.com/nobuyoyagi/status/179230009590956032nobuogohara 私は、与党有力政治家の政治資金事件で、過激派や暴力団の排除のための「共謀理論」を持ち出すような神経の図太さは持ち合わせません。もし、私が指定弁護士であれば、潔くタオルを投げます。RT @nobuyoyagi もし郷原先生が指定弁護士だったら、どういう論告をされたのか気になります
http://twitter.com/nobuogohara/status/179398514315501568nobuyoyagi ということは、無罪論告をされるということでしょうか? RT @nobuogohara: 私は、与党有力政治家の政治資金事件で、過激派や暴力団の排除のための「共謀理論」を持ち出すような神経の図太さは持ち合わせません。もし、私が指定弁護士であれば、潔くタオルを投げます。
http://twitter.com/nobuyoyagi/status/179398720658481153nobuogohara 検審議決に基づく起訴なので、公訴取り消しは無理だと思いますが、無罪論告を行うことができるのかどうか制度面から検討し、できない、或いはそれを行うことが適切ではない、ということであれば、辞任するしかないですね。私には刑事司法の常識を逸脱した論告はできません。@nobuyoyagi
http://twitter.com/nobuogohara/status/179400213319000065するりと逃げられた感はないでもないが、郷原氏は、無罪であるべき被告に有罪論告はしないということ。それを聞いて、ちょっと安心したのは確か。
テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済
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No title
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
No title
こんにちは。八木様をとても敬愛しております。特に今回の田代検事に対する告発状の意義は限りなく大きく検察ならびに検察審査会のの不正を暴く突破口となることを確信しております。
少し質問ですが、自分も何かお力になりたい思っていますが、田代検事だけではなくその上司である佐久間、吉田両氏を共同謀議のような罪で告発などはできるものなのでしょうか。また、告発の手続きなどはかなり煩雑なものでしょうか?よろしくお願いします。
少し質問ですが、自分も何かお力になりたい思っていますが、田代検事だけではなくその上司である佐久間、吉田両氏を共同謀議のような罪で告発などはできるものなのでしょうか。また、告発の手続きなどはかなり煩雑なものでしょうか?よろしくお願いします。
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>>田代検事だけではなくその上司である佐久間、吉田両氏を共同謀議のような罪で告発などはできるものなのでしょうか。また、告発の手続きなどはかなり煩雑なものでしょうか?よろしくお願いします。
刑事告発を行うには、検察が受理するだけの法律的にきちんとした告発状を作る必要があります。ですから、それだけの法律知識が必要になります。詳しくは、「健全な法治国家のために声を上げる市民の会」のサイトにある告発状をご参照ください。http://shiminnokai.net
会の会員になることで、告発状に参加することもできます。
刑事告発を行うには、検察が受理するだけの法律的にきちんとした告発状を作る必要があります。ですから、それだけの法律知識が必要になります。詳しくは、「健全な法治国家のために声を上げる市民の会」のサイトにある告発状をご参照ください。http://shiminnokai.net
会の会員になることで、告発状に参加することもできます。
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