トークライブ4「郷原信郎×八木啓代」検察に検察が裁けるのか?

ただ、ひとつ面白い現象もありました。メキシコでは検事総長は大統領が任命する。だから、メキシコ検察が大統領に刃を向けることは、ほとんどあり得ないわけです。だからこそ、知識人の間で、検察を大統領府から独立させるべきという議論があった。
ところが、この日本のケースがメキシコで注目されると、「完全に独立した権威となって、大統領であっても訴追できる検察というのは、ひとたび暴走すると、ある意味、もっとも危険なのではないか」という問いを投げかけることになってしまった。

郷原弁護士うなづいて、お答えに。
「それに関しては、戦前からの歴史があります。日本の民主主義が未熟だった大正時代から昭和初期に、検察が政治に対して大きな力を持ち、帝人事件を引き起こし、民主主義や政党政治を崩壊させてしまった。それは(当時の民主主義や政党政治が)その程度のものだったということでもあり、そこから、まだ本当の意味で、日本の民主主義や政党政治が自立していないということだということです。そういった中で、検察の正義を完結させてしまうと、民主主義が自立しようとしているときにこういう問題が起きる。権力がどういう形で誰に行使されればよいのかということは、とても難しい問題で、正解はない。大統領が検察を支配下におさめるというのも歪んでいるし、検察が正義で、完結して独立した存在になるというのも歪み。そこにどこかバランスの取れた姿を探していく必要があります」

八木「いま一番問題になっているのは、検察に大きなトラブルを起こしたときにどこが捜査するかという問題ですよね.....たとえば、明日から始まる、大坪大阪地検元特捜部長・佐賀元副部長の公判みたいな...」

郷原「本来なら、検察審査会の起訴強制の制度というのは、そのためにあるんですよ。検察であれば絶対に起訴できない事件........検察と仲の良い警察の事件.....絶対ではないけれど、非常に起訴しにくい事件........検察自身の事件を検察が中立で公正にできるとは誰も思わない。だから、第三者がやるべきでそういったものを起訴するためのものが、あの制度なんです」

改めて思います。そうだったのか。そうなんですよね。

郷原「だからFD事件が明るみになったときに、最高検が反射的に前田検事を逮捕したこと自体が間違っているんです。あれが組織的な事件であるという疑いも持たなくてはいけなかった。何らかの形で第三者性を持った捜査をしなくてはいけなかったんです。それなのに、起訴はすべて検察の権限だということで、検察が動いて、自分で取り込んでしまった。それが、大坪大阪地検元特捜部長・佐賀元副部長を個人的に、あの事件の犯罪者として摘発することに追い込まれてしまった原因です」

なるほど。となると、もうお一方、ご意見を伺いたい方が、客席にいらっしゃるじゃありませんか。おいでですか? 元最高検察庁アドバイザーで、問題の前田恒彦元検事の供述調書を全部お読みになった、山下幸夫先生? (うわ、濃ゆ)
あの事件は、そもそも、前田元検事一人に個人的責任をとらせて終わりにするはずだったのが、世論が盛り上がったために、その上の上司までひっくるめて責任を取らせようとしたという構図なんでしょうか?

「まあ、もちろん、前田さんを逮捕したのは、彼がマスコミと接触して、本当のことを喋ったらまずいということでしょうね
......さすが山下弁護士、にこやかに登場して、いきなりカマして下さいます。

山下「大坪・佐賀まで逮捕したのは、『大阪地検特捜部が独走した問題』として、高検や最高検は関係ないという構図にしたかったからでしょうね。また、大阪地検特捜部として、改竄事件を起こした前田検事を庇って、上に報告しなかったということです。それが犯人隠避であり、大阪地検特捜部という独特のところが独走しただけで、他の地検は関係ないという構図ですね」

郷原「最高検の報告書は、さらにそれを大坪個人ストーリーとして塗り固めていますよね。彼が、後にも先にもあり得ないような、部下の意見も聞かない無茶苦茶な特捜部長でだったと。明日の公判も、そういうストーリーで立証しようとするでしょうね」

山下「そうですね。そういうふうに特異性を強調しておかないと、組織全般の問題ということになってしまいますからね

でも、当の大坪氏は、全面否認ですよね。それどころか処分取り消しの裁判まで起こしている。

郷原「ええ、明日、私は、公判に行ってきますから」

あの、なんだか、郷原先生、すごくうれしそうなんですが。遠足に行く子供みたい。

郷原「弁護士になってはじめて、裁判所に足を踏み入れるんです (^_^)」(会場大爆)

え? はじめて?!
あっ、そうか、企業法務専門だからですね。

郷原「弁護士になってから裁判所に足を踏み入れていないんです(笑)。傍聴もはじめて....(と、郷原先生らしからぬ浮き浮きした感じで)明日は朝一番の飛行機で大阪に行って傍聴して、午後は大阪ローカルの番組に出るんです。(ここで、元に戻って)でもこれからも折に触れて、この裁判は傍聴しようと...私は、あの事件は犯人隠避はとても無理、無理筋だと思っています」

(深く何度も頷く山下弁護士)

つまり、犯人隠避とは、犯罪者を匿ったり逃がしたりする犯罪のこと。それによって、刑事事件の犯罪者を捕まえることを妨害すること。つまり積極的に逃走資金を与えたり、隠れ家を提供するという作為が必要。けれど、今回の大坪氏や佐賀氏がやったことは、もし仮に前田がFDを改竄したことを知っていたとして(ここにも、争点はありますが)、それを上に過失と報告したというのは単に、内部の手続き上の問題であって、前田という犯人を作為的に逃がしたわけではない、不作為に過ぎない。

その不作為が犯人隠避になり得るのは、唯一、逮捕義務がある警察官が、指名手配犯であるのを知っていながら逃がして逮捕しなかったような場合。しかし、検察官には逮捕義務はない。そこは一般の人と同じで、検察官に逮捕義務が生じるのは、その事件を検察として立件して逮捕状を取った場合。そうでない限り、不作為による犯人隠避は成立しない。

つまり、大坪氏なり佐賀氏のやった虚偽報告は、内部での処分の対象になるかもしれないが、犯人隠避罪という犯罪にはなりません

と郷原弁護士、きっぱり一刀両断。

郷原「常識を持った法律家なら、八割方そう考えますよね」
山下「(ためらいもなく)そうですね」
八木「でも、常識を超えてることがいっぱい起こってませんか?」(会場大爆)
郷原「だから、それは山下弁護士のおっしゃるように、検察全体の問題にせず、大阪地検特捜部だけの問題にしようという意図があったと思うけれど、それにしても、大坪・佐賀両氏を逮捕したかったといえば、そうではなくて、追い込まれたんだと思います」
八木「世論に追い込まれたということですか?」
郷原「最初は前田一人にかぶせるつもりだったのが、國井検事の話やら時限爆弾の話やら次々に出てきて、上司が知っていたのかということが世間の最大の関心になってしまった。おさまりがつかなくなってしまったんです。しかもやり方が悪かったのは、取り調べをやるなら、関西のホテルかどこかでやればいいものを、わざわざ東京の最高検まで呼び出して、新幹線のホームで晒し者にした......結局、これは、前田検事一人の問題で矮小化しようとしたのがうまくいかなくて、特捜部長・副部長まで捕まえなくてはならなくなってしまったということ。それが『検察の在り方検討会議』まで立ち上げなくてはならなくなった、その最大の原因」

と、いうことで、ここで、個人の責任にすべて帰せられてしまった元暴言検事の市川寛さんも登場です。
なに、この豪華メンバー

(続く)

テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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3月30日(木) 六本木・Nochero
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