5/23「検察、世論、冤罪」シンポジウム後半・サスペンスからホラーに

 そして、シンポジウム後半です。
 といっても、前半が熱くなりすぎたため、残り時間わずか(のはず)です。(笑)

 その後半しょっぱな、司会進行の岩上安身さんから、いきなり郷原弁護士に強烈な突っ込みが入ります。検事、それも特捜経験者である郷原弁護士は、市川さんの話をどう考えるのか。特捜時代に不条理な圧力を受けたことがあるのか。

 市川氏の発言がああいうものであった以上、この手の質問が浴びせられることは想定外ではなかったのでしょう。微笑を浮かべてマイクを取った郷原弁護士は、なにげに怖い話を続けます。

 自分もまた最初は半端者だった。若輩の頃は組織や上司に表だって反抗はできなかった。
 特捜時代、ある無理筋の背任事件で被疑者が逃亡した際、特捜は、家族・親戚・知人を虐め抜いて、被疑者の居所を知ろうとした。自分は、その中で、ターゲットにされた被疑者の親戚の尋問を命じられたが、高圧的な尋問をするふりだけをして、真顔で上司に出鱈目の報告をした。それがせめてもの抵抗だった。
(意外にパンクスな郷原さん。よくそんなこと咄嗟に考えつきますね)
IMG_6216.jpg
 しかし、特捜での捜査の原体験は「人間のやることじゃない。この世界にはついていけない」というものだったそうです。それが、郷原さんの検察批判の根底にある理由なのでしょうね。
 そして、そういったことを理由に辞表を出し、慰留されたあと、地方での独自捜査をやろうと試みたお話。
 けれど、組織の空気が独特であるということを、郷原さんは語ります。

 ここで岩上さんが市川さんに再質問。問題の暴言が「ふざけるな、この野郎、ぶっ殺すぞ」というものであったことが明らかに。また、この暴言が後に問題になった際、同僚や後輩たちから、「運が悪かった。そんなの誰でも言ってますよね」とフォロー(?)されたとか。

 組織の内部では世間の非常識が常識になってしまうという点で、特捜の内部と新聞社の内部は似ているんじゃないかと思う、とその前に発言されていた山口氏、ここであっさり前言撤回。
「ごめん....(メディアは)そこまでひどくない」

 目先の手柄のために本質を見失う、ということはあるかもしれないが、新聞社は報道の自由と言ったような「建前」を一応は重視する。だから、「そこまではない」
 ただ司法担当記者がこのような実態をまったく知らなかったわけはなく、それをなぜ字にできなかったのか、それがメディアの問題、と。

 以前、金沢検事の問題(1993年、静岡地検の金沢仁検事が、ゼネコン汚職事件取り調べの際に参考人に暴行を加え、全治3週間のけがを負わせて特別公務員暴行陵虐罪で有罪判決を受けた事件)があったときも、特殊な検事の特殊な問題として報道してしまった。でも、そんな特殊な検事が、突然生まれるわけがないのに、背景に迫る想像力も努力もなかった。
 郷原さんがこういうことを言えるのは、郷原さんが普通の会社にいた経歴があって、世間を知っているから。市川さんはそれがなかったので、染まってしまったのではないか。
 そして、大鶴基成・最高検検事の書いた「闇の不正と戦う」という文章の「正義のためならなにをやってもいい」と言わんばかりの独善性に関する違和感と「こんな文章を書くような人が、なぜ組織の中で偉くなれるのか、その理由がわかった」と。
 
 そして山下弁護士。
 彼は、このゼネコン汚職特別公務員暴行陵虐罪の金沢検事の弁護人であったと(毎度ながら、この方は、じつは凄いことをあっさりおっしゃいます)。だから事件を詳しく知っているが、やはり個人の問題ではなく、組織の体質の問題だったと。検事を集めて「いい調書」を取ることを競わせていた。それで上司に評価されたことが原因で、それがプレッシャーになり、いい調書を取らなくてはならないと彼が追い詰められていくことになった、と。
(まさに「真面目な優等生」ほど追い込まれていくのですね)
 その裏には、「東京地検特捜部に入ることへの憧れ」もあった。いずれにしても組織の体質の問題だったが、報道は一個人の人格問題とするものに終始し、検察も同様に個人の事件として終わらせたと山下弁護士は指摘。
 
 前田検事の証拠改竄事件とまったく同じプロセスがそこに見えると、岩上さん突っ込み。

 ただし、と山下弁護士。
「前田さんは取引してると思うんですよ」
 この事件に関しては、特捜部長と副部長を有罪にするための証言を彼だけが行えるという点がポイントで、今回、検察は明らかに取引をして、その証言を前田にさせるために、前田の罪を軽くしようと目論んだと。

 あのー、これ。にこにこしながら、さらっと流すようなものではない、ものすごい爆弾発言なんですが。
 だからこその特別公務員職権濫用罪ではなくて、証拠隠滅罪なのだと、山下さんはおっしゃっているわけなのですよ。そして、検察は検察審査会もまたそれを追認させたのだと。
 最高検アドバイザーとして、前田元検事の調書を読むことができた山下さん、「不自然きわまりない。完全に取引をして(事件を)小さく終わらせ、上司の佐賀さんと大坪さんを有罪にしようとする調書だった」と。
 ....そこまでおっしゃいますか。微笑みながら。

「なぜ、そこまでして大坪・佐賀の両名を有罪に? その動機は?」と岩上さん

山下さん「大阪高検の中尾検事長(当時)を護るためだと思います。本当は今回の(村木さんの)事件の主導的役割を果たしたはずですが、大阪地検特捜部の暴走の問題に矮小化した構図を作るため、こういうストーリーを立てた、と私は思います」

 これには八木も啞然です。これはとんでもない....いや、だとしたら謎が解けます。逮捕された大坪・佐賀両氏が「これは最高検のストーリーでっち上げだ」と徹底抗戦を主張している、その理由。いや、まったく想像できなかったわけじゃないけれど、それにしても.......「正義」の神話に護られたどんだけ深い闇?
 いや、あの、そんじょそこらのサスペンス小説より濃い展開です。

「.....ひどい話ですよね....ちょっと一瞬理解が....」と、さすがの岩上さんも絶句。

 で、となると、その筋書きを粛々と進めるつもりであった彼らにとっては、あたくしたちの出した特別公務員職権濫用罪の告発状は、最高検にとっては、想像以上に「困惑させる行為」だったのではないか?

 といいつつ、ここで9時1分前。
 会場の制限時間が来てしまいますが、ここでラテン女に順番が回ってきてしまったのが、明治大学の運の尽きです。
「いいじゃないですか、ちょっとぐらい。使用料取られるわけじゃなし」
(会場拍手喝采)

 江下教授が引きつった笑顔で、始末書を書く覚悟を固められたようなのを受けて、延長突入。

 で、あたくしたちの告発状を最高検はどう見たか、について。
 相当迷惑だったのは確かなようですね。たかが昨日今日できた市民団体の告発状一通に対して、ずいぶん気を遣ってくださったようですので。メディアを押さえたり、ブログやツイッターをチェックしたり、わけわかんない人をうろうろさせたり、不起訴通知を出すタイミングを一生懸命見計らったり。
 このへんのことはこちらにも書いていますが、まあ、男を動揺させるのはあたくしの得意技ですから。(嘘です)

 それはいいとして、あたくしの質問。「市川さんは暴言を公判で認められたわけですが、それを公に認めた人はいなかったんじゃないですか」

 応えて市川氏。
 辞めたあとに新聞記者から「こんなものを認める検事は見たことがない」と言われたそうです。
 
 そのとおり。有罪になった前田元検事や金沢検事を除くと、そういったことを認めた検事はいないのです。しかも、前田検事も金沢検事も、起こったことを個人の問題に矮小化され、さらにその矮小化を自ずから受け入れてしまったがゆえに、それ以上のことを語ることができた人はいままで誰もいなかった。

 ここでマイクを取ったのが郷原さん。
「取調室の中のことは、外にはわからないのです」
 可視化されていない以上、確かに、密室の中には、検事・被疑者または参考人・事務官しかいない。
だから、(法廷で)証人に呼ばれても『記憶にありません』と言ってしまえばそれまでです。それは嘘ではない。偽証ではないんですよ。でも...」

 なにげに淡々と怖い話が続きます。

「頑丈な検察庁の建物の、普通なら絶対に声は漏れないようなところで、先ほどその文章を書いた人の部屋の前も含めて、ものすごい音が聞こえるわけですよ.... 動物園かと思うような.....それはみんな胸に手を当ててみればわかってるはずです

 .....ホラーです。

「ただわかっているけれど決して表に出ない。表に出てきてしまったら、変わった奴、特別な奴とレッテルを貼って犯罪者ということにしてしまう。そして、過去、そういうことにされた検事はみんな口をつぐんできた

だからこそ、その口を開き、組織の体質の問題や、暴言事件が起こるまでの経過を明るみに語った市川さんの話は「たいへんな、ものすごく意味のあること」と郷原さん。
検察の在り方検討会議に彼をヒアリングに呼べなかったのは返す返す残念だったと。(会場拍手)

 ここで、締めにもっていこうとする岩上さんを制して、マイクを奪う山口さん。

「あのねえ、次にくるのは、郷原さんや市川さんのスキャンダル流してきますよ。そういうの書く週刊誌もありますから」
(そういえば、郷原さんも一度やられたことがありましたね)
 これから市川さんが語り続けたら、でっちあげてでもスキャンダルを仕掛けてくるだろうと。デマでも流れる可能性があるので、気をつけてください、と。

 ここで思わず、八木の不規則発言「みなさんで守ってあげてくださいね」

 ここでやっと主導権を奪回した岩上さんの締めの質問。
「事件をでっち上げ、市川さんに事実に反する供述調書を取ることを強要した上司である次席検事の動機は何だったと思いますか」

「憶測ですが...」と市川氏。「一旗揚げて、東京地検特捜部に入りたかったのではないかと思います」
 事件を末端から議員につなげるための、いわゆる大阪の村木さん事件と同じく、議員案件を狙って独自捜査を行うことが出世につながるという検察の内情がさらりと語られます。
 ここで、「一点だけ」と、ふたたびマイクを奪う郷原さん。うわあ、なにが出てくるんだ。

「その次席検事こそは、かつて東京地検で薬害エイズ事件で安倍英氏の取り調べに加わっていて、そのときの上司が(佐賀農協事件)当時の東京地検特捜部の副部長で、さらにその人物は、2年前の小沢事件のときに東京地検の幹部でもあった人です」
 だから、これは虐待の連鎖だったのではないか、と。その次席検事もまた、東京でこのような取り調べをさせられてくるうちに、独自捜査というものを大きく誤解して、それを佐賀でやってしまったのではないか、と。

 .....つながりました。ばらばらに見えていたそのピースが。が、そこから浮かんでくるのは、推理小説の結末に至るような爽快感でもカタルシスなんでもない、暗く淀んだ何かです。とてもとても底の深い、淀んだ何か。つまりそれが本当の......

 ということで、いや、すごいイベントだったのです。
 3時間近いのですが、映像でごらんになることを是非おすすめします。下手な映画より役者が揃っていて、しかも、サスペンスありホラーあり、相当にスリリングですから。

【ニコニコ生放送】(無料登録が必要です)
http://live.nicovideo.jp/watch/lv50486600

【Ustream】(登録不要)
前半:http://www.ustream.tv/recorded/14908978
後半:http://www.ustream.tv/recorded/14910014

【関連記事】
「ヤクザと外国人に人権はないと教えられた」 元検事が暴露した驚くべき「新人教育」の実態
http://news.nicovideo.jp/watch/nw66300

「検事失格!外国人とヤクザに人権は無いと教えられた元暴言検事が上げた叫び」
http://news.livedoor.com/article/detail/5595149/

「シンポジウム、その真相を語りましょう」
http://nobuyoyagi.blog16.fc2.com/blog-entry-571.html

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