エクアドル「クーデター未遂」の裏

さて、これから「あれはクーデターというほどのものではなかった」という報道が、エクアドル民放(富裕層の所有)中心に、一生懸命なされるものと思います。米国と日本のメディアもそれに追随するでしょう。というか、既に一部で出ています。

コレア大統領が、給与削減に抗議した警官のデモを説得しているときに、挑発的な言動を取ったため、警官が怒って催涙弾を撃った.....それで、病院に運ばれたあと、その病院を警官隊が包囲している状況だったのを、軟禁と報道されたにすぎない.....という話に、ですね。

10年前ならそういう報道操作はそれなりに有効でしたが、残念ながら、いまはYouTubeとUstreamの時代です。すべては「見られる人には見られる状態」だったのです。
たとえエクアドル国内でちゃんと報道していたのが、エクアドルTVだけだったとしても、ちゃんと根性のあるジャーナリストはそこにいた。

ええと、明らかに状況は違いました。
警官と軍の一部が、空港と議会を占拠したのです。

そして、最初は、官邸窓から平和的に警察隊に対して語りかけていた大統領も、状況が普通ではなく、クーデターの意図があると認識したからこそ、(「大統領を殺せ」という声が耳に入ったからだという)
「大統領を殺したければ、ここにいる、さあ殺してみろ。民衆はこちらの側だ!」と病院の窓から絶叫する事態になったわけです。

(※この部分、あとで事実関係がわかりましたので、訂正させて頂きます。「大統領はここにいる」というスピーチは、病院からではなく、官邸からです)

その後、大統領が、説得のために街路に降りたところを催涙弾で撃たれ、病院で拉致監禁状態になった。

このとき、大統領は明らかに危険を感じ、「ここから大統領として出るか、死体として出るか。私は拉致されている。ここから出られない」と、携帯で伝える事態になった。
そのような状況下で、民衆は投石で警官隊に応酬したのです。

同時に事態を報道していたAFPのカメラマン2名が警官に暴行を受け、撮影した写真の消去を強要されたほか、やはり逮捕されたジャーナリストもいた模様。

そして、それからしばらくたってから、ベネズエラのチャベス大統領から、コレア大統領は死んでも辞任しないであろうことを告げられ、そのうえで「良識に期待する」と、態度を決めることを求められた軍の最高司令官が「軍は憲法を遵守する」と明言。大統領奪回のために軍が動いて、銃撃戦の末に大統領は救出されたのですが、この、コレア大統領が「軟禁」されてから軍が実際に救出に動くまでのタイムラグ、つまり、13時間という時間の間に、「軍がどっちにつくか」という政治抗争がなされ、そのうえで、最終的に、軍上層部が大統領側につくことを決定し、クーデターが回避されたというのが、真相だと思います。

そういう意味で、コレア大統領に生命の危機があったのは間違いないでしょう。「軟禁」というのも微妙です。軍が突入して、30分以上の銃撃戦をやらないと奪回できなかったのですから、事実上の「監禁」です。

ベネズエラのチャベスが軍の最高指令に対してかけた「良識に期待する」という電話というのは、アドバイスではなく、通告です。
つまり、大統領が死んでも辞任しない覚悟で、さらに大勢の市民が大統領側に立っている以上、軍がクーデター側に立つとなれば、大統領を殺害する側に加わらざるをえないことを意味すると同時に、市民に銃を向けて殺傷する事態になる可能性が極めて高くなる、あえて、そこまでの覚悟でやるつもりかい? という意味ですね。

一方、この間、この一部始終をUstreamで流していたTVエクアドルに、ルシオ・グティエレス前大統領の顧問弁護士パブロ・ゲレーロ氏が40人ほどで押しかけ、放送を妨害しようとしたとのこと。この襲撃で、エクアドル放送のガラスの正面玄関は破壊されたそうで。

一方、当のルシオ・グティエレス元大統領は、この間、危機の打開策として、議会を解散し早期の大統領選挙をぬけぬけと提案している。

こういったことから、このクーデター計画の黒幕が、前大統領ルシオ・グティエレスであると、コレア大統領は非難しています。

いち早くキューバのフィデル・カストロ元首相が、このクーデターは未遂に終わる、と断定したのは、単に話がショボいからではなく、コレア大統領の支持層の厚さなど種々の状況から、エクアドル国軍上層部が今回はクーデター側にはつかないだろうという確証を得ていたのでしょうね。

いや、実際、YouTubeとUstreamで、実情バレバレでしたから、これでコレア大統領が監禁されたままで、「コレア大統領に対して高まっていた民衆の不満を代弁する形で、最終的に軍が出動。大統領は亡命して、前大統領が出てきて事態を収拾する.....」という筋書きは、もろく崩壊しましたわな。

テーマ : 時事ニュース
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クーデターに屈しなかったエクアドルのコレア大統領 大衆へ呼びかける¡Hasta la Victoria Siempre!

エクアドルというとスペイン語で赤道Ecuadorを意味するから、ラテンアメリカの赤道直下の国、てことしか僕は知らないのだが、30日から始まっ...

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情報操作

早速日本では、

「エクアドルで職務手当の削減に講義する警官らのデモ激化 説得の大統領に催涙ガス弾」

とニュースで出ています。
軍や警察による議会と空港の占拠の話は全く出ていません。

でも、リアルタイムで実情バレバレだと、情報を捏造しようにも出来ませんね。
良い時代になったものです。

それにしましても、日本は本当に情報統制されて、海外の情報が入らない様にされているみたいですね。
先月私はカンボジアにいたのですが、ニュージーランドの地震やバングラの洪水の事も日本では全く話題に上らなかったそうですし。
カンボジアではニュースで頻繁に取り上げられていましたが、その頃日本ではお塩の話で持ちきりだったとか(涙)・・・。

ずっと学校で英語を習い、更には大学を出ても英語すら出来ないとか、海外の情報がまともに入らないとか、テレビでは馬鹿な番組しかやっていないとか、これって国民が自覚無しに軟禁されている様なものではないかと思っております。

No title

この間ここで「コレア」記事にコメントしたばかりで、まさか昨日”クーデター未遂”の話をここでまた知ることになるとは!・・・
ともかく、1973年のチリ・アジェンデ政権クーデターの頃とは世界政治の状況も違うので、早くエクアドルが収まって中南米の”中道左派”連合の結束がより強化されていくのを期待します。カストロが元気な内に。

それにしても、日本の政治状況の貧困は”目を覆う”ばかりの、ひどさです。
昨日の「国会論戦」(衆院・予算委での尖閣事件)をたまたま見たら、アフォ菅の逃げ(答弁不能?)、仙石狸の実質政権(首相の代わり?答弁)ブリには、≪政権交代は何であったのか≫とつくづく反吐の出る思いで、これが元左派???と嘲笑されるこの国の政治屋の姿です。
29日夜、入獄前の「鈴木宗男」氏激励集会で司会やった小沢遼子(大学時代の彼女をちょっと知ってる)氏が、外務大臣は「前原以外なら、誰でも良いと思ってたけど」と軽蔑するしか評価できない、ダラ菅政権の主要面々です。
それに比し、少しの希望は名古屋の「河村改革」の議会リコール運動に応援参加してくれた「菅原文太」氏や前矢祭改革町長の根本氏の熱い”激励”でした。僕よりズッと高齢なのに、「リコール成功したら、また名古屋へ応援に行くよ」と両氏の来名に直談判して信頼ある僕のネット仲間の友人に、快く応答してくれたそうです。
(※明日、35年前以来の友人:アルゼンチン人のエクトール親子が来日してて久しぶりに再会しますが、彼はノンポリだから、政治の話はしないでしょう。)

No title

エクアドル在住邦人が2ちゃんねるに書き込んだ生々しい現地情勢です。

地球の裏側 ◆/lYVcP7um2 ただいまエクアドル全土で警察官のストライキが発生。グアヤキルは都市機能が麻痺寸前。
http://2nnlove.blog114.fc2.com/blog-entry-2886.html

「地球の裏側」氏は「大統領がバカ」と行ってますが…。

No title

前に書いているように、エクアドルのメディアの大半は富裕層所有で反大統領です。
大きな改革などをやり遂げようとすれば、既得権益を崩される側からのバッシングはやむをえないでしょう、
だから、そういうマスコミ報道を無条件に信じる人は、そう思っても別に不思議ではありません。

いずれにしても、政治家には毀誉褒貶がつきものです。

はじめまして、良いブログですね!

日本のメディアがあまり報道しない中、ここまで書かれる方がいるとは思いませんでした。
この記事ではあのクーデター未遂の本質が書かれていると思い参考になったので、トラックバックで記事を書かさせてもらいました。

こんにちは

遅くなりましたが、勝手にリンクさせていただいています。
よろしくお願い致します。
ユーチューブを見たかったのですが削除されていました。
何の曲か気になります。
ブログ上で教えていただければ、うれしいです。

No title

10/4付エントリの画像張り替えましたが、また、削除されるかもしれませんので、お早めにご覧下さい
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