証拠日付改竄事件について、ボソボソと

さて、大阪地裁での村木厚子さんの無罪判決。
当然視されていた結果とはいえ、その後、検察がどう動くかが注目されていました。
常識で判断すれば、明らかな冤罪とわかった以上、控訴断念は当然と思われるのですが、それは素人判断で、それはそう簡単なことではなかったと。

この件で、郷原信郎弁護士は、次のようにツイートしています。

村木事件無罪判決について検察の控訴断念の方針が確定したかのように報じられているがhttp://bit.ly/bEDseK 16日の記者レクhttp://bit.ly/cX0zeU でも述べたように、検察にとって、村木事件についての控訴断念は、そう簡単なことではない(2010/09/18 10:08:30)

控訴断念した場合の難題は、村木氏に公的証明書の発行を依頼したとされた倉沢氏の事件で既に無罪判決が出て検察が控訴していることの関係。村木事件で控訴を断念し上村氏の単独犯行とした無罪判決を受け入れるのであれば、倉沢事件で矛盾した主張はできないので控訴取消は必至。(2010/09/18 10:08:33)

しかし、検察控訴取消というのは過去に例がなく、検察にとって大変な失態になる。もうひとつは上村氏公判で被告・弁護側が単独犯で「公文書偽造」と主張しているのに、検察が虚偽公文書作成の公訴事実を維持していること。これも、村木事件控訴断念なら、訴因変更せざるを得ない。(2010/09/18 10:08:39)

法定刑は変わらないが、一般的に「偽造」は「虚偽文書作成」より重い犯罪だ。公判の最終段階で、偽造への訴因変更が許されるのか。控訴断念の影響はあまりに大きく検察として容易に判断できないはずだ。(以下略)(2010/09/18 10:09:15)

一方でむりやり控訴しても有罪判決が得られる可能性がほぼありえないとなると、検察の傷は深くなるばかり。だから、どう軟着陸するか........が注目されていたところの、前田恒彦検事の「書類日付改竄事件」というわけ。

それが、21日火曜日で、しかも朝日のスクープという形を取るところがまたよくできています。
この事件は、今年の1月に起こっていて、検察内部ではわかっていた。
朝日新聞もはっきり、夏に問題の資料の存在を知っていたと書いている。

夏と言えば、常識の範疇では7月から8月中旬、100歩譲って8月末でしょう。

フロッピーが捜査資料であるとして、それを持ち出して読むなら、ロックをかけておくのが常識なので、ロックをあえてかけずに(あるいはわざわざはずして)書類で「遊ぶ」なんてのがまず言い訳になっていませんが、そのやり方が、またあまりに初歩的というか稚拙。
書類日付書き換えソフトでの書き換えの履歴のチェックなんて、プロに頼めば、5分でできます。
いや、プロに頼まなくても、少し詳しい人なら「一太郎」の編集履歴見ただけでもわかるでしょう。

もちろん、もっと高度な、つまりちょっと見ただけではわからない書き換え方法というのもありますが、それだってクラスタまで調べればわかるし、そもそもこれはそんな高度な話ではなくて、ほんとに初歩の初歩みたいな、言ってみればほとんど「頭隠して尻隠さず」レベルの改竄です。

だから、朝日新聞が夏に資料を入手していたのだとしたら、彼らは何か別の理由で、このスクープを、わざわざ村木さんの判決が出て、さらに民主党の総裁選が終わり、控訴断念の9月21日まで伏せていた、としか、考えられないわけですね。

あーらら。スクープってのは鮮度が命でしょうし、他紙に抜かれる可能性は感じなかったのでしょうか。むろん、その心配はなかったのでしょう。
つまり、それ自体が、検察のリークだったとしたら。

というわけで、検察はスケープゴートを差し出して、すべての問題を個人の責任として押しつける。それによって控訴断念に見事に大義名分ができたということです。

ほー、そう来たか.....という感じですね。

ついでにこの件に関しては、明治大学情報コミュニケーション学部の江下雅之准教授が、学閥争いの可能性もありうることを指摘しています。

つまり東大閥が主流の検察庁の中で、「エースと見なされて出世頭だった」前田検事は広島大出身者。そして、この件で責任を問われて引責辞任に追い込まれる可能性のある大林宏検事総長は一橋大学出身。東大閥の完全勝利、という図式ですね。

「功を焦った反動分子の所行」という展開になると、北朝鮮が拉致実行犯を処分したのとおなじ扱いだ、と江下氏。

ちなみに、もともとの村木さんの事件がどういうものだったかを振り返ってみましょう。
当時のバッシング記事を参照してみますと、こんなのがありますね。
http://ameblo.jp/campanera/entry-10280782124.html

要するに、「事件の背後に国会議員が関与しているのが明らか」で、「裏にいるとされる」民主党議員がおそらくホンボシ」だとする「壮大なでっち上げ」だったわけですね。

2009年6月といえば、麻生政権下、民主党が支持率を延ばし、政権奪取に現実味が帯びてきた頃。西松建設事件で小沢氏が辞任した少しあとですね。
なんとまあわかりやすい検察の動きでしょうか。

で、今回の捏造疑惑のこの前田検事。これまでかかわってきたのが、福島県知事汚職事件小沢事件朝鮮総連ビル売却事件という、まさに検察の「国策捜査」「冤罪でっち上げ」が問題視されている事件がぞろぞろ。

この前田検事一人の人格問題として使い捨てるだけで、いまや、検察は、うまくやれば検察批判をうまくかわし、民主党との手打ちも視野に入れられるという、一件で3度美味しい展開もありえるわけです。
まるで米軍のパナマ侵攻みたいですね。

ここで前田検事の弁護に弘中惇一郎弁護士が依頼されたりすると面白くなるんだけどなあ。実際は、よく因果を言い含められて、執行猶予→関連会社、それがいやなら......ってことになるでしょうか。

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