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アート三昧

9.11の日なんですが、あえてアート話題てんこ盛り。

昨日、箱根・ポーラ美術館のアンリ・ルソー展に行っていました。
ポーラ美術館は、これがはじめて。で、ちょっと観光地にさくっとできた小さい美術館だと思っていたのですが、これがびっくり。逆に都内では不可能な広大な敷地に、凝った建築の、すばらしい美術館ではありませんか。

で、アンリ・ルソー。
パリの徴税役人で、熱帯の画家として有名ですが、じつは実際に国を出たことは一度もなかったそうな。
私はかつて、アンリ・ルソーがナポレオン三世軍の軍楽隊にいて、それでメキシコに行ったことがあるとかいう話を聞いたことがあったのですが、それはガセだそうです。

ナポレオン三世の軍楽隊といえば、じつは、オアハカ民謡のソン・イストメーニョに多大な影響を与えています。ナポレオン軍とゲリラ戦で徹底抗戦して追い出したメキシコ側の英雄で、後にメキシコ大統領となったのが、オアハカの先住民出身のベニート・フアレスですが、彼は、ナポレオン軍は敵としたものの、その敵軍の軍楽隊はえらく気に入って、メキシコに取り入れたのです。
ここで、ブラスバンド音楽とワルツがメキシコ民謡となって根付いていくのです。

と.....いう物語があるだけに、ここで、ルソー=元フランス軍楽隊員説がデマとわかってよかった。知らなきゃ、どこかで(下手すりゃ、次の本で)とっておきネタとして書くところでした。超あぶねー。(笑)

とはいえ、ルソーが音楽好きだったというのは本当で、ワルツを作曲をしたり、バイオリンを人に教えたり、ファミリーパーティーレベルとはいえ、演奏会などもやっていたようです。

で、そのルソーが描いた19世紀末から20世紀初頭のパリの街から展示は始まります。
工業化の時代のパリ。エッフェル塔が建ち、飛行船や飛行機の時代です。

そのルソーの描くパリと、彼の交友を主なテーマに企画された美術展であるため、熱帯ものの作品はあまり数としてはありませんが、しかし、交友があったという周辺の画家たちの作品に、驚くほど見応えのあるものが。とくにジョルジュ・ブラックのすばらしい作品がありました。他、モジリアニ、ピカソ、マリー・ロランサンから、直接交流はなかったけれど、素朴派の系譜に連なる作品としてコロンビアのボテロまで。

また、同様にルソーと交流があったわけではないけれど、同時代の人として、ジョルジュ・メリエスの日本の短編映画も会場で公開中。そのうちの一本は、世界最初のSF映画「月世界探検」なのが、にやり。
そうです。飛行船の時代なのですよ。

また、その下の階にある常設展示も、印象派と近代日本画を中心に、なかなかのコレクションではありませんか。なにげに小企画してあるのも、アンドレ・ドランの挿絵集だったりするんだもんな。絵画好きであるなら、半日は楽しめます。

また、箱根とは別に、銀座のポーラギャラリーでも、10/24まで、マティスの「Jazz」展。
晩年の傑作の20点全点の一挙展示。その展示方法もなかなかおしゃれです。こちらは無料。

それから、やはり今日から公開のイラン映画。「彼女の消えた浜辺
これ、じつは同日の案内ハガキを間違えて試写会に行ったんです。で、着いてから「しまったぁ」
なわけで、本当なら、試写案内が届いていたにもかかわらず見なかったはずの映画。
悪い言い方をすれば、それだけ私にイラン映画についての関心が低かったということですな。

ところが、これが想定外のすばらしさだったのです。

イランの中流の普通の人々の生活と価値観が淡々と描かれる。これが、このなんというか、あまりの「普通さ」って、「イラン」という国名のレッテルがあることで私たちが忘れ去ってしまう普通さです。

もちろん、ムスリムだから、女性たちは髪を覆っているのだけど、それだって、そこにきっちりコーディネートして、オシャレを楽しんでいる。持ってるバッグもなにげにルイ・ヴィトン。
そういう「あまりにもふつうの」暮らし。

で、週末にカスピ海の別荘を借りて遊びに行く3組の夫婦と、彼らに同行した若い女性をめぐるサスペンスフルな人間ドラマというわけです。

なぜ一人の独身美女が入っているのかといえば、実は他にもう一人、バツイチイケメン独身男性の参加があり、要するに、ちょっとお節介な、ゆるや~かな「ご紹介」旅行というわけね。

で、予約ミスで予定のホテルに泊まれなくなったものの、代わりに海辺の一軒家の別荘を借り切れることになり、彼らはパーティーを始め、イケメンと少し神経質な感じの美女も良い雰囲気。
その翌日、突然、美女が行方不明になる。

彼女は事故で海に落ちたのか?
なにか気に触ることがあって、黙って先に帰ったのか?
それとも何か、別の事件に巻き込まれたのか?

警察の捜査が始まって、彼らはさらに気づく。彼女の名前、経歴。実は誰もはっきり知らなかったという事実に。
さらに、家に連絡してみると、彼女の母親は彼女の旅行自体を否定する。さらに、存在しないはずの「兄」が名乗り出てくる。
いったい真実はどこにあるのか。

という物語です。最後まで息がつけません。
もちろん、ハリウッドのサスペンスとは違うノリですが、しかし、俳優一人一人の演技が素晴らしいくて、上質の演劇を見ているようです。

ああ、そして、イランなのですよ。
この物語の舞台の国にアメリカがいま攻撃を仕掛けようとしている国という現実に私たちが生きているのだとすれば、なんという怖ろしい時代なのでしょうか。

それから、もひとつ。
すでに好評開催中ですが、国立近代美術館の上村松園展

レギンスファッションって、男性が嫌いで、女性が好きなスタイルなんですが、まさに女性の感じる「女性の美しさ」って、男性の求める「女性の美しさ」とは違うものがあります。

松園の求める美、松園の描く美人画は、まさに「女性の、女性による、女性のための美人画」。
とはいえ、べつに松園はジェンダーだのフェミニズムだとの意識していたわけではなくて、とっても色っぽいんですよ。すごく色っぽいんだけど、視線がやっぱりセックスの対象としての女性を見る目ではないんだな。
晩年になるほど、彼女の作品は様式化していく傾向もあるんだけど、その様式化も、まさにその「女性にとっての女性美の完璧さ」を追求しているよう。

中でも惚れたのは、「草紙洗小町」。
和歌盗作の冤罪を着せられた小野小町が身の潔白を立てようと、草紙を洗うという物語ですが、立て膝をついて、扇を振りあげ、啖呵を切るようなその凛々しい姿ときたら。

とここで気づいたのですが、松園の描く女性って、いかにやさしげでたおやかに見えても、「男に頼る女性」でも「男に媚びる女性」でもないのですね。そこが、私にとってとても違和感がないところかもしれないな。

テーマ : おすすめ情報
ジャンル : 日記

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