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PANDORA REPORT 南極編・その17

 さて、プンタ・アレーナスで船に戻ると、イベントをやっていた。チリの踊りを地元の舞踊団が踊ってくれるというようなもので、普通といえば普通なんだけど、素朴で楽しいものだ.それにほんもののフォルクローレだし。

 で、そこで、この街から乗船の水先案内人を紹介された。ブルーノ・セラーノさん。詩人。
 ただし、詩人というのは、日本だと、谷川俊太郎クラスでもない限り「なにソレ、食えてるの? あやしいやつ」みたいな扱いを受けがちだが、欧米圏で、詩人の社会的地位は非常に高い。
 言ってみると、「詩人>戯曲家>純文学>大衆文学」という感じ。

 しかし、ブルーノさんがピースボートに招かれたのは、単に「南米において社会的地位の高い詩人だから」ではない。彼が、あのアジェンデ大統領のボディガードだったという、とんでもない過去を持っていたからだ。

 もっとも、ボディガードというと、まるでランボーとかシュワちゃんみたいなのを連想しそうだが、この場合は違う。
 当時のアジェンデ大統領は、いつ暗殺されてもおかしくない状況だった。にもかかわらず、職務として警護するべき軍や警察が一番信用できないという状態だったために、アジェンデ大統領は、彼らの警護を拒否したわけ。
 で、それを受けて、ボランティアの大学生たちが、常に大統領のまわりを囲むという「人間の盾」をつくったわけだ。
 それが、GAP(Grupo de Amigos Personales)と呼ばれる、アジェンデのボディガードだった。だから、べつに銃器や格闘技に熟達しているわけでもなんでもない、ふつうの当時の学生だったわけ。
 そのため、説明も、ボディガードのスペイン語訳であるGuardaespaldaではなく、エスコーター(Escorter)という単語を使っている。大統領をエスコートしていたわけね。

 ゆえに、このブルーノさんは、見かけは普通のオジサンである。物静かに話す知的な人である。
アジェンデ大統領と一緒に映っているイケメン青年が彼であるとは、説明されないとわからないぐらいである。
 しかし、あのクーデターの日には、大統領を護ろうと、ほとんど触ったこともない銃を取り、でも、素人なのであっけなく逮捕されてしまったという経験がある。

「この人は、八木さんといって、歌手なんですが、中南米についていろいろ本も書いている人なんですよ」
「ほう。どんな御本です?」
「そうですね。いろいろありますが、チリに関してだと、私の最初の著作でもあるのですが、ビクトル・ハラについての本を」
「ビクトル・ハラですって?」
「ええ、ちょうど去年、殺害犯人も逮捕され、葬儀も行われましたよね」

 突然、ブルーノ氏が私の手を握った。
「なんということだ。私は当時、大学生だったといったでしょう。私は演劇のクラスでも学んでいた。ビクトルは私の先生だったのです.......そして、私は、あの日、スタジアムでビクトルと一緒にいたのです

 なんてこったい。
 私は20年間あてもなく探していた人と、あっさり会っていたのである。

テーマ : どうでもいい報告
ジャンル : 日記

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青い鳥のような

まるで幸福の青い鳥のようなお話しになりましたね。でももう少し滞在しているとまだまだこんなことが起きそう(^^)。

ビクトル・ハラのテープ

すごい出会いもあるものだと思って驚くと同時に、やはり人は求めていた人やものに出逢う、運命みたいなものがあるのかな、と思いました。

話は私個人のことで、思いっきり矮小なものになってしまいますが、ビクトル・ハラのカセットテープを持っていまして、学生のころは何度も繰り返し聞いていました。その後いつの間にか年月は過ぎていたのですが、中学生の娘(今は高一)がそのテープをどこかからか発掘してきて、繰り返し聞いていました。スペイン語なんかわかるわけない(もちろん、私も分かりませんが)のに、何か感じるものがある様子で、何度も聞いていました。「平和に生きる権利」なんかが入っています。普段テープは使わなくなって久しく、インターネットなどのために、地球は狭く感じるようになりましたが、私がやっていることはあまり変わらず成長もしていないと思うと、古いテープ聞きながら、ちょっと情けないと思いました。
プロフィール

PANDORA

Author:PANDORA
ラテンアメリカと日本を拠点に活動する音楽家・作家 八木啓代のBlog
公式サイト http://nobuyoyagi.com

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日本の刑事司法の何が問題か、どのような改革が求められているか。刑事法研究者、実務法曹の他、八木も執筆しております。
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