PANDORA REPORT 南極編・その16

 いやほんとに、ペンギンって列を作って更新するのね。それも一列渋滞。

 さて、ペンギンの列を見て一騒ぎして、さらに進む。
 と、波打ち際に、どっさりペンギンが。
 ちょうど、これから魚を獲りに行くところなんでしょう。
ペンギン2
 いわゆる観光客が写真を撮りまくるスポットです。

 そこにしばらくいて、少し戻って良く見ると、あちこちに隠し絵みたいにペンギンさんたちがいるじゃありませんか。行きには気付かなかったけど、草むらの陰や穴の中や。

 今度は、私たちお馬鹿な観光客も、そろそろ慣れてまいりましたので、「し~っ」と声を立てずに、そっと近づく、という知恵が出てまいります。

「あっ、でも八木さん、そろそろ急がないと」
「大丈夫よ、ゆっくり戻っても」
「でも、タクシーの人が言ってた帰りの集合時間ですよ」
「でも、チャーターしてるタクシーだから、私たちが戻るまで動けないのよ。お金も払ってないし」
「あっ、そうですね」

ここがタクシーの良いところである。良いところは利用しなくちゃね。

ゆっくりお散歩しながら、10分ぐらい遅れて、集合場所の駐車場にリターン。10分というところが、とても日本人な私たち。
これで、街に戻るわけ。
ペンギン3
と、ここで、小さな問題発生。
一緒に来た若者たちは、街は街でも、中央広場ではなく、ショッピングモールに行きたいという。
「なんでショッピングモールなの?」

「世界最南端のマクドナルドがあるんだそうです」
「は?」

『地球の歩き方』に載っていたらしい。世界最南端のマクドナルド。
でも、マクドナルドでしょ? べつに特別メニューがあるとは思えないのですが。

しかし、やはり若者たちは、「世界最南端のマクドナルドで記念写真を撮りたい」という夢があるようだった。うーん、価値観は様々ね。

で、ここで運ちゃんに交渉。

青年たちのタクシー2台は、マクドナルドに。
私は、別のタクシーで来た熟年三人組のタクシーで、街中央に帰還。これってどうよ。
同じタクシー会社なの知ってるからね。

で、めでたく追加料金ナシで話をつけて、私はタクシーを引っ越した。
こちらは、若い兄ちゃんである。

絶景の大平原の中を、行きと同じように飛ばす車で、兄ちゃんに、次の重要関心事について訊ねてみた。

「このへんの名物料理って何? やっぱり羊?」
「そうだね。羊がメインかな。でも牛も食べるし、魚もないわけじゃないよ」

えー、日本人は海鮮好きなので、海のあるところどこでも海鮮レストランがあるに違いないと探すわけだが、案外地元の人の感覚はこういうものであることが多い。

「じゃあ、地元の料理で、『これは旨い、ここの名物』って料理は、やっぱり羊?」

「名物って、ここでしか食べられないって意味だったら、羊もおいしいけど、グアナコとかニャンドゥとかビーバーもあるよ」

ちょっと待ってくれ。ニャンドゥは絶滅危惧種のはずだ。
「野生のはね。でも、最近養殖もしてるんだ。それにその店は炭火焼きだから、他のなにを食べても美味しいよ」

八木、後ろをふり返って、通訳を始める。あっという間に、全員意見は一致。

「珍しいものを食べましょう」

同じ珍しさなら、世界最南端のマクドナルドより、ニャンドゥの焼き肉だって。
ダチョウを食べたことはあるけど、ニャンドゥはちょっと無いぞ。

というわけで、タクシーは、街の中心から数ブロックのそのレストランに着いた。
「ここから、街の中心までは歩いて行けるからね。方向はあっち」
それから、私らを一瞥していった。
「この店、メニューにもよるけど、一皿の量が多いから、人数より少なめに頼んだ方がいいよ」

こぢんまりした店だった。炭火焼き料理のほか、石窯焼きのピザも売り物らしい。
で、入ってみると、誰もいない。レジもあるのに。
この町は、かなり治安が良さそうである。

調理場を除くと、慌てて、スーパーマリオみたいなおじさんが、タオルで手を拭きながら、出てきた。
メニューを見て、キングクラブのサラダと、ニャンドゥの赤ワイン煮込み(おすすめ印付き)、ニャンドゥがハズレだったときのためにラムの炙り焼き。
それから親父さんに赤ワインのセレクションを頼む。

親父さん、ワインの瓶を見せながら、
「魚も美味しいですよ」
「魚ならなにがおすすめ?」
「サーモンとかアナゴですね」

おお、アナゴ。チリ名物の巨大アナゴ。

「チリで穴子ですか? 照り焼きじゃないですよね」
という皆様のご意見をかたわらに、ソレひとつ。
今日は珍しいものづくしです。

ところで、ワインがすぐ出てこない。
なぜかと思ったら、栓を抜いて、かなりじっくり空気に触れさせて、開くのを待っていたのだった。さすがワイン大国チリ。
私はかつて、サンティアゴのスラムの親父に、ワインの正しいテイスティングのやり方を教わったことがあるが、高級ではないレストランでも、ワインに関してはチリ人の辞書に妥協はないのである。

やがて料理が出てきた。
キングクラブが冷凍品なのは、この時期が禁漁だから納得づくのこと。ただし、せっかくだから一皿ぐらいというご要望の結果で、まあ、可もなく不可もなし。

ニャンドゥが焼き物でないのは、たぶん、肉に臭みがあるのか、硬いのか、それとも、冷凍保存してあるせいだろう。(毎日入荷するとは思えないので)。
しかし、この赤ワイン煮込みは、非常に洗練された味付けになっていた。高級料理といって差し支えない。

そしてラムの炭火ローストは、軟らかく上質な子羊肉がじゅうじゅういっている感じ。地元の定番だけあって、ちょっと日本では味わえない絶品である。
horno de patagonia
さらに、追加のアナゴは、日本人には到底アナゴとは信じられない、でっかい切り身がオリーブオイルでソテーされて、でっかいレモンが添えてある。これも身がふかふかでジューシー。

「いやあ、これおいしいですねえ」
ニャンドゥ、皆さんに大人気である。

4人で4品は、(そのうちの一皿は前菜のサラダとはいえ)ちょっと多いかなと思ったが、皆さん健啖である。きれいに食べ尽くしてしまった。

すっかり満足して店を出て、皆さんと別れ、街をぶらぶら歩いて、チョコレートショップでココアを飲む。この町もココアが美味しい。
といっても、カカオ豆やスパイスが薫り高いメキシコのココアと違って、ミルクが非常に高品質という感じ。

そして夕暮れ、船に戻った。
街中央から、また、乗り合いタクシーに乗ったのだが、この運ちゃんはペルー人だとか。
元船乗りだったのが、この最果ての街の娘に、本気の恋をして残ったのだと語る。

「でも、最初の冬を体験したときは、後悔しそうになったよ。この夏の美しさからは想像もできないからねえ」

「ああ、知ってる、前に冬に来たことがあるから」
「えっ、冬に来たの? お客さん、ひょっとしてアホ? それとも仕事?」
「いくらなんでも観光で来るわけないでしょ」
「...そら、そうだ」

 以下、同文。

 かくして、タクシーは港に着き、船に戻った。そこで、プンタ・アレーナスから乗船のチリ人を紹介される。

.....それが、運命的な出会いで、とんでもないものを受け取ることになるとは、その時点では、まだ気付かなかった。


【追記】補足ですが、「世界最南端のマクドナルド」は閉店になっていたそうです。

テーマ : どうでもいい報告
ジャンル : 日記

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