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PANDORA REPORT 南極編・その11

 さて、ウシュアイアに戻る。もう昼を少し過ぎているので、ゴハンだ。
 とりあえず、船着き場の売店の親父に挨拶に行く。
「どうだった? サイコーやっただろ」
「いやーほんとにサイコーだったわ。薦めてくれてありがとう」
「ウシュアイアがこんだけきれいに晴れる日は、夏といえどそうないからね。あんた等、ラッキーだったよ」
 へー、そうなの。まあ、話半分としても、気分はいい。ついでに、親父に尋ねた。

ウシュアイア1
「ところで、『世界最南端の鉄道』ってのもあるんでしょ。それってどうよ」
 親父は怪訝な顔をした。
「あんたら、子供いるの」
「なんで子供が関係あるの?」
 親父は肩をすくめた。
「いや、あれは子供は喜ぶんだ。子供なら確実にな。大人はどうかな....人によるな」
 親父の好みではないらしい。
「俺なら、国立公園に行くよ」
 そのアドバイスはそれとして、次の質問。

「このへんで、おすすめの飯屋教えてくれない? 露骨に観光客向けじゃなくて、おじさんが自信を持って推薦するところ」
「それなら、いいところがあるよ。俺がちょっと『今日はちょっと贅沢して旨いもん食いたい』という気分の時に行く店だ。裏通りにあるからわかりにくいけど、確実に旨くて安い」
 ほおーそれはいいね。
「裏メニューもあるから、それを頼むといい。船着き場の○○に聞いてきたと言えば、問題なくだしてくれるよ」
「それってなに?」
「海鮮盛り合わせ」
 それから親父は、私らの顔ぶれをざっと見て言った。
「4人だったら、この『海鮮盛り合わせ』3人前と肉を1~2人前頼むときっとちょうどいいよ。この店は、海鮮も旨いが、肉も最高なんだ。特に背肉が感動的だ」

 言うまでもなく、アルゼンチン人の腹一杯であろう。
 親父の書いてくれた地図を頼りにその店に向かう。確かに裏通りで、知らなければ気がつかないだろう。もちろん、『地球の歩き方』にも載っていない。
 しかも、思っていたほど庶民的ではなく、テーブルクロスのきちんとかかったこぎれいな店だ。

ウシュアイア2
 店に入ると、ウエイターが寄ってきた。
「船着き場の売店の親父に聞いたんだけど、『海鮮盛り合わせ』ってできます?」
「ああ、○○さんですね。それを4人前?」
「いや、海鮮は2人前。それと背肉をミディアムで一人前」
「4名様ですが、3人前でいいんですか?」
「ダイエットしてるから。それからワインね」
これもウエイターに、『そんなに高くなくて料理に合う辛めの赤のおいしいの』をチョイスしてもらう。

 やがて、運ばれてきたのは、巨大な皿の上に、日本なら5人前はあろうかという分量の海鮮のから揚げがてんこ盛りになったもの(付属品として、レモンとタルタルソース)と、日本ならたっぷり2人前はありそうな巨大なヒレステーキだった。
 あまりのインパクトに写真撮影など綺麗に忘れて、食いに走る我々。

 しかも、この『海鮮盛り合わせ』、ただのてんこ盛りではなかった。普通、こういうてんこ盛りの下の方はポテトだったり、野菜だったりするものだが、これが正味、海鮮。
 それも、海老、蟹、イカ、白身魚の切り身、小魚のから揚げ、ハマグリの太ったむき身のから揚げ....とどっさり入っているのだが、その割に、油が良質のオリーブオイルを使っているらしく、あっさりと食べられる。ワインと合うったら。
 そして、肉。これまた、ものすごく軟らかい。軟らかいだけではなく旨味も十分でジューシー。焼き加減も完璧。いままで食べた中でもかなり上位に来る旨いステーキであった。

「ところで、この写真....」
 ふと気付くと、レストランの壁に、おもちゃの機関車みたいな写真がある。遊園地一周用とかにあるようなやつである。
「もしや、例のアレでは」

 ウエイターの兄ちゃんに聞くとまさしくそうであった。
「朝からこれに乗ること考えずに、ビーグル水道に行って良かったわ」
 と、しみじみと奥様方。

 さて、昼食の分量は、日本の6人前はありそうであったが、なにせおいしかったので、4人で片づけてしまった。パンもライスもなく、お腹いっぱいである。しかも、もはやこうなると怖いものはない。腹をくくった女性たちはデザートに突入。アイスクリームとケーキである。
 これだけ食べて、ワインも入れて、一人20ドル程度。安い。親父、ありがとう。

 で、満腹状態で外へ。
「八木さん、どちらへ行かれます?」
 いや。別に予定は。
「では申し訳ないんですが、パス停まで付き合っていただけません」
 やはり、どうせ時間があるので、『世界最南端の鉄道』に心が残っているらしい。まあ、お土産話にはなるよね。

 で、とろとろ歩いて、バス停に向かうと、切符切りのおっさんが待っていた。
 バス停といっても、ここが始発なので、駐車場みたいなところに、ミニバスが何台も停まっている。
「『世界最南端の鉄道』って、どう?」
「往復15ドルです」
 高い。
「ソレって、行く値打ちある?」
「そ、それは...もちろん」
 むろん、そのとき、一瞬親父の目が泳いだのを見逃すワタクシではない。
「ほんとに?」
「そ...それは、それぞれの方に好みがありますから、私は何とも」

 お、逃げに入ったな。
「てことは、おじさんならなにを薦める?」
切符切りの親父は、ほっとしたようだった。
「国立公園だね。例の鉄道の先だが、これは値打ちがあるよ」

 そこに運ちゃんが降りてきた。
「他にお客はいないから、国立公園に行くなら、貸し切り状態で案内するよ。それで適当な場所で降りて少しトレッキングして、ほどよいところで拾ってあげる」
「拾うって?」
「トレッキングルートの中に、景色のいい湖の畔のカフェテリアがあるんだ。早めに着けば、そこで時間も潰せるし、ゆっくり座れる。そこだけでも眺めは最高だよ」
 地図を広げて見せてくれるのを見ると、なかなかちょっとしたドライブである。

 上記を訳して、奥様たちに。
「ソレ、行きましょう」
と、ここでも全員一致。

 私はバス停まで送るだけのはずだったのだが、なりゆきで一緒に行くことに。っていうか、このメインストリート一本の書き割りのような街で、午後をずっと過ごすのはほとんど退屈だろうと思ったしね。
 で、ミニバスは発車した。
 やはり不況なんだろう。ほんまに12人乗りのミニバスが4人でゆったり貸し切りである。
 運転手の兄ちゃんも、機嫌良く、いろいろ解説しながらドライブ。
 不況のおかげで、贅沢の極みだ。

※例の『世界最南端の鉄道』も鉄道ファンの方には、十分面白いものだったそうです。念のため。

 国立公園に入って、兄ちゃんおすすめのポイントで降り、若干のトレッキング。一瞬曇りかけた空も再び晴れはじめ、良い日和である。
 あとでわかったのだが、今回のピースボートクルーズには、強力な晴男もしくは晴女がおられたらしく、あらゆる天気予報を裏切り、すべての寄港地で晴れたそうである。実をいうと、このウシュアイアも、寄港前の予測では雨天の筈であったのは言うまでもない。
 
 かつて、80%以上の降水確率である冬季のチリ南部でのロケに当たって、「僕は強力な晴男なので、ぜったい大丈夫です」と、8日間全日晴れを想定した無謀きわまりない計画を立て、むろん、電波系ではない八木はもとより現地スタッフからもバカ呼ばわりされながら、ほんとに『8日間連続快晴ロケ』を実現した、N○Kの某ディレクターに匹敵する、おそるべき超能力者である。
 ちなみに、すべての重大行事で必ず雨を降らせ、カタール公演では、砂漠地帯でまで雨を降らせたという脅威の雨男もいらっしゃる(古代なら神そのものである)なので、この双方が対決したら、どうなるかが興味津々である。

 そして、湖畔のカフェテリアに辿り着き、そこで、オプショナルツアー国立公園選択組の「ピースボート御一行様」と遭遇したものの、
「なんで、あなた方はここにいるんですか」
と詰問されるようなこともなく、ましてや、午前中はビーグル水道にも行ったともいわず、清涼飲料水を飲み、しばらくして訪れたミニバスの運ちゃんに拾ってもらい、日暮れにウシュアイアの港まで戻ったのであった。

 そして、戻って、数分後。
 おそらく神が、屋根のあるところまで達せられたのであろう....突然、ウシュアイアは土砂降りとなった。
 恐るべし、超能力者。
 土産を買おうと、奥様たちと別れ、この地域では有名だとかいうチョコレート屋に寄り道していた八木は、すでに神に見放されていたと見え、びしょ濡れになって、船へと戻ったのであった。

テーマ : どうでもいい報告
ジャンル : 日記

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