PANDORA REPORT 南極編・その10
しばらく、間が開いたのにはわけがあって...・
じつは、MacのOSを10.6(Snow Leopard)にしたら、ATOK2007が使えなくなるという、世にも怖ろしい悲劇にみまわれ、しょうがないから、Google日本語入力を試したりしていたんだが、結局、あきらめて、ATOK最新版を買う羽目になりました。
ひどいよなあ。絶賛コメントばかりで、こういう落とし穴はどこにも書いてないんだもん。
まあ、仕事ツールだからしょうがないんだけど、こういう予期せぬ事態って、なんともいえず、へこむよね。
しかも、Adobe Suite CSの挙動もなんとなく不安。お願いだからおかしくならないでくれ。キミらを買い直す余力はいまの私にはないぞ。
という不安感から、GimpとInkscapeとPixelmatorをインストールして、少し使ってみたりして。(あ、けっこう使えるじゃん)
さて船より遅い旅日記(爆)、気を取り直して、とろとろ続きます。
船はゆっくり、アルゼンチン最南端の街、ウシュアイアへ。
早朝から、真っ青な空が広がる快晴である。
船着き場には、定員200人ぐらいの、おそらく水中翼船と思われる小型クルーズ船が何台も停泊している。ちょうど、隅田川の水上バスみたいなやつだ。
で、岸壁には土産物屋が並んでいる。なにげに覗くと、ほとんどペンギングッズ。要するに、あまり大した産業はなく、観光で食べている土地なのだろう。
その土産物屋の一軒で、アンヘル・パラ似の親父が声をかけてきた。
「おねーちゃん、今日は最高の天気だよ。ぜひ、ビーグル水道へのクルーズに行くべきだね」
「というと?」
「海鳥やアザラシやペンギンが、どっさり見られるのだ。こんな天気のいい日は滅多にないよ。生涯心に残るクルーズになるよ。出発は9時で、集合は15分前にここ」
「それはいいが、値段はいくら? クレジットカード使える?」
親父、一瞬考えて言った。
「んー、クレジットカードは手数料取られるからな。現金払いならちょっと割引する。XXドルのところ、YYドルでどう?」
八木、ちょっと考えるふりをする。親父さらに一声。
「ところでさ、日本人がぞろぞろいるけど、あんたあの船で来たの?」
「そうだよ」
「となると、ものは相談だ」
と、親父。
「あの日本人、何人か誘ってくんない? 2~3人でも誘ってくれたら、さらに割引価格にするよ」
「あの人たちはあの人たちで、ビーグル水道に行きたい人は、すでに船のオプショナル・ツアーに応募しているからねえ。誘っても来るかどうか」
「頼むよ~。ここんとこ不況で、商売あがったりだし、日本語なんてわからんし」
「まあ、期待せんといて。じゃあ、あとで」
とりあえず、問題の9時前までは1時間以上あるので、散策に出る。
といっても、桟橋を出たらすぐ街。しかも、メインストリート一本だけ。
ウシュアイアは、まるでスイスをモデルにした書き割りのような街だった。やはり、南極へのクルーズと、近郊のビーグル水道への観光で細々とやっている街なのである。
早朝とあって、店もほとんど閉まっているが、その店も大半は、土産物屋とレストランだ。
とろとろ散策しているうちに、ピースボート旅客の奥様3人連れと会ったので、ビーグル水道行きを誘ってみる。
「あ、私たち、『地球の歩き方』に出ている『世界最南端の鉄道』っていうのに乗りに行こうかと思っているんです」
「でも鉄道なんて、午後でも走っているから、朝にビーグル水道ってのどうです。たったYYドルだし」
「そうですねえ。八木さんがおすすめになるなら」
おすすめったって、自分が行ったわけじゃないんですけどね。
ただ、確かに、この日は素晴らしい快晴で風もない日だったので、近場の海の散策はきっと気持ちよいだろうと思ったのと、南米の『鉄道』なるものを信用してなかったのさ。

で、9時前に親父のところに戻ると、親父上機嫌で、なんと、YYドルからさらに1割以上値引きしてくれ、水上バスに乗り込む。たしかに不況なんだろうな。
そして水上バスは進み出した。他の乗客の大半は、フランス系ベルギー人のグループ、アルゼンチン人、ドイツ人といったところ。
ビーグル水道というのは、南米大陸最南端のフエゴ島の南側、全長約240kmの海峡のことだ。ダーウィンが乗ったことで知られる探検船の名前から命名されている。
その海峡に向けて、すみやかに船は進んだ。夏とはいえ南極近いはずだが、快晴で風もほとんどないため、涼しい、という感じ。
すぐに、周囲を山々に囲まれた、海峡のすばらしい景色が広がった。

絶景である。
ここで、意外かもしれないのだけど、連れを誘ったのは正解だった。この息を呑むような景色を、誰かと分かち合うというのは、ちょっと感動的なんである。
といっても、「うおーすごい、いまの見ました?」みたいなことなんだけど。
そして、水鳥の島に着く。
.....これはなんだというぐらい、トリが林立している。
そして、アザラシの島。
.......これはなにごとだというぐらい、トリに加えて、アザラシが大量に寝そべっていた。

おそるべし、ビーグル水道。おそらくダーウィンも仰天したことだろう。
そのあと、船は小島のひとつに着岸し、少し島をトラッキングしてから、またゆっくりウシュアイアに戻った。
この間、3時間ほど。
実はいままで、私は、有名な遺跡や史跡などはかなりめぐってきたけれど、それらはすべて人間のつくったものであり、人の手の加わらない自然風景というものには、それほど深く感動した経験というのはなかったのだけれど、この海峡は、いままでで見たもっとも美しい景色だった。
(続く)
じつは、MacのOSを10.6(Snow Leopard)にしたら、ATOK2007が使えなくなるという、世にも怖ろしい悲劇にみまわれ、しょうがないから、Google日本語入力を試したりしていたんだが、結局、あきらめて、ATOK最新版を買う羽目になりました。
ひどいよなあ。絶賛コメントばかりで、こういう落とし穴はどこにも書いてないんだもん。
まあ、仕事ツールだからしょうがないんだけど、こういう予期せぬ事態って、なんともいえず、へこむよね。
しかも、Adobe Suite CSの挙動もなんとなく不安。お願いだからおかしくならないでくれ。キミらを買い直す余力はいまの私にはないぞ。
という不安感から、GimpとInkscapeとPixelmatorをインストールして、少し使ってみたりして。(あ、けっこう使えるじゃん)
さて船より遅い旅日記(爆)、気を取り直して、とろとろ続きます。
船はゆっくり、アルゼンチン最南端の街、ウシュアイアへ。
早朝から、真っ青な空が広がる快晴である。
船着き場には、定員200人ぐらいの、おそらく水中翼船と思われる小型クルーズ船が何台も停泊している。ちょうど、隅田川の水上バスみたいなやつだ。
で、岸壁には土産物屋が並んでいる。なにげに覗くと、ほとんどペンギングッズ。要するに、あまり大した産業はなく、観光で食べている土地なのだろう。
その土産物屋の一軒で、アンヘル・パラ似の親父が声をかけてきた。
「おねーちゃん、今日は最高の天気だよ。ぜひ、ビーグル水道へのクルーズに行くべきだね」
「というと?」
「海鳥やアザラシやペンギンが、どっさり見られるのだ。こんな天気のいい日は滅多にないよ。生涯心に残るクルーズになるよ。出発は9時で、集合は15分前にここ」
「それはいいが、値段はいくら? クレジットカード使える?」
親父、一瞬考えて言った。
「んー、クレジットカードは手数料取られるからな。現金払いならちょっと割引する。XXドルのところ、YYドルでどう?」
八木、ちょっと考えるふりをする。親父さらに一声。
「ところでさ、日本人がぞろぞろいるけど、あんたあの船で来たの?」
「そうだよ」
「となると、ものは相談だ」
と、親父。
「あの日本人、何人か誘ってくんない? 2~3人でも誘ってくれたら、さらに割引価格にするよ」
「あの人たちはあの人たちで、ビーグル水道に行きたい人は、すでに船のオプショナル・ツアーに応募しているからねえ。誘っても来るかどうか」
「頼むよ~。ここんとこ不況で、商売あがったりだし、日本語なんてわからんし」
「まあ、期待せんといて。じゃあ、あとで」
とりあえず、問題の9時前までは1時間以上あるので、散策に出る。
といっても、桟橋を出たらすぐ街。しかも、メインストリート一本だけ。
ウシュアイアは、まるでスイスをモデルにした書き割りのような街だった。やはり、南極へのクルーズと、近郊のビーグル水道への観光で細々とやっている街なのである。
早朝とあって、店もほとんど閉まっているが、その店も大半は、土産物屋とレストランだ。
とろとろ散策しているうちに、ピースボート旅客の奥様3人連れと会ったので、ビーグル水道行きを誘ってみる。
「あ、私たち、『地球の歩き方』に出ている『世界最南端の鉄道』っていうのに乗りに行こうかと思っているんです」
「でも鉄道なんて、午後でも走っているから、朝にビーグル水道ってのどうです。たったYYドルだし」
「そうですねえ。八木さんがおすすめになるなら」
おすすめったって、自分が行ったわけじゃないんですけどね。
ただ、確かに、この日は素晴らしい快晴で風もない日だったので、近場の海の散策はきっと気持ちよいだろうと思ったのと、南米の『鉄道』なるものを信用してなかったのさ。

で、9時前に親父のところに戻ると、親父上機嫌で、なんと、YYドルからさらに1割以上値引きしてくれ、水上バスに乗り込む。たしかに不況なんだろうな。
そして水上バスは進み出した。他の乗客の大半は、フランス系ベルギー人のグループ、アルゼンチン人、ドイツ人といったところ。
ビーグル水道というのは、南米大陸最南端のフエゴ島の南側、全長約240kmの海峡のことだ。ダーウィンが乗ったことで知られる探検船の名前から命名されている。
その海峡に向けて、すみやかに船は進んだ。夏とはいえ南極近いはずだが、快晴で風もほとんどないため、涼しい、という感じ。
すぐに、周囲を山々に囲まれた、海峡のすばらしい景色が広がった。

絶景である。
ここで、意外かもしれないのだけど、連れを誘ったのは正解だった。この息を呑むような景色を、誰かと分かち合うというのは、ちょっと感動的なんである。
といっても、「うおーすごい、いまの見ました?」みたいなことなんだけど。
そして、水鳥の島に着く。
.....これはなんだというぐらい、トリが林立している。
そして、アザラシの島。
.......これはなにごとだというぐらい、トリに加えて、アザラシが大量に寝そべっていた。

おそるべし、ビーグル水道。おそらくダーウィンも仰天したことだろう。
そのあと、船は小島のひとつに着岸し、少し島をトラッキングしてから、またゆっくりウシュアイアに戻った。
この間、3時間ほど。
実はいままで、私は、有名な遺跡や史跡などはかなりめぐってきたけれど、それらはすべて人間のつくったものであり、人の手の加わらない自然風景というものには、それほど深く感動した経験というのはなかったのだけれど、この海峡は、いままでで見たもっとも美しい景色だった。
(続く)