PANDORA REPORT 南極編・その6

さて、サルサ歌手なら、サルサができない(やったことがない)ミュージシャンと組んでライブをやるのは不可能だ。
タンゴ歌手だって、タンゴをできない(やったことがない)ミュージシャンと組んでライブをやるのは不可能だし、それを言うなら、ジャズだってフォルクローレだって、他のワールドミュージックだってみんな同じことだ。
極端に言えば、クラシックだって、ドイツものばかりやっているプレイヤーは、フランスものやイタリアものは得意でなかったりする。
で、これは、ミュージシャンのうまい下手の問題とは若干違う。

けれど、私はサルサも歌うし、タンゴも歌うけれど、いわゆるジャンル歌手ではなくて、私の持ち歌を歌う歌手だ。
要するに、私は私なので、相手によってセッションをすることができる。
で、その組む相手によって、違う音楽を愉しむことができる。

たとえば、キューバ人と組めば、バラードであってもどこかにタイトさがあるキューバンフィーリングになるし、アルゼンチン人と組めば、前のりのタンゴテイストが漂う。
メキシコ人はそれほどタイトではないラテンテイストだし、日本人と組む場合は、それこそ、そのプレイヤーの方の土俵によって、ヲタク感あふれるサルサになったり、フリージャズになったりするわけ。
で、私は私で、その流れる音に、きれいなバランスをとって、気持ちよく乗っていくだけだ。ちょうど、スノーボードとかサーフィンみたいに。
(まあ、たまにすべって転倒してるとき、ありますが)

なので、私は実は案外、いろんなジャンルの人と組むのが嫌いではない。どういう波が来るかわかんない海でサーフィンする感じ。

で、その国のプレイヤーによって、ほんとにその波の作り方も違うわけで、キューバ人はとにかくタイトな荒波。波状攻撃が次々来る感じ。しかも全部裏拍で乗っていく。
なので、最初はギョッとするし、難度も高いのだけど、ただし、その荒波には、じつはある程度パターンがあって、そのパターンが読めるようになると、実はそれほど攻略が難しくなかったりする。
(まあ、たまに水に落ちてる時、ありますが)

でも、キューバ人て、ダンサブルでタイトなリズムには完璧だけど、逆に、変拍子とか、たっぷりした間合い感には異常に弱いんだよね。

で、アルゼンチン人は全部前ノリに出る。彼らの辞書に裏乗りという言葉はない。前へ前へとキューバとは別の意味で攻撃的。(タンゴ系の場合ね)
だから歌手も、伴奏にリードされて気持ちよく歌いつつも、要所要所で、あたくしが女王様よ、という感じで、他のプレイヤーを押しのけて前に出て決めポーズを見せるぐらいのガッツがないと、伴奏に食われる。踊りと同じである。
(まあ、たまに脚引っかけて転ぶ時、ありますが)

メキシコ人はその中間。実は、日本人と似ていて、意外に器用で、いろんなリズムをこなせる人が多い。いちばん得意なのは、スローバラード。
全般的に、適当にやっているようでも要所はちゃんと押さえている。だからといって、全面的に信用すると、ぜんぜん悪気なくハズされて、溝に落とされることもあるので注意が必要である。(爆)

なので、フィリピン人はそのへんいったいどうなのか、というのが、じつは、私の好奇心をくすぐったというのもあったわけ。これは本当。

で、結論からいうと、脳内4ビート変換のフィリピン人プレイヤーは、60's アメリカンポップスをやらせるとバッチリである。日本の昭和歌謡曲もバッチリである。
しかし、私の持ち歌は、60's アメリカンポップスでも、昭和歌謡曲でもない。
そこが微妙に痛い。
普段ラウンジでやっている音楽とあまりに違うので、まあしょうがないんだけどさ。

とはいえ、一回目のリハで、彼らは盛り上がってしまったのである。
なんというか、プレイヤーとしてのなんかに引っかかったのだろうね。

彼ら同士は、タガログ語で一生懸命話し合いながら、こっち向いて、
「モウイッカイ、ヤラセテクダサイ」
(ここ、英語なんだけど、発音がそういう感じなの)

と、別立てのギャラが出るわけでもないのに、まるで「アタックNo1」(古い!)みたいな科白がどんどん飛び出すのである。
いや、だから、なんとなく昭和40年代っぽいんだって、彼らは。良い意味で。

....その後も、猛練習していたらしい。

そして、思った以上の成果を上げてくれたのである。
しかも、ピアソラまでこなしてくれるとは、嬉しい驚きだった。

テーマ : どうでもいい報告
ジャンル : 日記

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