コンドルは飛んでゆくか?

実は、2月~3月に南米に行くことになっています。
ブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルーなどにちょこっとずつ足を伸ばすのですが、冬の日本から40度のブラジルというのは、ちょっときつそう。
空港でいきなりのぼせてひっくり返ったりしないように、着衣を考える必要がありますな。

まあ、もっとすごい例では、常夏キューバから冬のトロントというのもけっこうきついらしいですし、こないだも別の友達が、夏のブラジル(40度)から冬のモスクワ(マイナス25度)に行く羽目になって、その気温差65度を自慢しておりまして、そういうのに比べたら、どうってことないのですが。

そんな矢先、あるマイミクさんが、ペルーの有名な曲である「コンドルは飛んでゆく」のことを書いておられたので、ちょっと反応。

「コンドルは飛んでいく」というと、みなさん、サイモン&ガーファンクルで世界的にヒットした、フォルクローレの定番と思ってらっしゃるでしょ。
EL CONDOR PASA
ちょっとオタクな方なら、実は、この曲、元はクラシック(オペレッタ)だということもご存じだったり。
でも、相当に過激な内容であったことまでは、知る人はわずかです。

この曲、1913年に、フリオ・バウドイン・デ・ラ・パスの脚本&ダニエル・アロミア=ロブレスの音楽で発表され、ペルーの首都リマのマッシ劇場で5年で300回に及ぶロングラン上演されているのですが、その中身がすごい。

アメリカ人の所有する鉱山で働く鉱山労働者が革命を起こす物語。
時代背景は、ズバリ、メキシコ革命とロシア革命なんです。

この作品がその後、事実上封印されたのは、あまりにも共産主義礼賛+反米的な内容であったからとも言われています。
とはいえ、この「コンドルは飛んでゆく」のオリジナル譜はアメリカ合衆国の国会図書館にあります。後に経済的に困窮したアロミア=ロブレスがRCAに権利を売却したらしいのです。

けれど、美しいテーマ曲は残って土着化、民謡化したのですね。
そして、1920年代。
ペルーでのナショナリズムはさらに高揚し、後に全ラテンアメリカに影響を与えるアプラ党(アメリカ人民革命同盟)、ペルー社会党を創設した独創的な思想家マリアテギなどを生み出します。
もっとも、マリアテギはわずか36歳で夭折したため、独自路線を歩んでいたペルー社会党は、モスクワ系に吸収され、アプラ党も、旧勢力に敵対視される一方で、急進的すぎる思想が内部対立を生み、停滞~変質してしまいます。

それから50年後。
60年代後半になって、ペルーは、米国のスタンダード石油の子会社IPCの石油産業独占への反発と、その正当性をめぐっての係争をきっかけに、1968年にベラスコ陸軍司令官を指導者とする軍の左派がクーデターを起こして、ベラウンデ大統領を追放し、外国資本の接収や農地改革の断行で米国と対決するという革命が起こります。
軍事クーデターというと、チリのイメージで右派的なものという印象がありますが、この軍事クーデターは、その逆。ベラスコはアジェンデの盟友でもありました。
ちょうど、「コンドルは飛んでゆく」が、サイモンとガーファンクルのバージョンで世界的にヒットした頃です。

そして、あと3年で、「コンドルは飛んでゆく」100年。
そのころには、ベネズエラから発して、ボリビアやエクアドルに飛び火しているボリーバル革命が、そろそろペルーに届いてもいいかと思うのだが、そうは簡単にいかないのが、ペルーだったり。

なんて思っていると、フジモリ大統領に25年の禁固刑が決定。
ただし、次の大統領選でひっくり返される可能性もあるようです。


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