ラテンアメリカと新自由主義
さて、去年から今年にかけて、よく「ラテンアメリカの左傾化」について訊かれることが多くなった。
音楽がらみとはいえ、今年は私の講演やレクチャーもいくつか依頼が来ている。そのテーマは、「ラテンアメリカの戦う音楽」だったりするわけで、となると、内容的には70〜80年代の中南米のプロテストソングのムーヴメントと見なされる「新しい歌運動」を中心に語ることになるわけだが、その裏には、もちろん、「へぇ〜、昔はこういうことがあったんですね〜」ということではなくて、最近のラテンアメリカの怒濤のような左翼政権ラッシュの遠因をそこに見て、何かを読み解こうとしている依頼者の意図が見え隠れしないでもない。
しかし、いまのラテンアメリカの左傾化の原因はじつはもっと単純なところにある、と私は見ている。
60年代から70年代にかけて、チリのアジェンデやペルーのベラスコ、パナマのトリホス、ニカラグアのサンディニスタといった「本気で貧困問題を解決しようとした」結果、アメリカ合衆国と富裕層の反感を買った政権が、暗殺やクーデターや(対立候補に外国資本から臆面もなく大量の資金援助を与えられた)選挙によってことごとく崩壊したあと、何が起こったかと言えば、答えは簡単。
小泉が日本でやったようなこと、つまり、新自由主義政策を、80年代のラテンアメリカで、もっとイケイケドンドンでやったわけ。
すでに幾多のすぐれた経済学者の方たちが指摘するとおり、新自由主義政策をやると、一時的に「好景気」な状態が生まれる。
これをもって、チリのアジェンデをクーデターで倒したピノチェトなどは、「自由主義の勝利」と言い回ったわけだが、所詮、それは一時的なものに過ぎない。
新自由主義という、富裕層を圧倒的に優遇し、福祉を切り捨ててゆくやり方は、結果的に弱者をさらに搾取することにしかならないから、当然ながら格差は拡大し、それが20年も過ぎると、弱者の側にある大量の貧困層は、社会に対して二つの大きな問題を提起することになるわけだ。
ひとつは、当たり前だが、治安の悪化。
食えなくなれば、人間犯罪に走りますわな。ジャン・バルジャンのような「飢えのため」までいかなくても、必死で仕事を探して、一生懸命働いてもワーキングプアでしかないなら、あほくさくなるのは当たり前です。
秋葉原事件じゃないけれど、人生に希望のない人間に、他者に対して思いやりを持てるわけもない。
もうひとつは、富裕層と大量の貧困層に別れて、中間層がなくなった結果、国民の購買力そのものが大幅に落ちる。
中南米の場合、主要産品は輸出用の第一次製品であることが多いので、これは直接的にすぐ影響をおよぼすわけではないにしても、長期的に見れば、やはり国内でモノがまともに売れないというのは、経済破綻への一里塚。
この80年代の新自由主義政策のおかげで、軍事政権は21世紀を待つまでもなく次々と国家経済を崩壊に導き、ハイパーインフレの中で、その座を追われたわけ。
で、そのあとをいわゆる民政(ただし、クーデターや軍事侵攻が起きたりしないように、米国が納得できる程度の穏健なやつ)が引き継ぐわけだが、それらの穏健派が、次々に敗北して、いまの、はっきり「社会主義を標榜し、キューバをモデルとする」と言い切っちゃうベネズエラのチャベスを皮切りに、「コカはボリビアの文化です」と主張して当選するエボ・モラレスという、もう、「米国に面切って喧嘩を売ることを怖いと全然思ってない連中」が政権をとってしまったわけだ。
それはどういうことかというと、大衆が、そんだけ、米国(というか、新自由主義)に対する憎悪感を募らせてしまったということ。
日本ではあまりまともに報道されていないけれど、というより、日本の記者は「現地の報道」とか「米国の報道」をそのまま鵜呑みにして特派員を名乗っている人がいたりするから困るんだけど、中南米の多くの国において、メディアは富裕層に完全に握られている。メキシコあたりですら、 TVに関しては、教育放送なんかを除いて、大半のチャンネルは、事実上一社のものとなっている。
だから、日本に当てはめてみるなら、国中の新聞とTVが、すべて産経、みたいな状態が珍しくないのだ。
当然、左派候補に対するあることないことのネガティブキャンペーンのすさまじさは、はっきりいって、田中康夫元長野県知事を誹謗中傷しまくる信濃毎日新聞みたいな。(いや、もっとえぐいかも)
ベネズエラのチャベスが、あまりにひどい国内メディアの規制を行ったのも、独裁とか言論弾圧というよりは、そういうことが背景になっている。
その中での、彼らに引き続いてのニカラグアやエクアドルやエルサルバドルでの左派候補当選というわけ。当然、民衆が何を期待しているかは、もう明らかなわけで。
で、日本。
ラテンアメリカから20年遅れて、新自由主義を積極的に導入したのが、このザマというのは、まあ、皆さんご指摘の通りであります。ただ、ラテンアメリカ以上に、「国内消費」というのは日本の産業の中でもそれなりの比重を占めているので、ボディブローの効き方はもっとじわじわ内臓にくるでしょうね。
それにしても、近畿厚生局麻薬取締部の馬鹿さ加減なんとかなりませんか。
http://www.47news.jp/CN/200904/CN2009041001000410.html
これからは、ラスベガスを舞台にしたハリウッド映画も禁止になるかもしれませんし(オーシャンズ・シリーズ好きなのにな)、芥子の実ののったあんパンも、あれを芥子の実といってはまずいのでしょう。コカコーラには撤退していただくしかないでしょうね。
(ああ、でもラムを割るのは、ペプシよりコカコーラがいいんだけどな)
音楽がらみとはいえ、今年は私の講演やレクチャーもいくつか依頼が来ている。そのテーマは、「ラテンアメリカの戦う音楽」だったりするわけで、となると、内容的には70〜80年代の中南米のプロテストソングのムーヴメントと見なされる「新しい歌運動」を中心に語ることになるわけだが、その裏には、もちろん、「へぇ〜、昔はこういうことがあったんですね〜」ということではなくて、最近のラテンアメリカの怒濤のような左翼政権ラッシュの遠因をそこに見て、何かを読み解こうとしている依頼者の意図が見え隠れしないでもない。
しかし、いまのラテンアメリカの左傾化の原因はじつはもっと単純なところにある、と私は見ている。
60年代から70年代にかけて、チリのアジェンデやペルーのベラスコ、パナマのトリホス、ニカラグアのサンディニスタといった「本気で貧困問題を解決しようとした」結果、アメリカ合衆国と富裕層の反感を買った政権が、暗殺やクーデターや(対立候補に外国資本から臆面もなく大量の資金援助を与えられた)選挙によってことごとく崩壊したあと、何が起こったかと言えば、答えは簡単。
小泉が日本でやったようなこと、つまり、新自由主義政策を、80年代のラテンアメリカで、もっとイケイケドンドンでやったわけ。
すでに幾多のすぐれた経済学者の方たちが指摘するとおり、新自由主義政策をやると、一時的に「好景気」な状態が生まれる。
これをもって、チリのアジェンデをクーデターで倒したピノチェトなどは、「自由主義の勝利」と言い回ったわけだが、所詮、それは一時的なものに過ぎない。
新自由主義という、富裕層を圧倒的に優遇し、福祉を切り捨ててゆくやり方は、結果的に弱者をさらに搾取することにしかならないから、当然ながら格差は拡大し、それが20年も過ぎると、弱者の側にある大量の貧困層は、社会に対して二つの大きな問題を提起することになるわけだ。
ひとつは、当たり前だが、治安の悪化。
食えなくなれば、人間犯罪に走りますわな。ジャン・バルジャンのような「飢えのため」までいかなくても、必死で仕事を探して、一生懸命働いてもワーキングプアでしかないなら、あほくさくなるのは当たり前です。
秋葉原事件じゃないけれど、人生に希望のない人間に、他者に対して思いやりを持てるわけもない。
もうひとつは、富裕層と大量の貧困層に別れて、中間層がなくなった結果、国民の購買力そのものが大幅に落ちる。
中南米の場合、主要産品は輸出用の第一次製品であることが多いので、これは直接的にすぐ影響をおよぼすわけではないにしても、長期的に見れば、やはり国内でモノがまともに売れないというのは、経済破綻への一里塚。
この80年代の新自由主義政策のおかげで、軍事政権は21世紀を待つまでもなく次々と国家経済を崩壊に導き、ハイパーインフレの中で、その座を追われたわけ。
で、そのあとをいわゆる民政(ただし、クーデターや軍事侵攻が起きたりしないように、米国が納得できる程度の穏健なやつ)が引き継ぐわけだが、それらの穏健派が、次々に敗北して、いまの、はっきり「社会主義を標榜し、キューバをモデルとする」と言い切っちゃうベネズエラのチャベスを皮切りに、「コカはボリビアの文化です」と主張して当選するエボ・モラレスという、もう、「米国に面切って喧嘩を売ることを怖いと全然思ってない連中」が政権をとってしまったわけだ。
それはどういうことかというと、大衆が、そんだけ、米国(というか、新自由主義)に対する憎悪感を募らせてしまったということ。
日本ではあまりまともに報道されていないけれど、というより、日本の記者は「現地の報道」とか「米国の報道」をそのまま鵜呑みにして特派員を名乗っている人がいたりするから困るんだけど、中南米の多くの国において、メディアは富裕層に完全に握られている。メキシコあたりですら、 TVに関しては、教育放送なんかを除いて、大半のチャンネルは、事実上一社のものとなっている。
だから、日本に当てはめてみるなら、国中の新聞とTVが、すべて産経、みたいな状態が珍しくないのだ。
当然、左派候補に対するあることないことのネガティブキャンペーンのすさまじさは、はっきりいって、田中康夫元長野県知事を誹謗中傷しまくる信濃毎日新聞みたいな。(いや、もっとえぐいかも)
ベネズエラのチャベスが、あまりにひどい国内メディアの規制を行ったのも、独裁とか言論弾圧というよりは、そういうことが背景になっている。
その中での、彼らに引き続いてのニカラグアやエクアドルやエルサルバドルでの左派候補当選というわけ。当然、民衆が何を期待しているかは、もう明らかなわけで。
で、日本。
ラテンアメリカから20年遅れて、新自由主義を積極的に導入したのが、このザマというのは、まあ、皆さんご指摘の通りであります。ただ、ラテンアメリカ以上に、「国内消費」というのは日本の産業の中でもそれなりの比重を占めているので、ボディブローの効き方はもっとじわじわ内臓にくるでしょうね。
それにしても、近畿厚生局麻薬取締部の馬鹿さ加減なんとかなりませんか。
http://www.47news.jp/CN/200904/CN2009041001000410.html
これからは、ラスベガスを舞台にしたハリウッド映画も禁止になるかもしれませんし(オーシャンズ・シリーズ好きなのにな)、芥子の実ののったあんパンも、あれを芥子の実といってはまずいのでしょう。コカコーラには撤退していただくしかないでしょうね。
(ああ、でもラムを割るのは、ペプシよりコカコーラがいいんだけどな)
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インターネットで閲覧できる日本語で書かれた「新自由主義」経済政策についての解説では、世界で最も分かりやすかったです。ありがとうございました。
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