ゴキブリと革命


さて、昨日話題にしたクカラチャ。
じつはかなりのヴァージョンがあります。
いわゆる一番知られているヴァージョンが、例の「マリファナがきれたから、もう歩けない」というやつ。メキシコ革命の時代に、北部のフランシスコ(パンチョ)・ビーリャ軍の兵士達に愛唱されたとされるものです。
このヴァージョンは、このあとこう続きます。(※チワワはビーリャ軍の本拠地、ハリスコは美人が多いといわれるところです)

笑っちゃうのは、シャツを脱いだパンチョ・ビーリャ
ビーリャ軍が来たから、カランサ軍は逃げちゃったよ

カランサの髭で紐を編んでやろ
パンチョ・ビーリャ様の帽子につけるため

毛布ならサルティージョ、兵士ならチワワに限る
女ならハリスコ、愛するならどこでも!


で、私の手元に今あるのが、たぶんそれより古いと思われるもの。たぶん19世紀末の歌本。
(なんで八木がそんなものを持っているのだというツッコミは不可ね。べつに博物館を襲撃したわけではありません)
こちらでは、

ラ・クカラチャ、ラ・クカラチャ、もう歩きたくない。
もう使えるお金が、ぜんぜん無いんだもの

可哀想なクカラチャ、服もよれよれ
アイロンをかける石炭もないから

糊もかけてない服を毎日着て
肉が値上がりしたから
ステーキとビーツももう食べられない

お金がないから野菜ばっかり
灯油が値上がりで買えないから
燭台もつけられない

.....と、革命前のポルフィリオ・ディアス自由主義経済下での「負け組」庶民の困窮がかなり具体的に延々と歌われております。
これはけっこう笑えない。100年前のこととも思われません。まあ、アイロンに石炭は入れないけどさ。
そして最後は、こう締めくくられます。

泣かないで、クカラチャ、もうすぐ肉の値段は下がる
もうすぐ言ってやるぞ、貧困は終わりだと
だから俺は別れを告げに来た
遠くないうちに戻ってくるよ、愛する娘よ


つまり、ここではクカラチャは「貧しい庶民の娘」で「革命に赴く男」の歌ですね。
ちょっと泣かせる革命歌であります。

こういう物語歌は、ほんとに昔からあって、独立戦争ねたからあります。革命ネタだと、英雄達を称える歌から、一兵士の歌、どこぞの戦況を伝えるものなど、それを集めるだけで本が何冊もできてしまうぐらい。
要するに、メキシコの革命歌というのは、物語歌で、テレビやラジオのない時代に、歌で物語や事件を伝えていたわけです。

この革命前夜の時代から、革命の間にかけて、「ぺらぺらの紙に革命歌の歌詞と銅版画の挿絵」が印刷された歌本が、一部1センタボで、街路で売られ、庶民に浸透していったわけですね。
その銅版画こそ、後にメキシコ近代絵画の父といわれる、グァダルーペ・ポサーダのものです。

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