死者の日がやってくる


ふふふ
さすがに死人ネタはあまりコメントがつきませんなあ。

日本においては「死」は「ケガレ」であり、忌み嫌われ、なるたけ触れないようにしていたという文化的土壌が根強くあるからでしょう。

中世日本で、いわゆる芸能人が「流浪の民」として、特殊な扱いを受けていたのも、村々をめぐって、「ケガレ」を運んでゆくという意味合いがあったからだそうな。
「河原乞食」の河原とて、昔は処刑場だったところであることとは無縁ではない。

ところが、これがメキシコになると「死」はケガレではなくて「ハレ」なのですね。
これは、古代のマヤやアステカの時代、死とは「人間が太陽に近づくための、名誉ある、聖なること」と信じられていた名残でしょうか。

もちろん家族や恋人や友人が死んでしまったら、メキシコ人が悲しがらないわけではなく、その別離の悲しみの感情は同じなのですが、そのあとの死者、つまり、日本だと「霊」になってしまうものの感覚が違うのですね。

日本だと死はケガレだから、基本的に霊というのは悪霊であって、祟りをなすもの。退治し、追い祓うもの。ちゃんと供養しないと肉親や配偶者の霊といえど怖ろしい、という感覚は古事記のイザナギ、イザナミ伝説でも見られます。

メキシコの場合は、戦士の魂は美しい蝶々になって死者の日のころに帰ってきます。
これはアステカの伝承。
そして、骸骨たちはリボンやフリルをまとったドレスを着て、羽根帽子をかぶって、歌って踊って、愉しい宴会をする。(これは植民地時代~19世紀のモティーフですね)

それに加えて、昨日の詩でもそうだけれど、スペイン語では「死 La Muerte」は女性名詞なので、イメージとしては女性。
ゆえに、死神のイメージも、鎌を持った不気味なオッサンなどではなく、雪より白いドレスに身を包んだ、エレガントな貴婦人。

その美女に誘われて死んだら、もう身分も階層も義務も貧困もしがらみもない。美醜さえ関係はない。
みんな自由に着飾って、遊び放題ってわけです。そういう死があると思うからこそ、生もまた救われる。
だから、メキシコでは、そういう骸骨のモティーフ(時には模型)を家に飾ったり、髑髏のグッズを飾るのは、「とっても縁起のいいこと」なんです。

死者の日には、広場やホテルや会社のロビーなど、人々の集まるところには、死んだ有名人やまだ生きている人たち(近所の人やスタッフなど)のお墓が作られます。
蝋燭とお花と切り紙でそれはきれいに飾られて、ある意味、クリスマス・デコレーション以上に、気合い入りまくり。
(というか、10月に入ったら、メキシコ人はそれは熱心に、死者の日の飾りつけの準備を始める)

さすがに首都圏では最近あんまりやりませんが、教会では松葉を敷き詰め、薔薇やマリーゴールドを飾り、松ヤニのお香を焚いて、髑髏をずらりと並べ、昔は鶏を生け贄にしたりもしたもんです。
(あの、それカトリックじゃないと思うんですが)

じつはメキシコシティというのは、ポルトガルのファティマやフランスのルルドと並んで、聖母マリアの出現をバチカンが認めた、カトリックの3大聖地のひとつなんですが、ヨーロッパのカトリック陣営があまり触れたがらないのは、こういうところが問題なんだろうな。

こんな歌もあります。

 私が死んだら窓の外に埋めてね
 愛する人が、毎日見つめてくれるよう
 それから薔薇をたくさん植えておくれ
 私のお墓から、
 春の香りが立ち上るように

これも、明るくて綺麗なメロディの曲。

そういうノリについて行けるか、もう生理的に駄目かで、メキシコに合うか合わないか、のリトマス紙になるのですが....
とはいえ、最初は気持ち悪いとか、ついて行けないとか言っていながら、だんだんはまる人も....。

ま、それはともあれ、2日のライブ、せっかくなので、死者の日ネタで行こうかなと思っているここ数日。
六本木ノチェーロです。詳細はプロフィルページをどうぞ。

http://mixi.jp/show_friend.pl?id=5356007

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