愛と死

死者の日で、またまた思い出した話。

オアハカのテワンテペック地峡のあたりに、サポテカ語という言葉を話す人たちが住んでいます。フリーダ・カーロのファッションでもおなじみの、美しい刺繍のある民族衣装でも有名なところ。そのあたりの歌で、「最後の言葉」という、美しい歌があります。

>あなたに別れを告げようと、
>私のくちびるはわずかに開く
>私の心はどうなるの
>私があなたから離れていくのであれば

>どうか、一緒に来て、いとしい人
>私と一緒に同じ道を歩きましょう....

という歌詞で、私はずっと、これは別れのラブソングだと思っていました。
別れを告げつつ、思い切れない。で「やり直せない?」みたいなことを言っている歌だと。
で、これまたとても綺麗なメロディで、一時、レパートリーにしていたのですよね。

ところがあるライブで、お客さんで来ていらしたメキシコ人の方(それも神父さん)が、あとで楽屋にいらして、衝撃の事実を告げてくださったのです。

いわく。
自分もずっと忘れていたが、じつは自分は田舎のインディヘナの村の出身で、確かにこの歌を、子供のころに聴いてよく知っていた。何十年ぶりに聴いたことか。.....これは、サポテカのお葬式の歌だ。

\\\\\(゚O゚)/////

まあ、まさか京都で、サポテカ語をわかる人に会うと思わなかったけど、そういえば、私が知っているバージョンのうちのひとつ
(で、サポテカの歌手がサポテカ語で歌っている、たぶん原典に近いもの)は、お祈りの文句のようなものをかすかにBGMに流しながら、太鼓とバリトンサックスの伴奏だった。

(註:この地域は、先住民系の人たちが演奏する、ブラスバンド音楽で民謡の伴奏をすることが珍しくない。これは、ナポレオン三世がメキシコを占領したときに持ち込んだフランスの軍楽隊の音楽が土着化したもので、独特の哀愁があります)

で、ここ数日、メキシコ人の死人ネタに馴染んでいらっしゃる方はもうおわかりでしょう。
そうです。
これは、ほんとは「死にゆく者が生者を連れて行こうとする」歌だったんですよ~!

そういえば、この地域の歌としてかなり知名度の高い「ジョローナ」(これも八木歌ってますが)も「泣き女」。
つまり、お葬式の時の泣き女から来ています。歌詞も、(じつはいろいろなバージョンがありますが)

>>墓場の花は何を思っているのだろ
>>風が吹いたら揺れる姿は
>>まるで泣いているようだ

なんてのがあって、十分、縁起悪さの点では合格ライン。(どういうラインだ)

さらにメキシコの歌として世界でもっとも有名な歌である、「ベサメ・ムーチョ」。
あれも、ただのラブソングではなくて、死にゆく恋人に別れを告げる歌。重病で死にかけている恋人に「これが最後のように、熱くたくさんキスして」という曲です。
みなさん、結婚式の余興などでうっかり歌わないようにご注意ください。(註:祝福したい新郎新婦の場合)

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