で、トローバ

まあ、キューバの繁栄はよいことなのでして、べつに昔は良かったみたいなことを言うつもりはまったくないのだけど、それにしても、前述のごとき「にわかキューバの友」の中には、うんざりするような手合いがいないではない。

「でもさ、そういう連中っていつでもいるじゃん」
と、2世代目トロバドールのペペ・オルダース。
「80年代のヌエバ・トローバの全盛期に、トローバが何かもわかっちゃいないくせに、人気目当てにスタイルを真似て、トローバを名乗るやつがぞろぞろ出たこともあった.........ほら、誰とは言わないけどさ.......ださい詞につまんない曲つけてた、あの人とか」
その発言に、思い切り苦笑しながら、誰も否定しない、その場にいる他のトロバドールたち。
はいはい、いましたね、そういう人たち。お互い実名はあげないけど、明らかに同じ顔を思い浮かべているよな。(大爆)

「で、そういう奴ってさ、旨味がなくなると、すみやかにどっかに消えてくれるから」
まあ、確かにそうなんだけどさ。(笑)

いま、ブエナビスタのヒット以来、流行の中心はオールドスタイルのソンに向かったので、修復されて綺麗な観光スポットに蘇ったハバナ・ビエハのレストランやカフェでのライブも、ほとんどこのタイプ。
かの「フロリディータ」でまで、6人編成のバンドでソンをやっていたぐらいだ。
「ボデギータ・デル・メディオ」や「パティオ」ならわかるが、スノッブな格式を売りにしていた「フロリディータ」でソンは違うだろうに。
ま、一見さんの観光客は喜ぶのだろうし、だから、なんだろうけどね。

で、いま、シルビオやパブロの人気は衰えていないとはいえ、全体としてトローバが、外国で出稼ぎして一番儲かるジャンルではなくなるようになると、そういう人たちは、さっさとラテンポップスやチャングイに鞍替えするわけね。
ただ、ソンはキューバ人ならすぐに歌える(日本人でも練習すれば歌える)が、トローバはそうではない。トローバの本質はリズムでもスタイルでもなく、生き方であり感じ方だからだ。

で、そのトローバは下火になったのか?
かつての古きトローバは30年代から40年代に全盛期を迎え、その後、ペドロ・イバニェスは、1960年にこう歌った。
「トローバが死んだなんて、嘘をつくなよ。トローバは死ぬことはない。トローバとは歌う人と聴く人の魂にあるものだから。ちゃんと私の歌を聴いてごらん。トロバドールたちは生まれてくる。そしてトローバは不滅だ」

その数年後、当時の若い世代から、ヌエバ・トローバが生まれたのだ。それがキューバという国の土壌なのだ。

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