必要とされる歌....消費される酒

奇しくも、クバディスコの裏メニュー的な感じで、カサ・デ・ラス・アメリカス会館で、面白い催しがあるという。

「明日、ビクトル・ハラのドキュメンタリー映画の上映会があるんで、是非行くといいよ」
ほおお。それは興味深い。でも、なんでこの時期に、ビクトル・ハラ?
(ていうか、去年から、この方の出番がすごく多いような気が)

「で、そのあとにヌエバ・カンシオンのライブもあるから。トローバ陣営も出るし、南米からもお客が来て」
「南米からって?」
「ウルグアイのダニエル・ビリエッティとアルゼンチンのセサル・イセージャ」

ダニエル・ビリエッティといえば、「鉄条網を切れ」などの代表作のある、ウルグアイを代表する左派の歌い手だ。ウルグアイ軍政時代に逮捕投獄されて、亡命もしていた人。
セサル・イセージャのほうは、メルセデス・ソーサの演唱で有名な「みんな一緒の歌」などの作者。
ちなみにキューバ側からは、ビセンテ・フェリウ+若手陣営が迎撃だそうで。
あれれれ。そらあ、行かにゃなりませんわな。

で、行ってみると、イベントのタイトルは、「Primer encuentro de la cancion necesaria」。
日本語にすると、「第一回『必要とされる歌』の集い」という感じか。

ビクトルのドキュメンタリーは、チリのビクトル・ハラ財団が1999年に制作したもので、私はすでに見たことのあるものだったが、大きな画面で見ると、やはり感慨がある。いまでも中南米で「必要とされる歌」の象徴がビクトルということだろう。
もちろん、このカサ・デ・ラス・アメリカス会館は、生前のビクトルがキューバ公演をしたときに歌った場所でもある。

そして、ライブ。

というか、その前に楽屋に乱入。
「あれっ、八木じゃん。ハバナにいたのか」
と、ダニエル・ビリエッティ先生。記憶力の良い方だ。
「随分前に、メキシコのモデスト・ロペスの家で宴会やって以来ですよね」(*^_^*)
「いや、違うね。そのあとにルベン・オルティスの家で会っているよ」
にこりともせず、朗々たるバリトンでビリエッティ先生。
ちなみに、ルベン・オルティスは、ビクトル・ハラの歌った「チェのサンバ」の作者である。ぜんぜん忘れてた。......ひょっとすると酔ってたかもしれない。

それにしても、記憶力の良い方である。それって5年ぐらい前のことだよね。
「あのとき、新しいCDが出たから、あとで送ると言ってそれっきりになっている。私は待っていたのだが」
ひぇぇぇぇぇぇ~。すいません。平にご容赦。送ります。ちゃんと国際宅急便で。今度はほんとに。
キューバまで来て、アッチョンブリケ状態の八木である。

(といいつつ、6月10日現在、まだ送っていない八木。明日送らなくては)

「何かお飲みになりますか?」
とお部屋のケータリング担当のおばあちゃんに言われたので、気を取り直して
「あ、どうも。じゃ、ラム酒を少々」

「ああっ」とおばあちゃんの悲鳴。
「えっ」と八木。

「いまここにあったラムが.....」
そこにあったのはただの空瓶であった。
「いま、ほんとにここにあったのよ。ほんのちょっと前まで、一杯だったのよ」
で、振り返ったら、空になっていた、と。

いや。それは.....。
トロバドールがどっさりいる部屋にラムを置いて、一瞬たりとも目を離したら....だな。(激爆)

「まだライブは始まっていないのよ」と、しょんぼりするおばあちゃん。
「それなのに、用意したラムがみんななくなってしまったわ」

みんな、かよ。こいつらはピラニアよりおそろしいな。

で、清涼飲料水(トロピコーラ)を飲んでいると、他のトロバドールたち(なぜか出演予定でない人たちもわらわらいるのだった。ま、私もそうなんだけど)が声を掛けてきた。
「あれ、コーラ飲んでるの?」
「うん。ケータリングのラムがもうなくなっちゃったんだって」
「おやまあ。じゃあ、そのコーラ、ラムで割る?」
どこからともなくボトルは回ってきて、私のグラスに適量注ぐと、おばあちゃんの見ていないうちに、ボトルは手品のようにどこかに消えるのである。
.......君らなあ。

確かにトローバは不滅である。少なくとも、ラムのある限り。

で、ライブ。
ビセンテ・フェリウが司会進行を兼ねる。
ビセンテが一曲歌っては、出演者を招く、というトロバドールのスタイルである。
最初がセサル・イセージャ。ギター一本で、アルゼンチン風味も一杯に、名曲の数々を歌ってくれた。
続く、ビリエッティは淡々とした歌い口ながら、貫禄でスタンディング・オベイションを誘う。
そして、別の楽屋にいたらしいエクアドルのヌエバ・カンシオンらしき人たちが続き、チリのフランシスコ・ビージャ。

「いや、芸名じゃなくて、こいつほんとにそういう名前なんだ」
とビセンテが楽屋で紹介してくれた明るい青年だが、これがですね、意外にといっては悪いですが、かなり良かったですよ。名前がメキシコ革命の英雄と同姓同名ってのは、微妙だけど。
http://www.franciscovilla.cl/

それから、サラ・ゴンサレスのライブでも会った若手のトロバドールたち。
大御所から、若い世代に歌は引き継がれるという感じで、ライブは終わった。
これが第一回だから、二回目もあるのかな。

「このあとトロバドールの宴会だよ。もちろん来るだろ」と言われたが、翌日の飛行機が早朝6時フライト(空港に4時だぜ)なので、辞去して帰宅。
「どうせなら、宴会モードで一晩起きてりゃ良いじゃん」
やだよ。泥酔したやつに空港に送ってもらうのは。

帰宅先は、クラシックの女性指揮者で親友のセナイダ・ロメウのおうちである。
私が呑み歩いてばかりいるので、家に泊まっているのに、ゆっくり話も出来ていないんだもんね。滞在最後の夜は彼女と語り明かすことになってたのさ。

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