7月のキューバ男たち・2


というわけで、やってきたのが、陽気な5人の革命派キューバ男たちだったわけ。

ヌエバ・トローバ(新しいトローバ)といっても、60年代末から70年代初めに起こった運動である。
砂糖黍刈りのマチェーテ(山刀)とギターをもって独立戦争に行っていた男たちが始めたのがトローバであるから、機関銃とギターの革命の時代の若者(当時のね)が始めたのが、ヌエバ・トローバ。

いずれにしても、トローバと同じくヌエバ・トローバも時代の中で、自然発生的に生まれた。
なんとなくギターを取って歌い出す若者たちの動きが潮流となり、風の噂で互いを知り、旅人に家で作ったカセットを託し、仲間を増やしていった。
それがやがて、文化運動として国に認められ、補助を受けるようになっても、その本質は変わらない。

なんで「ヌエバ=new」なんてのをつけたのかといえば、「だから、そのときみんな若かったし、若い時ってバカだから、いずれ自分が年を取るなんて考えてなかったんだよ」(シルビオ・ロドリゲス)。
プロジェクトということで国の助成金をもらうのに、なんかそれらしい名前をつけなくちゃいけなかったので、ラム酒でぐでんぐでんになりながらみんなで苦しまぎれにつけたというのが実情らしい。

しかし、70年代初頭に青年だった人たちだから、いまや立派なおっさんである。
それが3人も揃うと、「ヌエバ・トローバ・ソシアル・クラブ」((c)ラサロ・ガルシア)みたいでもある。
かつては可愛かったアウグスト・ブランカは、風船みたいになっているし、セクシーな色男だったラサロ・ガルシアは完全に爺さんと化している。歳月はおそろしい。
(それをいうなら、このたび来日はしなかったが、あの頃はあんなに素敵だったあの人もだな.......いや、そういう私も、かつては元気なコムスメだったが、いまではおばさんに.......orz)

ただ、かなり若い頃からヘアスタイルに難があった(つまりお茶の水博士みたいな頭だった)ため、30代の頃から、えらくおっさんくさくて、そのルックスのせいで、明らかに大分損をしていたビセンテ・フェリウ本人は、年を経て、きれいにスキンヘッドになっていたため、ちょいワルな風情さえ醸し出し、腹は出ているものの、60直前としては結構悪くなかったというのは、一部の人に希望を与えてくれたと思う。.....一部の人に限られるとは思うけど。

古きトローバが恋の歌で、ヌエバ・トローバが政治的と、勝手に分類して誤解している人も少なくないが、古いトローバにだって政治の歌はかなりあるし(たとえば初期の労働組合闘争の歌とか)、ヌエバ・トローバだって8割以上が愛の歌だ。政治の歌にしても、べつに革命賛美ばかりしているわけでもない。ソ連製のテレビもベルリンの壁崩壊も、もっときわどいことも平気でネタにされてしまう。
要するに、彼らは、社会に起こっていることや自分の感じたことを、言の葉とギターを操って歌う吟遊詩人(トロバドール)だからだ。

キューバ音楽の中で、ソンが踊り系、トローバは叙情的な音楽としての別の系譜、と思っている人もいるが、それも誤解。
ソンもトローバに含まれる。ただ、ギター一本だと叙情的にならざるをえないだけ。同じ曲でも多人数で演奏して、派手に編曲したら踊れるようになるというだけ。
........というあたりは、HAVATAMPAのライブを聴いたことのある方ならおわかりかもしれないが。

で、そのトロバドールが4人いると、すごいことになる。
始終歌っている(しかも一人が歌い出すと、皆即興でハモり出す......某観光地で雨が降り出したとき、「雨に唄えば」を歌って踊り出したときは、さすがに八木も引いた)のは当たり前として、とにかく好奇心とテンションが高い。
革命派キューバ人であるため「田舎もん」とみられることを恥ずかしいと思うどころか売りにしていたりするから、自分の失敗談を語って、笑いを取るのも大好きときている。
珍妙な英語でホテルのフロントのお兄さんをひくひくさせるのは、ほぼ毎日だし、ウォシュレットがどういう仕組みか確かめようとして、顔面シャワーを浴びるのなんぞ、もう着いた当日すぐの出来事であった。
            写真:ビセンテ・フェリウ by 岡部好

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