7月のキューバ男たち・4


それにしても、連中は元気である。
まあ、日本に来たのははじめてだからわからないでもないんだけど。

そして始終、脂っこいものを食い、冗談を言いまくっている。
彼らの辞書にメタボリックシンドロームという言葉はないのだろうか。

もちろん、彼らの大半はコレステロールや中性脂肪の問題は持っている。(そりゃ、あれだけハラが出てりゃあな)
そもそも、キューバ料理そのものが脂っこい。
だいたいか豚肉や鶏肉を揚げたようなものが多いし、それにくわえて、一日に何回も飲むエスプレッソコーヒーには「正気とは思えん量((c)写真家岡部氏)」の砂糖を入れ、甘いものは大好き、さらに、酒、タバコときている。しかも野菜をあまり食べない。
ついでにいうと、揚げ油も植物性ではなく、たいていが動物性のラードである。
日本でも、寿司とか刺身系より、トンカツ、天ぷら、ステーキ系のものを毎日食っていた。

「確かにキューバの食生活はものすごく体に悪いと思う」と、アレハンドロ君。
「僕は日本に来て、しみじみそれを感じたなあ」
(といいながらも、こいつも毎日、油ものを食っていたのは言うまでもない)

それで私はつねづね不思議なのだが、あれだけ体に悪い食生活していて、なんであいつらは長生きなのか?
キューバの平均寿命は先進国の水準と比べても高く、しかも老人ボケも少ない。
もちろん、革命政権下で、ものすごく完備された医療システムというのはあるだろうけど....。

「ストレス溜めないからじゃない? 俺等は」とアウグスト。
「なんでも笑いのネタにしてしまうのさ」

「体に悪いといえばさあ」と、さっそくペペ・オルダスが始める。
「スペインのタバコの箱って、強烈だろ?」

うんうん。日本だと、「喫煙は健康に害を与えます」と箱に書いてあるよね。最近はキューバですら「妊娠中の女性にはタバコの煙は害を与えます」みたいなことが書いてある。
ただ、これがヨーロッパに行くともっとすごい。スペインとかポルトガルだと、ほんとに「喫煙は癌の原因です」なんてズバッと書いてあるもんね。

「でさ、俺のダチがこないだスペインに行って、タバコ買いに行ったらさ」

タバコ売りのおばちゃんが渡してくれた箱には「喫煙はイン○テンツの原因になります」と書いてあったのだという。
おおっ、なんとストレートだこと。

で、その箱を受け取ったキューバ男はどうしたか。
「あっ、すいません。癌のやつと替えてください」

         orz.....

恋愛と笑いが彼らの原動力であるらしい。
ただ、それがただの脳天気ではないのも確か。
まあ、確かにキューバ人は、まともに考えるとストレスの高い経験を始終しているわけで、明るくないとやってけないだろう。

ここ10年ぐらいでキューバを知った人たちは、ここ数年のキューバの変化を「大きな変化」と感じ、カストロの健康問題がキューバにとって大問題であるかのように質問する。
でも、90年代初頭の、ソ連東欧圏が崩壊し、それに加えてアメリカがなんとしてでもキューバを崩壊させようと経済封鎖を強化してあらゆる圧力をかけたために、キューバが深刻な食糧と物資危機に見舞われた「特別な時代」を知っている人間から見れば、ここ数年の変化なんて大したものではないし、べつになんてことでもない。
そういうときに尻馬に乗って、ごく普通の日本人だって、キューバをバッシングしていたのだよ。ちょうど、寄ってたかってイラクの日本人人質をバッシングしたみたいにね。
アメリカ合衆国で、中米で、南米で、韓国で。キューバに頻繁に行っていたというだけで、私だって、何度も身の危険を感じるような目に遭わされたものだよ。

でも私の経験など、大したものでもない。
親父さん世代は、キューバ革命そのもの、キューバ危機、70年代の冷戦が深刻化していた時代、のそれぞれの時代に、何度もいろんな覚悟をしながら、それでも歌い続けて生きてきた人たちなのだ。

ま、話戻って、そんなわけで、彼らの冗談はきつい。
ついでに言うと、カストロネタのジョークも多い。
カストロをネタにしたジョークを連発してげらげら笑っているからと言って、現政権を嫌っているのかと早とちりするのも、もちろん、大間違いなわけで。そのへんが、平和ボケしている日本人にはわかりづらいキューバ人の感覚がある。
           (写真:ラサロ・ガルシア by 岡部好)

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