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明治という時代は、そもそも愛国なのか?

 さて、メキシコからこれを書くのもアレだが、私は日本という国が好きである。
 もっとはっきり言うと、好んで和食も料理するし、着物を着るのも好きだし、(最近知ったのだが、司法記者クラブで、和装で記者会見したのは前代未聞だったそうである)日本の文化を愛しているので、私は愛国者であると思う。
 とはいえ、「日本の文化とは何か」ということを定義するのは、甚だ難しい。

 日本文化は、縄文文化のあとに大陸系の弥生人が入ってきて、さらに、その後の飛鳥や奈良の時代に、中国や半島の影響を受けて生まれてきたものだ。とはいえ、その後も、中国やシルクロード地帯の文化、さらに、南蛮文化と呼ばれた、スペイン・ポルトガル文化の影響も多少受け、鎖国と言われていた江戸時代でさえもオランダを通じて入ってきたヨーロッパ文化は入り込み、取り込まれてきていた。
 雑食しながら、独自の美意識を作ってきた文化なのである。

 だから、明治維新の時代以後は、富国強兵の名のもとに、ためらいもなく、きわめて積極的に「欧米列強」の文化を取り入れた。

 で、その「明治時代」を模範として、それに憧れ、習おうというのが、今の一部日本での、自称「愛国保守」の方々であるらしい。

 しかし、はっきり言おう。
 明治時代とは、日本文化より、欧米文化をありがたがり、お雇い外人に法外な高給を支払っていた時代である。文部大臣ですら「日本語廃止論」を唱え、廃仏毀釈の名のもとに、奈良・飛鳥・平安時代以来の日本の伝統である仏像を多数破壊するなどタリバンみたいな所業を行い、さらに伝統ある天皇家の方々に和装ではなく、イギリス式の洋装を着せるなど、それこそ「反日」の極地みたいな時代であったということは忘れてはならない。
 その時代に憧れている時点で、そういう連中の正体こそ、よほど反日ではなかろうか。

 そう思っていたところで、稲田防衛大臣のこの発言である。

「教育勅語の精神である親孝行や、友だちを大切にすることなど、核の部分は今も大切なものとして維持しており、そこは取り戻すべきだと考えている」
「教育勅語の精神である、日本が高い倫理観で世界中から尊敬される道義国家を目指すべきだという考えは、今も変わっていない」

 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170308/k10010903641000.html

 実際に、子供にこの教育勅語を唱えさせるような幼稚園の教育に感動して涙をながすような人物が首相夫人であり、そういう学校が、「役人の忖度」やらなんやらで、常識的にありえないような優遇を受けてきたというのだから、そういう感覚を持っている人が、いまの内閣では多数を占めているということなのだろう。

 しかしね。教育勅語って、稲田大臣はちゃんと読んだことあるんでしょうかね?
 教育勅語のキモってのは、十二か条の締めの部分、「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」以外の何物でもないでしょうか。

 「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」。現代語訳すれば、「危急の事態が生じたら、勇気を持って公に奉仕し、それによって永遠に続く皇国を支えましょう」
 すなわち、ズバリ、滅私奉公。


 この条文こそがキモだったのであり、だからこそ、戦後全面否定されたのだということを知った上で、この「滅私奉公」を高い倫理観だの取り戻すべきだのと行っているのだとしたら、これは、もう、完全に民主主義や主権在民の否定であり、現憲法の否定なのだから、暴走もいいところである。

 親孝行だの夫婦は仲良くだの友達を大事にしましょうなんてのは、別に日本独自の考え方でも高い倫理でもなんでもありゃしません。日本の国ができるよりもはるか昔に、モーゼやら孔子が説いていることです。日本独自の思想などと言ったら、もう世界中から失笑の渦でありましょう。実践的には、ラテン系の人間のほうが、よっぽど日本人より親を大事にして、夫婦は仲良くして、友達を大事にしますよ。

 それとも、朋友相信シ(友だち同士は信じ合いましょう)だから、「お友達」には便宜を図るってことなんでしょうか。
 それならば、孔子もこう説いています。「不知其子、視其所友(其の子を知らざれば其の友を視よ)」 
 お友達がどういう人かを見れば、その人がわかる、とね。
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