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冤罪事件とは、「真犯人」を警察と検察が逃がしたということですよね

 さて、ふだん冤罪問題には無関心な世間も、さすがに昨日からは、袴田さんの件が多少話題になってます。世界的にも、BBCから果てはニカラグアまで、幅広く報道されていますね。なんといっても、ギネスブックに載っている「死刑囚」でしたし、日本の刑事司法の異常っぷりが世界に周知されるのは、日本の恥ではありますが、自浄能力のない人たちにとっては、重要なことです。
 なんといっても、静岡地裁の再審決定で、「捜査機関によって捏造された疑いのある証拠によって有罪とされ、死刑の恐怖の下で拘束されてきた」「これ以上拘束を続けることは耐え難いほど正義に反する」とまで言われちゃったわけです。
 http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG27014_X20C14A3000000/

 もはや、裁判所でも、まともな裁判官になら、警察・検察が証拠を捏造することは、デフォルトと認められちゃったってことでしょうね。

 で、たまたま、昨日あたくしは、某検察関係の方とお会いしておりまして、その方は、「なにぶん、戦後のことだから、まだ、警察も検察も特高体質だったんでしょう」などと、やや苦しい言い訳をしておられましたが、だったら、袴田さんの拘置停止や再審に対して抗告するなよな、と言いたいですね。
 まあ、そこが、「間違っているとわかっていても引き返せない体質」、ということなのでしょうが、そういう体質だからでは済まないのですよ、私たち国民は。
 そもそも、そのせいで、袴田さんは人生を狂わされただけではありません。真犯人は見事に逃げ切ったといえるわけで、犯罪捜査をするどころか、真犯人を助けちゃったんですよね、警察と検察は。そんなんで、正義などとは抜かしてほしくないもんです。

 そして、もうひとつ。この袴田事件のように、明らかに間違った捜査が行われたり、証拠が捏造されたとしか考えられないことが判明しても、当時の警察・検察関係者が断罪されることはないのです。だから、ある意味、やった者勝ちになっちゃうわけですね。
 あの、田代元検事の虚偽有印公文書作成のようなバレバレの事件ですら、検察官は不起訴になってしまう。それはまさに、警察や検察の犯罪を捜査する機関がないからです。
 また、こういった冤罪事件の場合、第三者機関によって、しっかりした検証を行うことが不可欠であると思います。そこをうやむやにして、袴田さんが無罪になっておめでとう、で終わってしまわせてはなりません。

 とはいっても、検察も警察も自浄能力はないのは露呈していますんで、そこは立法府に頑張っていただきたいところですが、とはいえ、安倍ちゃんの自民党では無理っぽいのが残念です。みんなの党の渡辺氏も、公職選挙法違反や政治資金規正法というかたちで刑事罰に問われる可能性は微妙としても、倫理的な意味でのダメージは巨大ですから、もう「みんなの党」は失速でしょうし、維新は崩壊寸前ですし、といっても、もはやいまの民主党じゃあねえ、みたいな。

 そして、今月末に決定が出る飯塚事件の再審請求では、犯人とされた久間三千年氏は、一貫して無実を訴えつつ、死刑執行されています。この場合はいったいどうなるのか?
 
 前田恒彦元検事のケースのように、裁判でまったく使われていない証拠ですら、改ざんしたら2年の実刑なのです。裁判で使われた証拠を捏造したらいったいどうなるのか。検察・警察性善説であるがゆえに、そういった罪が、刑法に規定されていないのも問題です。(まあ、強いていうなら、特別公務員職権濫用罪ということになるわけですが)

 むろんこれ以外にも、冤罪の疑いのある事件は多いのですが、現在進行形のPC遠隔操作事件も、目が離せない展開となっています。

 たとえば、犯人は2012年11月13日と2013年1月4日の神奈川新聞を必ず入手できた人間でなくてはなりません。
 しかし、東京都内で神奈川新聞が入手できる場所は限られていて、11月の分に関しては、片山さんが分倍河原の派遣先に行っていた際に、その先の(同じ分倍河原の駅ではない)売店で購入したというのが検察の主張なのですが、なぜか、そのSUICAの履歴は、証拠として出されていないのです。
 おかしいですねえ。もしも、片山さんのSUICAに問題の売店のある駅までの履歴があれば、動かぬ証拠ですから、検察は出さないはずはありません。
 しかし、逆に、片山さんが派遣先を出て、徒歩で分倍河原の駅に向かい、そこからまっすぐ家に帰っていたとしたら、片山さんが無罪である可能性はむしろ濃厚になります。(共犯者が絶対いないとは限らないので、それだけでは、無罪の決定的証拠にはなりませんが)
 
 もちろん、片山さんが犯人で、分倍河原から問題の売店のある駅までは、SUICAを使わずに切符を買ったのだとしても、そこには往復の時間分の不自然な空きが出るはずです。むろん、派遣先から分倍河原で家に帰る電車に乗るまでの間に、多少の空きがあったとしても、駅前でラーメンでも食べていたかもしれないので、それだけでは有罪の証拠にはなりませんが、それにしても、検察の出しているしょうもない監視カメラのビデオ映像で、どうみてもやっていないガッツポーズをやっていることにするよりは、裁判官の心証を悪くする証拠であるはずです。

 なのになぜ、出さないんでしょうね。
 もちろん、検察は、自分に不利な証拠は出さないという伝統がありますから、きっとそのSUICAの履歴も、検察には都合の悪い時刻が刻印されていた可能性がありますね。
 なんといっても、昨年3月24日の段階で、実は、検察の現場は、片山氏起訴のための決定的な証拠を持っていなかったのに、上の方の決定で起訴しちゃったらしいという内部情報があるのでして(出所は今は言えませんが)、その時点で、検察がSUICAの履歴を調べてなかったはずはないのですよね。

 さらにさらに。
 この一年間、検察はずっと、片山氏の保釈を頑強に阻止し、接見も禁止してきたわけですが、その理由が、「証拠隠滅の疑いがあるから」なんです。
 おかしいですよね。

 実は、警察と検察は、記者たちにはずっと「検察は動かぬ証拠を持っていて、それが公判で明らかになるから、片山は絶対に犯人だ(=だから、冤罪説なんか書くと大恥かくぞ)」と囁き続けていて、それで、この1年間、片山さんのことはあまり記事にならなかったのです。

 でも、そんな「動かぬ証拠」があるなら、片山さんにちょっとぐらい他の証拠隠滅されたところで痛くも痒くもないはずですし、公判でもとっくに出てきているはずです。
 ところが、その記者たちをビビらせていた「謎の証拠」というのが、じつは、「片山さんが猫に首輪をつける瞬間などぜんぜん映ってないビデオ」だったり、結局出てこない「FBIの捜査協力でわかったとかいうDropboxの中のファイルの痕跡」とかなんですよね。

 そして、実際の公判では、検察は何を血迷ったか、証人の方たちに、片山さんが「優秀なプログラマであって、ウイルス作成能力があった」ということを何とか証言させようとしている。
 あのね。片山さんはウイルス作成罪では起訴してないんじゃなかったの?

 もちろん、それを受けた弁護側に「片山さんにはウイルス作成能力がない」という、絶対、論理的には不可能な反論をさせるためとしか思われません。気の毒な片山さんは、公開処刑みたいに、味方である弁護チームから「どんだけ無能か」みたいなことを言われなきゃならない、すごい気の毒な羽目になっちゃったわけです。

 それにしても、片山さんが、仕事の合間に、チョチョッと、あらゆるウイルス対策ソフトをあっさりかいくぐっちゃうような遠隔操作ソフトを作れちゃうほど、ずば抜けて優秀なプログラマなら、どうして、「無実を信じてた」はずの会社社長は、片山さんを解雇しちゃったのでしょう。

 そして、検察側証人として、片山さんにソフトを作れた可能性はあると証言した、LACの社長さんは、もしも、片山さんが犯人だとしたら、もちろん、出所後には雇ってくれますよね。そんな凄いプログラマなんですから。

 とまあ、多少、パソコンに詳しい人間なら、もはやツッコミ放題状態なんですが、それでも、基本的には、検察絶対有利で、かつ、推定無罪じゃなくて、推定有罪の日本の刑事裁判です。片山さんが犯人でないとすると、真犯人が片山さんのパソコンを外部から操作したということを裁判官が納得しない限り、片山さんは有罪となってしまう可能性があります。

 ということで、どうやって、「ウェブサイトというのは...」という説明からしなくちゃならないような裁判官の方に、真犯人が片山さんのパソコンを外部から操作した可能性のほうがむしろ高いことを理解していただくことができるのか。

 やっぱ、実際に、片山さん以外の人でも、片山さんのパソコンに侵入して、偽の履歴を残したりというようなことが、できる人にはできるんだよってことを、誰かに実際に、証明してもらうしかないのかなあ。
 と、ゆーよーなことをですね、などと考えている今日この頃です。

 だいたい、この狭いギョーカイに、「もっと怪しい人」は他にいますよね? ほら、地検刑事部長さんが机の引き出しの奥に突っ込んでる書類の中に。検察に恨みを持ってる遠隔操作のプロ中のプロの方に関するファイルが。

テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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