シンポジウム「検察・世論・冤罪Ⅱ」天皇陛下以外誰でも逮捕できんねん
10分の休憩後、山下幸夫弁護士、市川博弁護士、山口一臣氏、岩上安身氏がコメンテーターとして、登壇されます。

まず山下先生が、語られます。
じつは、この羽賀氏の裁判、自分は密かに注目していた、とおっしゃいます。特に弁護側証人徳永氏の偽証立件と有罪判決について。
そして、検察は、裁判員裁判が始まる前の段階で偽証罪を活用すると方針として明らかにしていた。先ほど話題に上がった2号書面に関して、検察は、取調室で検察に有利な調書を作る。そして、その(検察側)参考人に、法廷で調書と違うことを言ったら偽証罪でアゲるぞと脅して、調書通りのことを言わせる目的があるのが、「証人テスト」の意味。
もちろんそれでも供述を翻しても、その場合は、供述調書が採用されるわけだが、その状況を防ぐために証人に供述を変えさせないようにするのが証人テストなのである。少なくとも自分が弁護人としてかかわった事件ではそういうことがあった。
そういう意味では、検察は「偽証罪」を昔から利用してきたとも言える。つまり、弁護側証人を偽証罪で立件・逮捕こそ滅多になかったが、検察側証人を脅して、検察に都合の良い証言を変えさせないために、偽証罪は活用されてきた。
(また、にこやかに微笑みながら、なにげに語られている内容が凄いことです)
山下弁護士は、徳永氏が逮捕され、このときに週刊朝日が掲載した記事を読んで、これは危ないと思ったそうです。このことで、羽賀氏の逆転有罪はあり得ると考えており、むしろ、なぜ、後藤弁護士があんなに(無罪に)自信満々なのかわからなかった。
ただ、この徳永氏の判決をとってみたところ、確かに判決では偽証を認めているが、それは徳永氏と羽賀氏との関係性(知人か友達か)を偽証と言っているに過ぎず、肝心の証言についての真偽を明確にしたものではない。
それどころか、判決文では「被告人がおこなった偽証は、時期等において、明らかに客観的事実に反しており、かつ、その点は容易に立証することができると思われるのであって、その内容自体は巧妙とは言えず、この点で刑事司法を誤らせる高度かつ具体的な危険があったとは言えない」つまり、大した偽証じゃないと言っている。(会場から笑い)
だから執行猶予でもあり、立件するほどのことではないと言外に言っているような判決。
それをあえて立件し、さらにその有罪判決を羽賀さんの事件で有利に使って、判決をひっくり返すという検察のやり方には大きな問題があったのではないか。そこをマスコミはもっと批判するべき。最高裁で結論をひっくり返すような闘いをしていくべき。
ここで八木が補足。
偽証をしたとされる徳永氏は、盲目で元歯科医であるということで容易に推測されるように、後天的に、比較的最近になって、糖尿病が原因で失明した人である。だから、点字などを読み書きすることもできず、それゆえに、メモを見て確認したりすることはできないので、すべてを記憶に頼るしかない。ましてや事件は数年前のことであり、だからこそ、当然、記憶の細部が多少あやふやであったり勘違いしている部分あることがあるのだが、検察はそのあたりを突いて、徳永氏の記憶そのものに信用性がないとして偽証とした。しかし、人間はさほど重要でないことは、正確に覚えていないのが普通で、そういった細部を突いて、その人の話すべてを信用性がないとするのはいかがなものか。
一方で、これほどの問題がほとんどメディアで報じられなかったはなぜか。実は週刊朝日では少し取り上げていたが。

ここで、山口さん。
自分も詳しく知っていたわけではないが、故梨元勝氏が、ずっと前から羽賀さんが冤罪だと訴えていたが、自分はくわしく調べていたわけではないので、メディアの報道をなんとなく信じ、羽賀さんをうさんくさいと思っていた。週刊誌的には、渡辺二郎・羽賀研二、とくると面白い記事が書けそうと思ってしまう。とくに、渡辺二郎が出てくると、「これはアキマヘンわ」(笑)
しかし、捜査権力などない(メディア取材の)立場で、少し関係者に当たってみるだけでも、いくつかこの事件には不自然な点があることが分かった。たとえば、(渡辺二郎と恐喝の)共謀しているはずの羽賀さんが現場にいない、など。しかし、そういったことは他のメディアには出てこないので、編集長として、現場の記者が思った通りの記事を書かせた。無罪の判決が出た時も記事にしたし、徳永氏へのインタビューも行った。
しかし、たかだか20万部の週刊朝日では世の中に理解してもらえなかった。
「なんとなくうさんくさい」雰囲気を作るのは、大部分メディアの責任。本来、メディアの仕事は権力の監視だが、組織に入ってしまうと、その意識が希薄になり、この事件のようにふつうの感覚なら「なんでこんなことが事件になるんだ」というようなことがわからなくなり、目が曇ってしまう。残念ながら、ジャーナリズムの責任が果たせていないのが現状。
今後どうするべきか、自分自身考えていきたいと思う。
もう一点、八木から補足。前半あえて触れなかったが、羽賀氏はかなりひどい取り調べを受け、殴られ蹴られといったことがあったとも聞いている。その話をしてもらえないか。
羽賀「顔は殴られなかったが、頭を殴られたり、髪の毛をつかんで引きずられたり、太ももを蹴られたり、椅子を投げつけられたり.....そういったことは普通です。二人で交代で罵声を浴びせられたこともある。『おまえなんか刑務所行って野垂れ死んだらええねん』『お前なんかテレビ芸者や』『もともとお前なんか嫌いやったんや』(会場笑)もともと私は、村木さんと違って、グレーというか黒い印象なので、毎日やられました。朝9時から12時5分前まで、1時から5時5分前まで、6時から9時5分前まで、毎日取り調べでした。翌日優しくなったり、写メール取られたりとか」(会場笑)
写メールは、「(羽賀研二という有名人を取り調べていることを)知り合いが信じてくれへんから」証拠として取られたのだそうです。
あと「俺らは天皇陛下以外誰でも逮捕できんねん」とも言われました。
それで、検事の取り調べのときに、こんなことを言われたといったら、検事も口調は丁寧ですが「そうだよ、天皇陛下以外誰でも起訴できるんだよ。ぼくがここでは神なんだ。君の人生はぼくにかかってるんだよ」と言われました。それで「恐喝未遂を認めれば、詐欺(での起訴)は考えてあげる。でも否認するなら、(恐喝未遂と詐欺の)両構えで行く。そうなると君の人生は終わるよ」と言われました。そういう感じの三ヶ月でした。
拘置所では独居房だったので、誰にも会えず、本ばかり読んでいました。
さあ、ここで、先月、衝撃のデビューを果たした市川寛弁護士のコメントです。(続く)
写真・岡部好

まず山下先生が、語られます。
じつは、この羽賀氏の裁判、自分は密かに注目していた、とおっしゃいます。特に弁護側証人徳永氏の偽証立件と有罪判決について。
そして、検察は、裁判員裁判が始まる前の段階で偽証罪を活用すると方針として明らかにしていた。先ほど話題に上がった2号書面に関して、検察は、取調室で検察に有利な調書を作る。そして、その(検察側)参考人に、法廷で調書と違うことを言ったら偽証罪でアゲるぞと脅して、調書通りのことを言わせる目的があるのが、「証人テスト」の意味。
もちろんそれでも供述を翻しても、その場合は、供述調書が採用されるわけだが、その状況を防ぐために証人に供述を変えさせないようにするのが証人テストなのである。少なくとも自分が弁護人としてかかわった事件ではそういうことがあった。
そういう意味では、検察は「偽証罪」を昔から利用してきたとも言える。つまり、弁護側証人を偽証罪で立件・逮捕こそ滅多になかったが、検察側証人を脅して、検察に都合の良い証言を変えさせないために、偽証罪は活用されてきた。
(また、にこやかに微笑みながら、なにげに語られている内容が凄いことです)
山下弁護士は、徳永氏が逮捕され、このときに週刊朝日が掲載した記事を読んで、これは危ないと思ったそうです。このことで、羽賀氏の逆転有罪はあり得ると考えており、むしろ、なぜ、後藤弁護士があんなに(無罪に)自信満々なのかわからなかった。
ただ、この徳永氏の判決をとってみたところ、確かに判決では偽証を認めているが、それは徳永氏と羽賀氏との関係性(知人か友達か)を偽証と言っているに過ぎず、肝心の証言についての真偽を明確にしたものではない。
それどころか、判決文では「被告人がおこなった偽証は、時期等において、明らかに客観的事実に反しており、かつ、その点は容易に立証することができると思われるのであって、その内容自体は巧妙とは言えず、この点で刑事司法を誤らせる高度かつ具体的な危険があったとは言えない」つまり、大した偽証じゃないと言っている。(会場から笑い)
だから執行猶予でもあり、立件するほどのことではないと言外に言っているような判決。
それをあえて立件し、さらにその有罪判決を羽賀さんの事件で有利に使って、判決をひっくり返すという検察のやり方には大きな問題があったのではないか。そこをマスコミはもっと批判するべき。最高裁で結論をひっくり返すような闘いをしていくべき。
ここで八木が補足。
偽証をしたとされる徳永氏は、盲目で元歯科医であるということで容易に推測されるように、後天的に、比較的最近になって、糖尿病が原因で失明した人である。だから、点字などを読み書きすることもできず、それゆえに、メモを見て確認したりすることはできないので、すべてを記憶に頼るしかない。ましてや事件は数年前のことであり、だからこそ、当然、記憶の細部が多少あやふやであったり勘違いしている部分あることがあるのだが、検察はそのあたりを突いて、徳永氏の記憶そのものに信用性がないとして偽証とした。しかし、人間はさほど重要でないことは、正確に覚えていないのが普通で、そういった細部を突いて、その人の話すべてを信用性がないとするのはいかがなものか。
一方で、これほどの問題がほとんどメディアで報じられなかったはなぜか。実は週刊朝日では少し取り上げていたが。

ここで、山口さん。
自分も詳しく知っていたわけではないが、故梨元勝氏が、ずっと前から羽賀さんが冤罪だと訴えていたが、自分はくわしく調べていたわけではないので、メディアの報道をなんとなく信じ、羽賀さんをうさんくさいと思っていた。週刊誌的には、渡辺二郎・羽賀研二、とくると面白い記事が書けそうと思ってしまう。とくに、渡辺二郎が出てくると、「これはアキマヘンわ」(笑)
しかし、捜査権力などない(メディア取材の)立場で、少し関係者に当たってみるだけでも、いくつかこの事件には不自然な点があることが分かった。たとえば、(渡辺二郎と恐喝の)共謀しているはずの羽賀さんが現場にいない、など。しかし、そういったことは他のメディアには出てこないので、編集長として、現場の記者が思った通りの記事を書かせた。無罪の判決が出た時も記事にしたし、徳永氏へのインタビューも行った。
しかし、たかだか20万部の週刊朝日では世の中に理解してもらえなかった。
「なんとなくうさんくさい」雰囲気を作るのは、大部分メディアの責任。本来、メディアの仕事は権力の監視だが、組織に入ってしまうと、その意識が希薄になり、この事件のようにふつうの感覚なら「なんでこんなことが事件になるんだ」というようなことがわからなくなり、目が曇ってしまう。残念ながら、ジャーナリズムの責任が果たせていないのが現状。
今後どうするべきか、自分自身考えていきたいと思う。
もう一点、八木から補足。前半あえて触れなかったが、羽賀氏はかなりひどい取り調べを受け、殴られ蹴られといったことがあったとも聞いている。その話をしてもらえないか。
羽賀「顔は殴られなかったが、頭を殴られたり、髪の毛をつかんで引きずられたり、太ももを蹴られたり、椅子を投げつけられたり.....そういったことは普通です。二人で交代で罵声を浴びせられたこともある。『おまえなんか刑務所行って野垂れ死んだらええねん』『お前なんかテレビ芸者や』『もともとお前なんか嫌いやったんや』(会場笑)もともと私は、村木さんと違って、グレーというか黒い印象なので、毎日やられました。朝9時から12時5分前まで、1時から5時5分前まで、6時から9時5分前まで、毎日取り調べでした。翌日優しくなったり、写メール取られたりとか」(会場笑)
写メールは、「(羽賀研二という有名人を取り調べていることを)知り合いが信じてくれへんから」証拠として取られたのだそうです。
あと「俺らは天皇陛下以外誰でも逮捕できんねん」とも言われました。
それで、検事の取り調べのときに、こんなことを言われたといったら、検事も口調は丁寧ですが「そうだよ、天皇陛下以外誰でも起訴できるんだよ。ぼくがここでは神なんだ。君の人生はぼくにかかってるんだよ」と言われました。それで「恐喝未遂を認めれば、詐欺(での起訴)は考えてあげる。でも否認するなら、(恐喝未遂と詐欺の)両構えで行く。そうなると君の人生は終わるよ」と言われました。そういう感じの三ヶ月でした。
拘置所では独居房だったので、誰にも会えず、本ばかり読んでいました。
さあ、ここで、先月、衝撃のデビューを果たした市川寛弁護士のコメントです。(続く)
写真・岡部好
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