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シンポジウム「検察・世論・冤罪Ⅱ」 検察の論理vs弁護の論理

 そして、この解説のあと、郷原弁護士です。
 今日は、検察側に立った弁論を展開されるとのこと。もちろん「罰ゲーム」ではありません。

 どうして検察がこの事件を進めたか。推測を交えて、と断りながら、郷原先生が続けられます。
gohara2.jpg
 まずこれが、大阪府警西成署の警察4課、いわゆる暴力団事件として警察が目をつけた恐喝事件として始まったという点。しかも、羽賀研二さんという知名度の高いタレントがからんでいたこと。このことで、注目度が高い美味しい案件として警察が飛びついた。

 さらに、検察も、暴力団関係の事件に関してはハードルが低い。暴力団は社会のクズだから、ちょっとでも立件できるならしてしまえというところがある。なので、深く検討せずに警察から受けた。ところが、実際に調べてみると、被害者と加害者がどちらなのかはっきりしない。しかも、恐喝で債権を断念させたのかと思いきや、それもない(会社社長A氏は、その後も催促を続けている)。となると未遂しかないので、未遂で起訴。しかしそれだけでは事件としてはあんまりなので、詐欺を立てようとした。

 しかし、株の経済価値を明らかに偽ったのであれば詐欺だが、羽賀氏の場合は微妙。そこで、元値の三倍で売ったということを問題にした。しかし、これで詐欺罪が成立するためには、「A氏が元値をもし知っていたら買わなかった」という因果関係が必要になる。しかし、それはクリアできるだろうと考えて、立件した。
 それは「羽賀氏はA氏から借金をしている。ゆえに、A氏が元値を知っていたならば、先にその差額で借金返済をさせたはずであり、それをしていないということは、A氏は元値を知らなかった」という論理である。
 この論理に対する見解が別れたのが、一審と二審の結論の差だと。

 もう一点。証人を偽証で立件することについて。

 検察は、前述の論法で一審を勝てると踏んでいた。ところが証人が現れ、その証言が決定的な証拠となって、無罪判決が出てしまった。
 そこで検察は、おそらく、有罪を恐れた羽賀氏側が証人に働きかけて、偽証を依頼したのではないか、と考えた。弁護側の証人に立つというのは、検察側からすれば、あえて検察に逆らうような行為であり、真っ当な人間のやることではない。おそらく何か利益供与などの見返りがあるはずと考えた。

 とはいえそれを立証する材料はないし、反対尋問で崩せる自信もない。だから、裏取引を立証しようとして偽証罪で立件し、自宅の捜索をおこなった。そして、少なくとも「ただの知人」というよりは親しさを感じさせるメールなどの証拠によって、少なくとも、その部分だけは偽証という主張を展開したわけだが、これが徳永氏の裁判では通り、羽賀氏の控訴審でも通って逆転有罪になってしまった。

 さらに付け加えて、一審判決では詐欺罪が成立しうるかどうかという点の法的な根拠を重視した。そこに証人が出てきたので、それならば成立しないというピンポイントで無罪判決となったわけだ。それに引き替え、検察の判断と控訴審の判断は、そういうことではなく、「そういう世界」つまり何千万何億もの金が動いたり、暴力団などの蠢くような、そういう世界のいかがわしさ自体に対しての嫌悪感を背景にした認定が行われたのではないか、と。

 続いて、佐藤弁護士。そう、足利事件主任弁護人のあの方です。
sato2.jpg
 なんと、羽賀さんの弁護人後藤弁護士とお友達ということで、弁護側資料を取り寄せてくださったとのことです。

 まず、この事件が恐喝かどうか。
 『被害者』とされている会社社長A氏が暴力団を使って、4億円という金額を要求していた。しかし、被害額として請求している『4億円』はそもそも、株が上場した場合、もし値が下がったら羽賀氏が損害を補填するという契約書に基づいたもの。しかし、上場する以前に、会社は倒産しているのだから、そもそも請求する根拠がない。
 だからこそ、民事裁判を起こしても無理ということで、A氏は暴力団に(取立を)頼んだわけで、こちらの方が立派な恐喝。
 ところが、判決では、本来4億円払うべきところを、1千万払って終わらせようとしたので、3億9千万を踏み倒したかのように書かれている。
 
(八木註:補足ですが、株が下がったとか倒産したからといって損害を補填しなくてはならないのであれば、すべての証券会社は詐欺で告発されなくてはなりません。裁判官は経済のイロハをご存じないようです)

 しかしながら、この会社社長A氏は、1000万円で和解したはずなのに、そのあとさらに取立を行っている。それもダミーの人物を立てて、その日より前に債権を譲っていたという名目で、さらに12億円を請求している。

 しかし、これに警察が着目したのは、渡辺二郎氏の存在抜きには語れない。
 つまり、判決に書かれていることだが、もともとA氏が連れてきた暴力団員は、羽賀氏から5億円ぐらい取れそうだと聞かされてついてきていた。それを渡辺氏が寝返らせて、自分の側に取り込んで、1000万で手を打つようにハンコをつかせた、と。
 しかし、その1000万を受け取ったあとに、この暴力団員は、Aさんから分け前として数百万をもらっている。

 そのような状況の中で、渡辺氏と羽賀氏が共犯とされているのだが、自分の聞いている限り、羽賀氏は、渡辺氏がその場に現れたことをあとで聞いている。
 実はこの時期、渡辺氏が別件の事件で刑務所で服役して2年ばかり経った頃のころ。つまり、警察は、この(前科のある)渡辺氏が絡んでいるということで、事件性があると見たのだろう。
 しかも、そこにタレントである羽賀氏が絡んだ。

 ところで、暴力団担当の4課というのは事件の仕立てが荒っぽい。本来、詐欺事件は知能犯担当の2課の担当。4課にはできない。(笑)

 ところが、この恐喝事件そのものが、調べてみたら、被害者の方が恐喝しようとしていた事件で、しかも複雑なことになっていてどうもうまくいかない。だから詐欺ということにしてみた。

 しかしその詐欺にも問題があって、5万円の額面のものを、羽賀氏は8倍の40万円で買い、さらに120万円で売ったとされているけれど、実際は、この時期、この株は上場したら、2000万円になるかもしれないと言われていた。つまり、120万円の17倍。
 この数字の前では、A氏にとっては、40万と120万の差は微々たるものであったはず。
 しかも、騙したというのであれば、羽賀氏は売却益をポケットに入れているはずだが、そうではなくて、その金も同じ株の購入につぎ込んでしまっている。
 つまり、お互いが同じ夢を見ていたということ。

 詐欺が成立するためには、「その事実(この場合は株の元値)を知っていたら取引をやめただろうか」ということが重要だが、このケースでは、明らかに、A氏はそれを問題にしていなかったと思われる。さらに未公開株で『株を購入できる権利』そのものが誰にでもあるわけではないのだから、それを持っていた羽賀氏が、多少の利ざやをもらうのは当たり前である。
 それがなぜか、羽賀氏が転売のときに一円も稼ぐべきではない、という理屈になっている。そんな馬鹿な。

 さらに徳永氏は、自分の経験として、A氏は元値が40万円だと知っていたと証言した。そうなると、もともとの詐欺の話も全部吹っ飛んでしまう。そうなると恐喝にもならない。
 そういう意味で、徳永証言は重要なのだが、問題なのは、仮に検察が、これをおかしいと思ったとしても、控訴審で証人として呼んで、法廷で偽証であることを暴くのが筋。
 弁護人が、検察側の証人を偽証だと思っても逮捕などできないのだから。

 ところが検察は無罪判決が出た時に、徳永氏を刑事事件として立件してしまった。つまり、検察の持つ権限を、がむしゃらに有罪にするために、無罪判決を覆すために使うというのは問題だ。

 さらに、控訴審で、別の人物が同じ内容の証言を、自分自身が偽証罪でやられることを覚悟の上で証言してくれたのに、判決ではそのことがほとんど無視されている。
 「疑わしい時は被告人の利益に」という大原則があるのに、この事件は様々な意味で、無理な点があって、むしろ一審の無罪判決の方が正しいと思う。それをこういうふうにしてしまった。

 これはタレントの話で、大きな金額が動き、我々には無縁の話に思われそうだけれども、誰でもお金儲けの話にはついつい乗ってしまうこともある。私たち自身の生活にも関係してくる。
 本来民事でやるようなことを、刑事事件にするというのは、大変な税金を無駄遣いしていることにもなる。だからこそ、この事件は上告されたが、最高裁で是非軌道修正してほしい。

 ここで、八木がコメント。
 過去、検察が弁護側証人を偽証罪で挙げたケースは、八海事件にしろ、甲山事件にしろ、有名な冤罪事件となっている。逆に、検察側証人が明らかに嘘をついていたケースはいくらもあるが、それらが偽証罪で問題になったケースはあるのか?

 応えて、郷原先生。
検察側の証人は、偽証はまったく当たり前なんです」(会場大爆)

....いきなり耳を疑う爆弾発言です。い、いいんですか、そんなこと言っちゃって。

会場が騒然とする中、「といいますのは」と、淡々と郷原先生。

検察側の証人は、調書中心主義のもとでは、二号書面という制度がある。検察官面前調書(検面調書)というものは、刑事訴訟法第321条第2号で、参考人が法廷で検面調書と違う供述をした場合、特信性(特別に信用のおける状況)があれば、検面調書を証拠にできる。つまり、検察官のもとでAという証言を行い、法廷ではBという証言をした場合、Aという供述調書を証拠にできる。そして多くの場合、このAという検察官調書によって、裁判で認定が行われる。

ということは、Bという法廷での証言は嘘ということになる。
しかし、法廷で宣誓した上で、Bという証言をしたということで偽証で処罰したケースはほとんどない。なぜなら、真相は法廷などではなくて、取調室の中で明らかになるというのが検察の考え方だから。(会場騒然)

真相は取調室で言えばいいのであって、被告人や傍聴人の前で本当のことを言えなくても仕方がない。
これが今の検察の考え方だから、検察側の証人はしょっちゅう偽証をしていると言えるのだが、それは問題にされていない。
けれど、検察官の立証しようとする正義を害する弁護側の証人は、偽証でやってやるのは当たり前。これが検察の考え方。(会場ざわめき)

ここで、佐藤弁護士。

弘中弁護士と組んで、鈴木宗男さんの弁護もやっているが、特捜の案件では。証人テストもやっている。つまり検察側が証人をさせる時に、何日も特訓をする。北海道の証人の場合、何日も前に上京させて、何度も練習させる。弁護人にはとてもそんなことはできないが、検察はそれをやる。別の案件だが、想定問答のシナリオまで渡す。これはもう、供述を作っているわけで、前田元検事のやった証拠改竄と似たようなもの。

つまり、法廷で真実を明らかにするのではなく、もともと検察の作った構図というものがあって、それが崩れないように、それに合わせるように、いろいろなことをやる。だから、検察の構図を崩すようなことをすると偽証。しかしそれは間違っている。法廷で真実が言えるような環境を整えなくては、刑事裁判は茶番。こういったことは検証の対象外でもあり、根本的に心を入れ替えてもらう必要がある。

ここでまた、郷原弁護士。

証人テストが問題になった裁判といえば、公認会計士の細野さんの裁判がある。この事件では、証人が何十回もテストに呼ばれ、さらに証人尋問の日は、朝、検察官の部屋に呼ばれ、朝から散々叩き込まれ、尋問のあとも、昼食を検察官と一緒にとり、また裁判所に抱え込まれて戻る。
こういった異常な回数の証人テストが裁判でかなり問題になった。

村木さんの裁判でも、(村木さんの関与を証言した)倉沢氏の証人尋問で、弁護側から「検察官と事前に打ち合わせをしましたか」と聞かれて、「いえ、ぜんぜんしてません」。そのあとの最終尋問で、検察官が、「嘘を言っちゃいけない、打ち合わせしたじゃないですか」「それは言っちゃいけないと思ってました」
....倉沢さんというのはそういう人なんですよね。そういう人の証言が、村木さん事件をあんなにしてしまった。これもまた証人テストなんです。

それで、この証人テストがあったこと自体を隠すという偽証をしようとしていた。検察官が最終尋問をしていなければ、完全な偽証です。
けれど、この倉沢氏はもちろん、偽証罪に問われたりしていない。

会場がざわめきのあと、しんと静まりかえります。なにげに両先生がお話になる、笑えない真実。
....というわけで、このメディア報道とかけ離れた真実が見えてきたところで、休憩を頂いての、後半戦です。
(続く)
                                           【写真:岡部好】
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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

tag : 世論 冤罪 検察

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