アートの異種格闘技
三菱一号館の「カンディンスキーと青騎士展」を見に行った。
あの幾何学的なカンディンスキーの作風に至る以前の、若き日のカンディンスキーの作品展で、ドイツのレンバッハハウス美術館所蔵のものが、この美術館改築で閉館中のタイミングで、一気に日本に持ってきたという内容。
法律家から画家に転身という異色の経歴を持つカンディンスキーは、ミュンヘンの美術学校に入学。その後、美術教師になるが、そこで生徒として知り合って恋仲になったガブリエレ・ミュンターとヨーロッパに恋の逃避行に出る。
やがて、二人はミュンヘン近郊のムルナウの待ちに居を構え、仲間たちもそこに合流。
このムルナウに集った作家たちのから「青騎士」と名乗るグループが生まれる。
大胆で攻撃的で鮮やかな、このアーティスト軍団が、しかし第一次大戦の中で、仲間のマルケ、マッケが戦死し、また、カンディンスキー自身ナチスに追われ、グループが離散するまでの作品集だ。
カンディンスキーが熱愛した女子学生ミュンターは、いつもどこかしら悲しげに見える肖像は、この彼女の憂いこそを、カンディンスキーは愛したのだと伺わせる。そして、その悲しげな笑みをたたえたミュンターは、カンディンスキーとの関係が破綻したあとも、彼の若き日の作品を守り続けたのだ。
とりわけ、ムルナウで描かれた一連の作品集が素晴らしい。息を飲むような大胆に単純化された構図、鮮烈な色彩は、やがて、聴覚、とりわけ音楽を絵画化した「印象(Impression)」シリーズ、「即興(Improvisation)」シリーズ、さらに「構成(Composition)」シリーズに連なってゆく
このカンディンスキーの作品展の時代は、1896年から1913年頃、明治後半にぴったり重なる。会場が、まさにその時代の建築である三菱一号館というのもとてもいい風情だ。
抽象の好きな方は必見。

その一方で、異ジャンルのコラボレーションという展でとても面白い作品展もご紹介。
ひとつは、所用で立ち寄った下北沢で、ふと目に入り入ってみたクラフト展。
8人の作家による、陶器や彫金、ガラス、漆器などが並んでいる。どれも技術が高い。デザイン学校の講師陣のグループ展で、今回が初めてだという。
ただ、初めてのグループ展に発見があったと。
同じ学校で教えているがジャンルの違う講師たちに新たな交流が生まれたのだという。たとえば漆器と陶器、ガラスと彫金。そのそれぞれの技術と経験を生かしつつ、次回の作品展では、共同の何かを作れそうだ、と。
異種のクラフトの混合であるなら、たとえば坂田甚内氏の陶器と漆器とガラスの作品などを見たことがあるが、これはあくまで陶芸家が、他種工芸を取り入れたもの。
そうではなくて、異種のクラフトの工芸作家が対等の関係で何かをコラボレーションで作り出せたら、これはとても面白い。ぜひぜひ次回に期待。(本展自体は残念ながら、11月28日まで)
と思っていたら、銀座アトリエスズキでちょうどそんな作品展があったでないか。
「小島 秀子『dots weaving』染織展」

作家の小島秀子さんは、高度な技術をもつベテラン染織&織物作家でいらっしゃるのだが、今回は「ドット=水玉」がテーマ。で、これが仰天するほどすごいのだ。
織物の柄が多種多様なドット模様のバリエーションである、というところまでは、まあ想定内。むろん、その織物はとても素敵で、そりゃもう思わず着物が欲しくなるぐらい。(って、八木が気安く買えるお値段じゃないんですが)
しかし、それだけではない。ドット模様のテーブル。ドット模様の布小品、ドット模様のお皿にドット模様のカップ。ドット状の手縫いコースターに、さらにドット模様のお皿の水玉に完璧に会わせたドット嬢の和菓子。
かといって、そこまで細部にまで凝っていても、神経症的・脅迫観念的な印象はぜんぜんなくて、小島さんの作品展でありつつ、木工作家や陶芸家や懐石料理家の方たちとの素敵なコラボレーションに、感嘆しつつもニヤリと微笑みがこぼれ、とても温かくて前向きな気持ちになれるのはやっぱり小島秀子さんの人柄なのかもしれない。銀座にお立ち寄りの際は、ぜひお勧め。
ちなみに、ご本人、この日はドット風の大きなボタンのついたスカートにドットを思わせる石の指輪。(これは偶然だそうです)。12月4日まで。
ところで、この日記、音楽やアートネタとラテンネタ、さらにえぐめの政治ネタが気色の悪いコラボを見せております。それは八木がこーゆー人間だからですので、悪しからず。

あの幾何学的なカンディンスキーの作風に至る以前の、若き日のカンディンスキーの作品展で、ドイツのレンバッハハウス美術館所蔵のものが、この美術館改築で閉館中のタイミングで、一気に日本に持ってきたという内容。
法律家から画家に転身という異色の経歴を持つカンディンスキーは、ミュンヘンの美術学校に入学。その後、美術教師になるが、そこで生徒として知り合って恋仲になったガブリエレ・ミュンターとヨーロッパに恋の逃避行に出る。
やがて、二人はミュンヘン近郊のムルナウの待ちに居を構え、仲間たちもそこに合流。
このムルナウに集った作家たちのから「青騎士」と名乗るグループが生まれる。
大胆で攻撃的で鮮やかな、このアーティスト軍団が、しかし第一次大戦の中で、仲間のマルケ、マッケが戦死し、また、カンディンスキー自身ナチスに追われ、グループが離散するまでの作品集だ。
カンディンスキーが熱愛した女子学生ミュンターは、いつもどこかしら悲しげに見える肖像は、この彼女の憂いこそを、カンディンスキーは愛したのだと伺わせる。そして、その悲しげな笑みをたたえたミュンターは、カンディンスキーとの関係が破綻したあとも、彼の若き日の作品を守り続けたのだ。
とりわけ、ムルナウで描かれた一連の作品集が素晴らしい。息を飲むような大胆に単純化された構図、鮮烈な色彩は、やがて、聴覚、とりわけ音楽を絵画化した「印象(Impression)」シリーズ、「即興(Improvisation)」シリーズ、さらに「構成(Composition)」シリーズに連なってゆく
このカンディンスキーの作品展の時代は、1896年から1913年頃、明治後半にぴったり重なる。会場が、まさにその時代の建築である三菱一号館というのもとてもいい風情だ。
抽象の好きな方は必見。

その一方で、異ジャンルのコラボレーションという展でとても面白い作品展もご紹介。
ひとつは、所用で立ち寄った下北沢で、ふと目に入り入ってみたクラフト展。
8人の作家による、陶器や彫金、ガラス、漆器などが並んでいる。どれも技術が高い。デザイン学校の講師陣のグループ展で、今回が初めてだという。
ただ、初めてのグループ展に発見があったと。
同じ学校で教えているがジャンルの違う講師たちに新たな交流が生まれたのだという。たとえば漆器と陶器、ガラスと彫金。そのそれぞれの技術と経験を生かしつつ、次回の作品展では、共同の何かを作れそうだ、と。
異種のクラフトの混合であるなら、たとえば坂田甚内氏の陶器と漆器とガラスの作品などを見たことがあるが、これはあくまで陶芸家が、他種工芸を取り入れたもの。
そうではなくて、異種のクラフトの工芸作家が対等の関係で何かをコラボレーションで作り出せたら、これはとても面白い。ぜひぜひ次回に期待。(本展自体は残念ながら、11月28日まで)
と思っていたら、銀座アトリエスズキでちょうどそんな作品展があったでないか。
「小島 秀子『dots weaving』染織展」

作家の小島秀子さんは、高度な技術をもつベテラン染織&織物作家でいらっしゃるのだが、今回は「ドット=水玉」がテーマ。で、これが仰天するほどすごいのだ。
織物の柄が多種多様なドット模様のバリエーションである、というところまでは、まあ想定内。むろん、その織物はとても素敵で、そりゃもう思わず着物が欲しくなるぐらい。(って、八木が気安く買えるお値段じゃないんですが)
しかし、それだけではない。ドット模様のテーブル。ドット模様の布小品、ドット模様のお皿にドット模様のカップ。ドット状の手縫いコースターに、さらにドット模様のお皿の水玉に完璧に会わせたドット嬢の和菓子。
かといって、そこまで細部にまで凝っていても、神経症的・脅迫観念的な印象はぜんぜんなくて、小島さんの作品展でありつつ、木工作家や陶芸家や懐石料理家の方たちとの素敵なコラボレーションに、感嘆しつつもニヤリと微笑みがこぼれ、とても温かくて前向きな気持ちになれるのはやっぱり小島秀子さんの人柄なのかもしれない。銀座にお立ち寄りの際は、ぜひお勧め。
ちなみに、ご本人、この日はドット風の大きなボタンのついたスカートにドットを思わせる石の指輪。(これは偶然だそうです)。12月4日まで。
ところで、この日記、音楽やアートネタとラテンネタ、さらにえぐめの政治ネタが気色の悪いコラボを見せております。それは八木がこーゆー人間だからですので、悪しからず。