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ラファエル・コレア:ブッシュを悪魔に比べるのは悪魔に失礼、と言い放った男

国連大学で開催された、エクアドルから来日中のラファエル・コレア大統領の講演会に行ってきた。

例のあの人である。
ベネズエラのチャベスが国連総会でブッシュ米大統領を「悪魔」と呼ぶ演説をしたとき、「ブッシュを悪魔に比べるのは悪魔に失礼だ。悪魔は邪悪だが、少なくとも知性はある」と突っ込んだ人。

案内には10時からと書いてあったが、着いてみると、開始が10時40分に変更されたとか。
おかげで、真正面6列目あたりの良い席を確保。

隣に座っていたのが、兵庫県から来られたエクアドル人の男性。
三島由紀夫のファンで、政治には本来興味はなく、まして社会主義にはかなり疑問があると言っておられたが、では、なぜ、はるばる来たのか。
「しかし、彼の3年間のもと、現実にエクアドルは良くなったからだ」

以前のエクアドルは、ハーバード大学を卒業した経済通という触れ込みの(新自由主義を掲げた)大統領が頻繁に交代するような状態だった。(ちょうど、いまの日本みたいに、と、彼は言った)
政治は混迷し、国民は疲弊し、挙げ句に1994年から99年にかけて経済崩壊を起こし、国民のうち200万人が国を出て、出稼ぎをせざるをえないという状況にまでなった。
「それを、コレアは立て直したのですよ。明らかに、エクアドル人は彼のもとで幸せになった」

なるほど。

それから、かなり細かいスケジュールで動いているらしく、朝からすでに2つのイベントをこなしてきたというコレア大統領、時間に遅れたお詫びから始まった講演だったが、とにかく、この人、笑顔が良い。

最初はエクアドルの地勢や環境を紹介することで始まったが、じきに熱弁は、エクアドル経済のことに。

新自由主義がエクアドル経済を破壊した、と彼は言い切る。
新自由主義は何をもたらすか。競争と経済活性化をもたらすという名目での大企業や高額所得者への減税と、労働組合のせいで硬直化した雇用をフレキシブルにするという名目での、派遣労働法だ。まさしく、小泉政権下以来、日本で起こっていることである。

「しかし、富裕層の所得が貧困層の20倍あるような状況で、富裕層がその20倍の収入を、国の経済を潤すために消費するわけではない」と彼は看破する。
それよりも、格差を縮め、貧困層の購買力を上げることが、国内経済の活性化につながるというのだ。

そのとおりだ、超富裕層は、その富を、国内製品を大量購入することでの消費はしない。彼らは外国の高級品を買い、海外に投資し、スイスやカリブの銀行に資産を預ける。中間層はなくなり、大量に生まれる貧困層はワーキングプアか失業者となるから、最低限の消費しかできない。むろん、多少の余裕があっても、そんな雇用不安定な状況で将来の展望など持てないから、消費にはつながらない。

国内製品を購入し、消費するのは、超富裕層ではないのだ。
経済を本当に活性化するためには、現在貧困層に押し込められている人々こそが、健全でまっとうな消費ができる状況にもっていくこと。

彼はその理想の到達目標を、エクアドルの平均である5人家族で、月額1500ドルと計算する。
(エクアドルの物価は日本よりはるかに安いから、これ、かなりリッチな生活ができる中間層ということになる、もちろん「理想の目標値」ね)

確かに、「生きていくための最低限の暮らし」に購買力もへったくれもない。
かつての60年代の米国や70年代の日本がそうだったのように、多数派としての中間層があることで、経済はまわる。逆に、だからこそ、一見、もっともらしい「経済活性化」を唱える新自由主義が生む格差が、結果的に経済を崩壊させるゆえんだ。

この方針に則って始めた政策が、ゆえに、非政治的な人をして
「彼のおかげで、明らかにエクアドル人は幸せになった」
と言わせる結果を生んだわけだ。
「貧困の問題は、(社会)制度によるもの」と彼は断定する。

 そして、エクアドルの産出する石油を政府の管理下に置く一方、新たに発見されたアマゾン流域の国立公園地帯の埋蔵石油を「自然環境を守るため」あえて凍結するという発表を行っている。
 そして、自然保護と対地球温暖化に対する貢献と位置づけて、環境保護のための資金援助を世界に求めるという超裏技に出て、しかもその話をまとめてしまった。
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20100614002&expand#title
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2744836/6033544

先進国が発展途上国に、CO2削減を押しつけるのは、(すでにさんざん環境を破壊してきた)先進国のエゴであり、途上国に対する上から目線の足かせであるという批判があるが、そこを鮮やかに逆手に取ったわけだ。
この空気の読み方、お見事である。

しかし、当然ながら、彼の政策は富裕層の利権とは対立するから、メディアからは常に激しいバッシングを受ける立場にある。
大手メディアを「公正」と信じているおめでたい人はもちろんどこにでもいるが、現実には、大手メディアのオーナーは富裕層だし、広告を出すのも大企業。
メディアは大きければ大きいほど、根本で富裕層の利権の代弁者とならざるを得ない宿命がある。

だからこそ、ベネズエラのチャベスも、ベネズエラ国内メディアで叩かれまくっているわけだし、コレア大統領もしかり。ましてやエクアドルに公営メディアはない。

「ええ。言われてますとも。ポピュリストだ。煽動主義者だ。バラマキだなんだって、ボロクソにね」

でも、彼は微笑んでいる。
新聞やTVがなんと叩こうと、新聞の世論調査結果が最低でも、現実に経済は好転し、選挙で彼は圧勝で再選された。

このあと、広島に行く飛行機は何時に出るんだ、と時間を気にしながら、時間を大幅に超過した講演のあとの質問にも一つ一つ彼は丁重に応えていく。
ラテンアメリカの統合を目指す、と彼は語る。カストロとチャベスの唱えたALBA構想を支持すると。
超大国にできるだけ依存しなくてもよい経済を作ることだ、と彼は言う。

ついでに、彼の語った小咄を一つ。

「コロンブスは、世界で最初の経済学者ですよ。自分がどこにいくかわからず、そのあとも自分がどこに行ったのかもわからず、で、その経費は全部、国家持ちだった」

そして、彼はヒロシマへと向かった。
どこまでもかっこええ男である。

テーマ : 時事ニュース
ジャンル : ニュース

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