PANDORA REPORT 南極編・その21
そして、ある朝。
朝ご飯のビュッフェに向かうと、
「チリで大地震があったらしいの、知ってます?」
もちろん、知らなかった。ぜんぜん揺れなんて感じなかったよ。
すぐに船内掲示板を見に行くと、「チリで大地震があった」という情報。
あらま。
とりあえず、それでなにかわかるわけでもないんだけど、船をぶらついていると、船内電話にチリ人のマヌエルが青い顔でかじりついていた。本土と連絡が取れないらしい。
要するに、誰にも状況がまったくわからない。
阪神大震災の時もそうだったのだけれど、地震直後って、本当に情報がないのだ。
ロビーに戻ると、ブルーノさんがいた。
やはり状況がわからないらしい。いや、正確にいうと、「まったく本土に電話が通じない。ネットも通じない」ので、かなりやばい状況ではないかと推定できるらしい。
「マヌエルが、電話にかじりついていたわ」
「だって、彼、実家がまともに震源地だもの」
おう。
しかし、となると、ブルーノの家あたりも震源に近いのでは?
「そうでもないが、サンティアゴで下船して、家に帰り着けるかどうかはサバイバルなことになりそうだ」
チリは細長い国だから。と、ブルーノは説明する。
東はアンデス山脈、西は海。南北には4600kmあるが、幅は200km以下。迂回路というものがないんだよ。
だから、いったん災害になれば、物資の輸送が滞り、被害は拡大しやすい。
そこへマヌエルが戻ってきた。結局、電話はつながらなかったらしい。陽気な彼だが、さすがに焦燥の色がある。
「ところで、君に頼みがあるんだけど」
(゚_゚) はい?
「あさってのアースデイに、南米組もなにかイベントをやるんだが、音楽をやろうということになって、みんなで詩を書いたんだ」
(゚_゚) それで?
「これに曲をつけて歌うと、ものすごくオリジナルでかっこいいな、ということになって」
でしょうね。
「みんなで書いた詩に、君に曲をつけてもらいたいと」
(゚o゚;)は?
それをあんたは、いますぐやれってか?
なんでそれを今頃言うかなあ?!
しかし、実家が大地震で全滅かもしれないという状況で、青い顔をしている男に、
「あんたアホちゃう?」
と罵るほど根性の悪くない私は、
「出来るだけ努力してみる」といって、紙を受け取ってしまったのだった。
「うううん。素人の詩だねえ」と、それをのぞき込んで言ったのは、本職詩人のブルーノさんだったが、まあ、それはしょうがない。
「ただ、気持ちはわかるよね」
芸術的ではないかもしれないが、スペイン語とに、日本語、チリの先住民語マプーチェ語、アンデス地域の先住民語アイマラ語の単語を混ぜて、彼らなりに、愛情のこもった詩がそこにはあった。
メンバーの中に、マプーチェ族の青年ペドロがいて、彼がマプーチェ語やアイマラ語に堪能なのだ。
というわけで、船室に戻って、iBookのMelody Assitantを起動する。
マヌエルくんが口ずさんでいたメロディをベースに、素人の彼らが歌いやすく覚えやすいフレーズとコード進行ね。
確か、マルセラという女の子が、わりときれいなメゾソプラノだったので、彼女の声を少しフィーチュアして、あまりにも単調にならないようにしよう....とか。
「これは私の作曲ではなくて、みんなで作ったということにしてね」
ということで、2時間で作り、2時間ほど練習して、洋上アースデイで発表されたのが、この曲である。チリ人学生たち、みんな、家や家族が心配で、とても集中できる状態ではなかったのだけれどね。
(ちなみに、これは練習風景。本番はもっとちゃんと歌っていましたよ)
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
ところで、明後日は、恒例のNocheroライブです。
是非、お楽しみに
朝ご飯のビュッフェに向かうと、
「チリで大地震があったらしいの、知ってます?」
もちろん、知らなかった。ぜんぜん揺れなんて感じなかったよ。
すぐに船内掲示板を見に行くと、「チリで大地震があった」という情報。
あらま。
とりあえず、それでなにかわかるわけでもないんだけど、船をぶらついていると、船内電話にチリ人のマヌエルが青い顔でかじりついていた。本土と連絡が取れないらしい。
要するに、誰にも状況がまったくわからない。
阪神大震災の時もそうだったのだけれど、地震直後って、本当に情報がないのだ。
ロビーに戻ると、ブルーノさんがいた。
やはり状況がわからないらしい。いや、正確にいうと、「まったく本土に電話が通じない。ネットも通じない」ので、かなりやばい状況ではないかと推定できるらしい。
「マヌエルが、電話にかじりついていたわ」
「だって、彼、実家がまともに震源地だもの」
おう。
しかし、となると、ブルーノの家あたりも震源に近いのでは?
「そうでもないが、サンティアゴで下船して、家に帰り着けるかどうかはサバイバルなことになりそうだ」
チリは細長い国だから。と、ブルーノは説明する。
東はアンデス山脈、西は海。南北には4600kmあるが、幅は200km以下。迂回路というものがないんだよ。
だから、いったん災害になれば、物資の輸送が滞り、被害は拡大しやすい。
そこへマヌエルが戻ってきた。結局、電話はつながらなかったらしい。陽気な彼だが、さすがに焦燥の色がある。
「ところで、君に頼みがあるんだけど」
(゚_゚) はい?
「あさってのアースデイに、南米組もなにかイベントをやるんだが、音楽をやろうということになって、みんなで詩を書いたんだ」
(゚_゚) それで?
「これに曲をつけて歌うと、ものすごくオリジナルでかっこいいな、ということになって」
でしょうね。
「みんなで書いた詩に、君に曲をつけてもらいたいと」
(゚o゚;)は?
それをあんたは、いますぐやれってか?
なんでそれを今頃言うかなあ?!
しかし、実家が大地震で全滅かもしれないという状況で、青い顔をしている男に、
「あんたアホちゃう?」
と罵るほど根性の悪くない私は、
「出来るだけ努力してみる」といって、紙を受け取ってしまったのだった。
「うううん。素人の詩だねえ」と、それをのぞき込んで言ったのは、本職詩人のブルーノさんだったが、まあ、それはしょうがない。
「ただ、気持ちはわかるよね」
芸術的ではないかもしれないが、スペイン語とに、日本語、チリの先住民語マプーチェ語、アンデス地域の先住民語アイマラ語の単語を混ぜて、彼らなりに、愛情のこもった詩がそこにはあった。
メンバーの中に、マプーチェ族の青年ペドロがいて、彼がマプーチェ語やアイマラ語に堪能なのだ。
というわけで、船室に戻って、iBookのMelody Assitantを起動する。
マヌエルくんが口ずさんでいたメロディをベースに、素人の彼らが歌いやすく覚えやすいフレーズとコード進行ね。
確か、マルセラという女の子が、わりときれいなメゾソプラノだったので、彼女の声を少しフィーチュアして、あまりにも単調にならないようにしよう....とか。
「これは私の作曲ではなくて、みんなで作ったということにしてね」
ということで、2時間で作り、2時間ほど練習して、洋上アースデイで発表されたのが、この曲である。チリ人学生たち、みんな、家や家族が心配で、とても集中できる状態ではなかったのだけれどね。
(ちなみに、これは練習風景。本番はもっとちゃんと歌っていましたよ)
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
ところで、明後日は、恒例のNocheroライブです。
是非、お楽しみに