PANDORA REPORT 南極編・その20
一方、その少し前だが、アルゼンチンから乗り込んでいる環境保護系若者グループから、こんな相談を受けた。
アルゼンチンやチリで反日デモが起こっているのだそうである。
.......反日、ですか。地球の裏側で。
原因は「捕鯨」だった。
「私たちがちょうど、この船に乗る少し前のことでね。だから、実は、この時期に『日本の船に乗る』というのにはかなりの抵抗があったのよ」
「一方で、私たちは環境保護団体だけれど、ヒステリックな活動には同意できないから、反日デモには参加しなかったけれど、この問題が船の中ではまったく論議されていないのに、正直驚いたの。なので、率直に言って、日本の人はどう考えているのか知りたい」
あー。なるほどねー。
繰り返しますが、ピースボートは観光船であって、グリーンピースともシーシェパードとも何ら関係がないので、反捕鯨の話なんかも当然、普段の会話で出ないのであります。
ただ、そういう意味では、船内で捕鯨談義は面白いかもしれない、と思い、さっそく、ラテンアメリカの青年たちを連れて、事務局と談判。
南極クルーズの担当であるヤマモトさんは、赤塚不二夫氏の有名キャラクターに劇似のルックスを持つ方で、黒田勝彦並みに人の顔を覚えられない私でも、一度で顔を記憶した方である。
まあ、それはどうでもいいとして、このヤマモトさんが、捕鯨問題にも詳しいということで、一度、レクチャーをしてもらいつつ、皆で討議をするということになった。
このヤマモト氏のレクチャーは、捕鯨にも反捕鯨にも片寄らない、非常に淡々と事実をわかりやすく解説したものであった。鯨の数が減少しているかどうかという点に関しても、諸説を紹介して頂く。
で、むろん、南米組は、反捕鯨の論陣を張る。
かくして、途中から、会場の皆さんのご意見。
簡単にまとめると、賛成派の意見としては
反対派は
さすがに、グリーンピースではないピースボートですので、文字通り、日本の国内事情を反映した激論となりました。
で、私?
「鯨肉は不味いかと言われると、それはノーであります。鯨が不味かったとすれば、それは料理した人の腕が悪かったのであって、肉の罪ではありません。現に私は、鯨肉を何度も食べたことがあるし、はっきりいって、適切に調理された鯨肉は、美味です」
(ここで、「え~~~~」という南米組の声)
「ただし、いまの捕鯨は完全に伝統文化を逸脱したことをやっているわけで、それを伝統文化の保護をごっちゃにするべきではない。また、鯨肉料理がなくなるのは残念だけれど、なくて本当に困るかというと、そこまでのものとは思わない」
「『脂を取るためだけに大量に殺戮して鯨を減らした元凶である米国やヨーロッパからえらそうに言われる筋合いはない』というのは、一見、一理あるけれど、それを言い出すと、『かつてインディヘナを虐殺したスペイン人が人権を語るのはおかしい』とかいうことになってしまうし、そういう意味で、いわゆる先進国で『罪を犯したことのない民族』なんてほとんどない。だから、過去の過ちを根拠に、現在の問題の解決の足を引っぱるのは無意味」
「そもそも、捕鯨が日本の伝統文化なんて立派なことを言えるのは、本当に捕鯨を伝統文化としてきた土佐や長崎などの一部の地域の人たちだけで、大半の人たちはそんな文化なんか本当は持っていないはず」
「むしろ、鯨問題で感情的になることで、反日感情を高める方が、日本の国益を損ない、他の問題での交渉を不利にするのではないか」
「鯨問題の背景には、一部団体の利権があることも見逃すべきではないでしょう。一部の人たちの利権のために、国益や対日感情が損なわれるのは、フェアではないし、それに踊らされるのはもっと愚か」
....あたりが、八木の意見ですかね。
このあと、会場全体で、捕鯨派と反捕鯨派で挙手したら、ものの見事に「真っ二つ」でした。
さすが、グリーンピースとは似ても似つかぬピースボートです。
とはいえ、南米組6人が「反対」にまわっているのと、そもそも「賛成」にせよ「反対」にせよ、この問題に興味がある人が、このフォーラムに参加しているわけで、実際、参加者の圧倒的多数は(南米グループの期待に反して)年配組。
参加していない(おそらく、たぶん、どっちでもいい)乗客(それも大半の若い人)もかなりいるわけですから、これをもってピースボート世論とはいえませんが。
ちなみに、このフォーラムの後、何人かのお客さんから、
「八木さん、弁が立ちますね。政治家に立候補したらどうですか」
といわれました。
そんなもん、するわけないでしょう。たくさんの人が説得されたわけでもないわけだし。ライブに人を集めるのですら大変なのにさ。
だいたい、私なんて、いい男のハニートラップだったら、すぐ引っかかるぜ。
アルゼンチンやチリで反日デモが起こっているのだそうである。
.......反日、ですか。地球の裏側で。
原因は「捕鯨」だった。
「私たちがちょうど、この船に乗る少し前のことでね。だから、実は、この時期に『日本の船に乗る』というのにはかなりの抵抗があったのよ」
「一方で、私たちは環境保護団体だけれど、ヒステリックな活動には同意できないから、反日デモには参加しなかったけれど、この問題が船の中ではまったく論議されていないのに、正直驚いたの。なので、率直に言って、日本の人はどう考えているのか知りたい」
あー。なるほどねー。
繰り返しますが、ピースボートは観光船であって、グリーンピースともシーシェパードとも何ら関係がないので、反捕鯨の話なんかも当然、普段の会話で出ないのであります。
ただ、そういう意味では、船内で捕鯨談義は面白いかもしれない、と思い、さっそく、ラテンアメリカの青年たちを連れて、事務局と談判。
南極クルーズの担当であるヤマモトさんは、赤塚不二夫氏の有名キャラクターに劇似のルックスを持つ方で、黒田勝彦並みに人の顔を覚えられない私でも、一度で顔を記憶した方である。
まあ、それはどうでもいいとして、このヤマモトさんが、捕鯨問題にも詳しいということで、一度、レクチャーをしてもらいつつ、皆で討議をするということになった。
このヤマモト氏のレクチャーは、捕鯨にも反捕鯨にも片寄らない、非常に淡々と事実をわかりやすく解説したものであった。鯨の数が減少しているかどうかという点に関しても、諸説を紹介して頂く。
で、むろん、南米組は、反捕鯨の論陣を張る。
かくして、途中から、会場の皆さんのご意見。
簡単にまとめると、賛成派の意見としては
- 捕鯨は日本の伝統文化である。
- 日本は、伝統的に鯨を、肉も骨も筋もヒゲも、すべてを徹底利用してきた。それなのに、もともと鯨を食べずに、脂を取るためだけに大量に殺戮して鯨を減らした元凶である、米国やヨーロッパからえらそうに言われる筋合いはない。
- 鯨が減っているというデータは信用できない。
- 鯨は美味しい。
- このまま、「禁止」がエスカレートして、マグロなどに波及すると、本当に日本の食文化に影響が出る。
反対派は
- 鯨は減少しているというデータがある以上、しばらく様子を見るべき
- 時代も食文化も変わっている。現在は、捕鯨は必要ではない。
- むしろ、捕鯨より、ホエールウォッチングなどの観光に転換する方が現実的
- 鯨肉が、どうしても失えない食材というほどの価値があるとは思えない。はっきりいって不味い。
さすがに、グリーンピースではないピースボートですので、文字通り、日本の国内事情を反映した激論となりました。
で、私?
「鯨肉は不味いかと言われると、それはノーであります。鯨が不味かったとすれば、それは料理した人の腕が悪かったのであって、肉の罪ではありません。現に私は、鯨肉を何度も食べたことがあるし、はっきりいって、適切に調理された鯨肉は、美味です」
(ここで、「え~~~~」という南米組の声)
「ただし、いまの捕鯨は完全に伝統文化を逸脱したことをやっているわけで、それを伝統文化の保護をごっちゃにするべきではない。また、鯨肉料理がなくなるのは残念だけれど、なくて本当に困るかというと、そこまでのものとは思わない」
「『脂を取るためだけに大量に殺戮して鯨を減らした元凶である米国やヨーロッパからえらそうに言われる筋合いはない』というのは、一見、一理あるけれど、それを言い出すと、『かつてインディヘナを虐殺したスペイン人が人権を語るのはおかしい』とかいうことになってしまうし、そういう意味で、いわゆる先進国で『罪を犯したことのない民族』なんてほとんどない。だから、過去の過ちを根拠に、現在の問題の解決の足を引っぱるのは無意味」
「そもそも、捕鯨が日本の伝統文化なんて立派なことを言えるのは、本当に捕鯨を伝統文化としてきた土佐や長崎などの一部の地域の人たちだけで、大半の人たちはそんな文化なんか本当は持っていないはず」
「むしろ、鯨問題で感情的になることで、反日感情を高める方が、日本の国益を損ない、他の問題での交渉を不利にするのではないか」
「鯨問題の背景には、一部団体の利権があることも見逃すべきではないでしょう。一部の人たちの利権のために、国益や対日感情が損なわれるのは、フェアではないし、それに踊らされるのはもっと愚か」
....あたりが、八木の意見ですかね。
このあと、会場全体で、捕鯨派と反捕鯨派で挙手したら、ものの見事に「真っ二つ」でした。
さすが、グリーンピースとは似ても似つかぬピースボートです。
とはいえ、南米組6人が「反対」にまわっているのと、そもそも「賛成」にせよ「反対」にせよ、この問題に興味がある人が、このフォーラムに参加しているわけで、実際、参加者の圧倒的多数は(南米グループの期待に反して)年配組。
参加していない(おそらく、たぶん、どっちでもいい)乗客(それも大半の若い人)もかなりいるわけですから、これをもってピースボート世論とはいえませんが。
ちなみに、このフォーラムの後、何人かのお客さんから、
「八木さん、弁が立ちますね。政治家に立候補したらどうですか」
といわれました。
そんなもん、するわけないでしょう。たくさんの人が説得されたわけでもないわけだし。ライブに人を集めるのですら大変なのにさ。
だいたい、私なんて、いい男のハニートラップだったら、すぐ引っかかるぜ。