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なぜ、戦争の本を薦めるかというと

このところ、外食や作り置きのおかずを並べることが多かったので、昨日はちゃんとごはんを作った。
というか、冷蔵庫見たら、早急になんとかしなくてはならん食材が少しづついろいろあったので、慌てたんだよう。

で、昨日の献立が、大根と人参と油揚げの味噌汁。鰻の入っただし巻き卵、なすとシシトウと桜エビの煮物。豚の紅茶煮。

さて。

前回の書き込みに、ブログの方に、さる方からコメントがつきまして。
>>モサドとモスバーガーの区別が付いてる、この世代の日本のミュージシャンって、八木さんと大熊亘、中川敬ぐらいかも(涙)。

ああっ、ごめんね。こんな日本のいい男2名を忘れていたよ。今度、モスドでお茶しましょうね。


さて、で、なんで、わたしが常岡さんの本を薦めるかというと、べつに彼がいい男だからというだけの理由ではなくて(しつこいって)、「平和を語るためには、戦争をわかっていなくてはならない」と思うからだ。

文化人類学を学ぶ人には有名な話だが、第二次大戦中、日本軍はアメリカを「鬼畜米英」として、実際以上に軽んじ、低く評価し、研究などまったくせず、あのとおりの結果となった。
米国に滞在経験があったりして、米国をよく知る知識人などは、かなり早い段階から「無謀きわまりない戦争」であることに気づいていたようだが、そういった意見は「根性論」に封殺された。

一方で、米国は、(日本人を鬼畜扱いする国策映画を作っていたのも事実だが)、ルース・ベネディクトという文化人類学者をブレーンとして、「恥」「恩」「義理」など、日本人の価値観・美意識などについての研究を助成し、それを日本人の思考回路を知る上で、大いに参考にした。
この書籍は非常にクオリティの高いもので、その後「菊と刀」というタイトルで出版され、いまでも日本研究の書としては、一度は読むべきものとして高く評価されている。

つまりこういうことだ。
相手・対象を知らずして、どうして、否定することや戦うことができるだろうか。

私が時々、日本で、ときどき違和感を感じるのは、こういうときだ。
戦争に反対するのであれば、平和を求めるのであれば、ひとつひとつの戦争がどういうものであるかを、ステロタイプ的な理解ではなくて、ある程度、きちんとわかっていなくてはならない。ハリウッド映画ではないのだから、世の中に「ステロタイプな戦争」なんてないのである。

そういう思考や理解なしに、脊髄反射的に「戦争=悪、平和=善」「中立は素晴らしい」という固定観念だけで話を定義し、かんたんに「モデル」を求めようとすると、そこに待っているのは陥穽でしかない。

たとえば、国民皆兵武装中立かつマネーロンダリングのお膝元であるスイスを「中立国だから平和国家」と決め込んで、「アルプスの少女ハイジ」の印象で憧れてみたり、強大な国が、小さな国々の自治を武力で潰そうとして国際的非難を浴びていた、まさにそのときに、その真横で、その強大な国からどっぷり援助金をもらって軍基地を提供して、ぬけぬけと「中立」と称していたコスタリカを、なぜか日本人だけが「平和国家」と崇めたてまつるようなことが起こってしまうのだ。

イヤなことからひたすら目を反らし、口当たりが良くて自分が信じたい情報を求めるのではなくて、イヤだからこそ目をこらし、口当たりがよくて信じたいことを、無条件に信じるべきではない。

天下国家の話ではなく、こういうことは、身近にもころがっている。

必ずしも、詐欺に引っかかるのは、ぼろい金儲けをしたい人ばかりではない。
オレオレ詐欺になぜ、ころりとたくさんの人が引っかかるのか。
「本当に困ったときに、他ならぬ自分を頼ってくれた」という親の快感をくすぐるからだ。

すべて、詐欺というのは、そういう人間の心理に立脚したものだし、多くの場合、戦争や紛争も、莫大な金が動くがゆえに、イラク戦争に典型的だったが、詐欺的な要素が入る余地が少なからずある。
だからこそ、戦争から目を背けるべきではない。

とくにメディアに語られない戦争には、そこに「メディアに語られない理由」がちゃんとあるのだ。


ちなみに八木、来月は、いい男の追加のうちの一人、大熊ワタルさんとライブです。来てね。(と、なにげに宣伝)

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人は、どのような局面において言葉をつむぐか。30人の執筆者が震災を語ったエッセイ集。澤地久枝、斎藤 環、池澤夏樹、渡辺えり、やなせたかしらと並んで八木も寄稿。
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日本の刑事司法の何が問題か、どのような改革が求められているか。刑事法研究者、実務法曹の他、八木も執筆しております。
禁じられた歌ービクトル・ハラはなぜ死んだか(Kindle版)
長らく絶版状態だった書籍をリクエストにより電子書籍で再版いたしました。八木啓代の原点です。
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