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チェチェン

ロシアの映画監督、美しい映像といえば、なんといってもあのタルコフルキーが忘れられないのだけれど、現代のアレクサンドル・ソクーロフも私の好きな監督の一人である。とはいえ、この人の作風というのは、どこを切り取ってもフランドル絵画のように美しい映像が続く....けれど、とくに明快なストーリーがあるわけではないので、エンタテインメント志向の方には合わない作風である。で、彼の新作が、なんと「チェチェンへ アレクサンドラの旅」。チェチェンですか。
http://www.chechen.jp/

たしかに、ゆったりしたアート風味で、そのくせレーニンとか昭和天皇とか、けっこうすごいテーマに切り込んでくるのもソクーロフなのですが、そうですか、チェチェンですか。しかも主演は、往年の名プリマドンナだという。

もちろん、映画が始まると、やはりそこはソクーロフの世界で、ゆったりとした流れの中で、一人のおばあちゃんが、チェチェンにロシア兵として赴任している職業軍人の孫を訪ねていって、軍の駐屯地に「ものすごく日常のおばあちゃん」を淡々と持ち込み、また帰って行くという物語。そして、その物語の中で、埃っぽいロシア兵駐屯地のやるせない疲れた時間、子供っぽいあどけなさを残すロシア兵、そして戦闘の傷跡を残す町並み、異文化・異民族である地元の人々の間を、名プリマドンナ演じる(といっても歌うわけではない)不思議に存在感のあるおばあちゃんが、よろよろと歩く....。

そういう映画なので、たぶん好き嫌いはあると思いますが。

しばらく前に読んだ本で、旧ソ連からロシアの地域での地域紛争を描いた小説に、ジョン・ル=カレの「われらのゲーム」がありました。
http://adjix.com/9qs
年の離れた若い恋人と自分が育て上げた後輩が、目の前で運命的な恋に落ちて、逃避行を始めてしまう。しかもその二人が大規模な詐欺に荷担して、大金を持って逃げており、その詐欺事件に関して、自分も共犯と疑われる........という事態から、二人を追うことになった元スパイの物語です。イギリスの田園で始まった話が、イングーシ~チェチェンのイスラム文化の中で終わるという、ル・カレの作品として、かなりメッセージ色の強いものでした。サスペンスフルなものがお好きな方には、こちらの方がいいかもしれません。

そして、もっと刺激的なのがお好みであるなら、マイミクでもある常岡浩介さんの「ロシア 語られない戦争 チェチェンゲリラ従軍記」はかなりおすすめです。
http://adjix.com/5r6j
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