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サンディニスタ暴走

ニカラグアが、というより、サンディニスタの暴走がひどくなっている。

先日、オルテガ大統領と対立し、投獄の危機にある(正確には、高齢のため、実際に投獄されることはないが、事実上、自宅軟禁状態)エルネスト・カルデナルが、スイスとノルウェー政府の招待により、出国。ヨーロッパ諸国とアメリカ合衆国の大学や文化団体での講演ツアーをおこなうことになった。

それを受けて、オルテガ大統領は、エルネスト・カルデナルのニカラグア国内の資産のすべての凍結。資産といっても、世界各国で出版されている彼の著作物の印税や講演料収入で、彼の生活の基盤となっているものだが、同時に、カルデナル自身がかかわっている小児癌の子供たちのための基金なども凍結されてしまった。
この無茶苦茶な事態に、ニカラグアの人権団体の弁護士たちは、この凍結処分が非合法であるとして申し立てを行ったが、すべて政府側に却下されている。

スペインの国民的大歌手ジョアン・マヌエル・セラートは、次のようなコメントを発表した。

「善き人間、自由な人間として感じ考えるという罪を負ったエルネスト・カルデナルのような革命的な詩人を護るために声をあげることに、私は心より賛同する」

かつて日本ではポール・モーリアの「エーゲ海の真珠」として大ヒットした曲は、もともと「ペネロペ」というタイトルで、セラートの作品。ハリウッド女優のペネロペ・クルスの芸名は、じつはこの曲から来ている。彼自身は、カタルニア系ということもあって、筋金入りの左派でもある人。

しかし、南米は左派が躍進なんて無邪気に喜んでいる場合じゃないよ、これは。

かつて、皆がダニエル・オルテガを「キューバ志向の共産主義者」だの「ゲイ」呼ばわりし、右翼が嫌って左翼が持て囃していたとき、私は「ニカラグア革命は支援するけれど、ダニエル・オルテガは資本主義者で女好きだから嫌い」と公言していたものだった。

20年経って、それが事実であったことが白日の下になってしまった。オルテガは私腹を肥やし、権力に固執し、未成年への性的虐待ももう隠蔽しきれない。
まっとうな人間はサンディニスタに見切りをつけて、新政党MRS(サンディニスタ刷新運動)を作ったが、そういう人たちを今度は弾圧にまわる。

クズをクズを看破していたといっても、そんな予感は当たってもうれしくも何ともない。

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ラテンアメリカと日本を拠点に活動する音楽家・作家 八木啓代のBlog
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