ヴォイス・オブ・ヘドウィグ

またもや、おすすめ映画。ヴォイス・オブ・ヘドウィグ。
まあ、直訳すると「ヘドウィグの声」
ヘドウィグというのは、オフ・ブロードウェイで大ヒットロングランとなり、映画化もされたロック・ミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」の主人公。ゲイで性転換者(しかもその手術は失敗する)のグラムロック歌手だ。
詳しくは、こちらをどうぞ。
Wikipedia 「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」
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映画公式サイト
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そのヘドウィグの曲をトリビュートしたアルバムを作ろうというプロジェクトのメイキングムービーがこれ。しかも参加メンバーも、ジョナサン・リッチマン、フランク・ブラックといった、オルタナティブ系から、シンディ・ローパーにオノ・ヨーコに至る、多彩な顔ぶれだ。
といっても、もちろん、ただのメイキングではないわけ。
アルバムの収益は、ニューヨークで、LGBTQの人たちを対象とした権利団体「ヘトリック・マーティン・インスティテュート」の運営する、LGBTQの青少年のためのハーヴェイ・ミルク高校に寄付される。
ハーヴェイ・ミルクは言わずと知れた、アメリカで始めてゲイであることを公言して大都市の公職に就き、暗殺された人。LGBTQという単語は、今回、私も始めて知った。
レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィアのそれぞれの頭文字をとったものだそうだ。
そして、このハーヴェイ・ミルク高校とそこに通う4人の生徒たち(2人のレズビアン、1人のゲイ、1人のトランスジェンダー)の生活が同時に描かれていくのだ。
当然ながら、自らがLGBTQである気づくことは、一生をマイノリティとして生きていかなければならないということだ。それも、ただのマイノリティではなく、差別と無理解と偏見と憎悪の対象になるマイノリティに。
保守的なアメリカの地方に生まれ育ったため、この高校に来るまでは毎日が地獄だったと語る少女がいる。
ひどい虐めを受けてカウンセラーに相談しても、「ゲイなのが悪い」と言われたという少年もいる。
家族の理解をどうしても得ることができず、自傷や自殺未遂を繰り返す子もいる。
そんな矢先に、この高校は公立として認可を受ける。それがニュースで取り上げられたことで、ゲイを敵視する人たちと擁護する人たちが学校に詰めかけ、彼らはガード付きで登校する。
まだあどけない顔の彼らが生きているのはそういう世界だ。
重い。
けれども、ずっと流れるロックと哀しくも可笑しいヘドヴィグの物語が、この話をこれっぽっちも暗く湿っぽくはさせない。そしてなにより曲がいい。
オリジナルのミュージカルや映画を知らなくても、何も問題はない。
それらすべてを理由として、この映画をおすすめしたい。
9月22日から、東京渋谷ライズXと大阪シネマート心斎橋ほか
映画「ヴォイス・オブ・ヘドウィグ」公式サイト
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(ただし、いきなり音が鳴るので、ご注意)