キューバの人々....結局、酒と音楽
キューバはキューバで、待ちかまえている連中がいた。
なんといっても、ひさびさの訪問だったからね......といっても、待ちかまえていた人々の半分は、「酔っぱらい軍団」((C)サラ・ゴンサレス)、こと、トロバドールの人々だった。
今回の八木の仕事の一部は、この「酔っぱらい軍団」と彼らの音楽にまつわる歴史を取材したいという日本のジャーナリストの方のおつきあいだったが、このインタビューからして、当たり前のように、その場にはギターとラムがあったのは言うまでもない。
シルビオ・ロドリゲスやパブロ・ミラネスの成功で、今、ラテンアメリカでは「トローバ」というと、「シルビオ・ロドリゲスやパブロ・ミラネスみたいなスタイルの弾き語り」、良くても「キューバ革命後に起こった文化ムーブメントであるヌエバ・トローバ」のことだと思っている人が多いが、実際は、「トローバ」は19世紀末に起源をもつ、キューバ人がキューバ的と感じる歌のことだ。
そういう意味では、ジャンルですらない。
だから、歌曲もあれば、ミゲル・マタモロスなどの多くのソンもすべてそこに含まれるし、革命後は、ジャズやロックやブルースの影響を受けたものも含まれる。音楽的にはかなり広大だし、だからこそ、ある意味、キューバ音楽史上、最も重要なものである一方、外国人にはその概念がわかりにくい。
まあ、こういう音楽史的な部分を抜きにして、八木的に説明すると、トローバとは、「キューバやメキシコに分布する、ギターを弾いて自作の美しい歌を歌う人たちのつくるもの。ロマンスと酒を愛し、ときどき過激」という感じ。
順番に注意されたし。一が美しい歌、二がロマンス、三が酒で、四が政治である。
この順番が違っていると、似て非なるものであったりするので、厳重な管理が必要である。
ついでに、シルビオ・ロドリゲスの「アブダラ・スタジオ」を見せてもらう。
これは今、キューバで最大にして最新鋭のスタジオで、まあ、自慢するだけあって、さすがにそれなりのものである。キューバで最高といわれるだけのことはある。
......とちょっと感心していると、大御所フランク・フェルナンデスから電話があった。
この方は、ええ、誰もが認めるキューバ最高のピアニストである。それも、クラシックからジャズからトローバからサルサから、すべてのジャンルにおいて。
本業(?)のクラシックでは、チャイコフスキー・コンクールの審査員であり、「プラハの春音楽祭」など世界の名だたる音楽祭やホールで演奏しているし、ジャズではチュチョ・バルデスとピアノ対決をし、サルサやトローバでも大活躍という、かなり特異な方でもある。
で、その特異さは、その性格にも....現れているのであった。
「シルビオのスタジオを見たんだってね」
「は.......一応」
「では、君は私のスタジオを見に来なければならない。どちらが『キューバで最高のスタジオ』か君はその目で確かめるのだ」
いや、私が録音しようってわけじゃないんだから、スタジオ見たってさ.....という言い訳は通用しない。なんせ、大先生なんである。私ごときに断る勇気があるわけがない。しかも勝手にその日のアッシーくんやらメッシーくんの手配までしてしまうのである。
で見せていただいたそのスタジオは......確かに凄かった。
なんでも、かのバレンボイムが(バレンボイムだと!)、
「こんなスタジオを持てるのは、音楽家の最大の夢だ」
と言ったのだそうだから。
スタジオそのものの大きさはもちろん「アブダラ」にはかなわないのだが、考え抜かれた音響と最高の機材。そして、もちろん最高のスタインウェイのピアノ。
それだけではない。このスタジオは、細部にまで美しくてアーティスティックなのだ。
レコーディング中の音楽家が疲れると、スタジオからすぐ美しい中庭に出られ、中庭には美しい(世界中から写真を撮りに来る見事なステンドグラスの窓のある)バーカウンターやら、アルゼンチン風炭火焼き肉パーティーのできる設備もある。
壁には品のいい絵画や写真で美術館のように飾られ、カフェテリアのドアもステンドグラス。
.....というすごいスタジオだったんである。
まあ、見ただけだけど。(大爆)
ただし、基本的に商業ベースで運用してるシルビオのスタジオと違い、こちらはもちろんレンタルもやるが「フランクが気に入った音楽(または音楽家)」にしか貸さないのだそうだ。贅沢な話である。
自分の音楽のクオリティに自信がある方にはお勧めである。
ただし相手は、チャイコフスキー・コンクールの審査員で、シルビオ・ロドリゲスやオマーラ・ポルトゥオンドやアダルベルト・アルバレスを発掘した親父である。
最新のこのスタジオでの録音は、このフランクのピアノで、プエルトリコの大歌手ダニー・リベラのアルバム。客演は、パーカスにタタ・グィネス、トレスにパンチョ・アマット、チェケレにパンチョ・テリー、ラウーにバルバリート・トーレス、パイラにチャンギートなんだもんな。(といっても、フランク御大に「来い」と言われて断る勇気のある音楽家は、キューバにはいないだろうけど)
なんといっても、ひさびさの訪問だったからね......といっても、待ちかまえていた人々の半分は、「酔っぱらい軍団」((C)サラ・ゴンサレス)、こと、トロバドールの人々だった。
今回の八木の仕事の一部は、この「酔っぱらい軍団」と彼らの音楽にまつわる歴史を取材したいという日本のジャーナリストの方のおつきあいだったが、このインタビューからして、当たり前のように、その場にはギターとラムがあったのは言うまでもない。
シルビオ・ロドリゲスやパブロ・ミラネスの成功で、今、ラテンアメリカでは「トローバ」というと、「シルビオ・ロドリゲスやパブロ・ミラネスみたいなスタイルの弾き語り」、良くても「キューバ革命後に起こった文化ムーブメントであるヌエバ・トローバ」のことだと思っている人が多いが、実際は、「トローバ」は19世紀末に起源をもつ、キューバ人がキューバ的と感じる歌のことだ。
そういう意味では、ジャンルですらない。
だから、歌曲もあれば、ミゲル・マタモロスなどの多くのソンもすべてそこに含まれるし、革命後は、ジャズやロックやブルースの影響を受けたものも含まれる。音楽的にはかなり広大だし、だからこそ、ある意味、キューバ音楽史上、最も重要なものである一方、外国人にはその概念がわかりにくい。
まあ、こういう音楽史的な部分を抜きにして、八木的に説明すると、トローバとは、「キューバやメキシコに分布する、ギターを弾いて自作の美しい歌を歌う人たちのつくるもの。ロマンスと酒を愛し、ときどき過激」という感じ。
順番に注意されたし。一が美しい歌、二がロマンス、三が酒で、四が政治である。
この順番が違っていると、似て非なるものであったりするので、厳重な管理が必要である。
ついでに、シルビオ・ロドリゲスの「アブダラ・スタジオ」を見せてもらう。
これは今、キューバで最大にして最新鋭のスタジオで、まあ、自慢するだけあって、さすがにそれなりのものである。キューバで最高といわれるだけのことはある。
......とちょっと感心していると、大御所フランク・フェルナンデスから電話があった。
この方は、ええ、誰もが認めるキューバ最高のピアニストである。それも、クラシックからジャズからトローバからサルサから、すべてのジャンルにおいて。
本業(?)のクラシックでは、チャイコフスキー・コンクールの審査員であり、「プラハの春音楽祭」など世界の名だたる音楽祭やホールで演奏しているし、ジャズではチュチョ・バルデスとピアノ対決をし、サルサやトローバでも大活躍という、かなり特異な方でもある。
で、その特異さは、その性格にも....現れているのであった。
「シルビオのスタジオを見たんだってね」
「は.......一応」
「では、君は私のスタジオを見に来なければならない。どちらが『キューバで最高のスタジオ』か君はその目で確かめるのだ」
いや、私が録音しようってわけじゃないんだから、スタジオ見たってさ.....という言い訳は通用しない。なんせ、大先生なんである。私ごときに断る勇気があるわけがない。しかも勝手にその日のアッシーくんやらメッシーくんの手配までしてしまうのである。
で見せていただいたそのスタジオは......確かに凄かった。
なんでも、かのバレンボイムが(バレンボイムだと!)、
「こんなスタジオを持てるのは、音楽家の最大の夢だ」
と言ったのだそうだから。
スタジオそのものの大きさはもちろん「アブダラ」にはかなわないのだが、考え抜かれた音響と最高の機材。そして、もちろん最高のスタインウェイのピアノ。
それだけではない。このスタジオは、細部にまで美しくてアーティスティックなのだ。
レコーディング中の音楽家が疲れると、スタジオからすぐ美しい中庭に出られ、中庭には美しい(世界中から写真を撮りに来る見事なステンドグラスの窓のある)バーカウンターやら、アルゼンチン風炭火焼き肉パーティーのできる設備もある。
壁には品のいい絵画や写真で美術館のように飾られ、カフェテリアのドアもステンドグラス。
.....というすごいスタジオだったんである。
まあ、見ただけだけど。(大爆)
ただし、基本的に商業ベースで運用してるシルビオのスタジオと違い、こちらはもちろんレンタルもやるが「フランクが気に入った音楽(または音楽家)」にしか貸さないのだそうだ。贅沢な話である。
自分の音楽のクオリティに自信がある方にはお勧めである。
ただし相手は、チャイコフスキー・コンクールの審査員で、シルビオ・ロドリゲスやオマーラ・ポルトゥオンドやアダルベルト・アルバレスを発掘した親父である。
最新のこのスタジオでの録音は、このフランクのピアノで、プエルトリコの大歌手ダニー・リベラのアルバム。客演は、パーカスにタタ・グィネス、トレスにパンチョ・アマット、チェケレにパンチョ・テリー、ラウーにバルバリート・トーレス、パイラにチャンギートなんだもんな。(といっても、フランク御大に「来い」と言われて断る勇気のある音楽家は、キューバにはいないだろうけど)