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超絶面白いラテンアメリカ映画の件

さて、ひさびさの映画ネタです。
じつは、ものすごく面白い映画を見つけ、それを字幕翻訳することにしました。

1970年代、軍事政権下のアルゼンチン・トゥクマン州の片田舎ポソ・オンドの村に、天から男の遺体が落ちてきた。

軍のヘリから落とされたらしいその遺体を、村人たちは丁重に供養するが、いつしか、拝むと御利益があると信じられるようになり、聖人として信仰の対象となっていった。

それから40年の時を経て、その村に、調査団の法医学者たちがやってきた。

「聖人の遺体」を掘り返すことに抵抗する村人を説得し、DNA鑑定を行ったことで、その「天から落ちてきた男」にかかわる驚くべき真実が明らかになっていくー。

遺体は本当に聖人にふさわしい存在だったのか?
そもそも、どうして天から落ちてきたのか?
なぜ村人は彼を祀ったのか?

1970年代、軍事政権下のアルゼンチンで何が起こっていたのか? 
「男」の出身地に伝わっていた悪魔伝説の真相は?
そして、すべてが明らかになったとき、「聖人」に対して村の人々の取った意外な行動とは?

軽快なアルゼンチン民謡のリズムに乗って、信じられないような実話を追う中で、今もアルゼンチンの社会に影を落としている事件が、ミステリアスに浮かび上がってくる。

....という、ガルシア=マルケスの小説顔負けの、「衝撃の実話」のドキュメンタリーです。

どうです。面白そうでしょう?
poster.jpg

ファンタジーのようでいて、じつは、法とは何か、裁くとは何か、正義とは何か、ということを考えさせる内容でもあります。民間伝承の生まれ方、という点でも興味深い。

そして、話の内容もさることながら、最高峰の音楽家たちが参加した、アルゼンチン北西部の民俗音楽も素晴らしいのです。
.....というわけで、この映画の字幕制作のためのカンパを、いま、集めております。

下記でクラウドファンディングを開始いたしましたので、ぜひ、予告編だけでもごらんください。(もちろん日本語字幕付きです)
https://readyfor.jp/projects/caido

映画やミュージカルでも有名な「エビータ」の死後、国内混乱の末にクーデターで成立したアルゼンチン軍事政権は、数万人とも言われる行方不明者を出したあげく、1982年のフォークランド紛争後に崩壊します。

しかし、その後も軍事政権の恐怖政治の爪痕は残っていたと言われており、長い時間をかけて、いまも軍事政権時代に何が起こっていたのかという事実の検証が行われているのです。

この映画は、その検証調査の中で明らかになって、全アルゼンチンに衝撃を与えた事件の詳細が、ドキュメンタリーになったというだけではありません。

真実が明らかになっていく過程は、ミステリ小説のようにスリリングです。そして、恐怖政治の下に置かれた人間の心理というものの普遍性にも迫っていくように思われます。

そして、すべてが明らかになったとき、「聖人」に対して、村の人々の取った行動は? そこで下した決断とは?

それは、日本に生きる私たちにとっても、とても興味深い80分となることを保障します。
本当に素晴らしい、そして内容の深い映画ですので、是非、ご協力いただけましたら、幸いです。また、もし可能なようでしたら、お友達などにも、声をかけていただけましたら、心から感謝いたします。

映画公式ページ(日本語)
http://caido.latinamerica-movie.com/
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ニューヨークからメキシコまで

酷暑の日本を早々に飛び出して、ピースボートのご招待で、ニューヨーク〜ハバナ〜ケイマン諸島〜コロンビア〜パナマ〜コスタリカ〜メキシコの船旅に乗船してまいりました。
(時々間違える方がおられるので、あえて先に書いておきますが、捕鯨反対船に乗って網とか切っていたわけではありません。あれはグリーンピースというまったく別の団体です。)

ピースボートは、昨年、ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の構成団体で、豪華客船に1000人以上の乗客を乗せて世界一周の船旅をやるNGOでございます。

とはいえ、実はあたくし、ニューヨークは初めてでしたので、いきなり船に乗るのももったいなく、ホテル代は自分で払うからね、と、3日前にニューヨーク入りを決めたのですが、あとでニューヨークってホテル代がバカ高いのに気づいて顔面蒼白。ユースホステルの相部屋が80ドルとかって、あんまりじゃね?

とはいえ、Airbnbの助けを借りて、無事、マンハッタンで安い民泊のお部屋をゲット。もちろんミッドタウンではなくてハーレムなんですけど、なんの問題もなかったっす。ていうか、ハーレムだと、ミッドタウンまで地下鉄ですぐなのに、物価安いし、美味しいテイクアウトのお店いっぱいあるし、普通に街角に「米国とイスラエルがパレスチナでなにをやっているかについての勉強会」を教会でやるというようなポスターが貼ってあったりして、私のような人間にはすこぶる居心地良かったです。

そういうわけで、お昼にはメトロポリタン美術館を皮切りに、近代美術館(MOMA)〜グッゲンハイム〜フリッツ・コレクションなど、美術館三昧を愉しませていただきました。

メトロポリタンの巨大さはさすがでしたが、個人的には、印象派以後を近代の抽象芸術の萌芽とみなしたMOMAの一連の作品展示に、蒙を啓かれました。じつは、アメリカンポップアートって大嫌いだったのですけど、あの空間で、ロイ・リキテンシュタインやジャスパー・ジョーンズのオリジナルを見ると、あれはけっして悪ノリを持て囃したようなものではなく、激しい主張なのだというのがよくわかりました。美術作品はやっぱりオリジナルです。どんなによく撮れているものであっても、写真集ではわからないものがそこにありました。それからね、ジャクソン・ポロックは天才だわ。

それとは対照的なフリッツ・コレクションも、本当に値打ちがありました。アメリカの金持ち半端ない。ティツァーノやブリューゲルやアングルやゴヤやベラスケスがぽんぽんあるんだもの。しかも、フェルメールを3点も見られるなんて。それも名品です。
ここの展示作品は、他の美術館に貸し出しをしないそうなので、本当にここに行かないと見られない逸品がたくさんありました。

で、ピースボートに乗船しましたところ、スタッフの方に「今晩、国連関係のイベントあるので、全編英語ですけど、いかがですか?」
好奇心旺盛なあたくしとしては、もちろんOKして、時間の少し前に会場にまいりますと............なんと正装・盛装のレディース&ジェントルマンがご入場中ではありませんか。そうなのです。ジーンズ+Tシャツで入れるような雰囲気ではなかったのです!
慌てて船室にかけ戻って、超特急でメイクしてドレスに着替えて、やっと入場。
ハイソな雰囲気だったのも当然で、国連の正式な共催イベントで、国連事務総長代理、国連理事会議長、各国大使といった人たちがぞろりといらっしゃっていたわけです。ああびっくりした。

まあ、そういった旅のあと、キューバを経て、メキシコに戻ってきたわけですが、メキシコは7月1日の歴史的大統領選挙の熱気がやっと落ち着いてきたところでした。

なぜ、歴史的かといいますと、ここ20年以上、有力野党候補に対するメキシコ版陸山会事件といえるような冤罪でっち上げ事件(といっても時系列的にはこっちの方が先)や不正選挙疑惑、その挙げ句の汚職三昧や麻薬戦争で国が大混乱、と、ここ10年以上いいところのなかったメキシコで、奇跡的に民主派が勝利、それも圧勝した選挙だったからです。
というか、相当の買収や票の入れ替えもあったようなのですが、それでも、民主派候補の得票があまりに圧倒的だった、というのが真相のようで。
https://www.bbc.com/japanese/44678849

ちなみに、上記記事では左派と書かれていますが、新大統領ロペスオブラドールことAMLO(アムロ)は、政治的にはゆるい中道やや左派ぐらいの人です。メキシコ政界が極右化していたので、相対的に左に見える、という感じ。ただ、私利私欲がなくてお金にキレイであるという点では、多くの人の意見が一致しているところです。

メキシコの現政権下では、大統領夫妻がお友達に国有地を不正売却したり、便宜を図ったり、大統領のお友達がレイプ事件を起こしてそれがバレても誰も罪に問われないとか、まるで冗談みたいにどっかの国そっくりなことが続いたので、国民の怒りが爆発しての、野党大勝利というわけです。

で、与党のPRIは今回の選挙で、1票2000ペソ(約12000円)でかなりの金をばらまいていたのですが、しかし大敗北。笑ったことに、PRIが堅いとみなしていた地区でAMLOが圧勝した。つまり住民は、金だけ受け取ってAMLOに入れたようです。メキシコ人、賢いよ〜(笑)

とはいえ、メディアはほぼ反AMLOでネガキャンが酷く、ネットもかなり工作されていたので(*この点詳しくはこの記事参照)、はっきりいって、選挙スタッフたちも、ここまで差がつくとは思っていなかったとのこと。

で、12月から大統領職に就くその新大統領。党首を務めるのも、政党はMORENA(国民再生運動)という、旧野党PRDから別れた新政党です。思えば、2005年の大統領選で、最有力候補で当選確実とされていたAMLOが、まさに、陸山会事件そのものの、通常なら訴追の対象にはなり得ないような単なる手続きミスを、不法行為だとして検察が暴走して訴追しようとした事件の時(そういう意味で、陸山会事件とそっくりだった)、当時の所属政党であった中道左派政党PRD(民主革命党)主流派は、不当な攻撃を受けていたAMLOを守ろうとはしなかったのですね。で、最終的に党が割れて、AMLOは親しい議員と共に別の政党を作ったわけです。

で、その古巣のPRDときたら中道左派を標榜してたくせに、大統領選ではAMLO憎さのあまり(?)、右翼政党のPAN(国民行動党)と組むという、まるで前原&細野みたいな真似をやったあげく、地方選挙でもボロ負け。支持率わずか2.8%。5つの州では、10000票もとれないという大惨敗。首都圏でなんとか5%とって、かろうじて政党要件だけはぎりぎり満たした、という、まるで日本のどこかの党みたいなことに。離党者続出状態なので、おそらく次の選挙までは保たないとみられています。そのあたりも、国民民主党日本のどこかの党みたい。

というわけで、まるで日本の政界の鏡像を見ているようなメキシコ政界だったのですが、国民が変にさとったりあきらめたりしないで民主派が圧勝したところが、日本と決定的に違うところです。

ということで、新大統領就任の12月1日以後、いろいろな改革、というより、「改革するとかいう名目の下でぶっ壊されて、与党政治家やそのお友達の食い物にされてきた様々なものごと」の正常化の鉈が振り下ろされるようです。早々にあっと驚く新政策も打ち出される予定。

そのひとつが、麻薬の合法化です。おそらく年明けには日本の新聞でも、ちょっとした騒ぎになるでしょう。
そして、麻薬マフィアとの話し合いについて勝算もあるようです。むしろ、やばいのは麻薬マフィアそのものより、麻薬マフィアから莫大な裏金を受け取っている司法関係者と軍隊。彼らが手を組めば、クーデターも冤罪でっち上げも可能だからです。そういう意味では、安心はできないし、目は離せません

というわけで、八木も9月には、いろいろお土産を持って日本に戻って参ります。
9月13日には、兵庫県伊丹市のイタリアンレストランAntonさんで、ひさびさのディナーライブ。
レストランAntonは、かなり前から八木が大ひいきにしていたお店で、お料理が美味しいのはもちろんなのですが、丹波篠山の鹿肉という超高級ジビエがリーズナブルなお値段で食べられることでも有名なお店です。(呼んでいただけてうれしいわ)
関西方面の皆様には、ぜひ、おすすめです!

また、20日には、東京で恒例のノチェーロでのライブです。いろいろ新曲も準備しておりますので、お気軽においでください。

それから、9月8日にはこんなびっくり講座もあります。お暇な方は、どうぞ!
https://www.asahiculture.jp/yokohama/course/e1d75e0a-18a9-307f-3641-5ae930d9284b


9月13日(木) 伊丹 イタリアンレストランAnton

(兵庫県伊丹市西台3-1-12) お問い合わせ/072-770-2923
Open 18:00 Start 20:00
料金:A:2000円(1ドリンク付)、B.3500円(軽食コース付き・ドリンク別)、C.4500円(特別コース付き ドリンク別)
アクセス/阪急伊丹駅より南側(交番のあたり)道を渡って角が二宮眼科の筋を南下徒歩2分。駐車場は近隣のパーキングを利用可。その場合200円のキャッシュバックあり

ヘルシーな鹿肉料理でも有名な絶品のイタリア料理店アントンさん(実は八木は開店当初からのファンです) 素晴らしいお料理もお得にお楽しみになれるプランです!! ギター:西本諭さん

ネット予約

9月20日(木) 六本木 ノチェーロ
(東京都港区六本木6-7-9 川本ビルB1) お問い合わせ/03-3401-6801
1st 19:30 2nd 21:00 (入れ替えなし) 
Charge:2,600円(おつまみ一品付)
アクセス/日比谷線・大江戸線六本木駅より徒歩2分

六本木駅至近の最高の立地の音響の良いステージです。美しい歌曲の数々をじっくりお聴き頂きます! ギター:福島久雄さん。

ネット予約

あのディズニーでもやろうと思えばできるんだよ

 昨日に続いて、もうひとつ、映画をご紹介。

 折しも、ラテンアメリカ圏では、ディズニー映画の最新作が、「アナ雪」をしのぐ大ヒット中なのです。
 少し前から宣伝が始まった日本版ではタイトルをまったく変えられて(ありがちですが)いたので、気づかなかったのですが、原題「ココ」。そして、日本版タイトル「リメンバー・ミー
 この、なんとなくお涙頂戴っぽい英語タイトルに騙されてはいけません。それから、見事なまでに、メキシコ色を排した子供向け映画風の日本版宣伝にも騙されてはいけません。
 この作品は「当たり」です。そして、ラテンアメリカ色、メキシコ色が満開です。

 かの「エビータ」といい、「フリーダ」といい、「ブエナビスタ・ソシアルクラブ」といい、ラテンアメリカを舞台にした、アメリカ制作エンタテインメントの全米ヒット系映画って、本国では大不評、ワースト映画扱い、下手すると地雷ってのが実は多いんですが、この映画に関して言うと、その殻を破って、中南米圏でも大ヒットしただけのことはあるのです。

 というのも、制作陣のメキシコ民衆文化に対するリスペクトが細部にまで感じられ、また、スタッフも相当勉強した上で作っているのもうかがえます。
 じつは、この映画制作前、ピクサーが「死者の日」を商標登録しようとして、メキシコで大バッシングされるという事件があったのですが、その悪いイメージを払拭するだけのものに仕上がっています。

 (ちなみに、この件に関して、ピクサーは、「死者の日」という言葉を自分たちだけのものにしたかったわけではなく、単にタイトルとして使いたかったため、と釈明していますが、批判を受けて取り下げました。六花亭の「そだねー」騒動みたい。)

 主人公はリベラ家で、登場人物としてフリーダ・カーロも出てくる上、さらに言うと、アニメ吹き替えなのに、声優も全員ヒスパニック系にしているうえ、なんと、オリジナル版の準主役の声は、あの、「モーターサイクル・ダイアリーズ」で若き日のチェ・ゲバラを演じたガエル・ガルシア=ベルナル!、さらに硬派のジャーナリストで左派アクティビストのエレナ・ポニアトウスカも声の出演をしているところなど、なにげに反トランプ全開感が(笑)。

 しかも。邦題タイトルにもなっているテーマ曲とは別に、クライマックスシーンで歌われるのが、なんと!
 八木のライブのお客様なら、一度は聞かされたことがあるという、八木の持ち歌でもある、あの曲ではありませんか!
 (道理で、どこに行ってもリクエストされたわけだわ)
この曲に限らず、劇中の音楽もすべて、メキシコの民俗音楽をきちんと踏まえたものになっています。(日本語版のシシド・カフカさんとスカパラのテーマ曲は、別物だと思ってください)

 メキシコでは、11月1日・2日の「死者の日」にあわせて、去年の10月に公開されたのですが、日本での公開がこんなに遅れたのは、おそらく、「こんな、ラテン文化濃厚の映画なんて、日本ではきっと受けない」という、日本側の偏見ではないでしょうか。でも、映画がたくさんの賞を獲得し、しかも世界的なヒットとなったので、あわてて日本でも公開。でも、ためらいがあるから、なるたけメキシコ色を排した、おもいきり中途半端な宣伝、みたいな。

 けれど、ラテンアメリカ文化、とくにメキシコ文化に少しでも興味を持っていただけるなら、是非、ご覧ください。堪能できます。
 そして、ラテンアメリカ文化やメキシコ文化に少しの興味もない人でも、絵の美しい映画として楽しんでください。この世界観と美しい色彩感覚は、むしろ大人にこそ愉しんでいただけるかと思います。

 ディズニーの創業者であるウォルト・ディズニーは、かつて赤狩りにも告発者として関与するなど、いわゆる「ばりばり右」の人で、初期のディズニー作品には、人種差別的要素や男尊女卑的要素がさんざん指摘されているのだけれど、そういう根っこを持つ会社であっても、時代とともに変わることはできる。そして、あえてトランプ政権下で、この作品をぶつけるほど、やればできる、という意味でも、感慨深いです。

 というわけで、あえて、予告編は日本版ではなくて、ラテンアメリカ版を乗っけておきます。



 それから、オスカーを取った主題曲は、こちら

風通しの良いのが何よりです

 しばらくブログの更新がなかったのは.....日本を留守にしていたからでございます。
 一ヶ月ほど各国を転々としたあと、最後は中米のニカラグアに一週間ほど滞在して、ライブやコンサートをやったり、テレビに出たりしておりました。
 ニカラグアは、実は、20年ぶりの訪問だったのですが、友人たちに迎えられて、楽しい仕事ができました。

 といっても、ニカラグア、マイナー度の高い国です。
 どれぐらいマイナーかというと、日本の郵便局でニカラグアあての手紙を出そうとすると、70%ぐらいの確率で、郵便局員さんがアフリカの地図を探して「そんな国ありません」と言われるぐらいマイナーです。(ちなみにニカラグアは中米です)

 とはいえ、ニカラグアは、石を投げれば詩人に当たる、といわれる、意外な文化国家。ラテンアメリカ現代文学の巨匠である詩人ルベン・ダリオを生んだ国で、音楽家もたくさん輩出しています。
 ちなみに、昨年のラテン・グラミー賞を獲得したのも、ニカラグアの国民的作曲家のカルロス・メヒア=ゴドイ氏。
 この人自身も、サンディニスタ革命の貢献者の一人なんですが、日本では息子さんのほうがニュースになりました。
 とはいえ、かつて「人間性の敵、ヤンキーと戦え」とまで歌った人が、べつに路線を変更したわけでもないのにグラミー賞とは、時代の変遷はすごいです。まあ、キューバがアメリカと国交回復する前に、ラテン・グラミー賞は、キューバ人ミュージシャンに授与されていましたから、そのへん、忖度しない文化があるのかもしれません。
 そのカルロス・メヒア=ゴドイ氏のコンサートにゲストで出演したあと、自分のコンサートもさせていただきました。

 で、そのコンサートの告知と宣伝のためにTVに出たのですが、出演料(?)に卵と牛乳をもらいました。私もこの仕事長いですが、テレビに出て卵と牛乳もらったのは初めてです。さすがニカラグア。
 ニカラグアで一番人気があるという、朝のニュース系バラエティ番組。スタジオの隅っこに、牛乳2パックと卵(15個入り)2パックが何気においてあったので、このあとにお料理コーナーでもあるのかと思ったら、出演お礼だったとは。

 あとでニカラグアの他の音楽家に聞きますと、「ニカラグアあるある」だそうです。「番組スポンサーの提供品ですよ、きっと」
 なるほど。ニカラグアでは番組提供のスポンサーが農家だったりするんでしょうか?

 まあ、それはともかく、毎朝、ニカラグア産のコーヒーにマンゴーとバナナてんこ盛りの朝食をいただき、幸せな日々でございました。アボカドにせよ、マンゴーやバナナにせよ、樹で完熟したものをいただけるのは、本当に産地の特権です。

(それを言うなら、長野でいただく朝取りのとうもろこしやセロリの美味しさってのも、言葉にならないものがありますが)

 そのニカラグア、ばりばりの熱帯です。
 が、意外に過ごしやすいのです。

 といいますのも、キューバとかニカラグアとかメキシコ東部といった(ハワイとかも同様だと思いますが)、本来の「熱帯」の国は、その風土に合わせて街づくりがなされていて、建物もそういう仕様になっているのですね。
 いわゆる百葉箱みたいな、直射日光を遮り、風通しがよく、天井が高めの建築に、お昼寝用のハンモックもぶらさがっている、みたいな。

 で、そういう熱帯地方は、朝が早いです。みんな5時に起きて、7時には学校の授業や仕事がはじまり、そのかわり、お昼にはたっぷり休憩が(お昼寝タイム)。そして、夜は夜で、涼しい海辺などで、みなが踊っていたり。

 マナグアの新名所となっている、チャベス=ボリーバル大通り(!)の終点あたりにあるサルバドール・アジェンデ港(!)エリアには、無料のミュージアムやきれいな散歩道、フードコートなどができていて、お金がなくても市民が楽しめる感じになっており、子供連れで賑わっていました。夜なのに。というか、夜だから。

 なので、冷房がなくても、けっこう快適に過ごせたりするのです。

 そういう意味では、日本の夏のほうが、暑苦しいですね。そういえば、かなり前に、夏のチェコ共和国に行ったことがありましたが、異常気象でとんでもなく暑く、しかも、暑さの備えがないため、クーラーがあまりないうえ、建物とかバスの窓とかが開かない仕様になっているところがあって、なかなかに悲惨でありました。

 で、その暑苦しい日本に戻ってきたわけですが、折しも、都議選で自民党が惨敗し、内閣支持率もかつてない低水準と、やや風通しがよくなっているようではあります。

 都議選で大勝した「都民ファースト」。勝った途端に代表の小池百合子氏が代表をお辞めになって、別の方にお譲りになって、その方が、横領で告訴されていたり六本木で豪遊したり、国民主権を放棄するべきだと主張されている方ということで、早くも「騙された」という声が上がっていたようですが、ある意味、騙されていることに気づくのは早ければ早いほど良いのですから、これまた、風通しがよくなってよかったかも、と、私などは思ったりするのです。

 残念なのは、これだけ自民党が大敗しても、その有権者の怒りや不満の受け皿になるどころか、そこでお家芸の自爆をやっちゃっている民進党の体たらくですが、ある意味、下手に今の蓮舫ー野田体制のなかで敵失だけで勝っちゃって、なんかとんでもなく勘違いしちゃうより、良かったかもしれません。さっさと若手の優秀な方々に、席をお譲り頂きたいものです。

 というわけで、かつてない7月酷暑の中、しばらくは日本で楽しませていただこうと思っております。
 もちろん、皆様にも楽しんでいただきたく、ライブなどもやりますので、どうぞお気軽にお運びください。

7月28日(金) 六本木 Nochero
(東京都港区六本木6-7-9 川本ビルB1) お問い合わせ/03-3401-6801
1st 19:30 2nd 20:45 3rd 22:00(入れ替えなし) Charge:2,600円(おつまみ一品付)
アクセス/日比谷線・大江戸線六本木駅より徒歩2分 
六本木駅至近の最高の立地の音響の良いステージで、今年最後のライブ。美しい歌曲の数々をじっくりお聴き頂きます! 金曜日ですので、お間違いなく!! ギター福島久雄さん。
ネット予約

キューバでの想い出(その2)

 80年代。
 キューバの田舎は、なかなか楽しいところだった。なにより、首都では不足気味の野菜が豊富だった。
 ハバナから始まって、マタンサス、サンタ・エスピリトゥ、トリニダード、カマグエイ、オルギン、バヤモ、サンティアゴ。すべて、乗り合いバスの旅だ。
 どこでも、キューバの人たちは、最初のうちは、「バス停にいる外国人」をうさんくさげに見ていたが、すぐに誰かが話しかけてきて、うちとけ、いろいろ教えてくれた。

 古都トリニダードに着いて、安ホテルに向かうと、満室だと断られた。そこのフロントで教えてもらった別のホテルに行ったら、見るからに外国人向けホテルで高そうだ。これは、まずいよ。
trinidad1.jpg
 しょうがないので、もう一回安ホテルで交渉しようと道を戻っていくと、教会前の公園から、なんとも美しい歌声が流れてくる。
 わお。

 公園に入っていくと、ベンチで美少年がギターを弾きながら歌っていた。
 思わず前で聞き惚れていると、少年は「あなた、どこから来たの?」と問う。
「日本から。もっと歌ってくれる?」
「いいけど.......今夜はこの街に泊まるの?」
「.....それが、ホテルがいっぱいでね、いま泊まれるところを捜してるの」
「ああ、じゃあちょうどいい」
 意外なことを少年は言った。
「うちに泊まればいい。今晩『トローバの夜』があるんだ」
「なにそれ?」
「この街のトロバドールが集まって、みんなで歌を歌う集まりだよ」

 トロバドールというのは、19世紀末ぐらいからキューバで起こった叙情的な歌を歌う人たちだ。中世ヨーロッパの吟遊詩人(トロバトゥール)のキューバ版である。
 それって、ものすごい幸運じゃないか!

 そこでさっそく誘いに乗ることにして、バッグを担いで、少年の後ろについていった。

 と。

「お嬢さん、外国の人だね。どこに行くの?」と、すれ違ったおじさんが、見とがめたように声をかけてきた。
「『トローバの夜』に招待したんだ」と、少年。
「トロバドールの集会があるんですって」と、私。

 おじさんは、なんともいえない表情になった。
「お嬢さん、お泊まりのホテルはどこですか?」
「それが、ホテルがいっぱいで泊まるところがなくて」と、私。
「ぼくんちに泊まるんだ。どうせ『トローバの夜』だし」と、少年。

 おじさんは、さらになんともいえない顔をして眼鏡を拭くと、私にこう言った。
「あのですね。先に言っておきますが、私はおすすめしませんからね」
「失礼ですけど、あなたはどなた?」
「革命防衛委員会のものです」

 出たっ! 革命防衛委員会だってよ! やっぱ社会主義!

「つまり、この人の家に泊まるのは禁止っていうことですか」
 おじさんはまた困った顔をした。
「禁止、ではありません。あなたにはどこにでも泊まることができます。ただ、あまりおすすめできないと...」
「なぜですか?」
「だって、今夜は街中のトロバドールが集まるんですよ」
「それのどこがいけないんですか?」
「いや、いけなくはないが....」

と、少年が私の手を引っぱった。「さ、放っといて。さ、行こう」

 おじさんを残して、私たちは歩いていく。
「あのさ、外国人の私を家に泊めたりして、迷惑はかからないの?」
「いや、べつに。きっとみんな喜ぶよ」

 荷物を置いて一休みすると、もう日が暮れかけていた。
 すると、三々五々、人が集まってくる。白い人、黒い人。

「あたしは、ラ・プロフンダ」
 見るからにキャラの濃ゆそうなおばさんが、ドスの利いた声で自己紹介した。「この街イチの、トローバの歌い手さ」
 プロフンダというのは、深淵という意味だ。深遠なる女性。すごい渾名だ。

trinidad3.jpg 彼女は、ギターを取って、弾きはじめた。スペインの船にまつわる物語の歌。たぶん古い歌だ。すぐに少年が3度並行でハーモニーをつけた。美しい。なんて贅沢。
 続いて、別の、愛の歌。
 それから、みなが順番に弾き歌いの宴会が始まった。

 ........そして、朝の4時ごろ。
 私は外気と夜明けの光を浴びに、よろよろと外に出た。

「おお、大丈夫かね」
 なんとそこにいたのは、革命防衛委員会のおじさんである。

「え、ずっと外にいたんですか?」
「まさか。ただ、朝早く目が覚めたんで、気になってきてみたんだ........眠れなかっただろ」
「...........はい」
「気分は大丈夫か? 水飲む?」
「...........大丈夫です」

 おじさんは私を自分の家に案内した。そこから2ブロックほどのところだった。
 奥さんがにこにこしながら水を出してくれて、「ベッドがあるから、眠りたかったら、寝てもいいのよ」と言う。
 お言葉に甘えて、少し眠らせてもらい、目が覚めたら8時ぐらいだった。
 朝ご飯ができていた。

「外国の人が泊まるところがなくて、トロバドールの家に泊まるなんて言うから、私はあの人に怒ったの。うちに連れてくれば良かったのにって」
「だって、お前に無断で決めるわけにはいかないし、それにこの人が」
「いえいえ、私が自分で泊まりたいって言ったんです」

 その時点で、私は、なぜ、おじさんが「禁止ではないが、おすすめできない」と言ったのか理由がわかっていた。

 連中は、呑む。

 一曲弾き歌うとギターを回し、次の人が一曲歌う。これが延々と続く。そして、その間、延々とラム酒がふるまわれる。
 ラ・プロフンダの歌はすばらしく味があった。他の人たちの歌もそれぞれ良かった。さらに、ギターの弾き語りだけではなくて、パーカッショニストの人もいて、トゥンバドーラ(コンガ)の妙技を、曲芸もどきの技まで披露してくれ、私にリズムの取り方やクラベスの叩き方を指南してくれた。(だいぶあとでわかったが、この人は「伝説の名手」として有名な人だった)
 それはすばらしい体験だった。言葉にできないほどの贅沢だ。

 しかし、連中は呑む。trinidad2.jpg

 明け方、歌い疲れ、呑み疲れて、皆がひっくり返るまで。
 それが『トローバの夜』の正体だった。

「あいつら、ものすごい呑むやろ」
「すごかったっす」
「君、よく倒れなかったな。酒強いんやね」
「いや、かなりセーブしてごまかしてましたから」

 途中で、このままだと急性アルコール中毒になると思ったので、呑んでるふりしてごまかしてたのだ。
 つまり、おじさんは、朝の4時ぐらいに皆が酔いつぶれるだろうと踏んで、様子を見に来たってわけだ。

「トリニダードは、アル中ばっかりというわけではないから」
「いや、それはわかってます」

 おいしい朝ご飯のあと、おじさんはやはり近所に住んでいるという、街の地元史研究家のところに連れていってくれた。そこで美味しいコーヒーとやたらに甘いお菓子をいただきながら、トリニダードの街の歴史についての講義を受けた。革命防衛委員会のおじさんとしては、トリニダードがアル中だらけだというイメージを断固として外国人に持ってもらいたくなかったようだった。

 でも、おじさんごめん。
 いまでも私はトリニダードを想うとき、やっぱり思い出すのは、あの教会とトローバと強烈なラムなんだよね。
 みんな、どんだけタフなの〜!
 
※:この時代、外国人はどこでも民泊できたが、現在、法律が改正され、無認可ホテルの脱税を防ぐため、キューバ人の家に泊まるには、査証が必要になっている(一般観光客は、ビザ無し+ツーリストカードのみで入国できる)。
 一方で、ホテルや民宿の数は劇的に増えたため、泊まれないことはほぼなくなっている。

※その後も、私はあちこちで「トロバドールの宴会」に行く機会があったが、ほぼ例外なく、酒がつきものだった。
プロフィール

PANDORA

Author:PANDORA
ラテンアメリカと日本を拠点に活動する音楽家・作家 八木啓代のBlog
公式サイト http://nobuyoyagi.com

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人は、どのような局面において言葉をつむぐか。30人の執筆者が震災を語ったエッセイ集。澤地久枝、斎藤 環、池澤夏樹、渡辺えり、やなせたかしらと並んで八木も寄稿。
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キューバ音楽(青土社)
ラテン音楽ファン必読!キューバ音楽のすべてが理論も歴史もわかります。浜田滋郎氏激賞
貧乏だけど贅沢(文春文庫)
沢木耕太郎氏との対談収録

★ライブ情報
11月15日(木)六本木・Nochero
Vo. 八木啓代 G. 福島久雄
11月25日(日)大阪・燈門
Vo. 八木啓代 Pf. 柳原由佳
11月29日(木)神戸・gallery zing
Vo. 八木啓代 Pf. 柳原由佳
12月20日(木)新宿・るたんあじる
ライブ&講演詳細はこちら



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