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桜もさることながら、いま、中南米がすごいことに

 日本では、「桜を見る会」問題が炎上しております。
 桜の花びらのように、次から次から、はらはらと火の粉が飛び散る姿が、もうなんともいえないですが、この件に関しては、郷原先生米山先生の記事が、問題点を実にわかりやすく解説しておられるので、私からはあえて、説明はいたしますまい。

 それにしても、あちら様の言い訳も日ごとに支離滅裂になってきていまして、もう、日本の劣化ぶりを象徴するような状況になってきています。いや、モリカケでの公文書廃棄あたりでもう十分劣化し、詰んでたんですけどね、今回の、言った端から嘘がばれる感て、東大まで出た官僚が、幼稚園児レベルの言い訳が通用すると思っているらしいところが、ほんとに凄いっす。金融緩和が異次元なら、倫理はブラックホールでございますわ。
 まあ、ニューオータニも、アレなことに巻き込まれてしまいましたね。
 5000円で飲み放題付きの立食パーティーができるんなら、うちの会でも来年の総会はあそこで決まりかなと思ったぐらいですし、申し込みが殺到しているんじゃないでしょうか。でもねえ、唐揚げで水増しなんて言われちゃって、あそこのダイニングバー、けっこう私は個人的に好きなんですけど、料理長さんが号泣しておられそうです。ていうか、安く見られそうで、もう接待に使えないじゃんねえ。(笑) それに、ああも現政権とつーかーだってバレちゃうと、会話とか録音されてそうで厭だし。

 でも、それはそれとして、いま、中南米が、ほんとうにすごいことになっているのです。

 ボリビアのクーデターについては先日書きましたが、その後、どさくさまぎれに自称暫定大統領に就任した ジャニーヌ・アニェスが、本来なら、選挙管理内閣として、早々にやり直し大統領選の期日発表をするはずが、(そして、本来なら、それは11月17日の日曜であったはずが)、それどころか、軍にエボ・モラレス支持派のデモの武力弾圧を指示し、キューバの医療団を逮捕拘束、ベネズエラ現政府と事実上断行して、米国の傀儡の自称大統領グァイド野党代表を承認、と、矢継ぎ早に、スーパー極右政策を実施。すでに、政府軍の弾圧で、死者も数十人出ていると。
 もともと、ヘイトツイートなどをしていた疑惑が持たれている人だけに、いまさら驚くべきことではないのですが、一方で、アメリカとヨーロッパの二つのシンクタンクが、ボリビアの選挙結果はそもそも不正でも何でもなかったとして、不正選挙の疑いを煽って反政府デモを引き起こした米州機構を非難する流れも出てきていて、ボリビアの混乱が続くのは必至となりました。

 で、その一方、チリも10月末から、反政府デモが大盛り上がりを見せています。
 こちらは、反・新自由主義デモです。これで、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議も、急遽、開催地変更になりました。

 発端は、地下鉄の値上げ発表で、これは日本でも多少報じられたので、たかが5円ぐらいの地下鉄値上げで、なんでそこまでの騒ぎになるの、なんか裏があるの?....と思われた方も多かったかと思います。
 
 そうなんです。これは発端に過ぎません。
 というか、積もり積もったものが、最後の一滴でコップから溢れた、というアレです。
 新自由主義で格差が進んだ社会で、庶民の人たちが「もうこれ以上は騙されないぞ」と一気に爆発した、という感じ。

 なので、最初、地下鉄駅や工場への放火など暴力的な面ばかりが日本でも報道されましたが、実際には、暴力的なのはごく一部で、しかも、ピニェラ大統領が、地下鉄値上げを凍結を発表した後も、むしろ平和的なデモや抗議行動が、各地に広がっています。

(不思議なことに、もともとかなり暴力色が強かったのに、それがネット動画などの拡散で隠しきれなくなるまでは、徹底して「平和的な抗議行動」と報道されまくっていた香港とは真逆のパターンです)

 まあ、暴力的である、ということを口実にして、チリの現政府は、早々に非常事態宣言と外出禁止令を出して、軍で武力鎮圧しようとしたので、日本の新聞はそれに早々と迎合したってコトでしょうね。ベネズエラなんて、あれだけ争乱があっても、非常事態宣言出したりしなかったんですけどねえ。

 それで、そのチリの抗議行動で、テーマ曲として復活したのが、かつて、軍事クーデターで虐殺された音楽家ビクトル・ハラの作った「平和に生きる権利」です。この歌は、ビクトルが1971年に発表した曲で、本来は、ベトナム戦争への米国の介入を非難した曲です。
 それが、ほぼ半世紀の時代を超えて、米国べったりの政策で民衆を抑圧しようとする政権への抗議の象徴として、蘇ったと。

 この10月25日の抗議行動のビデオを見ていただくだけで、その状況がおわかりになるだろうと思います。
 
 これが Youtube で大拡散されたことで、27日には、チリのジャンルを超えたアーティストたちによる2019年版改訂版歌詞のオフィシャルビデオも登場。

(あら、八木のお友達がいっぱい出ているわ)

 もちろん、チリの団結ソングの定番、「不屈の民」も健在です。それも、こんな感じで。
 
 ということで、日本の報道とは裏腹に、チリの抗議活動に参加しているのは、平和的な人たちが大半であることはご理解いただけたかと思います。こういうのを朝日新聞が報道しないのって、ほんと不思議でなりません。

 という間もなく、昨日はコロンビアで、反政府大デモと全国ストライキです。
 これも、チリと同じく、格差が激化したコロンビアでも、新自由主義を押し進める政府に対しての抗議行動。
 これに関して、チリでやったように「過激派の暴動」「暴力行為」を口実にして、政府側が、非常事態宣言で武力弾圧する事態を避けるために、先手を打って、ボゴダ芸術アカデミーの学生たちが、「私たちは芸術家、過激派じゃない」というテーマ曲を作って、Youtube で大アピール。
 なるほど、軍の介入を防ぐ、新手の手段ですね。それも、芸大の学生と先生たちが総力を結集しただけあって、急遽作ったわりに、ものすごいクオリティの高さなので、必見です。

 などというのもつかの間、前のエントリでも触れたように、左派のラファエル・コレアを追い出して極右化したエクアドルでも、先住民グループを中心に、政府への抗議行動が顕在化しており、一時、首都機能を移転するほどの騒ぎになっていたのですが、その中で、エクアドルの「新しい歌」の代表的グループ、プエブロ・ヌエボの歌手のフアン・パレーデスが、逮捕されるという事態が起こり、全ラテンアメリカの音楽家たちに、事態の拡散と抗議行動を呼びかける触書がまわってきております。
 いまごろ、ラテンアメリカ各地でエクアドル大使館に対しての抗議行動が準備されています。

 ということで、反新自由主義の高まり VS 極右回帰 が熾烈なことになっているラテンアメリカでは、音楽家が表舞台で、正面から、もちろん覆面などしないで、政治にコミットしている、ということをご理解いただけましたでしょうか。

Live Information
12月5日(木) 六本木 Nochero

(東京都港区六本木6-7-9 川本ビルB1) お問い合わせ/03-3401-6801
1st 19:30 2nd 21:00 (入れ替えなし) Charge:2,600円(おつまみ一品付)
アクセス/日比谷線・大江戸線六本木駅より徒歩2分
 2019年も残りわずか。本年最後のNochero定例ライブです。どうぞご期待!
 ギター福島久雄さん。
 ネット予約はこちら http://www.nobuyoyagi.com/event.html



昨日、ボリビアでクーデターがありました

Evo Morales
 昨日、ボリビアでクーデターが起きた。そして、先住民出身の大統領エボ・モラレスが亡命した。

 いやあ、革命とかクーデターのお盛んなラテンアメリカらしいですねえ…. (とか言ってる場合ではありませんよね)
 クーデターではないと主張しておられる向きもありますが、官邸で軍と警察に辞任を強く要求されて、その後、大統領が亡命を余儀なくされているんですから、クーデターでしょうよ。辞任を要求されたその瞬間に、たとえ銃を突きつけられていなかったとしても、自分やそれ以外の多くの人間の命に真剣に関わる問題だと思うから、辞任し、亡命するからで。

 もっとも、背景は、シンプルではない。
 エボは、2006年、先住民としてはじめて大統領になり、先住民の権利向上に尽力した。先住民言語のアイマラ語を公用語化し、国名もボリビア共和国から、ボリビア多民族国家に変更した。劣悪な状態だった貧困層の保健衛生を劇的に向上させ、教育水準を上げ、ボリビアの地下に眠る天然ガスと石油を国有化し、農地改革を行い、大農場主から接収した土地の所有権を先住民に引き渡した。経済政策も成功させ、世界でも最貧国のひとつとされ、しかも極端なまでの格差社会だったボリビアに、曲がりなりにも中間層を生み出した。
 そして、そういう大統領は、当然ながら、既得権益層からは、ポピュリストとレッテルを貼られ、嫌われ、叩かれる。

 しかも、ボリビアは元々、複雑な国である。50年代から2000年代初頭まで、クーデターが頻発し、猫の目のように政権が変わることでも知られた。左派は分裂し、翻弄され、チェ・ゲバラが非業の死を遂げたのが、まさにボリビアであったことは、知られているが、これとて、単に CIA の陰謀が……というような話ではない。当時、ボリビアの共産党も農民も、社会主義革命を目指すゲバラを「敵」と見做し、攻撃する側に加わったのである。  
 貧困率が60%を超える国であったのに、だ。それがゲバラの誤算だった。
 そういう、複雑極まりない背景があることも知っておかなければならない。

 このあたりの、ボリビアの歴史的背景は日本ではほとんど知られていないし、参考資料も少ないのだが、興味のある方は、なんと、海堂尊氏の小説「ゲバラ漂流」に詳しいので、けっこうおすすめできる。ゲバラ漂流

 これはゲバラの生涯とキューバ革命を描いている大作で、現在で4巻まで出ているのに、まだキューバ革命がぜんぜん始まらない(笑)という超大作なのだが、その2巻目が、ちょうどゲバラ青年が、1952年のボリビア革命に巻き込まれるところから始まっていて、ボリビア政界の魑魅魍魎っぷりがじっくりと描かれている。1巻(いわゆる「モーターサイクル・ダイアリー時代」が描かれている)を未読で、ここから初めても面白いので、お薦め。

(このシリーズの良いところは、歴史書で読むと死ぬほど退屈で、しかも頭がこんがらがるラテンアメリカ現代史を、かなりわかりやすく、しかも小説仕立てで面白く読めるところだ。さすがに日本で一番退屈とされる厚生労働省の会議を、面白く読める長編小説に仕立て上げた作家だけのことはある。ただし、小説なので、一部、真っ赤な「作り話」もあるので、そこだけは注意されたいが、かなりおすすめできるラテンアメリカ近代史入門書である)

 話戻るが、まあ、そういう歴史的背景のある国で、エボ・モラレスが圧倒的な支持を得て当選し、数々の社会改革を成し遂げてきたことは、本当に、特筆に値するのだが、当然ながら、就任直後から反対も根強かった。ブッシュなどは、彼を麻薬の売人呼ばわりしたものである。

 さらに言うと、そこでエボは3選した。任期15年。そして4選を狙っての大統領選で躓いた。

 ボリビアの憲法では4選を禁じている。そもそも3選も禁じていたのだが、これは憲法を改正したのだ。これは国民投票の60%以上の賛成で可決された。
 そして、4選目を迎えたわけだが、ここで問題がある。この4選目を可能にするための国民投票は、否決された。つまり、国民はエボの第4期を望まなかった。4選となれば20年。長期独裁だと叩く野党側の主張の方が、国民に受け入れられたことになる。
 にもかかわらず、エボは大統領選を強行し、自ら立候補した。
 その結果、選挙不正があったという話になり、国内で反政府デモが起こる騒ぎとなった。
 この状況に、エボは再選挙の実施を申し出たが、軍と警察が大統領に辞任を要求した、という流れだ。

 そういう意味では、今回の流れは、そう簡単ではない。4選を可能にするための国民投票が否決になった段階で、彼は別の方法を採るべきであった、というのが正論だ。
 後継者をうまく育てることができなかったのが失敗という批判もあるだろう。

 しかし、隣の国のエクアドルで、ラファエル・コレア大統領は、同じく、2度の再選のあと、後継者として育ててきた(つもりだった)副大統領のレニン・モレノに見事なまでに裏切られた。モレノはコレアの全面的支援を受けて当選したにもかかわらず、その後、完全に掌を返して、財界と手を握って新自由主義へと180度の舵を切り、コレアのやってきた改革を次々に潰し、それに反発して反対派をまとめようとしたコレアやその側近をでっち上げの汚職の罪で逮捕しようと試み、亡命に追い込んだ。いわゆる「国の乗っ取り」だ。これがほんの2年前のことである

(ちなみに、先月、エクアドルの首都機能が移転させられるほどに激化した先住民デモは、このモレノ大統領の押し進める新自由主義政策の結果、悲惨なことになった先住民の人たちの抵抗運動である)

 エボが、この事件に無関心でいられるわけがないのは当然だろう。うかつに後継者を決められなかったことも理解できる。
 他にもっとなにかいい方法があっただろうと、口で言うのは簡単だが、実際には難しかっただろう。

 さらに、ここに、日本でも人気の高い、かのウルグアイの「世界一貧乏な」ぺぺ・I ムヒカ元大統領の名言が重なる。
左派は理想で分裂するが、右派は利権で団結する
 
 ああ、真理である。(日本もそうだよね)
 右派の政治家は、相当のことをやらかしていても、利権をばらまける限り、その支持者は離れないし、左派やリベラルの政治家は些細なスキャンダルや疑いで、己の支持者から辞職勧告を突きつけられがちってことだ。

 ボリビアでもこれが起こった。従来、エボを支持していた人たちが、長期独裁だなんだという極右のデモに扇動されて大統領を叩く事態になったわけ。
 それが、警察や軍に大義名分を与えたと。

 まあ、それに加えて、このロイターの記事の「暮らしにゆとりが出るほど、国民は政治指導者の不正に寛大でなくなることがあるのだ。そもそも指導者が良い変化をもたらすのを助けたのであっても」という指摘も、今回の場合、なかなかいいところを突いているといえる。
 
 そのエボが亡命申請をし、瞬殺で受理したのがメキシコのロペス=オブラドール大統領。米州機構に緊急総会を呼びかける と共に、速攻でメキシコ外務大臣自身が護衛を引き連れて、エボの保護にボリビアに向かい、飛行機に乗せて、メキシコに連れ帰った。

その間も、ずっとツイートしてたというのが、とっても今っぽいが、そもそも、30年代メキシコはトロツキーを受け入れ、スペイン市民戦争時は大量のスペイン共和国支持者を受け入れ、その後はアルゼンチンやチリや中米の軍事政権亡命者を受け入れてきたという伝統がある。日本からは佐野碩さんもお世話になっていますね。

 メキシコでは、#BienvenidoEvo (ようこそエボ)というハッシュタグで、お祭り騒ぎの大盛り上がり、というのが現況。ワールドカップ決勝かよ。

 一方で、米ホワイトハウスはというと、速攻でボリビアの政変に祝意を表明し、「ベネズエラやキューバにも波及するように」と表明した。(エクアドルやチリにも、と言っていないところにご注目。これで、この件の意味がよくわかりますね)
 https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/statement-president-donald-j-trump-regarding-resignation-bolivian-president-evo-morales/

 ボリビアでは、今後、まともな選挙が行われるのか。野党統一候補となっていたメサが政権に就いたとして、(選挙では、彼は、天然ガスや石油の民営化は行わないとは言っていましたが)、その後の政策がどうなるのか。
 ちなみに、ボリビアの天然ガスは南米2位、リチウムの埋蔵量は世界一というところも注目ポイントだ。

 これから注視してきたいところである。

エボ・モラエスがメキシコに到着したところのニュース映像

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超絶面白いラテンアメリカ映画の件

さて、ひさびさの映画ネタです。
じつは、ものすごく面白い映画を見つけ、それを字幕翻訳することにしました。

1970年代、軍事政権下のアルゼンチン・トゥクマン州の片田舎ポソ・オンドの村に、天から男の遺体が落ちてきた。

軍のヘリから落とされたらしいその遺体を、村人たちは丁重に供養するが、いつしか、拝むと御利益があると信じられるようになり、聖人として信仰の対象となっていった。

それから40年の時を経て、その村に、調査団の法医学者たちがやってきた。

「聖人の遺体」を掘り返すことに抵抗する村人を説得し、DNA鑑定を行ったことで、その「天から落ちてきた男」にかかわる驚くべき真実が明らかになっていくー。

遺体は本当に聖人にふさわしい存在だったのか?
そもそも、どうして天から落ちてきたのか?
なぜ村人は彼を祀ったのか?

1970年代、軍事政権下のアルゼンチンで何が起こっていたのか? 
「男」の出身地に伝わっていた悪魔伝説の真相は?
そして、すべてが明らかになったとき、「聖人」に対して村の人々の取った意外な行動とは?

軽快なアルゼンチン民謡のリズムに乗って、信じられないような実話を追う中で、今もアルゼンチンの社会に影を落としている事件が、ミステリアスに浮かび上がってくる。

....という、ガルシア=マルケスの小説顔負けの、「衝撃の実話」のドキュメンタリーです。

どうです。面白そうでしょう?
poster.jpg

ファンタジーのようでいて、じつは、法とは何か、裁くとは何か、正義とは何か、ということを考えさせる内容でもあります。民間伝承の生まれ方、という点でも興味深い。

そして、話の内容もさることながら、最高峰の音楽家たちが参加した、アルゼンチン北西部の民俗音楽も素晴らしいのです。
.....というわけで、この映画の字幕制作のためのカンパを、いま、集めております。

下記でクラウドファンディングを開始いたしましたので、ぜひ、予告編だけでもごらんください。(もちろん日本語字幕付きです)
https://readyfor.jp/projects/caido

映画やミュージカルでも有名な「エビータ」の死後、国内混乱の末にクーデターで成立したアルゼンチン軍事政権は、数万人とも言われる行方不明者を出したあげく、1982年のフォークランド紛争後に崩壊します。

しかし、その後も軍事政権の恐怖政治の爪痕は残っていたと言われており、長い時間をかけて、いまも軍事政権時代に何が起こっていたのかという事実の検証が行われているのです。

この映画は、その検証調査の中で明らかになって、全アルゼンチンに衝撃を与えた事件の詳細が、ドキュメンタリーになったというだけではありません。

真実が明らかになっていく過程は、ミステリ小説のようにスリリングです。そして、恐怖政治の下に置かれた人間の心理というものの普遍性にも迫っていくように思われます。

そして、すべてが明らかになったとき、「聖人」に対して、村の人々の取った行動は? そこで下した決断とは?

それは、日本に生きる私たちにとっても、とても興味深い80分となることを保障します。
本当に素晴らしい、そして内容の深い映画ですので、是非、ご協力いただけましたら、幸いです。また、もし可能なようでしたら、お友達などにも、声をかけていただけましたら、心から感謝いたします。

映画公式ページ(日本語)
http://caido.latinamerica-movie.com/

ニューヨークからメキシコまで

酷暑の日本を早々に飛び出して、ピースボートのご招待で、ニューヨーク〜ハバナ〜ケイマン諸島〜コロンビア〜パナマ〜コスタリカ〜メキシコの船旅に乗船してまいりました。
(時々間違える方がおられるので、あえて先に書いておきますが、捕鯨反対船に乗って網とか切っていたわけではありません。あれはグリーンピースというまったく別の団体です。)

ピースボートは、昨年、ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の構成団体で、豪華客船に1000人以上の乗客を乗せて世界一周の船旅をやるNGOでございます。

とはいえ、実はあたくし、ニューヨークは初めてでしたので、いきなり船に乗るのももったいなく、ホテル代は自分で払うからね、と、3日前にニューヨーク入りを決めたのですが、あとでニューヨークってホテル代がバカ高いのに気づいて顔面蒼白。ユースホステルの相部屋が80ドルとかって、あんまりじゃね?

とはいえ、Airbnbの助けを借りて、無事、マンハッタンで安い民泊のお部屋をゲット。もちろんミッドタウンではなくてハーレムなんですけど、なんの問題もなかったっす。ていうか、ハーレムだと、ミッドタウンまで地下鉄ですぐなのに、物価安いし、美味しいテイクアウトのお店いっぱいあるし、普通に街角に「米国とイスラエルがパレスチナでなにをやっているかについての勉強会」を教会でやるというようなポスターが貼ってあったりして、私のような人間にはすこぶる居心地良かったです。

そういうわけで、お昼にはメトロポリタン美術館を皮切りに、近代美術館(MOMA)〜グッゲンハイム〜フリッツ・コレクションなど、美術館三昧を愉しませていただきました。

メトロポリタンの巨大さはさすがでしたが、個人的には、印象派以後を近代の抽象芸術の萌芽とみなしたMOMAの一連の作品展示に、蒙を啓かれました。じつは、アメリカンポップアートって大嫌いだったのですけど、あの空間で、ロイ・リキテンシュタインやジャスパー・ジョーンズのオリジナルを見ると、あれはけっして悪ノリを持て囃したようなものではなく、激しい主張なのだというのがよくわかりました。美術作品はやっぱりオリジナルです。どんなによく撮れているものであっても、写真集ではわからないものがそこにありました。それからね、ジャクソン・ポロックは天才だわ。

それとは対照的なフリッツ・コレクションも、本当に値打ちがありました。アメリカの金持ち半端ない。ティツァーノやブリューゲルやアングルやゴヤやベラスケスがぽんぽんあるんだもの。しかも、フェルメールを3点も見られるなんて。それも名品です。
ここの展示作品は、他の美術館に貸し出しをしないそうなので、本当にここに行かないと見られない逸品がたくさんありました。

で、ピースボートに乗船しましたところ、スタッフの方に「今晩、国連関係のイベントあるので、全編英語ですけど、いかがですか?」
好奇心旺盛なあたくしとしては、もちろんOKして、時間の少し前に会場にまいりますと............なんと正装・盛装のレディース&ジェントルマンがご入場中ではありませんか。そうなのです。ジーンズ+Tシャツで入れるような雰囲気ではなかったのです!
慌てて船室にかけ戻って、超特急でメイクしてドレスに着替えて、やっと入場。
ハイソな雰囲気だったのも当然で、国連の正式な共催イベントで、国連事務総長代理、国連理事会議長、各国大使といった人たちがぞろりといらっしゃっていたわけです。ああびっくりした。

まあ、そういった旅のあと、キューバを経て、メキシコに戻ってきたわけですが、メキシコは7月1日の歴史的大統領選挙の熱気がやっと落ち着いてきたところでした。

なぜ、歴史的かといいますと、ここ20年以上、有力野党候補に対するメキシコ版陸山会事件といえるような冤罪でっち上げ事件(といっても時系列的にはこっちの方が先)や不正選挙疑惑、その挙げ句の汚職三昧や麻薬戦争で国が大混乱、と、ここ10年以上いいところのなかったメキシコで、奇跡的に民主派が勝利、それも圧勝した選挙だったからです。
というか、相当の買収や票の入れ替えもあったようなのですが、それでも、民主派候補の得票があまりに圧倒的だった、というのが真相のようで。
https://www.bbc.com/japanese/44678849

ちなみに、上記記事では左派と書かれていますが、新大統領ロペスオブラドールことAMLO(アムロ)は、政治的にはゆるい中道やや左派ぐらいの人です。メキシコ政界が極右化していたので、相対的に左に見える、という感じ。ただ、私利私欲がなくてお金にキレイであるという点では、多くの人の意見が一致しているところです。

メキシコの現政権下では、大統領夫妻がお友達に国有地を不正売却したり、便宜を図ったり、大統領のお友達がレイプ事件を起こしてそれがバレても誰も罪に問われないとか、まるで冗談みたいにどっかの国そっくりなことが続いたので、国民の怒りが爆発しての、野党大勝利というわけです。

で、与党のPRIは今回の選挙で、1票2000ペソ(約12000円)でかなりの金をばらまいていたのですが、しかし大敗北。笑ったことに、PRIが堅いとみなしていた地区でAMLOが圧勝した。つまり住民は、金だけ受け取ってAMLOに入れたようです。メキシコ人、賢いよ〜(笑)

とはいえ、メディアはほぼ反AMLOでネガキャンが酷く、ネットもかなり工作されていたので(*この点詳しくはこの記事参照)、はっきりいって、選挙スタッフたちも、ここまで差がつくとは思っていなかったとのこと。

で、12月から大統領職に就くその新大統領。党首を務めるのも、政党はMORENA(国民再生運動)という、旧野党PRDから別れた新政党です。思えば、2005年の大統領選で、最有力候補で当選確実とされていたAMLOが、まさに、陸山会事件そのものの、通常なら訴追の対象にはなり得ないような単なる手続きミスを、不法行為だとして検察が暴走して訴追しようとした事件の時(そういう意味で、陸山会事件とそっくりだった)、当時の所属政党であった中道左派政党PRD(民主革命党)主流派は、不当な攻撃を受けていたAMLOを守ろうとはしなかったのですね。で、最終的に党が割れて、AMLOは親しい議員と共に別の政党を作ったわけです。

で、その古巣のPRDときたら中道左派を標榜してたくせに、大統領選ではAMLO憎さのあまり(?)、右翼政党のPAN(国民行動党)と組むという、まるで前原&細野みたいな真似をやったあげく、地方選挙でもボロ負け。支持率わずか2.8%。5つの州では、10000票もとれないという大惨敗。首都圏でなんとか5%とって、かろうじて政党要件だけはぎりぎり満たした、という、まるで日本のどこかの党みたいなことに。離党者続出状態なので、おそらく次の選挙までは保たないとみられています。そのあたりも、国民民主党日本のどこかの党みたい。

というわけで、まるで日本の政界の鏡像を見ているようなメキシコ政界だったのですが、国民が変にさとったりあきらめたりしないで民主派が圧勝したところが、日本と決定的に違うところです。

ということで、新大統領就任の12月1日以後、いろいろな改革、というより、「改革するとかいう名目の下でぶっ壊されて、与党政治家やそのお友達の食い物にされてきた様々なものごと」の正常化の鉈が振り下ろされるようです。早々にあっと驚く新政策も打ち出される予定。

そのひとつが、麻薬の合法化です。おそらく年明けには日本の新聞でも、ちょっとした騒ぎになるでしょう。
そして、麻薬マフィアとの話し合いについて勝算もあるようです。むしろ、やばいのは麻薬マフィアそのものより、麻薬マフィアから莫大な裏金を受け取っている司法関係者と軍隊。彼らが手を組めば、クーデターも冤罪でっち上げも可能だからです。そういう意味では、安心はできないし、目は離せません

というわけで、八木も9月には、いろいろお土産を持って日本に戻って参ります。
9月13日には、兵庫県伊丹市のイタリアンレストランAntonさんで、ひさびさのディナーライブ。
レストランAntonは、かなり前から八木が大ひいきにしていたお店で、お料理が美味しいのはもちろんなのですが、丹波篠山の鹿肉という超高級ジビエがリーズナブルなお値段で食べられることでも有名なお店です。(呼んでいただけてうれしいわ)
関西方面の皆様には、ぜひ、おすすめです!

また、20日には、東京で恒例のノチェーロでのライブです。いろいろ新曲も準備しておりますので、お気軽においでください。

それから、9月8日にはこんなびっくり講座もあります。お暇な方は、どうぞ!
https://www.asahiculture.jp/yokohama/course/e1d75e0a-18a9-307f-3641-5ae930d9284b


9月13日(木) 伊丹 イタリアンレストランAnton

(兵庫県伊丹市西台3-1-12) お問い合わせ/072-770-2923
Open 18:00 Start 20:00
料金:A:2000円(1ドリンク付)、B.3500円(軽食コース付き・ドリンク別)、C.4500円(特別コース付き ドリンク別)
アクセス/阪急伊丹駅より南側(交番のあたり)道を渡って角が二宮眼科の筋を南下徒歩2分。駐車場は近隣のパーキングを利用可。その場合200円のキャッシュバックあり

ヘルシーな鹿肉料理でも有名な絶品のイタリア料理店アントンさん(実は八木は開店当初からのファンです) 素晴らしいお料理もお得にお楽しみになれるプランです!! ギター:西本諭さん

ネット予約

9月20日(木) 六本木 ノチェーロ
(東京都港区六本木6-7-9 川本ビルB1) お問い合わせ/03-3401-6801
1st 19:30 2nd 21:00 (入れ替えなし) 
Charge:2,600円(おつまみ一品付)
アクセス/日比谷線・大江戸線六本木駅より徒歩2分

六本木駅至近の最高の立地の音響の良いステージです。美しい歌曲の数々をじっくりお聴き頂きます! ギター:福島久雄さん。

ネット予約

あのディズニーでもやろうと思えばできるんだよ

 昨日に続いて、もうひとつ、映画をご紹介。

 折しも、ラテンアメリカ圏では、ディズニー映画の最新作が、「アナ雪」をしのぐ大ヒット中なのです。
 少し前から宣伝が始まった日本版ではタイトルをまったく変えられて(ありがちですが)いたので、気づかなかったのですが、原題「ココ」。そして、日本版タイトル「リメンバー・ミー
 この、なんとなくお涙頂戴っぽい英語タイトルに騙されてはいけません。それから、見事なまでに、メキシコ色を排した子供向け映画風の日本版宣伝にも騙されてはいけません。
 この作品は「当たり」です。そして、ラテンアメリカ色、メキシコ色が満開です。

 かの「エビータ」といい、「フリーダ」といい、「ブエナビスタ・ソシアルクラブ」といい、ラテンアメリカを舞台にした、アメリカ制作エンタテインメントの全米ヒット系映画って、本国では大不評、ワースト映画扱い、下手すると地雷ってのが実は多いんですが、この映画に関して言うと、その殻を破って、中南米圏でも大ヒットしただけのことはあるのです。

 というのも、制作陣のメキシコ民衆文化に対するリスペクトが細部にまで感じられ、また、スタッフも相当勉強した上で作っているのもうかがえます。
 じつは、この映画制作前、ピクサーが「死者の日」を商標登録しようとして、メキシコで大バッシングされるという事件があったのですが、その悪いイメージを払拭するだけのものに仕上がっています。

 (ちなみに、この件に関して、ピクサーは、「死者の日」という言葉を自分たちだけのものにしたかったわけではなく、単にタイトルとして使いたかったため、と釈明していますが、批判を受けて取り下げました。六花亭の「そだねー」騒動みたい。)

 主人公はリベラ家で、登場人物としてフリーダ・カーロも出てくる上、さらに言うと、アニメ吹き替えなのに、声優も全員ヒスパニック系にしているうえ、なんと、オリジナル版の準主役の声は、あの、「モーターサイクル・ダイアリーズ」で若き日のチェ・ゲバラを演じたガエル・ガルシア=ベルナル!、さらに硬派のジャーナリストで左派アクティビストのエレナ・ポニアトウスカも声の出演をしているところなど、なにげに反トランプ全開感が(笑)。

 しかも。邦題タイトルにもなっているテーマ曲とは別に、クライマックスシーンで歌われるのが、なんと!
 八木のライブのお客様なら、一度は聞かされたことがあるという、八木の持ち歌でもある、あの曲ではありませんか!
 (道理で、どこに行ってもリクエストされたわけだわ)
この曲に限らず、劇中の音楽もすべて、メキシコの民俗音楽をきちんと踏まえたものになっています。(日本語版のシシド・カフカさんとスカパラのテーマ曲は、別物だと思ってください)

 メキシコでは、11月1日・2日の「死者の日」にあわせて、去年の10月に公開されたのですが、日本での公開がこんなに遅れたのは、おそらく、「こんな、ラテン文化濃厚の映画なんて、日本ではきっと受けない」という、日本側の偏見ではないでしょうか。でも、映画がたくさんの賞を獲得し、しかも世界的なヒットとなったので、あわてて日本でも公開。でも、ためらいがあるから、なるたけメキシコ色を排した、おもいきり中途半端な宣伝、みたいな。

 けれど、ラテンアメリカ文化、とくにメキシコ文化に少しでも興味を持っていただけるなら、是非、ご覧ください。堪能できます。
 そして、ラテンアメリカ文化やメキシコ文化に少しの興味もない人でも、絵の美しい映画として楽しんでください。この世界観と美しい色彩感覚は、むしろ大人にこそ愉しんでいただけるかと思います。

 ディズニーの創業者であるウォルト・ディズニーは、かつて赤狩りにも告発者として関与するなど、いわゆる「ばりばり右」の人で、初期のディズニー作品には、人種差別的要素や男尊女卑的要素がさんざん指摘されているのだけれど、そういう根っこを持つ会社であっても、時代とともに変わることはできる。そして、あえてトランプ政権下で、この作品をぶつけるほど、やればできる、という意味でも、感慨深いです。

 というわけで、あえて、予告編は日本版ではなくて、ラテンアメリカ版を乗っけておきます。



 それから、オスカーを取った主題曲は、こちら
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PANDORA

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ラテンアメリカと日本を拠点に活動する音楽家・作家 八木啓代のBlog
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