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感染症と利権〜あのとき、本当は何が起こっていたか

さて、今年の新型コロナにからめて、2009年のメキシコ豚インフルについて言及されることがあるので、あの件について、私の知っていることを少しまとめておこうと思います。

まず、あのパンデミック騒ぎは、2009年4月メキシコで謎の強毒性インフルエンザが発生し、バタバタ人が死んでいるというニュースから始まりました。豚由来であるということから、このメキシコ発と思われるA型H1N1亜型インフルエンザは豚インフルと呼ばれるようになったわけです。
現在では、感染症に地名を付けて呼ぶことは禁止されていますが、このときはまだそうでなかったことは追記しておきますね。

このとき、とりわけ若者の感染死亡率が非常に高いと報道され、政府が緊急事態宣言を出したことで、世界中で「恐怖の」感染症に対しての軽いパニックが起こりました。
日本でも空港検疫を行う「水際作戦」が実施されたのを覚えている人もいるでしょう。そうです。今回のCovid-19と同じです。

ただ、この水際作戦は、ほぼなんの意味もなかったことも、当時、やはり厚労省は(おそらく国内感染者数をわからなくするために)できるだけPCR検査を行わない方針を出したことも、当時からまっとうな医療関係者の間では批判が出ていました。

その実態は、この2009年5月のお医者さんのブログ記事でよくわかります。

韓国からの帰国者発熱相談の電話、早朝あり、ソウルの国際空港での感染地域からのトランジット客接触否定できないため、“発熱相談センターに連絡・相談の上、受診します”と答えた。その患者が来院したが、”インフルエンザA”の判定となった。
で、保健所に相談したところ、”当県では、感染流行地域・国からであっても、ウィルス検査はしません”という県の方針ということ、電話の上、確認した。国からの達しはまだ無いはずなのに、“通常型の季節型”と全て見なしてしまう方針のようだ。 国・県の隠蔽方針を身をもって実感してしまった。
https://intmed.exblog.jp/8304037/

と書いてあります。ほらね、すごいでしょ。(ちなみに、この時代はツイッターではなくて、2ちゃんねる全盛期でした。懐かしいですね)

そのあたりのバカバカしさは、医師であり作家の海堂尊氏のこの豚インフル事件をモチーフにした「ナニワ・モンスター」でも描かれています。(今回の新型コロナがらみで、この本を「現在を予言した本」として取り上げているむきがありますが、別に海堂氏が超能力者で現代を予言したのではなく (たぶん)、厚労省は2009年に犯した同じ過ちを、性懲りもなく繰り返しているに過ぎないわけ)

さらに言うと、2009年5月1日に首都圏で初の高校生の感染が出たということで、当時の舛添大臣が緊急記者会見を行った直後に、それは誤判定でシロだったという発表があり、舛添大臣がフライングをやったとして謝罪に追い込まれる事件がありましたが、このときの国立成育医療センターの斎藤昭彦感染症科医長の談話が、「簡易検査の診断精度は約8割だったので、最初の判定が誤っていた」ということでした。

現在のCovid-19で、PCR検査の感度が8割にすぎないだとか誤判定が多いとかいう初期の「検査スンナ派」の主張はどうもここから来ているふしがあります。で、これに関しては10年経ったら技術の進歩があるってことを想定してないのもどうかと思いますが、ただ、この時点ですら、私の知り合いの関係者の複数の方から、「横浜衛研の技術水準から考えて、この時点でRT-PCRの結果はちゃんと出ていて、それがストレートにクロだったから病院に収容し、大臣が記者会見を設定したはず。そのあと、水際作戦が大失敗だったことを認めたくない厚労省からクレームが来て、感染研の検査ではシロと出たと主張し、無理に撤回させられたのではないか」という疑惑が表明されていたことは付記しておきます。

さらにばらしちゃいますと、このとき、この豚インフルの遺伝子データ自体、米国CDCから送られてきたものを、全国の研究機関に回してみんなで総力を上げて研究したらよいものを、なぜか、感染研が抱え込んでしまって出さないので、大学などの研究機関の人たちがイライラしていましたよ。結果的に豚インフルは「大したことない、ただのインフル」レベルだったから良かったようなものの、こういう事態なのに縄張りに固執するのかぁ的な、かなりアレな危機対応だったのは確かです。

(なんであたくしがこういう事を知っているかといいますと、思い余った研究者の方々から、メキシコと強いコネクションがあるあたくしのところに、いろいろ問い合わせがあったからです)

結果からいうと、メキシコ豚インフルは、当初、世界を震撼させましたが、今の新型コロナのようなことになりませんでした。
その理由は簡単で、危惧されたような強毒性ではまったくなかったからです。もちろん死者が出たのは事実ですが、例年のインフルエンザと大して変わらないものだったわけですね。

(ちなみに、感染症としては、その前のSARS(SARS-CoV-1)のほうが致命率は遥かに高かったのですが、早い時期に封じ込めに成功したため、局所的な流行にとどまり、こちらも大事には至らなかったのは皆さん御存知の通り)

で、現在の新型コロナに対して、各国の対処が後手後手に回ったのは、このときの「大山鳴動ネズミ一匹」感が強かったことと、実は無関係ではありません。
新型ウイルスによるパンデミックをリアリティを持って描いた2011年のヒット映画『コンテイジョン』でも、そういう台詞があります。

では、なぜ、メキシコ豚インフルに関しては、その程度のものが、当時、一時とはいえ、あそこまで「世界を震撼させるニュース」となったのか。

その最大の理由は、メキシコで、「若い人が感染しやすく、しかもバタバタ死んでいる」と大々的に報道され、メキシコ政府が速攻で緊急事態宣言を出したところにあります。

ここで、「結果的にそこまでする必要はなかったけど、メキシコ政府は危機管理に熱心だったんだな」と思ったあなたは考えが甘いですよ。
当時のメキシコは、そういう状態ではなかったからです。

この少し前、2006年に、メキシコでは大波乱となった大統領選挙がありました。この話は、ちゃんと書くと長くなるので、ものすごく端折って説明しますね。

当時、人気絶頂の野党知事が大統領選に満を持して立候補表明したのですが、その支持率たるや首都圏でなんと80%。このまま大統領選挙となれば、政権交代になることは、ほぼ誰の目にも明らかな情勢でした。

そこで突然起こったのが、「メキシコ版陸山会事件」といえるような事件です。その候補ロペス=オブラドールに突然、収賄疑惑が持ち上がり、なぜか秘書が大金を受け取っているのを隠し撮りしたとされるビデオがテレビで公開され、大スキャンダルとなったのです。
(クリーンに見える候補ほど、この手のスキャンダルが出たときにダメージが大きいのは、前に書いたとおり

結局、そのビデオは捏造と判明し、「証人」として出てきた人物の証言も矛盾だらけで、とうてい信憑性がないことが明らかになったのですが、それでも、メキシコ検察は暴走し、今度は「書類の書き間違いミス」を理由に大統領候補を訴追しようとします。(うわー、デジャブ感すごいですね。ただし、陸山会事件は、このメキシコの一件の3年後です)

さすがに、政治家本人が知るわけないスタッフの書き間違いレベル(それも耳を疑うレベルのショボさ)で、百歩譲っても修正申告すれば終わりじゃん、みたいなネタをたてに、現役政治家、それも最有力大統領候補を逮捕しようとする動きには、メキシコ中のまともな人が、民主主義を踏みにじるものとして声を上げたわけです。

そして、その挙げ句、ある新聞のスクープで、この野党候補をなんとかして嵌めようとした密談の録音記録がリークされるに至って、100万人のデモ隊が大統領宮殿を取り囲む騒ぎとなり、さすがに検事総長が辞任し、検察は逮捕を取り下げるということで、この件は決着します。しかし、この騒動の間もその後も、野党候補は「疑惑がある」として、政府の息のかかった TVでバッシングされ続けていました。

で、その状態で、大統領選挙が行われたわけですが、なぜか、投票直前になって電子投票に切り替えられるなど、いろいろ、土壇場で「奇妙な」手続き変更がなされ、しかもなぜか「無効票」が1割近く出るなどという不思議なことがあったあげくに、1%に満たない微妙な差で、その野党候補は敗北します。

当然ながら、この大統領選は、多くの国民の不信を買いました。今回の米国大統領選挙とは全く別の意味でね。
ていうか、まともな人なら、明らかにおかしいやろと思うレベル。

あまりの世論の批判に、新大統領カルデロンは、メキシコ史上初めて、公開の場で大統領就任式典ができなかったほどでした。ほんとは、憲法広場に面した大統領宮殿の広いバルコニーでやるんですけどね、ブーイングの渦になるのが目に見えてたんで、非公開で、大統領宮殿の中でひっそりやったわけですよ。つまり、トランプや安倍みたいに、就任式の間ぐらい盛り上げてくれそうな アレな 熱狂的な支持者すらいなかったわけ。

ですから、就任後もメキシコシティにはデモの嵐が吹き荒れていました。その中心にいたのが、あの国の場合、若者世代だったわけです。メキシコの若者は、本をたくさん読みますし、政治を語るのは未来を担う自分たちの権利だと思っていますからね。

そのタイミングでの、豚インフル「突如襲来」だったわけです。
さすがに、若者がバタバタ罹患して死んでいるということになると、デモどころではないですよね。
コンサートやライブも中止、レストランも閉鎖(テイクアウトと配達のみ営業)。当然、反大統領デモ....とりわけ、史上最大規模の抗議集会となるはずだったメーデーのイベントも中止。

で、史上最低の支持率だった新大統領はというと、この危機に、あたかも 吉村大阪知事の 水を得た魚の如く、TV出ずっぱりで、さも「やったふり」感ある演説などの成果で、それなりに支持率も上がります。

が、それが、どうもおかしいんじゃないかということになったのは、それから数週間後。

日本でも、メキシコ産というだけでアボカドが店頭から消えたり、メキシコ料理店が閑散としたり、豚肉の売上が下がったりというすごい見当違いな影響まで与えた「きわめて危険な感染症」のわりに、その肝心のメキシコで、

「それはいいけど、知り合いで罹った人いる?」
「誰か具体的に死んだ人、知ってる?」
......って話になっちゃったんです。

で、実際に、私の友人が、ある依頼を受けて、インタビューをしようと病院関係者などに当たってみたら、驚くべき事実が。

「統計数字上では大発生しているはずの首都圏なのに、豚インフル患者を多数治療したり、死者を看取ったという病院自体が、聞いて回った限りではひとつもないし、紹介してもらおうにも、医療関係者すら知らない」という「はあ?」みたいなことになったと。

あまりのことに、最初は病院側の隠蔽も疑ったようですが、病院で働いていらっしゃる皆さんの雰囲気を見ていると、どうもそういう気配もない、というわけ。ていうか、一病院だけならともかく、公立私立を問わず複数の病院やクリニックが、口を揃えて隠蔽するってちょっと無理があるし。

となると、バタバタ死んでたはずの死者はどこに行ったのかという話ですよ。ゾンビになって蘇るわけないんだから。

そして、5月中旬になると、今度はメキシコの死者数統計がころころ変わり、その数字が無茶苦茶すぎて、もう誰も政府発表を信頼できないというレベルに。
検査方法が変わったからとか定義が変わったからと言われたって、死人の数がポロポロ変わる......それも、超過死亡を計上してどんどん増えるならわかるのですが......どんどん少ない方に変わるって、ありえないっす。

挙句の果てに、数日で数百人に及んでいたはずの死者が、実はたったの 7人でした、とか....(爆)
http://nobuyoyagi.blog16.fc2.com/blog-entry-358.html

で、このあたりになると、メキシコ(の政府発表)以外では、全世界的にも死者はあんまり出ていないということも統計的に明らかになって、豚インフルは存在はするけどぜんぜん大したことないというコンセンサスが、世界的なものとなったわけです。

その一方でですね、これが明らかになる前に、メキシコは国家危機だと大騒ぎしたことで、かなりの額の海外援助を獲得したわけですよ。世銀から、2億500万ドルの供与です。それ以外にも、世界各国から援助が届いてます。さらに、緊急事態宣言でメキシコの株価や為替は一時的に大幅落したわけですが、株や通貨レートが下がるのが予めわかっていたら.......もちろんボロ儲けできる人がいますよね。そういう疑惑も......

で、本来なら、その後、その疑惑が延々突っ込まれることになるはずだったのでしょうが、それと前後して、その問題のカルデロン大統領は「麻薬戦争」と称して、マフィアに喧嘩を売り、メキシコ全土を混乱に叩き込むという、超特大ガチャポンをやってくれたわけです。

やばくなると戦争を始めるというのは、トンデモな権力者の常套手段ですが、メキシコの場合、なんぼなんでも隣の米国に宣戦布告できないし、グァテマラじゃ戦争にならないし、ってところで、大義名分が立ちそうだったのが、麻薬ってことですね。これが実は、いまでもメキシコを蝕んでいる麻薬テロの元凶です。

それまでだって、メキシコに麻薬マフィアはいましたが、メキシコって単なる通り道だったんで、まあ、マフィアがそれで儲けるっていうことについての道義性や犯罪性はさておいて、実は一般のメキシコ人の生活にはあんまり関係なかったんですが、メキシコ政府が本腰でマフィアと戦争はじめたもんだから、国内の治安がぼろぼろになり、民間人が多数巻き添えになるという事態となったわけです。まあ、日本各地で、暴力団の死にものぐるいの本格的抗争が始まったというような状況を想定してもらえればと思います。しかも、そこに米国からじゃぶじゃぶ武器が流れ込むわけでしてね。
そうやって、それまでの、日本の女子大生でも一人旅で呑気に気軽に田舎を旅行できるようなメキシコは、もろくも消えてしまったわけです。

まあ、これと比べれば、国民の窮乏をよそに、アベノマスクやら持続化給付金といったコロナ対策まで利用してちゃっかりお友達利権を作る程度の安倍とか菅は、しょせん小悪党に過ぎないとはいえなくはないですが。

救いは、先に述べた2006年大統領選で、みんな納得のできない負け方をした大統領候補ロペス=オブラドールが、いま、政権の座にあるということですが、(一昨年、彼が大統領選で勝ったとき、たくさんの人たちが憲法広場に三々五々集まって、感動のあまり号泣していたのは、そういう理由です)、なんせ、10年に渡る麻薬戦争で、もう国内ボロボロだし、20年以上続いた新自由主義で、片っ端から民営化されてしまっているし、あげくにメキシコの収入源の石油も暴落でと、三重苦の中で苦戦しているようなのが気の毒です。
日本で(大阪で)政権交代が起こっても、さんざんボロボロにされ食い物にされ尽くしてしまったあとだと、後継者が立て直すといっても、そう容易なことではないという実例がここにありますので、皆さん、ずるずる騙され続けないように、腹をくくってくださいね。

新型コロナ感染拡大のもとで、あえておすすめ

  新型コロナが新たな感染爆発のステージに入ったようですね。
 最近になって、後遺症の問題も取り沙汰されるようになってきましたが、新型コロナは、軽症でも、後にきつい後遺症が出る可能性があるなんてのは、外国では4月から報告が上がっていたことで、私だって、5月の段階でプログに書いておりました。
 なにをいまさら、なんですが、それまで、そこのところは「目をつぶって知らないふり」をしてきたんですよね。メディアも、厚労省も。

 で....忘年会や帰省どころではなくなった皆様に、地味だけど、面白い書籍のご紹介です。
 そう。クリスマスケーキみたいな派手さはないんですが、スルメのように、噛んでるとじわじわ旨味がくるような。
 
 山岡淳一郎著 「ドキュメント感染症利権ー医療を蝕む闇の構造」
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 とにかく、現在に至る日本の医療の構造的な問題がよくわかる。
 読み始めてしばらくは、タイトルと内容が乖離しているような印象を持ちます。というのも「利権」という生々しくも腥いタイトルを名乗り、まさに旬の新型コロナ噺で始めておきながら、それは束の間、第一章のそれも23ページ目あたりから、舞台が明治に飛んでしまうからだ。
 で、この明治期のコレラやペストの防疫談がじっくり二章で語られ、さらに第三章で731部隊の暗史が語られます。さらにその次の章が、ハンセン病問題。
 それは、私達が断片的には知っているが、じつはよく知らなかったことを改めて思い知らさせる......つまり、積極的に語られてこなかった近代日本史の暗部の物語だ。それを筆者はよく調べ、調査し掘り起こし、低いが明快な声でじっくりと語る。
 なので興味深い。内容も濃いのではあるが、しかし、タイトルとの乖離を感じてしまったわけだ。
 今の日本の医療が、明治に端を発する霞が関の権力争いや学閥のゆえに、現場の医師たちの良心や覇気とは別のフレームで歪まされてきたことが、切なくもじわじわと迫ってくるものの、「でも、それ、利権と言ってしまうのはちょっと違うのでは?」と思ってしまったからだ。
 しかし、その不満は、最終の第5章で反転する。
 つまり、そこまでが長い前置きなのだ。明治以来の、戦中の、そして戦後の、日本の医療行政の上を覆ってきた「政治」と「官僚主義」の歴史を頭に入れてこそはっきり見える薬害エイズ事件。そして、それはそのまま、現在の新型コロナへの政府対応とも重なってくる。
 そして、エイズ問題あたりから世界を跋扈するワクチン開発利権という異形の怪物とのからみが生々しく理解できるという仕組みになっている。そのあたり、鮮やかである。
 地味ながら、読み応えがあり、ためになる一冊。

 そして、もう一冊。これまた一見地味だけど、ものすごく面白い本。

 市川寛著 「ナリ検 ある次席検事の挑戦」
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 はい。あの、ニコ生史上に残る爆弾発言の主、「検事失格」の市川寛氏です。それも小説です。
 ナリ検というのは、ヤメ検、すなわち、検事から弁護士に転身した法曹を指す、やや揶揄的な表現から持ってきているのは明らかで、本書では、弁護士から検察官に転身した次席検事を主人公として物語が描かれる。
 もっとも、弁護士が選挙で検事になる米国の制度とは違って、日本では、司法修習生からそのまま生え抜きの検事になるのがほぼ慣例なので(例外的に、検察事務官から副検事を経て検事になることもあるが)、弁護士から検事になった例というのはないはずだ。なので、そこはフィクションということ。
 で、この小説の何が面白いかというと、まさに「弁護士の心を持っている検事」が主役として、「検察の常識」と戦っていく話だからだ。
 傍から見れば、なんでそうなるの、という論理展開であっても、検察生え抜きでその世界しか知らない人には、それをおかしいとは思わない。「世間の常識」や「本来の法の趣旨」から明らかに乖離していることであっても、それが見えない。なぜなら、検察の価値観しか知らず、それに染められているからだ。そういう世界の中では、「普通の(まっとうな)価値観」を持っている方が「異常」ということになる。
 いったん起訴と決めたら、絶対に有罪にしなければならない。あとで事実誤認があったことに気づいても、あとで被告に有利な証拠や証言が出てきても、それは黙殺し、最初に決めたレールの上をあくまで走ろうとする。冤罪が起これば、被疑者にとっては一生の問題なのだが、そんなことを顧みられることはない。
 その、まさに冤罪を生みかねない「価値判断」や「基準」が、しかし、それを何の疑問も持たず、むしろそれこそが正義と本気で信じる(そしてもちろん、馬鹿だからなのではなくて、優秀な頭脳を持っている)人たちが、国家権力という威光の剣を自在に振るっているという現実は、前述の「感染症利権」のあとには更に生々しく感じられる。
 地味というのは、これだけ恰好の素材であるにもかかわらず、肝心の事件がいまいち地味だということだ。もしかしたら、その地味さは、筆者市川さんの実体験に即しているからなのかもしれない。
 ただ、せっかく小説なんだから、連続殺人事件とか猟奇犯罪とか、あるいは汚職とか、もうちょっとでかくて派手な風呂敷を広げても良かったのではないかというところが惜しいというか、ちょっと勿体ない。
 もちろん、本書はわざと地味に置いた布石であって、市川氏には二作目・三作目の大構想があるのかもしれない。なんたって設定は抜群に面白いのだから。
 とにかく細部に渡るリアリティはものすごいうえ、検察実務についても詳細に描かれているので、ミステリファンなら読んで絶対に損はない一冊だ。

 そして、三冊目。
 青谷 知己、小倉志郎他 (著)「原発は日本を滅ぼす
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 新型コロナの感染の広がりの中で、検査を受けられずに亡くなった方のニュースが話題となり、一方で、たまりかねたかのように民間が開始した格安のPCR検査に予約が殺到する状況の下、初期に跋扈していた「PCR検査抑制説」つまり、PCR検査には偽陽性や偽陰性が多く信頼性が低いだの、ものすごい職人技が必要なので増やすのは不可能だのといったアレな論議が立ち消えになり、というか、居丈高にそういった主張をしていた人たちが、さりげなくWebページやエントリを削除して逃亡したり、「自分の主張の真意はそうではない」的な逃げに入っている今日このごろ、これって、なんか、あの時と似ていますよねえ。
 原発に関しても、居丈高にその必要性を語り、反対派を嘲笑するような人達がけっこういた(いまでもいます)ものですが、この本は、まさに専門家、つまり、あのフクイチの設計者も含む原発技術者というプロ中のプロが、その手の「俺は知っているんだから、〇〇脳の素人は黙っとけ」系の連中の詭弁やデマや嘘を完全論破している本です。

 ちなみに、アマゾンで、一つ星レビューをつけている方が、「筆者らは原発事故後に180度主張を変えた二枚舌だから本書の内容が信頼できない」と主張していますが、それは明らかなデマです。私は筆者のお一人を個人的に存じていますが、福島原発事故の前から、原発の問題点や危険性についてシリアスな指摘をされていました。(最も当時は、当然ながら、具体的に津波災害を予見していたわけではなく、火災やテロなどを想定しての指摘だったのは仕方がないでしょう)。こういう虚偽まで書いて評価を落とそうとするあたり、まさに「ここに書かれていることが、よっぽど都合が悪い人たち」がいるということですね。

 そういえば、原発事故の前、九州電力だったかの公聴会で、原発賛成派の人が「原発で事故が起こらなかったら、原発反対派は責任を取れるんですか?」なんていう超絶珍妙な論理を吐いていたりしていたものですが、あの人は、福島で事故が起こったあと、いったいどういう責任をとったのでしょうね。

 危機管理をさんざん蔑ろにしたあげく、トラブルが起こると、バックれるか、慌てて責任転嫁、というのって、まさに看護学校や病院の補助金をバンバン削り、新型コロナの危険性がわかってきた初段階でも雨ガッパ集めたり、イソジンうがいがコロナに効くなんていうデマを吹聴し、自分の利権がらみの都構想のために奔走していた挙げ句に、感染爆発を招くと被害者ヅラで自衛隊に泣きつく大阪府知事が再現してくれているようです。ああ、そういえば、そこにもアンジェスとかいう、失笑するしかないような経営状態の会社非現実的なワクチン開発なんていう利権ぽいものがありましたねえ。

ハロウィーンとメキシコの死者の日

 日本でも10月の末になると、そこらじゅうで、かぼちゃの飾りをつけたり、かぼちゃのお菓子や料理メニューが紹介されるようになってきています。
 米国のハロウィーンでのかぼちゃって、あくまで飾り物で、あれ、食べるわけではないんですけどね。

 ちなみに、日本のかぼちゃはpampkinではなくて、squash。日本のスーパーで売られているのは、けっこう、メキシコ産のかぼちゃだったりします。まあ、かぼちゃの原産はメキシコなんで不思議というほどではないのですが、ただ、メキシコに行くと、少なくとも私が半分住んでいるメキシコシティでは、この日本風の中が黄色くて甘みのあるかぼちゃって売ってるの見たことないんですよね。少なくともあまり一般的ではない。あれって、日本向けに作って輸出しているんでしょうかね。
死者の日1
 で、この時期、正確には、11月の最初の2日、メキシコでも死者の日(Dia de los muertos)を祝います。米国のハロウィーンは、ケルトの祭りに起源があるとされているキリスト教の祭りですが、メキシコの死者の日は、マヤやアステカの祭りに起源があるものです。

 今年はコロナのせいで、あまり大々的にはやらないようですが、毎年、この時期になると、メキシコでは、墓地はもちろん、憲法広場や街の小広場、公園、それに公共や半公共のスペースには、オフレンダと呼ばれる死者の日の飾りつけが華やかに行われます。メキシコ人にとっては、クリスマスに匹敵する大イベントなのでして、10月に入ろうものなら、死者の日の飾り付けグッズがそこここに並び、皆さん、ご家庭でも凝った飾り付けをする方多数。

 オレンジ色のマリーゴールドと紫色の乾燥花。お香。ひらひらした色とりどりの切り絵(パペル・ピカード)は、中国の切り絵がメキシコ化したもの。そして、髑髏のお人形やお菓子。たくさんの蝋燭。パン・デ・ムエルト(死者のパン)と呼ばれる砂糖をまぶしたさくさくの菓子パンを並べます。
死者の日2
 私の家のあるコヨアカンの広場などでは、ポソーレ(大粒とうもろこしのシチュー)やタマル(トウモロコシ粉のチマキ)の屋台も建ち並び、本来なら、この期間は、すっかりお祭り気分。チョコレート(メキシコ原産のカカオ豆を石臼ですりつぶしてスパイスを利かせたメキシコ風で、ものすごく香り高い)やアトーレ(アーモンドの熱い飲み物)などのメキシコの伝統的な飲み物も売られます。

 カトリーナという立派な名前まである、羽根帽子で着飾ったエレガントな骸骨の貴婦人の扮装をした人たちも、街角に現れます。
 米国のハロウィーンの仮装の悪魔とか魔女とか果てはゾンビみたいなのではなくて、骸骨の顔をしているけれど、優美な貴婦人や紳士です。
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 メキシコでは、死はけっして恐ろしいものでも呪わしいものではなく、生の延長。というより、より良き別の世界へのいざない、という発想がそこにあるからです。
 そういえば、2年ほど前に日本でもヒットしたディズニー・ピクサーの映画「リメンバー・ミー」(原題 Coco)も、まさにメキシコの死者の日の出来事をテーマにした映画でしたね。

 で、コロナのせいでメキシコに行けない私は、そのせいもあって、メキシコ料理がむしょうに食べたくて仕方なくなったわけ。
 というわけで、昨日は、お客さんも招いて、メキシコ料理三昧といきました。

 ご存知ない人も多いですが、メキシコ料理って、和食より先にユネスコの世界文化遺産に認定されています。アステカやマヤの古代文明の頃からの先住民のスパイス文化に、植民化したスペインの料理、さらに一時、ナポレオン三世時代のフランスに侵略されたので、そのときにフランス料理も入ってきています。その複雑なミクスチュアがメキシコ料理の肝です。
 残念ながら、日本でメキシコ料理として紹介されているのは、その大半が、本物のメキシコ料理ではなく、テックス・メックスと言われる米国人向けのメキシコ料理。なんというか寿司界におけるカリフォルニアロールみたいな存在です。本場のメキシコには、ひき肉で作ったタコスの具とか、チリコンカンなんてありませんからね。
 問題は、本場風のメキシコ料理を再現するには、日本で食材やスパイスが入手困難であることです。幸い、香草のシラントロ(パクチー)はブームのおかげで、どこのスーパーでも売られるようになったのはありがたいのですが、それ以外のスパイスがねえ。

 で、ちょうど、開店当初からのお付き合いの下北沢のメキシコ料理店の「テピート」さんが、冷凍料理の宅配を始められたというので、お試しです。
 ここの久美ママは、もともと懐石料理の料理人でいらしたところを、ドラマみたいな大恋愛の末、ゴールインしたメキシコ人の夫君のお母上に教わった家庭の味から初めて、いまや本格的なメキシコ料理店のオーナシェフをなさっている方です。

 もっとも、お取り寄せのレンチンだけでは芸がないので、自分でも、スーパーで手に入る材料で少し作ってみました。

 まず、メキシコでは超定番のコンソメ・デ・ポージョ (consome de pollo) 。
 テピート本店では、ちゃんと鶏ガラを一晩煮込んで作っていらっしゃるそうですが、久美ママに教えてもらったご家庭用の驚きのやり方は、手羽先を使うというもの。
 いや、これだと簡単に手に入るし、ご家庭でも少量でもすぐ美味しく作れるんですよ。
 鶏の手羽先と、月桂樹の葉、パクチーの茎と根のところを、水からゆっくり煮出します。それに、1.5cmぐらいの角切りにした、にんじん、ズッキーニ、じゃがいも、手に入れば、はやとうり(これ、メキシコではチャヨーテといってよく食べられます)、お米を大さじ一杯を入れて、15分から20分ぐらい。コツは、煮立てないこと。アクをすくって、味付けは塩と胡椒だけでも、手羽先とパクチーの根から、すごく美味しい出汁が出ています。
 この出来上がったスープに、生の粗みじんにした玉ねぎ、みじん切りのパクチーの葉、指で少し潰して香りを立てたオレガノ、好みでライム汁(またはレモン)を少し絞って入れて食べるのが、メキシコ風。薄切りにしたアボカドを仕上げに入れても結構です。

 それからワカモレ(guacamole)。 完熟のアボカドをスプーンかフォークで潰し(私は、グレープフルーツ用のぎざぎざのあるスプーンで潰します)、少し粗めのみじん切りの玉葱、パクチー、トマトを混ぜ、塩胡椒オレガノ少々に、ライム汁かレモン汁を混ぜます。辛いのが平気なら、ハラペーニョのみじん切りも入れます。これね、パンに塗っても美味しいよ。

 もう一点、ピリ辛のフレッシュなサルサ。完熟トマト、玉ねぎ、にんにく、パクチーの粗みじんと、ハラペーニョ(生だとベストですが日本では入手困難ですので、輸入食料品店で売ってる缶詰で)のみじん切りに、サラダ油とライムかレモン汁(なければリンゴ酢)、塩を適宜混ぜるだけ。辛いのがだめな人はハラペーニョなしでもおいしいですし、メキシコ料理以外にも合います。

(どれもパクチー使うので、パクチーを一束買って余ったときなどに、ぜひお試しください)

 と、ほぼスーパーの食材で、ぱぱっとできてしまうサブメニューを揃えたうえで、開封の儀を行い、温めてお出ししたのが、まさに本格料理。

 まず、テピートさん謹製の「ティンガ・デ・ポージョ(tinga de pollo)」。
 茹でて割いた鳥の胸肉をチリ・チポトレの入ったトマトソースで煮込んだものです。チリ・チポトレで煮込んだといっても、全然辛くありません。普通のトマトソースでは出ない独特の旨味とコクがあって本当に美味しい、まさに本場のタコスの定番の具です。メキシコ風の鳥のだしで炊いたお米と、メキシコ風の煮豆、トルティージャもついているので、これ一品で完璧に、メキシコ。

 それから、豚肉をオレンジソースで煮込んだ、タコス・デ・カルニータス (tacos de carnitas)、メキシコ東部ユカタン地方の伝統料理コチニータ・ピビル (cochini-ta pibil) は、オレンジとライムでマリネした豚肉の塊を、アチョーテの種のペーストなどをスパイスに使って、バナナの葉で包み、蒸し煮にするもので、大鍋で一昼夜かけて煮込むのだとか。 このあたりのものが日本で食べられるというのは、けっこう感動します。

 それから、アロス・コン・マリスコス(arroz con mariscos)。立派なエビがどんと乗っていて海老の出汁が効いています。ただ、スペインのパエジャと違って、リゾット風、ごはんかなりやわらかめなので、多少好みが分かれるかもしれません。

 正直、思っていたより、分量があったので、お客さん含め、おなかいっぱいになりました。ご馳走様。

( 文中の死者の日の写真は、音楽写真家の岡部好さんの作品から。骸骨の貴婦人の絵は、ホセ・グァダルーペ・ポサーダの版画から。それぞれクリックで拡大してご覧いただけます。なお、料理の写真がひとつもないのは、撮るの忘れて食べちゃったからです)



はりぼての日本の黙示録的な現在、真犯人はどこにいる

今月のライブも中止となり、家にこもりがちの今日このごろ。

まだまだ日本の重症数は少ないと指摘する人もいますが、新型コロナの場合、重症というのは人工呼吸器をつける生命の危機レベルですので、重傷者が少ないから大丈夫そう、というものではありません。収まってもいないのに Go to Travel などと、そもそも英語としても政策としてもバツ印なことがのさばっているのが、今の日本です。
何かあったら罹った方の責任、民間のせいにされるのですから、たまったものではありません。

とはいえ、それでも外出したい気持ちになることはあります。
今週の最大の収穫は、映画「はりぼて」でした。


https://haribote.ayapro.ne.jp/

富山で、市議十数人がドミノ辞任に追い込まれた汚職事件を追ったドキュメンタリーなんですが........
というと、地味な感じするでしょ? でしょ?
ところがね、それがあなた、違うんですよ。

はっきり言います。超絶、面白かったです。一分たりとも退屈しません。

以前、韓国の「共犯者たち」という映画を見たとき、すごくスリリングで面白かったと同時に、「なぜ日本ではジャーナリズムが、ここまでだめになったんだろう」と悲しいものがありましたが、「はりぼて」では、「日本でもできるじゃないか」と、希望の光を与えてくれます。

しかも、この手の映画って、重苦しい苦い気持ちにさせられることが少なくないのですが、これは違います。なんたって笑えます。テンポも軽い。そして、見終わったあとの爽快感もあります。しかも、良くやったね、お見事だったねの自画自賛ではなく、重い問題提起もきっちり置き土産にしておきながら、です。ドキュメンタリー系苦手な人でも、きっと楽しめます。監督のこのセンスは素晴らしい。

とはいえ、この追求、地方のローカル局だからできた、という部分もあるのでしょう。
それにひきかえ、NHK広島では、とうとう公共放送の公式ツイートで差別発言を垂れ流して恥じないまでになってしまっているのは、どういうことでしょうか。劣化という言葉がこれほどふさわしい事例はないでしょう。

一方、最近読んだ本で非常に面白かったのは、清水潔「殺人犯はここにいる」、海堂尊「コロナ黙示録」の2冊。

殺人犯はここにいる前者はノンフィクションで足利事件、正確には、北関東幼女連続殺人事件を追ったものですが、検察と裁判所が「いったん決めたことに関して、意地でも引き返さない」おそろしさが、これでもかと描かれています。足利事件のDNA鑑定に重大な疑問が出てきてもとことん無視。証拠に重大な矛盾があっても隠蔽。ついに検察側鑑定で違うDNA鑑定結果が出てきても「間違い」は認めず、やがて、本当の犯人らしき人物が明らかになってきても、真犯人をあえて野放しに....なぜなら.....という、すごい話です。
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私も、課外活動(笑)で多少検察問題をやっていますので、この「間違いを認めるのだけはぜったい嫌。謝罪するぐらいなら、凶悪な真犯人をのさばらせようが、無実の人間が何人死のうが、かまわない」的な検察の姿勢はよくわかります。てか、森友事件なんてのも、もろにそうですよねえ、皆さん。
そして、興味深いのは、これだけ地道な調査報道の書籍に、必死で「一つ星」つけて「荒唐無稽」と叩いている複数のレビューで、ぽろぽろ「検察用語」みたいなのが出ちゃっているあたり、どういう人が書いているのか見え見えで、検察関係者はほんとに読んでほしくない本なんでしょうねえ。

コロナ黙示録そして、そういう意味で、ある種の人達にとっては、読まれてはぜったいイヤな本、この大横綱として推したいのが、後者の海堂尊「コロナ黙示録」。これは7月に出たばかりの本です。
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海堂尊氏といえば、映画やTVシリーズとしても大ヒットの「チーム・バチスタ」シリーズの作者である大ベストセラー作家。去年もTBSの日曜劇場で二宮和也主演で「ブラック・ペアン」やってましたね。その、まさに「バチスタ」シリーズの最新作です。

北海道で救命医として活躍していた速水医師のもとで入院患者から病院内集団感染が起こって院内パニックに.......一方、豪華クルーズ客船でウイルス・パンデミックが発生し、厚労省役人の画策で「バチスタシリーズ」の主人公田口医師の在籍する東城大学病院が受け入れることに.......という、スリリングなストーリーです。

にも関わらず、この本、なんと出版直後に、Amazonに一つ星評価のバッシングが並び、なぜか5つ星評価のレビューに限って削除されるとか、投稿できないという奇妙な事態が私の知っているだけでも何件も発生。さらに人気作家の新作なのに、テレビも新聞も黙殺、というすごいことになっています。

そこまでつまらないのか?
でも、人気作家さんだけに熱心なファンなどもいるはずですから、ここまで叩かれ無視されるとはちょっとおかしいとは思われませんか? ましてや、発売直後の5つ星レビューが削除されるとか、投稿できないって???

で、その理由として推察できるのは、実は、この本、ものすごい政権批判的な内容なんです。
もちろん、今の日本政府のコロナ対策がアレですので、2020年の日本を舞台に新型コロナを描けば、そりゃあ政府の対応のとんでもなさが顕になるようなものになるのは仕方ありません。海堂氏は医師だけあって、執筆時点での欧米の医学雑誌の最新の研究論文なども踏まえて描かれるコロナ病棟の描写は迫真で、政府や厚労省のダメっぷりにはきわめて辛辣です。
さらに物語には、なんと森友問題を彷彿とさせる事件までからんできます。

黒川弘務氏に頼んで、公文書問題や背任問題を無理やり不起訴にして、メディアを抑え、強引な幕引きを図ったにもかかわらず、赤木夫人による遺書公開や提訴などでふたたび森友事件に光が当てられそうになっているこのタイミングです。これは....官邸としては、この本、絶対に絶対に売れてなんかほしくないでしょうねえ。(笑)

しかも、つい先日、内調がツイッターの政権擁護の極右アカウントに直接関わっているらしいことが、情報開示請求でバレちゃったりとか、Amazonがよりにもよって三浦瑠麗をCMに起用したと思ったら、政府の基盤クラウドを300億でAmazonに発注してたとか、香ばしさが満開な状態ですからねえ。

それにしても、政府の基盤クラウドをわざわざ海外企業に発注するって、どこまで頭おかしいんでしょうか? いくら日本が ITでは先進国の座からすでに滑り落ちたとしても、まだ富士通とかNECとかPanasonicとか、それなりの技術力がある日本企業は存在しているというのに、危機管理センス皆無としか言いようがありません。
そこまでして、政府批判本の5つ星を減らして目立たせないようにし、一方で、政府ヨイショ本や忖度本を「あなたへのおすすめ」に並べてほしいんでしょうかね。

というわけで、この映画一本と二冊、めちゃめちゃ面白いですので、おすすめです。(個人の感想です。)
よろしければ、ぜひ、率直な感想も、レビューに寄せられると、他の方のお役に立つかもしれません。
(現在は、5つ星レビューがことごとく削除されるとか投稿できないことはないようですが、皆さん各自でお試しください)

新型コロナ:ブラジルで何が起こったのか?

 新型コロナのおかげで、ずっとライブが休止となっております。
 7月は大丈夫かと思ったのですが、それどころか、8月も難しいかもしれません。
 日本を含むアジア圏では謎の理由により重症化率や死亡率が低いので、米国やブラジルのようなことになっていないだけで、和牛券にアベノマスク、GO TO TRAVELと次々に国民の税金をドブに捨てて、お友達に利権をばらまくという、世界でも例を見ない政策てんこ盛りの中、新型コロナ蔓延には終わりの兆しが見えません。

 で、その、ブラジルですが。
 確認されているだけで、感染者が230万近く。死亡者も85000人近くです。
 一日あたりの感染者数が6万超えとか、大統領も陽性とか。

 日本でも知名度が上がってきた、そのボルソナロ大統領は、軍が担ぎ出した人物です。
 ブラジルは1964年から85年まで軍事政権で、反対派を激しく弾圧し、暗殺が横行し、音楽家などもほとんど亡命してしまうぐらいひどい状況だったのですが、それが85年にやっと民主化しました。
 ただ、そのあとも、政権が不安定な状況が続いていたのですが、2006年に、労働組合の代表だったルーラが大統領になって、やっと安定して、国民のための政策が取られるようになってきます。

 左派政権て、よく「バラマキ」に走って経済を悪化させると日本で思われているんですが、ルーラの時代、ブラジル経済は絶好調となります。ちなみに、中南米では、70年代から80年代に、軍事政権が軒並み新自由主義をガンガンに導入し、10年がかりで、国民からボロボロにむしりとってしまいますが、その反動で生まれた一連の左派政権が、新自由主義と決別することで、ガタガタになった格差社会や教育を是正し、経済を少しづつ立て直します。

 そんなわけで、ルーラの人気は抜群でしたが、ブラジルでは大統領の再選ができないので、ルーラの後継者のジウマ・ルセフが大統領に立候補、ブラジル初の女性大統領になります。

 ところが、このルセフに汚職疑惑が持ち上がり、弾劾されることに。
 この汚職疑惑自体が、結局、まともな証拠は出てこず、まるで陸山会事件みたいな話なのですが、メディアが「黒」と決めつけて、ものすごいバッシングをおこなったのと、副大統領だったテメルが、ルセフに不利な証言をしたので、弾劾が通ってしまったのです。もちろん、後ろにいたのは、米国とブラジル財界です。(ちなみに、そのあと、汚職をしていたのは、このテメルの方だったことが明らかになります)
 自分が大統領になるために、ルセフをハメた疑惑もあって、テメルの人気は最悪。リオ・オリンピックでは開会式の大統領の挨拶のときに、前代未聞の大ブーイングが起きるほどでした。

 そのテメルの任期満了後の大統領選挙で、再度、立候補しようとしたのが、元大統領のルーラです。
 ルーラの国民的人気は絶大だっただけに、これはもう当選確実、となっていたところに、今度はルーラに汚職疑惑が持ち上がり、なんとブラジル検察はルーラを逮捕し、立候補できないようにしてしまいました。

 まあ、これも具体的な証拠はほとんどないに等しい疑惑で、そのせいで、ルーラはパリ市から「世界で最も有名な政治犯」として名誉市民に選出されています。この件は、世界的にはそういう評価です。
 とはいえ、逮捕されてしまったので、立候補は無理。党もすぐに有力な後継者を出せなかったということもあって、2018年の大統領選では、軍と経団連をバックに付けたボルソナロが通ってしまったわけです。
 2018年といえば、軍事政権が終わって33年。もう若い世代には実感がなかったというのが大きかったようです。

 で、この人は、まあ、軍がバックアップしているだけあって、軍事政権にも賛成しているような人。なんとチリのピノチェトを尊敬していると発言したり、トランプのことも大好きというような筋金入りの極右で、ベネズエラが揉めていたときには、野党の指導者を全面バックアップして、ベネズエラ現政権潰しに尽力していました。
 人種差別発言などもひどく、黒人や先住民、女性や同性愛者に対する露骨な差別はもちろん、アジア人蔑視丸出しの発言もしていますが、日本経済新聞の特派員さんなどは、そのアジア人蔑視発言ですら「悪意はない」とか必死で庇ってヨイショしていた、と、まあ、そういうところに、日本の経団連との関係は実にわかりやすい、というような人です。

 今回のコロナでは、コロナは風邪だと言い張って、ブラジルを感染者・死者世界二位に押し上げました。

 ポピュリストが人気を集めただけ、とレッテルを貼るのは簡単ですが、こういうトンデモな政治家がのさばるようなことになった理由として、一つ言えるのは、メキシコの2006年の大統領選挙や2010年の陸山会事件でやられたように、検察とメディアがタッグを組めば、(あるいはその両方を丸め込めたら)、世論操作やでっちあげが簡単だということです。

 強力で目障りな政治家がいたら、司法取引かそれに類するもので「証人」を一人か二人作れば、汚職疑惑なんていくらでもでっち上げることができるし、そうやって逮捕や起訴すれば、政治活動を止めることができる。なにより、左派寄りの支持者ほど、指導者に清廉潔白さを求めるので、メディアが「汚職だ腐敗だ、政治とカネだ」と連日騒ぐだけで、簡単に水をぶっかけることができるんです。そこは自民党支持層とは逆。

 逆に、誰が見ても明白な汚職があっても、検察が動かず、メディアがあんまり騒がなければ、人の噂も75日で、なんとなく。ずるずる立ち消えになって忘れ去られるんです。今の安倍政権下の日本がまさにそうですが、

 で、これが面白いほどうまくいくものだから、ここ10年ほど、世界のトレンドとしては、「目障りな左派政治家は、メディアを使って、汚職疑惑を盛り上げて潰す」という感じになっています。去年のボリビアのクーデターも、エクアドルも、全く同じ手口です。

 まあ、新自由主義っていうのは、国民を痛めつけますが、富裕層にとっては笑いが止まらない政策なので、利権を享受するためならなんでもやるんでしょうね。
 安倍政権にしたって、大企業や富裕層への課税を極力減らし、さらに、国民の年金を溶かして株の買い支えなんてやっているわけですから、そういう人たちにとっては打出の小槌なわけです。
 ついでに、政権に近いと、犯罪でも不起訴にしてもらえたり、コネを期待してオイシい話がいくらでも転がり込んでくるわけですから、こうなるともう笑いが止まりません。是が非でもそういうオイシい状況は維持したいわけですし、そこに至らない人も、なんとか近づいておこぼれに預かろうと、一生懸命、ヨイショに励むわけですね。

 40年ぐらい前の中南米が、けっこうオーバーラップしてくる感じですが。
 と、まあ、日本はそれほど特別なわけではなく、世界はこういうふうにつながっているわけです。

 とはいえ、それでも、今回のコロナ騒ぎで、トランプやボルソナロのトンデモさが明らかになってきましたし、思いつきと利権誘導まみれの日本の政策に、さすがに批判の声が高まりつつあるというところで、少し流れが変わるのではないかとほんのちょっぴり期待はしています。

 ただ、そう言ってしまうには、犠牲が大きすぎるのですけどね。
プロフィール

PANDORA

Author:PANDORA
ラテンアメリカと日本を拠点に活動する音楽家・作家 八木啓代のBlog
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3.11を心に刻んで (岩波ブックレット)
人は、どのような局面において言葉をつむぐか。30人の執筆者が震災を語ったエッセイ集。澤地久枝、斎藤 環、池澤夏樹、渡辺えり、やなせたかしらと並んで八木も寄稿。
刑事司法への問い (シリーズ 刑事司法を考える 第0巻) (岩波書店)
日本の刑事司法の何が問題か、どのような改革が求められているか。刑事法研究者、実務法曹の他、八木も執筆しております。
禁じられた歌ービクトル・ハラはなぜ死んだか(Kindle版)
長らく絶版状態だった書籍をリクエストにより電子書籍で再版いたしました。八木啓代の原点です。
検察崩壊 失われた正義(毎日新聞社)
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