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想像の斜め上を来てくれた大阪検察審査会の開示

 さて、検察審査会で、不起訴不当が出た件について。
 はっきり言う。検察審査会にはあまり期待していませんでした。

 場合によっては、被告人に対して死刑判決を下さなければならない裁判員とは違って、単に、「裁判するかどうか」を決めるという、はるかに軽い決断をするだけであるにもかかわらず、審査員は徹底秘匿され、記者会見することもなく、議事録もなければ、どんな説明が行われ、どんな証拠が提示されたのかさえ、わからないようなブラックボックスです。

 それでも、日本の司法では、検察の捜査がおかしければ、検察審査会に審査を求めるしかありません。

 そんな検審でさえ、ご存じのように、森友事件では、一部の罪状に関して、不起訴不当議決が出ました。

 起訴相当議決と不起訴不当議決のなにが違うかといえば、起訴相当議決であれば、議決2回で強制起訴となるが、不起訴不当であれば、単に検察に差し戻しになるだけで、なんの強制力もありません。

 それでは、その違いがなぜ起こるかといえば、単に「賛成者の数」。
 つまり、どんなに議論の内容が白熱し、これは起訴すべきだろうという流れになったとしても、断固として手を上げない人が4人いれば、絶対に起訴議決は出ないというわけ。

 だからでしょう。陸山会事件の田代政弘元検事の、あそこまであからさまな虚偽公文書作成事件には、どういうわけか、よりにもよって元検察高官が、アドバイザーとして、補助弁護士に就任していました。
 そして、まったく不必要に何度も審査員を入れ替え、起訴議決が出ないようになるまで議決を引き延ばしたという疑いも。
 
 伊藤詩織さんの事件の時には、素人しかいないはずの審査員が、なぜか、プロである補助弁護士をつけないで審査したり....。

 さらに言えば、審査員選定のために、選挙人名簿から無作為抽出するだけのガラポンソフトに数千万もかけ、やろうと思えば、任意の審査員を入れることができるような奇妙な仕様にしていたり....。

 その検審に開示請求を行ったのが、今年の4月、例の議決が出た直後です。

 通常、公文書の開示は二週間程度で行われるのだが、今回は、二度にわたって、大阪検審は延長を求めてきました。文書が大量にあり、精査が必要だと。

 で、3ヶ月もかけて、その間、あたくしは、カリブでレコーディングしたり、南米に行ったりしていたんですが、その末に、やっと開示してきたその内容が、想像の斜め上を行くトンデモだった、というわけ。

 通常、文書開示で、謄写つまりコピーを求めると、高めの実費を請求される。数百枚の開示の場合、これがけっこうな支出になるので、私が代表を務める「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」のような質実剛健な団体では、裁判所にノートパソコンとハンディスキャナを持ち込んで、スキャンするのが常でした。

(裁判所は電源も貸してくれないのだが、このスキャナはパソコンから電源を取れるので、超絶便利です)

 ところが、今回、大阪検審から電話があって、
「閲覧文書は、こちらでコピーを取ってお送りしますので、大阪までおいでになる必要はありません」

 えええ? 大阪検審、太っ腹????

 と一瞬でも思った私が甘かったのです。届いた書類は、なんとペラ8枚。
 いままで、同内容の請求で、百数十枚が開示されていたのに、たった8枚ですよ。いままでの、20分の1! しかも、全部黒塗り。これって、どこの戦前?

 いや、この数年での劣化っぷりはなんといったらいいのでしょうね。
 公文書毀棄(隠匿)事件の審査会で、公文書隠匿って、どんなジョークなんでしょう。

 とにかく、審査員をどう選定するか、については、一切極秘なんだそうです。立ち会ったはずの裁判官と検察官も、検察審査会法では「くじは、地方裁判所の判事、地方検察庁の検事及び関係市町村の吏員各一人の立会を以てこれを行わなければならない。この場合において、立会をした者は、検察審査員及び補充員の選定の証明をしなければならない。」と定められているのにもかかわらず、この立ち会いをした人も秘匿です。
 一体、なにをそんなに隠したいんでしょう?

 というわけで、本日、東京司法記者クラブで、緊急記者会見をいたしました。



プレスリリース
 
今回開示された資料
 
今までの開示と比べて、今回がどれだけ酷いかが一目でわかる資料
 
 まあ、大阪検察審査会が、大阪に来てもらいたくなかった理由がよくわかりました。ただ、これで逃げおおせたと思わないでいただきたいものでございます。

 ほんとに、明日はライブだってのに。

7月18日(木) 六本木 ノチェーロ

(東京都港区六本木6-7-9 川本ビルB1) お問い合わせ/03-3401-6801
1st 19:30 2nd 21:00 (入れ替えなし) 
Charge:2,600円(おつまみ一品付)
アクセス/日比谷線・大江戸線六本木駅より徒歩2分

六本木駅至近の最高の立地の音響の良いステージです。美しい歌曲の数々をじっくりお聴き頂きます! ギター:福島久雄さん。
詳細とご予約はこちら

7月30日(火) 大阪本町・Music Spot 燈門
 
( 大阪市中央区瓦町4-4-14 日宝ニュー本町ビル1F ) お問い合わせ/06-4708-8844
18:45 Open 19:30 Start
前売¥3000 当日¥3300+1ドリンク
アクセス/地下鉄御堂筋線「本町」駅徒歩4分。  

2018年7月より店主を変更し、グランドピアノも入れ、「小さな音の燈火をあなたの心に届ける」をコンセプトにした、大阪の音の憩いの空間「燈門(ともん)」での三度目のライブです! 新進気鋭のピアニスト柳原由佳さんとの共演!
ピアノ柳原由佳さん
詳細とご予約はこちら
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森友問題にかかわる一連の申立について、検察審査会で議決が出ました

学校法人森友学園に対する国有地売却にかかわる公用文書等毀棄罪、また、虚偽有印公文書作成及び行使容疑での申立について、本日、大阪検察審査会が、公用文書等毀棄罪に関して、佐川元局長らに対して不起訴不当議決、虚偽有印公文書作成及び行使に対して不起訴相当議決を出しました。

この件に関して、会として、以下の声明を発表いたしましたので、どうぞご一読ください。

学校法人森友学園に対する国有地売却にかかわる公用文書等毀棄罪、また、虚偽有印公文書作成及び行使容疑での申立について、本日、大阪検察審査会が、公用文書等毀棄罪に関して、佐川元局長らに対して不起訴不当議決、虚偽有印公文書作成及び行使に対して不起訴相当議決を出しました。

公用文書等毀棄につきましては、国有地の売却に関連する文書は、その事案が終了したのちも、最低5年から30年の保管が義務付けられています。

にもかかわらず、事案が終了していない、すなわち、売買金額の支払いも終わっていなければ、売買に付随する条件の施行も完了していなかったにもかかわらず、単に契約書を交わしただけの行為をもって、事案が終了したと強弁し、さらに、国会議員や総理夫人なども関連する重要な記録を、「軽微な書類」として廃棄したというような、まさに公文書管理法を足蹴にするような事案でした。

虚偽有印公文書等作成及び行使については、決裁文書の75ページ中60ページにわたって300ヶ所に及ぶ削除や改ざんを行なったという、近代国家の常識としてありえない事態で、しかもそれらの改ざん文書を国会や会計検査院に提出していたというものです。

公文書の正しい管理というものは、過去に行われた事柄、すなわち歴史を正確に記録し、必要に応じて確認することができる状態を維持するために、最低限必要なことであり、まさに民主主義の根幹をなすものです。

その公文書管理をないがしろにし、恣意的に捨てたり改ざんしたりした行為を容認することは、民主主義の自殺行為といって等しいものです。

実際、この事件においては、近畿財務局局員の方が自死されるということまで起こっており、到底、座視できる問題ではありません。

にもかかわらず、これだけのあからさまな改ざんに対して、「大きな内容の変更ではない」「廃棄してもかまわない文書であった」などという理由で不起訴とした大阪地検特捜部の決定は、もはや忖度などというレベルを通り越した、権力への露骨な迎合と言えるもので、民主主義・法治主義を踏みにじるものでした。

公用文書等毀棄罪に関しましては、不起訴不当が出ましたが、これは、検察に一度差し戻しになるだけのことであり、この事件の特殊性・異常性を考えれば、検察が再び不起訴にするであろうことは火を見るよりも明らかでしょう。

にもかかわらず、検察審査会の委員の方々が、何の危機感も問題意識も持たれず、上記のような検察の決定に追随されたということを、非常に異様と考えるのは私たちだけではないと考えます。

検察審査会に関しては、いままでにも、委員の選任方法の不透明さ(特定のバイアスのある審査員が選任されている疑い)・検察の問題を審査する審査会であるにもかかわらず、検察高官出身が補助弁護士に就任していたなど、補助弁護士の選任方法の不透明さ・議事録等が一切開示されないため、どのような議論が行われたのか、あるいは行われなかったのかが一切不明であること・審査会自体がどこに所属し、どこに責任があるのかさえ不明である点・検察官のみが一方的に審査員に説明を行うことができる上、捏造した証拠などでも提出することができるシステムになっており、しかもそれがバレても罪に問われない、など、きわめて灰色な部分が多いため、私たちも従来から、問題提起を行なってまいりましたが、そのもっとも悪い部分が、露わになったケースと考えます。

改めて、検察審査会法の歪さと問題点が浮き彫りになったともいえます。

いずれにしましても、この事件の当事者の一方でもある籠池夫妻のみならず、日産のゴーン氏に対する異常な長期勾留などで、日本の司法のおかしさに、世界の目が向けられ、あまつさえ、統計までもが改ざんされていることが明らかになり、国家としての信用にヒビが入っている最中にあって、大量の政府機関公文書の廃棄や改ざんが堂々と行われてもそれが重大な問題ではないと、国民が判断したという点で、これ以上ないほどに日本の恥を晒した問題として、歴史に刻まれることでしょう。

いろいろ。特に、Jedit Xのポインタが消えてパニクってる方は必読

 先日ご紹介したクラウド・ファンディング、なんと開始2日で、目標金額に達するという快挙を達成いたしました。
 それで、確実を期すために、そもそもの目標金額を低め(最低限)に設定していたこともあり、第二目標金額を設定したのですが、そちらも、なんとクリアしました。
 ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございます。

 八木さんがそこまでして薦めるのだから、きっと面白いに違いない、と言って、ご投資いただいた方々の期待にお答えするべく、鋭意、字幕作成中でございます。
 面倒といえば面倒な作業なのですが、映画自体が面白いので、字幕をつけながらも、ドキドキハラハラしながらやっております。
(もう、ストーリーも結末もわかっているわけですが、面白い映画って、何度見ても発見があるのですよね)

 クラウドファンディング自体は今月末まで続いておりますので、どうぞ、いまからでもご協力いただける方は、心から歓迎いたします。予告編だけでも見てね。
 https://readyfor.jp/projects/caido

 ところで、そんなこんなで、愛用のエディタソフト Jedit X を酷使していましたら、突然、書いていて、カーソルが消えてしまうという謎の現象が。

 ええええええええ。どういう呪いよ、これ。

 で、なにか環境設定が変わったのかといろいろ確認したり、あるいは Mac そのものの不調かと思い、再起動したり、セーフブートしたり、PRAM クリアしたりとおろおろしても、やはりどうにもなりません。
 そこで開発元のアートマン21さんに泣きつきましたら、10分でお返事をいただけ、そちらのユーザーサポートでも、同様の現象が確認されているとのこと。

たぶん、Jedit Xで利用していたマウスポインタ「Iビーム」画像が macOS 10.14.1でシステムから削除されてしまったためではないかと推察されます。Jedit Xはすでに開発を終了しておりすぐに対応することは難しいです。後継のJeditΩのご利用をご検討いただけると幸いです。

 だそうです。ええんええん。Jedit X ずっとおまえが好きだったのに。
 ただし、これは macOS の問題ですので、同じ現象が起こって慌てている全国の皆様の貴重なお時間を無駄にしないため、ここであえて報告させていただきます。

 そこで、後継の JeditΩ をダウンロードし、環境設定を自分好みに整えたのですが、書類比較機能は強化されているようだし、英文字と日本文字の間に自動で半角スペースを入れてくれる機能などがあり、これはこれで使い慣れたら、ものすごく便利そう(と思うしかありません。ええんええん)
 もちろん、後継機なので、もともとのJeditの強みである圧倒的な速さや軽さも、翻訳のときの「神」機能である分割ビューとかも、健在です。
 ただ、Jedit X で愛用していたいくつかの小便利なアップルスクリプトがまだ準備されていませんでしたので、ちゃっちゃと書きました。
 なので興味あったら、お使いください。

 →いろいろなかっこで囲む(「」『』【】〔〕)

 そんなこんなでばたばたしておりますが、来週から来月にかけて、素晴らしい女性ピアニスト柳原由佳さんとのライブを関西で開催いたしますので、そちらもよろしく。

11月25日(日) 大阪本町・Music Spot 燈門
( 大阪市中央区瓦町4-4-14 日宝ニュー本町ビル1F ) お問い合わせ/06-4708-8844
13:00 Open 13:30 Start
前売¥3000 当日¥3300+1ドリンク
アクセス/地下鉄御堂筋線「本町」駅徒歩4分。
 2018年7月より店主を変更し、グランドピアノも入れ、「小さな音の燈火をあなたの心に届ける」をコンセプトにした、大阪の音の憩いの空間「燈門(ともん)」での二度目のライブです! 新進気鋭のピアニスト柳原由佳さんとの共演! 日曜昼ですので、時間お間違えなく!
ピアノ柳原由佳さん
 フライヤー ダウンロード ご予約

11月29日(木) 神戸 gallery zing
( 神戸市東灘区本庄町1-16-12 サンフォレストビル1階 ) お問い合わせ/078-413-4888
19:00 Open 19:30 Start
前売¥3000 当日¥3500+1ドリンク
アクセス/JR「甲南山手駅町」駅徒歩5分、阪神「芦屋」駅徒歩14分
 神戸・甲南山手の素敵な音空間, gallery zingでの初ライブです! 新進気鋭のピアニスト柳原由佳さんとの共演!
ピアノ柳原由佳さん
 フライヤー ダウンロード ご予約

12月20日(木) 新宿 る・たんあじる
( 東京都新宿区新宿3-11-6 ) お問い合わせ/03-3356-2832
18:30 Open 20:00 Start
Charge ¥3000
アクセス/東京メトロ「新宿三丁目」駅徒歩5分、JR「新宿」駅徒歩9分
 新宿の素敵なお店、る・たんあじるに初登場。新進気鋭のピアニスト柳原由佳さんとの共演!
ピアノ柳原由佳さん
 フライヤー ダウンロード ご予約







超絶面白いラテンアメリカ映画の件

さて、ひさびさの映画ネタです。
じつは、ものすごく面白い映画を見つけ、それを字幕翻訳することにしました。

1970年代、軍事政権下のアルゼンチン・トゥクマン州の片田舎ポソ・オンドの村に、天から男の遺体が落ちてきた。

軍のヘリから落とされたらしいその遺体を、村人たちは丁重に供養するが、いつしか、拝むと御利益があると信じられるようになり、聖人として信仰の対象となっていった。

それから40年の時を経て、その村に、調査団の法医学者たちがやってきた。

「聖人の遺体」を掘り返すことに抵抗する村人を説得し、DNA鑑定を行ったことで、その「天から落ちてきた男」にかかわる驚くべき真実が明らかになっていくー。

遺体は本当に聖人にふさわしい存在だったのか?
そもそも、どうして天から落ちてきたのか?
なぜ村人は彼を祀ったのか?

1970年代、軍事政権下のアルゼンチンで何が起こっていたのか? 
「男」の出身地に伝わっていた悪魔伝説の真相は?
そして、すべてが明らかになったとき、「聖人」に対して村の人々の取った意外な行動とは?

軽快なアルゼンチン民謡のリズムに乗って、信じられないような実話を追う中で、今もアルゼンチンの社会に影を落としている事件が、ミステリアスに浮かび上がってくる。

....という、ガルシア=マルケスの小説顔負けの、「衝撃の実話」のドキュメンタリーです。

どうです。面白そうでしょう?
poster.jpg

ファンタジーのようでいて、じつは、法とは何か、裁くとは何か、正義とは何か、ということを考えさせる内容でもあります。民間伝承の生まれ方、という点でも興味深い。

そして、話の内容もさることながら、最高峰の音楽家たちが参加した、アルゼンチン北西部の民俗音楽も素晴らしいのです。
.....というわけで、この映画の字幕制作のためのカンパを、いま、集めております。

下記でクラウドファンディングを開始いたしましたので、ぜひ、予告編だけでもごらんください。(もちろん日本語字幕付きです)
https://readyfor.jp/projects/caido

映画やミュージカルでも有名な「エビータ」の死後、国内混乱の末にクーデターで成立したアルゼンチン軍事政権は、数万人とも言われる行方不明者を出したあげく、1982年のフォークランド紛争後に崩壊します。

しかし、その後も軍事政権の恐怖政治の爪痕は残っていたと言われており、長い時間をかけて、いまも軍事政権時代に何が起こっていたのかという事実の検証が行われているのです。

この映画は、その検証調査の中で明らかになって、全アルゼンチンに衝撃を与えた事件の詳細が、ドキュメンタリーになったというだけではありません。

真実が明らかになっていく過程は、ミステリ小説のようにスリリングです。そして、恐怖政治の下に置かれた人間の心理というものの普遍性にも迫っていくように思われます。

そして、すべてが明らかになったとき、「聖人」に対して、村の人々の取った行動は? そこで下した決断とは?

それは、日本に生きる私たちにとっても、とても興味深い80分となることを保障します。
本当に素晴らしい、そして内容の深い映画ですので、是非、ご協力いただけましたら、幸いです。また、もし可能なようでしたら、お友達などにも、声をかけていただけましたら、心から感謝いたします。

映画公式ページ(日本語)
http://caido.latinamerica-movie.com/

ノーベル賞と疑似医学:トンデモが湧いて出て来るぞ

しばらく前のことですが、銀行員のお兄さんの熱心なおすすめで、とある銀行主催のセミナーに参加したことがございました。この手のものは、ふつうはまず参加しないのですけど、テーマが「最新の高度先進医療」についてということだったので、覗いてみようと思ったのです。
といいますのも、あたくし、飲み友だちにお医者さん多いですので、多少、話のネタになるかなと思ったのと、あたくし自身がかつて精密検査で「悪性腫瘍の可能性極めて大」と診断されたことがありまして。(この件は、おかげさまでいまだに、この世にはばかっているわけなんですが)

で、結論から言うと、そのセミナーの内容は、完全なトンデモ系でございました。
笑っちゃうのは、講師と称する人物がそもそも、医師でも研究者でもなんでもない、一般社団法人の代表を称するだけの方で、クリニック系免疫療法を絶賛おすすめされていた、と。(藁)
で、なぜ、そういうセミナーを銀行がやったのかというと、高度先進医療対応が触れ込みの保険の売り込みだったわけで、したがって、「保険適用内のがん治療には問題が多く、副作用が少なく世界的に注目している最新医学は保険適用にならないので、高度先進医療対応の民間保険に入りましょう」という露骨な宣伝だったわけ。
銀行も落ちたものです。貴重な時間を無駄にしました。

なんで貴重な時間を無駄にしたと断言できるかというと、確かに高度先進医療を対象にしている民間保険はあるのですが、すごく小さい字で「厚生労働省が認めた高度先進医療」だけを対象にしていることが明記されているのを知らないあたくしではなかったからです。
で、「厚生労働省が認めた高度先進医療」は、そう簡単に、患者が希望して、ほいほい受けられるものじゃないのです。
というか、Googleあたりに広告出しているようなクリニックでやってるのは、厚生労働省が認めてる高度先進医療じゃないです。
そもそも、「保険のきかない高度先進医療」というのは、治験レベルの話なので、体質や病状など膨大なチェックポイントが完全に適合しないと受けられません。患者さんが希望して受けられるもんじゃないんですよね。
で、今回、ノーベル賞を取ったがん免疫療法の研究に関しては、あたくしのランチ友だちであり、本庶教授のご研究に詳しいインペリアルカレッジ・ロンドン上席講師の小野昌弘先生がブログで解説しておられるので、そちらを参照なさってください。
https://news.yahoo.co.jp/byline/onomasahiro/20181003-00099152/

で、今回、受賞した免疫療法の最大のポイントは、素人がなんとなく想像するような「免疫を強化してがん細胞を壊す」ような単純なことではなく、「もともと免疫という名の攻撃力を持つキラーT細胞のブレーキを止めることで、自己免疫力を最大限にまで引き出し、がん細胞を治療する」ことです。
では、なんで、そもそもT細胞にブレーキなどあるのか。
それは、免疫とは、そもそも体の異物を認識し排除するための役割で、そういう意味では、がん細胞は「異物」ではあるのですが、そこはずるい奴なので「あたしは異物じゃありません」というサインを出して、T細胞を騙すのですね。なので、がんは増殖するわけです。
ですから、このT細胞のブレーキを外すことで、「あたしは異物じゃありません」というサインを出していたとしても、容赦なく、そのがん細胞を叩く、という仕組みなのです。

というと、もうここで頭のいい皆様にはおわかりでしょう。
そうなると、今度は、そのT細胞が、異物ではないもの、つまり、自分の正常な細胞や臓器を攻撃するようになることが起こりえてしまうわけです。
T細胞が、異物でない、自分の細胞や臓器を攻撃するようになるとどうなるか。
自己免疫疾患という過剰反応が起こります。自己免疫疾患とは、たとえば、膠原病はその典型的な例。甲状腺機能異常症や関節リウマチもそうです。
つまりT細胞のブレーキを外す、ということは、そういう事態が起こるリスクを伴うわけです。
だから、小野先生曰く、これは「肉を切らせて骨を断つ」療法なのであり、けっして、「自分の免疫だから副作用がない」とか「抗がん剤に比べて体に負担が少ない」ような代物ではないわけです。

ましてや、現状では、効果のある症状は限定されていて、がん患者なら誰にでも試せるようなものでもありません。
たとえば、オプジーボによる治療は、「手術による治療が難しいメラノーマ(悪性黒色腫)、手術による治療が難しい進行・再発の非小細胞肺癌、根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」限定で、しかも、アレルギーの可能性のある人や自己免疫疾患にかかったことのある人は受けられないわけですし、その投与もきわめて慎重を期さなくてはならないわけ。
そして、現段階では、抗がん剤や放射線治療の併用での安全性がわからないため、併用もできませんし、対象になったとしても、上記のリスクがあり、かつ、効く可能性は20%ほどです。

つまり、あくまでも、ノーベル賞受賞ポイントは、「発想・手法として画期的であり、しかも一定の効果が確認されたので、これから研究を進めていく方向としてきわめて有効」ということです。
逆に言えば、これ以外の免疫療法と称している代物は、「いくらやっても有効なエビデンスがない」。ぶっちゃけいうと、牛乳にイソジンたらすような、おまじないレベルということ。
(※牛乳イソジンは、健康に害がある可能性さえありますので、絶対にやらないように)

ちなみに、本物の免疫療法に詳しいお医者さんによると、免疫療法で効く可能性がある(つまりエビデンスがある)のは、このオプジーポ(抗PD-1抗体)とCAR-Tだけ。オプジーポは、保険適用されたこともあって薬価が大幅に下がり、一回の投与の薬代が40万円ほどになりましたが、薬代だけで数千万円です。(ただし、保険適用なので、高額療養費制度が適用されます)
保険適用されないCAR-Tの場合も、薬価だけで数千万円クラスの世界。
つまり、そのへんのクリニックで数百万とか言ってるのは、はっきり言って詐欺です。それから、言うまでもなく、「免疫は個人によって違うので、大規模治験に向かない。だから、統計上の問題がクリアできないので、エビデンスがないなどという不当な評価を受ける」「患者さんが希望しても、日本の医療界が閉鎖的なので免疫療法が受けられない」などというのは、詐欺師の片棒担ぎのタワゴトです。

もちろん信じるものは救われますし、鰯の頭も信心、プラセボ効果というのも実際にあります。がんであっても、ごくまれには自然治癒する例だってありますから、アレな療法を受けて「治っちゃった」人は、ぜったい「いない」とは言い切れません。しかし、アレ系の診療はたいてい「標準治療と併用できる」とか謳っているところなども、いろいろアレです。
(とはいえ、標準治療を完全拒否して、みすみす勝ち目のないギャンブルで亡くなるよりは、併用の方が良心的とも言えます)
ということで、みなさま、疑似医学や独自研究詐欺にご注意を。
プロフィール

PANDORA

Author:PANDORA
ラテンアメリカと日本を拠点に活動する音楽家・作家 八木啓代のBlog
公式サイト http://nobuyoyagi.com

★CD情報
新作CD”Lagrimas”試聴やご購入はこちらから

★新刊情報
3.11を心に刻んで (岩波ブックレット)
人は、どのような局面において言葉をつむぐか。30人の執筆者が震災を語ったエッセイ集。澤地久枝、斎藤 環、池澤夏樹、渡辺えり、やなせたかしらと並んで八木も寄稿。
刑事司法への問い (シリーズ 刑事司法を考える 第0巻) (岩波書店)
日本の刑事司法の何が問題か、どのような改革が求められているか。刑事法研究者、実務法曹の他、八木も執筆しております。
禁じられた歌ービクトル・ハラはなぜ死んだか(Kindle版)
長らく絶版状態だった書籍をリクエストにより電子書籍で再版いたしました。八木啓代の原点です。
検察崩壊 失われた正義(毎日新聞社)
5刷。この一冊で特捜検察の現実がわかります。
ラテンに学ぶ幸せな生き方(講談社)
なぜラテン人は自殺しないの?に応えて3刷!好評発売中!
キューバ音楽(青土社)
ラテン音楽ファン必読!キューバ音楽のすべてが理論も歴史もわかります。浜田滋郎氏激賞
貧乏だけど贅沢(文春文庫)
沢木耕太郎氏との対談収録

★ライブ情報
11月15日(木)六本木・Nochero
Vo. 八木啓代 G. 福島久雄
11月25日(日)大阪・燈門
Vo. 八木啓代 Pf. 柳原由佳
11月29日(木)神戸・gallery zing
Vo. 八木啓代 Pf. 柳原由佳
12月20日(木)新宿・るたんあじる
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