岡部好さんの写真展@メキシコ

そして、メキシコでばたばたしていたもうひとつの理由。

写真家の岡部好さんの写真展があったのですね。
大統領宮殿の横にそびえるメキシコ国立文化博物館という立派な建物で、ちょうど、オープニングセレモニーが21日の土曜でした。
で、ふつうは、オープニングがこの日なら、翌日から一般公開ということになるのですが、ここに問題が。

私たちがメキシコに着くと、どこからどう見ても、博物館は閉まっているのです。

「じつは、博物館は修復工事をしておりまして、今年の9月末に工期を終えるはずだったのですが」
....あ、なんかちょっと嫌な予感が......。

「まだ、工事が終わっていないので、閉鎖中なのです」
......あらまあ、私たちいったいなにしにきたの?

「あ。でもご心配なく、オープニングセレモニーはやりますので」
.....は.......?

つまり、この週、世界民俗音楽学会というイベントがメキシコシティで開催され、その関連イベントとしての写真展だったので、日程をずらすわけにはいかなかったのだそうです。
なので、学会関係者と招待客のための(といっても、これだけで数百人いる)オープニングセレモニーの時だけ、博物館は臨時開館。
その後はまた閉鎖して、修復工事が終了したあと一般公開だそうです。(それ、オープニングとは言わないと思いますけど......)

ここだけ聞くと、「そんなバカな」という感じですが、話を聞いたメキシコ人が誰も驚かないところが、これまたメキシコ。ここ、なんたってシュールリアリズムの本場ですから、なんでも有りなんです。

というわけで、会期一週間前に展示写真と資料を学芸員に渡しての、オープニング前日。

「展示の状況を見たいので、昼過ぎに覗きに行きますが」
「あ、でも、まだぜんぜん用意できてないので、明日の方が良いと思います」
.......いままでなにしてたの?

そして、オープニング・セレモニー当日。
「展示の状況を見たいし、微修正もあるかもしれないので、2時間ぐらい前に行こうと思いますが」
「.....あ......それはちょっと......30分ぐらい前の方が都合良いんですけど」

おい....。(^_^;)
さすがに、すべてにおいて「最後の一時間が勝負」のメキシコです。

そして、30分前。
最初の話では、アクリル板2枚でシンプルに写真を挟んでいく展示と聞いていましたが、より会場のスペースを有効に使い、数多くの写真を展示したいという理由と、さらに写真を効果的に見せるために、学芸員の方は、当初のアクリル板方式を全面撤回。
絵画用の立派な金の額を調達するためにメキシコシティ中を飛び回り、完璧に写真に合わせて職人が切った中台紙も入れて、じつに高級感あふれる展示になっているではありませんか。
2日ぐらいほぼ徹夜で作業していたという学芸員の方は瀕死のようでいらっしゃいましたが、その展示の立派さは想像以上。

いやあ、これは、ぎりぎりまで時間がかかったわけです。むしろ、数日でよくやりました。
さすがに、すべてにおいて「最後の一時間が勝負」のメキシコです。

異様な童顔で、どう見てもキャリアを積んだ写真家に見えない岡部氏は、メキシコの床屋さんできれいに整髪してもらい、マルシアル・アレハンドロの形見分けで頂いたソンブレロを乗せた頭で(そのせいで、かえって「夏休みの子供」みたいに見えたという説もありましたが)、立派にご挨拶を披露。
世界各国から集まった招待客にも好評で、このあと展示は、メキシコ各地で巡回展示されるようです。

メキシコつれづれ

今回のメキシコ滞在。
日記があまり頻繁ではなかったのは、少しわけがあります。

今年の3月に急死した、私の盟友の作曲家マルシアル・アレハンドロ
彼が死んだとたんに、メキシコのあらゆるメディアは、「有名作曲家の死」を大々的に報じ、テレビサ(メキシコ最大のテレビ局)までが追悼番組を流しましたが、実際には、ボヘミアンで知られた彼の生前の生活は、けして経済的に恵まれていたとはいえないものでした。
その半分は、彼自身の不器用で破滅的な生き方のせいですが、残りの半分は、彼の才能を勝手なときだけ利用し、都合の良いときだけもてはやしてきたメディアや製作者や大衆の冷たさのせいといっていいでしょう。

いくら芸術的評価が高くても、ポップスとして大量消費されなければ、たいした印税など入らないし、ライブの収益だって知れたもの。マネジメントが強力でなければ、営業系の公演だって、そんなにあるものでもない。
なまじ顔や名前が知られているだけに、半端な手伝い仕事をするわけにもいかないし、失礼だと思われて細かい仕事も入ってこない。
........ああいう天才型の作曲家が、たいした贅沢をしているわけでもないのに、日々の支払いに苦労なんてしてちゃ、長生きなんてできるわけないです。

という愚痴はともかくとして....。
日本で彼の死を知ったときにも、私はそれなりに落ち込んだモノでしたが、ここメキシコに来て、改めて、メキシコシティの空気の中で、この20年近く、いつも兄弟のように私を待っていた彼がもういないことを実感するのは、改めて深い悲しみがありました。

そして、彼の遺族の話を聞いたり、そのからみで、複数のレコード会社にまたがる彼のCDの権利関係などを調べたり、折しも、ジャズ歌手のマージ・ベルメッホが行った追悼ライブに出席したり、ラジオのインタビューを受けたり.....とまあ、「あんたはどういう親戚?」みたいなことになっていたわけです。
さらに、彼が彼自身の死を予感し、その予兆を周囲にひた隠していたのではないかという疑惑。

いずれにしても、かつてマルシアルが私にくれた「Esta Mujer(この女)」という曲。

 歌うことは、私の喜び、私の命、私の天職
 歌うことで、かたち造られた、この女...

「....こんな曲を捧げられて、感激しない女性歌手がいるだろうか」とまでいわれたその曲を最初に歌い、最初に録音したということで、日本人であるにもかかわらず、私の名前も、天才のかたわらで歴史に残ったということです。

また、その一方で、マルシアルの弟分みたいな感じであったラファエル・メンドーサのライブに行ったり、これまた昔からの友人で素晴らしい作曲家であるダヴィッド・アロのライブを聴き、そのあと家に遊びに行って、いろいろ新曲を聴かせてもらったりと、この先を踏み出していく出会いもありました。

「ぼくにとっても(マルシアルは)兄弟みたいなものだった......ただ、彼はどこまでもメキシコシティという巨大都市の錯綜と闇と大人の愛を歌い、ぼくは灼熱のベラクルスの熱帯の地獄とエロスと自由を歌っていた」
そう語るダヴィッドが、私のレコーダーにその場で録音してくれたいくつかの美しい歌は、港町ベラクルスの宿命である、スペインのアンダルシアの旋律や、さらにそれを遡るアラブの音階と、対岸のキューバのソンやダンソンのリズムが織り上げたタペストリのようで、これからゆっくりと私のレパートリーに入っていくことでしょう。

....私は踏みとどまっているわけにはいかないようです。
もちろん、マルシアルの歌も、私とともに生きているわけですし。

テーマ : 日々のつれづれ
ジャンル : 日記

メキシコいろいろ

tuna1
メキシコシティで、バカンスを楽しむ....なんてことはなく、あちこち仕事がらみで飛び回っている八木です。
ちょうど、昨日、国立民族学博物館で、国際民族音楽学会のオープニングセレモニー。週末にかけて、ソカロ周辺やコヨアカン地区などで関連イベントがあるようです

さて、メキシコでは、いま、ツナのシーズンです。ツナといってもマグロの缶詰ではなくて、うちわサボテンの実。
味はスイカ系で、小さな種がいっぱいあります。
うちわサボテンの実がどれでも甘いわけではなくて、品種によっては非常に酸っぱいらしいので、野生のを食べるときは注意が必要とか。
tuna2
さて、ここで日本のイベントニュースになりますが、12月2日に、メキシコの版画家ホセ・グァダルーペ・ポサーダに関しての講演会があります。
ポサダといえば、着飾った骸骨版画。日本では名古屋美術館がちょっとしたコレクションを持っています。その名古屋美術館の学芸員の方によるレクチャーです。
私も参加する予定。
参加費無料ですので、ご興味のある方は、どうぞ下記にお申し込み下さい。
http://www.nichi-boku.com/event.html#yamada

テーマ : 日々のつれづれ
ジャンル : 日記

新しいお気に入り

chile con mango
友達絶賛の、コヨアカンに新しくできた店に行ってみた。

店は、レストランというよりは、どう見てもカフェ。
それも、ロック系で、自分でペイントしたキッチュな感じ。
カフェといっても、だから、コーヒーと清涼飲料水に、せいぜい学生バイトが簡単に作るサンドイッチがあればいい方、というような雰囲気。

なのに、ここで驚くべき料理が出るんですよ。
それも、創作メキシコ料理。

上は、チレ・ポブラーナのマンゴーソース。おおぶりの(ほとんど辛くない)チリにチーズを詰めて、マンゴーソースをかけたものなんですが、チレやチーズの塩味とマンゴーソースの甘さが絶妙です。

下は鶏の胸肉を薄くのばして、チーズを巻いたものに、ズッキーニの花のソース。これがまた高級フレンチみたいな洗練された味です。
pollo con flor de carabaza

友達何人かと行ったので、ほかに、サーモンと椰子の芽のオードブルとか、レタスとロックフォールチーズのサラダとかイカのパスタとか頼んだのですが、みんなどれも絶品。盛り付けも上品で美しい。

「.....これ、ワインが欲しくなるね」
「てか、この料理って、アンティークの調度品にテーブルクロスを二重にかけたようなレストランで出てきてもおかしくない料理だよね」
「......でも、それだとこの値段で食べられないよね」

お気に入りの店がまた増えてしまいました.......。

テーマ : 美味しいもの
ジャンル : グルメ

続・JALの劣化

JAL 賞与全額カットに踏み切る
http://mainichi.jp/select/biz/news/20091107k0000m020082000c.html

これで揉めてストにでもなれば、JALに引導を渡しやすくなりますね。
もっとも、そもそも7年連続赤字で、ここまでJALをめちゃめちゃにした張本人の西松社長が居座っていること自体が、この会社、相当おかしいんですが。

ところで、今日、メキシコのあるプロデューサーと会食時のこと。
彼の娘(ドキュメンタリー・フィルム制作の勉強中)が、しばらく前にニューヨークに行った話を聞いていて、さらに、そのあと、彼女はヨーロッパにも友達を訪ねて旅行してきたという。

メキシコも大不況のはずなのに、なに? その景気良さ?
おたく、そんなに儲かってるの?
....と突っ込んだら、なんと、驚くべき回答が。

「いや、娘がニューヨークに行ったときのことなんだが、その旅行当日、空港に行ったら、オーバーブッキングで乗れなかったんだよ」

「?」

「それで、翌日の便に乗ったんだけど、そのお詫びとして、デルタ航空が、『メキシコ〜ニューヨーク間』にほぼ匹敵する、行き先自由の往復チケットをプレゼントしてくれたんだ。それで、ニューヨーク旅行のあと、そのチケットを使って、ヨーロッパ旅行に行けたんだ」

       おおっ
╲╲╲╲╲╲╲ ( °O° ;)╱╱╱╱╱╱╱

と思いません?
私は思いましたとも。思わず訊きましたよ、その見上げた航空会社の名前。
デルタ航空、だそうです。

つい数ヶ月前、私の友人2名の乗ったメキシコ発成田行のJAL便が、二日も連続でフライトキャンセルし(それも座席にまで座らせてから)、そのうちの一人などは、お金を貯めての念願の一週間の日本旅行が5日(実質4日)になってしまったうえ、日光旅行やホテルなどをキャンセルせざるをえなくなったにもかかわらず、そのお詫びが、涙が出そうな「寸志」だったのと比べると、

 いったいなんという違いでしょう。
╲╲╲╲╲╲╲ ( °O° ;)╱╱╱╱╱╱╱

まあ、ジャンボジェットの旅客全員に、長距離フライトをプレゼントするのは無理としても、いくらでももっと誠意のある対応というものができたはずです。

金券ショップに株主優待券を大量横流しして裏金作りに励んだり、外国で詐欺同様のことをやっているJAL関係者を、実情を知っていながら、(「少しぐらいブラックな人の方が、いざというときに役に立つから」とか、JALの上層部と個人的な関係があるというらしい理由で)野放しにしているような知恵を、経営再建なり顧客サービスに使う頭があったら、こんなことにはならなかったでしょうねえ。
プロフィール

PANDORA

Author:PANDORA
ラテンアメリカと日本を拠点に活動する音楽家・作家 八木啓代のBlog
公式サイト http://nobuyoyagi.com

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★講演情報
12月12日(土) 
@銀座Las Risas 「キューバ音楽の歴史」

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