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はりぼての日本の黙示録的な現在、真犯人はどこにいる

今月のライブも中止となり、家にこもりがちの今日このごろ。

まだまだ日本の重症数は少ないと指摘する人もいますが、新型コロナの場合、重症というのは人工呼吸器をつける生命の危機レベルですので、重傷者が少ないから大丈夫そう、というものではありません。収まってもいないのに Go to Travel などと、そもそも英語としても政策としてもバツ印なことがのさばっているのが、今の日本です。
何かあったら罹った方の責任、民間のせいにされるのですから、たまったものではありません。

とはいえ、それでも外出したい気持ちになることはあります。
今週の最大の収穫は、映画「はりぼて」でした。


https://haribote.ayapro.ne.jp/

富山で、市議十数人がドミノ辞任に追い込まれた汚職事件を追ったドキュメンタリーなんですが........
というと、地味な感じするでしょ? でしょ?
ところがね、それがあなた、違うんですよ。

はっきり言います。超絶、面白かったです。一分たりとも退屈しません。

以前、韓国の「共犯者たち」という映画を見たとき、すごくスリリングで面白かったと同時に、「なぜ日本ではジャーナリズムが、ここまでだめになったんだろう」と悲しいものがありましたが、「はりぼて」では、「日本でもできるじゃないか」と、希望の光を与えてくれます。

しかも、この手の映画って、重苦しい苦い気持ちにさせられることが少なくないのですが、これは違います。なんたって笑えます。テンポも軽い。そして、見終わったあとの爽快感もあります。しかも、良くやったね、お見事だったねの自画自賛ではなく、重い問題提起もきっちり置き土産にしておきながら、です。ドキュメンタリー系苦手な人でも、きっと楽しめます。監督のこのセンスは素晴らしい。

とはいえ、この追求、地方のローカル局だからできた、という部分もあるのでしょう。
それにひきかえ、NHK広島では、とうとう公共放送の公式ツイートで差別発言を垂れ流して恥じないまでになってしまっているのは、どういうことでしょうか。劣化という言葉がこれほどふさわしい事例はないでしょう。

一方、最近読んだ本で非常に面白かったのは、清水潔「殺人犯はここにいる」、海堂尊「コロナ黙示録」の2冊。

殺人犯はここにいる前者はノンフィクションで足利事件、正確には、北関東幼女連続殺人事件を追ったものですが、検察と裁判所が「いったん決めたことに関して、意地でも引き返さない」おそろしさが、これでもかと描かれています。足利事件のDNA鑑定に重大な疑問が出てきてもとことん無視。証拠に重大な矛盾があっても隠蔽。ついに検察側鑑定で違うDNA鑑定結果が出てきても「間違い」は認めず、やがて、本当の犯人らしき人物が明らかになってきても、真犯人をあえて野放しに....なぜなら.....という、すごい話です。
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私も、課外活動(笑)で多少検察問題をやっていますので、この「間違いを認めるのだけはぜったい嫌。謝罪するぐらいなら、凶悪な真犯人をのさばらせようが、無実の人間が何人死のうが、かまわない」的な検察の姿勢はよくわかります。てか、森友事件なんてのも、もろにそうですよねえ、皆さん。
そして、興味深いのは、これだけ地道な調査報道の書籍に、必死で「一つ星」つけて「荒唐無稽」と叩いている複数のレビューで、ぽろぽろ「検察用語」みたいなのが出ちゃっているあたり、どういう人が書いているのか見え見えで、検察関係者はほんとに読んでほしくない本なんでしょうねえ。

コロナ黙示録そして、そういう意味で、ある種の人達にとっては、読まれてはぜったいイヤな本、この大横綱として推したいのが、後者の海堂尊「コロナ黙示録」。これは7月に出たばかりの本です。
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海堂尊氏といえば、映画やTVシリーズとしても大ヒットの「チーム・バチスタ」シリーズの作者である大ベストセラー作家。去年もTBSの日曜劇場で二宮和也主演で「ブラック・ペアン」やってましたね。その、まさに「バチスタ」シリーズの最新作です。

北海道で救命医として活躍していた速水医師のもとで入院患者から病院内集団感染が起こって院内パニックに.......一方、豪華クルーズ客船でウイルス・パンデミックが発生し、厚労省役人の画策で「バチスタシリーズ」の主人公田口医師の在籍する東城大学病院が受け入れることに.......という、スリリングなストーリーです。

にも関わらず、この本、なんと出版直後に、Amazonに一つ星評価のバッシングが並び、なぜか5つ星評価のレビューに限って削除されるとか、投稿できないという奇妙な事態が私の知っているだけでも何件も発生。さらに人気作家の新作なのに、テレビも新聞も黙殺、というすごいことになっています。

そこまでつまらないのか?
でも、人気作家さんだけに熱心なファンなどもいるはずですから、ここまで叩かれ無視されるとはちょっとおかしいとは思われませんか? ましてや、発売直後の5つ星レビューが削除されるとか、投稿できないって???

で、その理由として推察できるのは、実は、この本、ものすごい政権批判的な内容なんです。
もちろん、今の日本政府のコロナ対策がアレですので、2020年の日本を舞台に新型コロナを描けば、そりゃあ政府の対応のとんでもなさが顕になるようなものになるのは仕方ありません。海堂氏は医師だけあって、執筆時点での欧米の医学雑誌の最新の研究論文なども踏まえて描かれるコロナ病棟の描写は迫真で、政府や厚労省のダメっぷりにはきわめて辛辣です。
さらに物語には、なんと森友問題を彷彿とさせる事件までからんできます。

黒川弘務氏に頼んで、公文書問題や背任問題を無理やり不起訴にして、メディアを抑え、強引な幕引きを図ったにもかかわらず、赤木夫人による遺書公開や提訴などでふたたび森友事件に光が当てられそうになっているこのタイミングです。これは....官邸としては、この本、絶対に絶対に売れてなんかほしくないでしょうねえ。(笑)

しかも、つい先日、内調がツイッターの政権擁護の極右アカウントに直接関わっているらしいことが、情報開示請求でバレちゃったりとか、Amazonがよりにもよって三浦瑠麗をCMに起用したと思ったら、政府の基盤クラウドを300億でAmazonに発注してたとか、香ばしさが満開な状態ですからねえ。

それにしても、政府の基盤クラウドをわざわざ海外企業に発注するって、どこまで頭おかしいんでしょうか? いくら日本が ITでは先進国の座からすでに滑り落ちたとしても、まだ富士通とかNECとかPanasonicとか、それなりの技術力がある日本企業は存在しているというのに、危機管理センス皆無としか言いようがありません。
そこまでして、政府批判本の5つ星を減らして目立たせないようにし、一方で、政府ヨイショ本や忖度本を「あなたへのおすすめ」に並べてほしいんでしょうかね。

というわけで、この映画一本と二冊、めちゃめちゃ面白いですので、おすすめです。(個人の感想です。)
よろしければ、ぜひ、率直な感想も、レビューに寄せられると、他の方のお役に立つかもしれません。
(現在は、5つ星レビューがことごとく削除されるとか投稿できないことはないようですが、皆さん各自でお試しください)

新型コロナ:ブラジルで何が起こったのか?

 新型コロナのおかげで、ずっとライブが休止となっております。
 7月は大丈夫かと思ったのですが、それどころか、8月も難しいかもしれません。
 日本を含むアジア圏では謎の理由により重症化率や死亡率が低いので、米国やブラジルのようなことになっていないだけで、和牛券にアベノマスク、GO TO TRAVELと次々に国民の税金をドブに捨てて、お友達に利権をばらまくという、世界でも例を見ない政策てんこ盛りの中、新型コロナ蔓延には終わりの兆しが見えません。

 で、その、ブラジルですが。
 確認されているだけで、感染者が230万近く。死亡者も85000人近くです。
 一日あたりの感染者数が6万超えとか、大統領も陽性とか。

 日本でも知名度が上がってきた、そのボルソナロ大統領は、軍が担ぎ出した人物です。
 ブラジルは1964年から85年まで軍事政権で、反対派を激しく弾圧し、暗殺が横行し、音楽家などもほとんど亡命してしまうぐらいひどい状況だったのですが、それが85年にやっと民主化しました。
 ただ、そのあとも、政権が不安定な状況が続いていたのですが、2006年に、労働組合の代表だったルーラが大統領になって、やっと安定して、国民のための政策が取られるようになってきます。

 左派政権て、よく「バラマキ」に走って経済を悪化させると日本で思われているんですが、ルーラの時代、ブラジル経済は絶好調となります。ちなみに、中南米では、70年代から80年代に、軍事政権が軒並み新自由主義をガンガンに導入し、10年がかりで、国民からボロボロにむしりとってしまいますが、その反動で生まれた一連の左派政権が、新自由主義と決別することで、ガタガタになった格差社会や教育を是正し、経済を少しづつ立て直します。

 そんなわけで、ルーラの人気は抜群でしたが、ブラジルでは大統領の再選ができないので、ルーラの後継者のジウマ・ルセフが大統領に立候補、ブラジル初の女性大統領になります。

 ところが、このルセフに汚職疑惑が持ち上がり、弾劾されることに。
 この汚職疑惑自体が、結局、まともな証拠は出てこず、まるで陸山会事件みたいな話なのですが、メディアが「黒」と決めつけて、ものすごいバッシングをおこなったのと、副大統領だったテメルが、ルセフに不利な証言をしたので、弾劾が通ってしまったのです。もちろん、後ろにいたのは、米国とブラジル財界です。(ちなみに、そのあと、汚職をしていたのは、このテメルの方だったことが明らかになります)
 自分が大統領になるために、ルセフをハメた疑惑もあって、テメルの人気は最悪。リオ・オリンピックでは開会式の大統領の挨拶のときに、前代未聞の大ブーイングが起きるほどでした。

 そのテメルの任期満了後の大統領選挙で、再度、立候補しようとしたのが、元大統領のルーラです。
 ルーラの国民的人気は絶大だっただけに、これはもう当選確実、となっていたところに、今度はルーラに汚職疑惑が持ち上がり、なんとブラジル検察はルーラを逮捕し、立候補できないようにしてしまいました。

 まあ、これも具体的な証拠はほとんどないに等しい疑惑で、そのせいで、ルーラはパリ市から「世界で最も有名な政治犯」として名誉市民に選出されています。この件は、世界的にはそういう評価です。
 とはいえ、逮捕されてしまったので、立候補は無理。党もすぐに有力な後継者を出せなかったということもあって、2018年の大統領選では、軍と経団連をバックに付けたボルソナロが通ってしまったわけです。
 2018年といえば、軍事政権が終わって33年。もう若い世代には実感がなかったというのが大きかったようです。

 で、この人は、まあ、軍がバックアップしているだけあって、軍事政権にも賛成しているような人。なんとチリのピノチェトを尊敬していると発言したり、トランプのことも大好きというような筋金入りの極右で、ベネズエラが揉めていたときには、野党の指導者を全面バックアップして、ベネズエラ現政権潰しに尽力していました。
 人種差別発言などもひどく、黒人や先住民、女性や同性愛者に対する露骨な差別はもちろん、アジア人蔑視丸出しの発言もしていますが、日本経済新聞の特派員さんなどは、そのアジア人蔑視発言ですら「悪意はない」とか必死で庇ってヨイショしていた、と、まあ、そういうところに、日本の経団連との関係は実にわかりやすい、というような人です。

 今回のコロナでは、コロナは風邪だと言い張って、ブラジルを感染者・死者世界二位に押し上げました。

 ポピュリストが人気を集めただけ、とレッテルを貼るのは簡単ですが、こういうトンデモな政治家がのさばるようなことになった理由として、一つ言えるのは、メキシコの2006年の大統領選挙や2010年の陸山会事件でやられたように、検察とメディアがタッグを組めば、(あるいはその両方を丸め込めたら)、世論操作やでっちあげが簡単だということです。

 強力で目障りな政治家がいたら、司法取引かそれに類するもので「証人」を一人か二人作れば、汚職疑惑なんていくらでもでっち上げることができるし、そうやって逮捕や起訴すれば、政治活動を止めることができる。なにより、左派寄りの支持者ほど、指導者に清廉潔白さを求めるので、メディアが「汚職だ腐敗だ、政治とカネだ」と連日騒ぐだけで、簡単に水をぶっかけることができるんです。そこは自民党支持層とは逆。

 逆に、誰が見ても明白な汚職があっても、検察が動かず、メディアがあんまり騒がなければ、人の噂も75日で、なんとなく。ずるずる立ち消えになって忘れ去られるんです。今の安倍政権下の日本がまさにそうですが、

 で、これが面白いほどうまくいくものだから、ここ10年ほど、世界のトレンドとしては、「目障りな左派政治家は、メディアを使って、汚職疑惑を盛り上げて潰す」という感じになっています。去年のボリビアのクーデターも、エクアドルも、全く同じ手口です。

 まあ、新自由主義っていうのは、国民を痛めつけますが、富裕層にとっては笑いが止まらない政策なので、利権を享受するためならなんでもやるんでしょうね。
 安倍政権にしたって、大企業や富裕層への課税を極力減らし、さらに、国民の年金を溶かして株の買い支えなんてやっているわけですから、そういう人たちにとっては打出の小槌なわけです。
 ついでに、政権に近いと、犯罪でも不起訴にしてもらえたり、コネを期待してオイシい話がいくらでも転がり込んでくるわけですから、こうなるともう笑いが止まりません。是が非でもそういうオイシい状況は維持したいわけですし、そこに至らない人も、なんとか近づいておこぼれに預かろうと、一生懸命、ヨイショに励むわけですね。

 40年ぐらい前の中南米が、けっこうオーバーラップしてくる感じですが。
 と、まあ、日本はそれほど特別なわけではなく、世界はこういうふうにつながっているわけです。

 とはいえ、それでも、今回のコロナ騒ぎで、トランプやボルソナロのトンデモさが明らかになってきましたし、思いつきと利権誘導まみれの日本の政策に、さすがに批判の声が高まりつつあるというところで、少し流れが変わるのではないかとほんのちょっぴり期待はしています。

 ただ、そう言ってしまうには、犠牲が大きすぎるのですけどね。

黒川弘務氏麻雀辞任の背景にあるもの

 黒川弘務氏が、あっけなく辞任したあと、政府は検察庁法改正案の廃案を検討しているとか。いやそれって、まさに、この法案が、黒川氏の黒川氏による黒川氏のための法案だったと自白しているようなものじゃないですねえ。

 それにしても、この件、「なんで新聞記者と麻雀?」と思った人がけっこう多かったようですので、背景を少し解説いたします。

 日本の裁判所には司法記者クラブというものがあって、そこには司法記者の方たちが詰めています。東京地裁の場合は、中二階にお部屋があって、よく、裁判関係の記者会見などをやっている光景がテレビで写っている、あのお部屋です。
 あのお部屋のさらに奥(東京地裁の場合は左手奥に廊下が延びています)に、それぞれの新聞社やテレビ局のブースがあって、そこに記者の方々が常駐しているわけ。

 新聞記者というと、ドラマなどイメージで、新聞社の雑然とした大部屋に出入りしていると思っておられる方が多いですが、記者クラブ詰めの記者は、こういった各官庁の記者クラブの部屋に詰めているのです。
 そして日に一度、裁判所のお隣の検察庁に行って検察庁の大本営発表を聞き、場合によっては、その後、少し要予約の個別の面談をしたりします。
 もちろん、それだけでは、大本営発表以上の記事は書けないので、それに少しでも色をつけたり、あるいは、少しでも事件の先読みのできるネタをもらうために、司法記者たちは夜討ち朝駆けで、検察高官の家に出向いたり、個人的に取り入ろうとするわけですね。
 だから、玄関先まで入れてもらえたとか、一緒の車に乗ったとか、特捜部長のあだ名を知ってるとかいうのは重要なことで、一緒に飲みに行ったとか、サウナに行ったとかいうと、さらに番記者としての「格」が上がるわけです。
 こういう仕組みで、検察の公式発表より前に、「○○逮捕の見込み」とか「不起訴へに」などという記事が出るわけですし、突然のはずの強制捜査や逮捕に、ちゃんとテレビカメラが時間に合わせて駆けつけているわけです。

 と、ここまで説明すれば、記者たちが、黒川氏と麻雀卓を囲むことに熱心になる理由はおわかりですね。
 そのへんの事情、あくまでフィクションではありますが、「司法記者」という小説にけっこう詳しく描かれていますので、推理小説がお好きな方にはおすすめです。

 私たちから見れば、逮捕するとか不起訴になるとかいうようなことを半日や1日早く報道されたからといって、さほどありがたいわけではないのですが、新聞社的には「他者に抜かれない」ためにも、こうやって寵を競うわけです。
 一方で、検察に都合の悪い記事を載せたり、その他、検察幹部に嫌われるようなことをすると、最悪「お出入り禁止」になっちゃうわけで、必然的に、検察に都合の悪い記事を書くには、相当の勇気が要る。というより、もう社長あたりが決断してゴーサインを出すレベルの大スクープ(たとえば、フロッピー前田の証拠改竄とか)でない限り、大概は社の上から止められるので、大半の記事やニュースは検察の言い分垂れ流しになります。
 外国のジャーナリズムではあり得ない「癒着そのもの」ですが、日本ではそれが「常識」となってしまっているのです。

 ぶっちゃけ言うと、例の朝日の「証拠改竄事件大スクープ」も、あとになって、「そのことなら検察内部で噂になっていたから、うちの社だって知ってたよ、別に朝日だけが凄かったわけじゃない」とか言ってる他社新聞の記者もいました。だったら書けよ、と思いますが、そういうの、けっこう多いです。
 田代虚偽報告書インターネット流出事件の時も、朝日とか読売は、当会の暴露より先に問題の報告書を持っていたことが、後に明らかになりました。あれだけの虚偽報告書を入手してたんなら、なんで大々的に記事にしなかったのかと思いますが、それだけ、検察に「嫌われるようなことをしたくなかった」んでしょうね。

 いずれにしても、ネタを取るために、記者とターゲットが「懇意」になるということには、当然、弊害があります。
 特捜が逮捕しようと動いているときは、大々的に、被疑者を悪だ有罪だと決めつけたような報道ばかりになりますし、逆に、事件の筋が悪くてこっそり引っ込めたというようなときは、ほとんど報道はされません。筋の悪い事件であるにもかかわらず、被疑者や関係者を延々と拘束したり、無茶な取調べをやったりしていても、そういうところはほぼ追求されたり、批判されたりしないわけです。検察が強く批判されることは滅多にありません。
 検察不祥事が明らかになっても、なお、批判しているふりをしながら、問題を全力で矮小化し、事実上ヨイショし、黒川氏から耳打ちされたデマをそのまま書いているような本を、元記者が臆面もなく出版するようなことだってあるわけです。
 

 メディアを押さえ、あやつるというのは、そういうことです。
 最近では、安倍政権の「メディア対策」が、いろいろ露骨で批判も受けていますが、検察や警察はもう何十年も前から、そういうメディア対策のノウハウは持っていたわけですね。

 で、話戻ると、そういう事情で、記者たちが黒川氏の麻雀仲間の常連だったわけですよ。
 ここで、相手があくまで記者というところ、黒川氏の性格が、ほんと窺えます。基本、ご機嫌伺い&ヨイショのための集まりである以上、ぜったいに最終的には勝たせてくれるに決まってる相手ですよね。誰かさんと同じで、自分に媚びへつらってくれる人を周りに集めるのが大好きな方なんですね。
 でも、だからこそ、各社、麻雀の上手い記者を「黒川番」に当てていたことでしょう。
 (そういう点では、陸山会事件で暴走しまくった大鶴基成元特捜部長の方が、アマチュアとしてアルトサックスを愉しむにとどめておられたあたり、人格的にはまだ数段マトモかと思います。そういえば、検察官法改正問題では意見書を出す側に回っておられました)


 ただ、一方で、心底ゴマすり根性の塊みたいになっている記者や、上しか見ない検事ばかりではありません。それをいかがなことかと思う良心的な現場の方たちもいらっしゃるわけで、そういう人が今回に限らず、週刊誌にネタをリークしたり、当会などに資料を提供してくださったりすることもあるわけです。
 もちろん、記者として丹念な取材を重ね、検察の捜査に疑問を呈した本を書かれた方もいます。
 検察が手柄の数上げたさに、トンデモかつ卑劣な捜査をやった記録ですが、筆者の石塚さんは産経新聞の記者さんです。
 また、多少なりとも私が関与している関連書籍としては、冤罪を作った元検察官の激白本として話題になった市川寛さんの「検事失格」、陸山会事件虚偽報告書事件を扱った「検察崩壊」なども、検察ってどういうところ、ということを知るには良い本かもしれません。

 ちなみに、検察が「現政権がらみの不自然極まりない不起訴の山」を築くのは、この第二次安倍政権になってからのことで、それまでは、むしろ、検察の「暴走」の方が問題になっていました。検察がターゲットに決めた相手を、検察とグルになった弁護士による騙しのテクニックや拷問まがいの取調べで、事実と異なる自白に追い込むというようなことです。
  例の大阪地検特捜部証拠改竄事件も、佐藤栄佐久福島県知事事件も、陸山会事件も、さらに冤罪が疑われている多くの事件も、そういう、これまた日本特有の問題が背景にあります。
 これはこれで、極めて重大な問題ですので、現政権に怒りを感じるあまり、検察はがんがん起訴するべき、とか思っている方は、是非、冷静におなりになってください。
 現在、捜査中の広島の河井夫妻の買収問題も、後顧に憂いを残さない方法で、捜査していただきたいと思います。

 いずれにしても、すでにお気づきになっていらっしゃる方も多いとは思いますが、日本の報道がいろいろ異常であることは、皆さん、お気にとめておかれた方がよろしいかと思います。

【おまけ】

 ところで、検察問題はあくまで、あたくしの「課外活動」でありまして、本職はあくまで別にございます。
 新型コロナで暇になったせいで、こうしてブログ記事を書く時間に恵まれている皮肉な状況でもありますが、昨年、キューバでグラミー賞受賞音楽家のプロデュースでレコーディングしてきて、今年のコロナ拡大前にメキシコなどでお披露目してきた新作CD、現在、細々とネット販売中ですので、ぜひこちらもよろしく。 
 http://www.nobuyoyagi.com/disc.html

黒川弘務の正体

 検察官定年延長のための検察庁法の改正が、よりにもよって、この新型コロナ騒動の最中に審議に上がるというので、このあまりの火事場泥棒っぽさに、さすがに批判の声が上がっている。黒川弘務東京高検検事長の定年を延ばし、検事総長に就けるようにするという意図が露骨だからだ。

 事の発端は、1月31日に、黒川弘務東京高検検事長の定年延長を閣議決定したところ、2月10日になって、立憲民主(当時)の山尾志桜里議員に「国家公務員法は検察官に適用できない」とする1981年の政府答弁を指摘されると、13日に、安倍首相が、法解釈を変更したと説明したあげく、21日にはこの法解釈の変更が、口頭決済だったなんていうこじつけの出鱈目ぶりが明らかになってきて、みんな唖然としちゃったわけです。
 で、26日に、小西洋之参院議員(無所属)が国立公文書館で、1980年10月の「国家公務員法の一部を改正する法律案(定年制度)想定問答集」という文書を発見して、公表。ここには、当時の政府が「検察官には定年延長は適用されない」との見解がはっきり書かれていた、と。いやほんとに公文書って大切ですよね。

 にもかかわらず、自民党が、それでも検察官の定年延長を合法にしようと、後出しじゃんけんも極まるみたいな検察庁法改正案を国会提出したので、三権分立の崩壊、法の支配を揺るがすと、野党のみならず、日弁連、そして検察内部からまで批判の声が上がるという騒ぎになっているわけだ。
 ここまでの流れは、かなりの人が知っている。
 だから、ツイッターのトレンドに「#検察庁法改正案に抗議します」というのが、300万を超え、リセットされてもすぐに180万近くツイートが集まるという、すごいことになっている。
 この法案が強行採決されたら、後の世で、黒川法とでも呼ばれることになりそうだという由縁だ。

 黒川弘務氏は、ある意味、今の検察の顔である。

 彼が台頭してきたのは、大阪地検特捜部証拠改ざん事件、いわゆる「村木さん事件」とか「フロッピー前田事件」と呼ばれているあの事件がきっかけだ。

 2009年、現役の検事が、現役の厚労省キャリアを罪に落とすために、無実の決定打になるはずの証拠を改ざんしてまで有罪に持ち込もうとした。この前代未聞とされる不祥事は、朝日新聞のスクープで大問題となり、その後、当時の民主党政権下、柳田法相の意向のもと、「検察の在り方検討会議」で、検察改革のための議論がなされることになった。

 そのとき、本来なら、そのような冤罪を作らないようにするために、自白偏重主義を改めるなど、検察にとって厳しい「在り方を検討する」はずだった会議は、どういうわけか、ほんのわずかの取調べ可視化と引き換えに、検察の司法取引などを容認する刑事訴訟法改悪や盗聴の拡大という、世紀の「火事場泥棒的な法案改悪」を引き起こしてしまう端緒を作ることになってしまう。
 このときの事務局として、まさに、委員を取り込んで、きれいに丸め込むという手腕を発揮したのが、黒川弘務大臣官房付だった。

 当時、郷原信郎弁護士と並んで、委員に就任し、冤罪を作らせないようにすると息巻いていた江川紹子氏が、会議が終わるころには、どういうわけか「可視化さえすれば問題が解決」するかのような考えに流れ、後に、この刑事訴訟法「通過」を目指して奔走するようにまでなっていたその豹変ぶりに、私は驚きを隠せなかったものだ。
 ちなみに、このとき、検察改革に本気で取り組むべく、検察の在り方会議を招集した柳田法相は「法務大臣とは二つ覚えときゃ良いんですから。 個別の事案についてはお答えを差し控えますと、これが良いんです。 わからなかったらこれを言う。で、後は法と証拠に基づいて適切にやっております。この二つなんです。まあ、何回使ったことか」と集会で発言したことを咎められて辞任に追い込まれた。
 同じく、民主党政権下では、鉢呂経産業相は、その後の福島原発事故の際、福島を視察して「死の町だった」と言っただけのことで、「不謹慎だ」という異様なバッシングを受け、その程度のことで、辞任に追い込まれたことも、記憶にとどめておきたい。

 その二年後、起こったのが、陸山会事件だった。
 この事件、東京特捜の華々しいリークに載せられて、「政治とカネ」とメディアが大騒ぎしたわりに、検察はなんの証拠も見つけることはできなかった。そして不起訴になった事件だった。
 政権交代前夜から直後というデリケートな時期に、明確な証拠もないのに、政権交代側である野党の大物議員を潰す方向で捜査をするということの重大な、政治的・倫理的な問題性はさておく。

 この事件の最大の問題は、そこまでやったわりに、まともな証拠などなにひとつなかった(だから、特捜も起訴を断念せざるを得なかった)この事件が、なぜか、検察審査会で強制起訴となったことだった。
 そして、その裁判で、驚愕の事実が明らかになる。
 検察審査会に強制起訴の議決を出させるために、ニセの証拠が届けられていたのだ。

 秘書の自白。

 これはでかい。だって、秘書がやりましたって泣きながら自白してるという報告書だよ。こんなの見たら、誰だって「やっぱやってんだ」と思うじゃないですか。
 ところが、その報告書は、一から十まで、完全なでっち上げだったわけです。

 すでに改悪されていた刑事訴訟法によって、刑事事件の証拠は公開されない。ゆえに、裁判で問題になっていながらも、我々には、報告書のなにがどう「事実と異なる」のかが、最初は謎だった。
 だからこそ、このころ、毎日新聞などは、検察のリーク通りに、報告書と事実の違いは「勘違いや誤解のレベル」だと主張していたものだ。

 ところが、ちょうど8年前の2012年5月3日。
 足のつかないロシアのサーバーを経由して、何物かが、この問題の報告書を暴露した。

 厳密に言うと、その前日の2日の夜、ロシアのサーバーを通じて、私の主宰している市民団体のメルアドに届けられた謎の書類が「あらびっくり」の内容だったので、法律家に相談の上、翌3日午前にブログでリンクを公開したのだ。

 で、田代政弘検事が作成した、その問題の報告書というのが、どうひいき目に見ても「勘違いや誤解のレベル」などではなく、一から十まで、完全な、しかも悪意のこもったでっち上げだったということが、世間にバレちゃったのである。

 それだけではない。ニセ報告書を書いていたのは、田代政弘検事だけではなかった。その上司の佐久間達哉特捜部長を筆頭に、木村匡良、大鶴基成、齋藤隆博、吉田正喜、堺徹らが、積極的にかかわっていたことまでがバレちゃったのだ。

ここの詳しい経緯を知りたい方はこちらをどうぞ 
https://blogos.com/article/38220/
で、ロシアのリンク先はさすがにもう消えていますので、書類を見たい方はこちら
田代・斎藤・木村報告書  http://shiminnokai.net/doc/rep1.pdf
石川議員(秘書)との実際の会話  http://shiminnokai.net/doc/ishi.pdf

 いくらなんでも、あまりのことなので、これらの人たちは、当然ながら、虚偽有印公文書作成及び行使や偽証で刑事告発されていたが、最高検察庁も事態を重く見て、当時の笠間検事総長は特別チームも作って事件を調べたとされている。
 しかし、この事件を徹底調査すれば、東京地検特捜部からぞろぞろ逮捕者が出ることになるのは火を見るより明らかだった。その顔ぶれが軒並み有罪判決を受けるような事態になれば、検察の受ける打撃は、村木さん事件の比ではない。

 だって考えてもみてよ。前田検事個人がフロッピーディスクのファイルの日付を変えただけで、しかも結果的には裁判で証拠として使われなかったような事件で、あれだけの騒ぎですよ。
 今度のは、明らかに特捜部ぐるみの犯罪で、しかも「ちょっと変えた」どころではなく、まるまるでっち上げの内容のニセ報告書が何通も作られ、しかもそれが検察審査会に証拠として出されて、その結果、裁判に持ち込まれてるんだから。

 そして、この一連のニセ報告書が明らかになったことで、裁判は、小沢氏無罪となった。
 なんと、判決文に、単に「被告人は無罪」どころか、「事実に反する内容の捜査報告書を作成し、これらを送付して、検察審査会の判断を誤らせるようなことは決して許されないことである。(中略)本件の審理経過等に照らせば、本件においては事実に反する内容の捜査報告書が作成された理由経緯等の詳細や原因の究明等については、検察庁等において、十分調査等の上で対応がなされることが相当であるというべきである。」とまで書かれてしまった。もう、裁判所激怒の、検察有罪判決といえるようなものだ。

 ここまで言われては、検察は調査をせざるを得ない。
 このときに、検察は二つに割れた(と、内部の協力者や関係者、複数の記者から聞いている)。
 こうなった以上、きちんと捜査し、たとえ大幅に肉を切ることになっても膿を出した方が良いと考える良識派の人たちと、検察と特捜を守るためには、絶対にそれをさせてはならないと考える守旧派の人たちだ。
 後者筆頭が、当時の黒川弘務官房長だった。

 押さえておこう。
 この権力闘争は、結論から言うと、皆さんご存じのように、守旧派が勝った。あれだけの露骨な改ざんをやっていながら、「勘違いだった」という、子供でも無理があるようなありえない言い訳で、田代以下でっち上げ検事たちは、不起訴になった。

 笑いながら雑談したあとの30分後に書いた報告書が、いったいどこをどう「勘違い」したら「泣きながら、懺悔告白した」という内容になり得るのかは、もう異次元すぎてすごい。が、それがまかり通った。まかり通させた。

 当然ながら、この案件は、検察審査会に持ち込まれ、あまりの苦しい言い訳ぶりに、さすがのメディアも検察審査会での強制起訴は免れないのではないかと見ていたが、なぜか、検審でも起訴相当は出なかった。一票足りない、不起訴不当。
 ところが、ここで、じつは、極めて奇妙なことが起こっていた。

 検察審査会の審査員の任期は6ヶ月で、3ヶ月で半分ずつ入れ替わる。つまり、6ヶ月で最初の審査員はいなくなる。人が入れ替わるたびに、新しい委員はいちから資料を読み込まなくてはならないので、委員を入れ替えることでじっくり審議ができるわけではなく、なんのメリットもないのだが、なぜか、このとき、9ヶ月もの時間をかけて、審査がなされた。つまり、委員は何度も入れ替わっていた。
 しかも、この審査のアドバイスを務める補助弁護士に、あろうことか、検察に恩義のある元検察高官が就任していたのだ。
 http://www.imanishinoriyuki.jp/archives/27052931.html

 補助弁護士が素人である審査員を誘導し、さらに、起訴議決が出そうになると、長引かせて何度も審査員を入れ替えさせていた疑惑が持たれた。
 この不起訴不当の議決書では、虚偽記載をはっきり認めている。そして、それが勘違いや記憶の混同などではあり得ない(つまり故意)であることも明白に認めているにもかかわらず、だ。

 ついでにいうと、審査員は「くじ引きソフト」で、選挙人名簿から選出されるが、この、選挙人名簿入れたら数人を無作為に選ぶというだけの、単なるくじ引きのためだけに数千万円かけたというソフトは、特定の人物を加えたり削除することもできるし、それをやってもログが残らないという奇妙な仕様にもなっていることは、すでに、当時、森ゆうこ参議院議員の追求で明らかになっている。

 で、検察審査会審査員は11人。起訴議決には8人の賛成が必要だ。だから、4人の審査員が断固として手を挙げなければ、審査の内容が明らかに有罪であると認めていようと、他の全員がどんなに起訴すべきと主張しようと、絶対に起訴議決にはならない。

 なぜ、ここでこれを長々書くのか。これとまったく同じパターンが、森友事件でも起こった疑惑があるからだ。つまり、審査員を何度も交代させ、場合によって、特定の傾向のある人物を入れ込むことで、絶対に起訴議決を出させないようにすることが、やろうと思えばシステム的に可能であるということが、実は、この時点で明らかになっていた。
 つまり、ここで、メディアや法律家や議員が、この問題をきちんと追求しなかったことが、後の森友事件などの不可解な議決を生んでいる土壌になっているといえる。

 そして、改めて言う。
 このとき、検察で、田代不起訴、つまり虚偽有印公文書作成事件潰しのために尽力したのが、黒川弘務官房長だったのである。
 つまり、黒川弘務氏は、検察、とりわけ特捜にとっては、お取り潰しやむなしの運命から救ってくれた巨大な功労者という顔を持っているわけだし、また「検察審査会で絶対に起訴議決を出させないテクニック」を熟知している人間といえる。

 彼はその後、法務事務次官に就任。安倍政権に近づくや、最高のサポート役として活躍することになる。人当たりが良く、いつもにこやか、相手を盛り上げヨイショする手腕に長けているというので評判のキャラである。安倍首相と相性は良かっただろうね。

 そして、安倍政権になってから、いままでなら、捜査や起訴の対象になったであろう政治家の金銭授受などに、証拠まで揃えた告発があってもなぜか不起訴になり、検察審査会でも起訴議決は絶対に出ない。
 森友事件に至っては、あれだけの公文書が棄てられたり、改ざんされたりしていても、「不起訴不当」で幕引きすることができた。
 それは、ある意味、当たり前とも言えることだった。

 そして、安倍政権のような政権では、黒川弘務ほど「頼りになる」存在はないということだ。だから、黒川のためならなんでもする。
 黒川なら、何をやっても、揉み消してくれるからだ。裏金を受け取っていようと、証拠品にドリルで穴を開けようと、お友達にどれだけ利権をばらまこうと、国民の税金を流用して票を買っていたとしても、新型コロナさえ利用して誰もほしがっていないマスクに不明瞭な大金をばらまいていようとも、黒川がいる限り、罪に問われることはない。



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新型コロナについての、ある程度のまとめ

 数日前にファイナンシャル・タイムズの翻訳を載せるまで、しばらくブログを書いていませんでした。
 黒川検事定年延長の件で何か書かねば思っているうちに、コロナ禍が始まってしまったわけで。
 個人的には、この騒ぎが始まったとき、正直、私も甘く見ておりました。
 私の知り合いの複数の医療関係の方も、当初、問題がここまで深刻になると思っていた方はほとんどいませんでした。インフルだってたくさん死んでるんだから、マスコミ騒ぎすぎ、的な、アレですね。

 そういう意味では、いまになって、WHOの当初の対応ガー、中国の最初の対応ガー、トランプの最初の対応ガー、と、叩かれていますが、正直、ある程度は、仕方なかったかと思います。

 なんといっても、2009年、大騒ぎしたメキシコ豚インフル(註:現在は、流行性疾患に、特定の国名や動物名をつけることは禁じられていますが、当時はこの名前で人口に膾炙していましたし、H1N1 fluとかA(H1N1)pdm09といっても誰もわからないでしょうから、あえてこの名前で呼ばせていただきます)が、当時の腐敗したメキシコ政府が国内の反政府デモを抑えこむために過大に騒いだ、大山鳴動ネズミ一匹みたいな話だったのと、そもそも、この新型コロナは、当初、中国ではSARS (あるいはそのごく近い変種) と見られていて、このSARSに関しては、2003年に押さえ込んだ経験があるだけに、ことの重大さに気づくのが遅れた、というのはあるようです。

 もっとも、この豚インフルの時ですら、感染研のやり方はひどいものでした。ほとんど意味のない成田検疫に固執し、自前ワクチン開発にこだわってCDCが提供した遺伝子データを抱え込んでいたものです。結果的に豚インフルが、ぜんぜん大した病気ではなかったから良かったようなものの、もし、本当に伝染性や死亡率の高い病気だったら、あのときだって、とんでもないことになっていたはずでした。

(なんで八木がそんなことを知っているのかというと、当時、あれが「メキシコ発の謎の病気」として情報の錯綜もひどかったため、日本の感染症研究者の方からの依頼を受けて、メキシコのジャーナリストや医療関係者、地元の人たちと連絡を取って、情報を集める一方、日本の感染研まわりの事情も聞いたからです)

 ちなみに、あのときの豚インフル騒ぎをモデルに執筆された小説が、医師でもある作家 海堂尊氏の「ナニワ・モンスター」です。タイトルがどうみてもパンデミックを連想させないので、損をしていますが、今読むと、経済封鎖などにも言及されていて、まるで予言の書のようです。(ちなみに、この本に登場する実行力あるナニワ府知事のモデルは、橋下でもましてや吉村でもありません。作家ご本人からそのように伺っています。)

 なお、その頃の日本の感染研の悪弊はいまだに引き継がれていて、「自前のPCR検査」にこだわるあまり、一度に1000件検査できて結果が4時間で出る韓国製キットなどを意地でも使わないし、むしろ、検査能力の低さをごまかすために、「できるだけ検査しない」→「検査しない方がいい理由なるものを必死で吹聴する」という流れになってしまって、そこから方向転換できなくなっている模様なのが現状であります。
 やる気になって、ちゃんと態勢を整えれば、日本でも PCR 検査なんてガンガンできちゃうであろうことは、なぜか外国でだけ使われている日本製の全自動PCR検査機器が存在していたり、慈恵医大病院が自慢しているとおりですね。

 新型コロナ Covid-19 に 話を戻すと、みんな忘れていますが、人から人への感染が確認されたのが、1月18日、中国で最初の死者1名が報告されたのが、2月3日です。
 つまり、武漢で感染爆発が起こる1月21日ごろまでは、みんな、完全に甘く見てたわけです。
(ちなみに、ネトウヨ系の皆さんは、中国隠蔽説が大好きですが、武漢の保健省は、昨年の12月31日に、肺炎が流行っていることに対して、公式に注意を喚起しています
 
 また、新型コロナウイルスが人工のものではあり得ないことは、アメリカの遺伝子疫学研究者が、遺伝子変異をトレースして、Medical Science誌に論文を発表し、ほぼ決着がついた形になっています。
 https://www.nature.com/articles/s41591-020-0820-9
(もちろん、論文1本が決定打になるわけではないので、人工説を補強するような論文で査読を通っているものなど1本もない、と言い換えた方が良いかもしれません)

 そういう意味で、この新型コロナがけっこうやばい、ということが明らかになってきたのは、3月にはいってからでしょう。で、それでも、3月初頭の時期は、80%以上の患者は軽い病状で回復しているという報道から、それならそんなに過剰に騒がなくても、という空気があったのは事実です。
 3月の10日すぎ頃 から、まさかの、急転直下といってもいいほどの世界的な感染爆発とそれにともなう大量死が起こったわけです。

 3月7日にニューヨークタイムズが、当初、中国のロックダウンについて、「影響より害が多い」と嘲笑して、2週間後に真逆の記事を掲載することになりましたが、これを安易に笑うべきではありません。後出しじゃんけんは誰でもできるわけで、その時点では、各地で緊急事態宣言は出ていたとはいえ、各国の感染者数なんて数百人レベルで、死者数だって一桁だったわけです。

 問題は、このコロナの感染力が半端なかったということです。ほとんどの患者は重症化しなかったとしても、感染者数分母がとてつもない数字になれば、当然、死者も跳ね上がるわけですから。そして、肺炎と言いつつ、通常の肺炎の治療法で回復せず、なぜ、患者が死ぬのかさえ、いまだわからない(だから、治療といっても、対症療法を試すことしかできないうえ、その対症療法も「これは明白に効く」みたいなものがない)からです。
 そして、そういう患者が激増したことで、イタリアやスペインで次々に医療崩壊が起こり、ニューヨークも悲惨なことになったわけです。

 もう一度言いますよ。後出しじゃんけんで「最初、ああいってたくせに」みたいな議論は、刻々と状況が変わるようなときには、ほぼ無益です。

 もちろん、政治主導で、早い時期から最悪の事態を想定した対策して見事に押さえ込んだ台湾や、同様に素早い対処で感染爆発から立ち直った韓国は見事で、まさに賞賛に値するのですが、多くの国は「間違えた」わけです。
 問題は、間違えたことではなくて(なぜ、間違えたかは、あとで検証したら良いことで)、間違いが判明した段階で、どうすみやかに軌道修正して、臨機応変に対処するか、ということです。
 そこで、「一週間前はこう言ってたのにw」「朝令暮改」とか言って批判するのは的外れでありましょう。状況が刻一刻と変わっているという事実を認識して、最新の状況に素早く対応する姿勢こそが重要なのです。

※ちなみに、この最新の状況に対応するというのは、過去に言ったことを、そんなことは言ってないとか誤解だとか主張して歴史を修正する、ということではありません。過去の発言なり発表が間違いだったとちゃっちゃと認めて、迅速に軌道修正することです。

 そういう意味では、ヨーロッパやニューヨークで地滑り的な感染爆発が起こって,とんでもない事態になっているのに、まだオリンピックに固執するとか、クラスター対策とかにこだわって、PCR検査をしないとかというのは、まさに、「間違いがわかっても、それを断固として認めないし、軌道修正も断固としてやらない」「状況は刻一刻変化しているのに、一ヶ月前と同じ事をだらだらやってる」「発熱を4日我慢して重症化した死者が続発したら、我慢しろとは最初から言ってないと言い出す」というのが、最悪なわけで、残念ながら、皆さん、もうそれがどこの国のことを言っているか、お気づきでしょう。

 そして、その死亡率について、当初、WHOは2%と見込んでいました。
 季節性インフルエンザの死亡率が0.1%ですから、それでも20倍ということですが、それが、イタリアではなんと13%、米国で5.8%以上に跳ね上がっています。5月5日には、世界中での死者が25万人を突破しました。それどころか、イタリアに至っては、3月の超過死者数が例年より1万人多くて、隠れコロナ死者が実はまだまだいそうだみたいなことになっています。
 スペイン風邪と比べたら、それでもまだ大したことはないじゃないかと思ってる人もいるかもしれませんが、スペイン風邪の流行った1918年は、第一次世界大戦の時代です。大戦でヨーロッパは疲弊し、人々の栄養状態も悪く、そもそも戦争のせいで疫病情報などもちゃんと伝わっていなかったし、言うまでもなく医学水準は段違いに低かったわけです。結核が不治の病だった時代ですからね。
 いまの、100年経って医学が格段に進み、最新の論文がネットでリアルタイムで読める、この時代で、3ヶ月ほどの間に25万人が死んでる、というところ、けっして甘く見ていいものではありません。

 国によって死亡率が極端に違う原因は、まだ不明です。とはいえ、重症化率が高いのは、高血圧・糖尿病・肥満ということは判明しているので、この生活習慣病系の人が、アジアと比べて、ヨーロッパや米国に格段に多いことと、それなりに関連がありそうです。
 無症状感染者がかなり多いらしいということも、判明しています。日本でも慶応医大病院の来院者の5.97%、神戸市立医療センター中央市民病院3%の人に抗体があることがわかって、その人たちが無症状感染者であったなら、死亡率は劇的に低下することになります。
 イタリアや米国も、とんでもない数の無症状感染者がいたとしたら、死亡率は案外、2%以下どころか、1%以下なのかもしれません。
 将来的に、各国で抗体の保有率の調査が進んでいくことで、リアルな死亡率もわかってくるでしょう。

 ただ、この新型コロナの場合、厄介なのは、死亡率だけではなく、発症して回復したとされる人々にかなりの後遺症が残る例が、これまた多数報告されていることです。重篤化した人は肺胞がかなり破壊されてしまっていて、もう元には戻らないことが確認されていますし、軽症レベルであった人でも、ダイビングなどの激しいスポーツなどがもうできなくなる可能性があります。
 http://www.sbmhs.be/2020%200412%20Position%20of%20the%20BVOOG.pdf
 https://www.rainews.it/tgr/tagesschau/articoli/2020/04/tag-Coronavirus-Lungeschaden-Forschung-Uniklinik-Innsbruck-6708e11e-28dc-4843-a760-e7f926ace61c.html
 
 また、症例が増えるにつれ、このウイルスは、肺に最も重篤な被害を与えるケースが圧倒的である一方、さらに心臓や血管、腎臓、腸、脳など多くの臓器にまで到 達し、腎不全や心臓疾患、脳卒中を起こすことも確認されています。子供の血管炎症である川崎病そっくりの症状を示す子供たちが Covid-19に感染していたことも判明しつつあります。
 そういったことから、ウイルスが血管にとりついてそこから攻撃しているのではないかという考え方が有力になってきています。
 味覚障害や嗅覚障害が起こることから、脳や中枢神経も攻撃されているのではないか、と考えられてもいます。
 https://www.sciencemag.org/news/2020/04/how-does-coronavirus-kill-clinicians-trace-ferocious-rampage-through-body-brain-toes

 要するに、いまだ、対応に追われていて、研究途上。発症や重篤化のメカニズムが解明されていない。だから、治療法も対症療法しかない。
 それが、この新型コロナの怖いところです。

 ワクチンを期待する報道も多いのですが、今現在開発されているワクチンは、ことごとく、遺伝子解析による RNA ワクチンです。そして、実は、この RNAワクチンは、いまだに実用化に至った例はありません。この新型コロナが、最初の、そして素晴らしい解決になれば、そりゃあ、願ったり叶ったりなんですが、「今まで実用化されたことのない技術」だからこそ、その安全性などについては、慎重に試験されなくてはなりません。私は、間違ってもワクチン反対派ではありませんが、政治家のウケ狙いで、安易に治験を広げるのは怖いことだと思います。
 また、それなら、がんがん抗体検査を実施して、抗体がある人に「免疫パスポート」を発行して、そういう人は自由に出歩いたり、介護に当たったりできるのではないかという議論もありますが、Covid-19に感染して、治癒したあと、再感染しているケースもいくつも報告されています。
 この再感染が、武漢株と欧州株の違いで起こるのか、抗体があっても何度でもかかっちゃうようなものなのかもわかっていません。ヘルペスみたいに、いったん治ってもウイルスが体の神経節かどこかに棲みついて、体の抵抗力が弱ると何度でも再発しちゃうような可能性だって、捨て切れていません。抗体検査は、実質的な死亡率や重症化率を計測するのには有効ですが、抗体があるから安全と言えないのが現状である以上、ワクチンができても、それが効くかどうか、あるいは今年効いたとして、ウイルスがまた変異したら、そっちに効くかどうかなんて、まだぜんぜんわからないというのが残念な事実です。

 要するに、重症化のメカニズムも、再感染のメカニズムもわかっていないので、特効薬とかワクチンのニュースには、安易に飛びつかない方が良いと言うことです。

 とはいえ、コロナ死より経済崩壊の方が多くの死者を出しかねない、というのも、また事実です。ひとつの倒産が連鎖倒産を引き起こすのは目に見えています。それこそ死屍累々になりかねない。コロナが収束したときに、個人店が悉く消滅して、チェーン店しか残っていないような恐ろしい風景は、見たくないものです。
 そして、抗体所有者の多さから、実際の死亡率、それ以上に発症率はかなり低い可能性も出てきます。

 それだけに、現実的には、米山隆一氏が主張されていたように、多くの検査を行って、正確に近い RO 値(基本再生産数=1 人の感染者が生み出す、二次感染者数の平均値)を割り出し、その数値に基づいて、地域ごとに「強い外出制限」を行ったりそれを緩めたりする臨機応変な舵取りを行いつつ、経済的に最も打撃を受ける中小企業や個人営業をしっかり救援する、という政策が合理的かつ現実的なのだと思います。しかしそれには、やはり、為政者がしっかりしていなければなりません。

 政治を軽く見てきた国民が、その高い代償を払わされている感が否めない今日この頃ですが、このまま日本に沈没してほしくないのは、誰しも同じでありましょう。
 こうなってしまった以上、和牛券が撤回され、あれだけ官邸が抵抗していた10万円給付が決まったように、あきらめないで、しっかり声を上げていくことが大切です。






プロフィール

PANDORA

Author:PANDORA
ラテンアメリカと日本を拠点に活動する音楽家・作家 八木啓代のBlog
公式サイト http://nobuyoyagi.com

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3.11を心に刻んで (岩波ブックレット)
人は、どのような局面において言葉をつむぐか。30人の執筆者が震災を語ったエッセイ集。澤地久枝、斎藤 環、池澤夏樹、渡辺えり、やなせたかしらと並んで八木も寄稿。
刑事司法への問い (シリーズ 刑事司法を考える 第0巻) (岩波書店)
日本の刑事司法の何が問題か、どのような改革が求められているか。刑事法研究者、実務法曹の他、八木も執筆しております。
禁じられた歌ービクトル・ハラはなぜ死んだか(Kindle版)
長らく絶版状態だった書籍をリクエストにより電子書籍で再版いたしました。八木啓代の原点です。
検察崩壊 失われた正義(毎日新聞社)
5刷。この一冊で特捜検察の現実がわかります。
ラテンに学ぶ幸せな生き方(講談社)
なぜラテン人は自殺しないの?に応えて3刷!好評発売中!
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ラテン音楽ファン必読!キューバ音楽のすべてが理論も歴史もわかります。浜田滋郎氏激賞
貧乏だけど贅沢(文春文庫)
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