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改悪刑訴法成立にあたって

 ヘイトスピーチ防止法が可決された。
 これは大変喜ばしい一歩だが、その裏で、きわめて問題のある法案が可決されてしまったのは、断腸の思いである。
 数日前であるが、5月19日昼に、私は、参議院議員会館前で行われた「刑訴法等の改悪を許さない緊急集会 Part 2」に顔を出すと共に、その後、傍聴券を分けていただいて、参議院予算委員会を傍聴してきた。

 ここでは、まず、民進党の小川議員から、改正刑訴法の問題点が次々に指摘された。
 小川議員が主に指摘したのは、今回の「法改正」で、盗聴の範囲が圧倒的に拡大され、しかも、第三者の立会なしに、各警察署で盗聴ができてしまうという仕組みになるにもかかわらず、盗聴されていてもそれが起訴や裁判に至らない場合、盗聴された人間にはそれは知らされることはない。つまり、実質的に盗聴されていても、それを知る術はないという点だった。
 そして、実際に、過激派や暴力団などの組織犯罪などに限定され、さらに、国会に報告義務なども課せられている「使い勝手の悪い」はずの現行法ですら、多くの「盗聴」が、実際には犯罪には何も関係のないものであったことにも言及し、このような状態で、さらに盗聴範囲を拡大し、さらに、「起訴や裁判に至らない場合は、盗聴された人間にそれを知らされることがない」問題点を主張したのである。

 これに対して、法務大臣や法務省の回答は、「すべての記録は裁判所に保管されてます」と答えるばかりで、まったく答えになっていない。つまり、法務大臣は、「すべての記録は裁判所にあるので、(盗聴された人が)それを請求すれば知ることはできる」というが、盗聴されていると知らされないのに、どうしてそれができるのか。
 「知り合いが起訴されて、盗聴されていることが判ったら、自分も盗聴されているかもしれないと思って請求できるかもしれない」と子供のような返答である。

 さらに「盗聴」の範囲は、固定電話と携帯電話だけではなく、携帯、SNSなど全てに及ぶとのこと。ただし、SNSなどの本社が日本にない会社の場合は、「協力を求める」のみだそうだ。

 しかし、高度な組織犯罪であるなら、そういうことならば、自前で組織内SNSを作ってしまえば、簡単に「盗聴されない通信」ができてしまうわけことになるのは、誰でも考えつく。

 さらに、同席していたIT専門家によれば、メールでも暗号化キーを使えば、盗聴されても解読は暗号キーがなければ不可能だし、高度な組織犯罪なら、それぐらいやるだろうから、「ほとんど無意味ですね」とバッサリ。

※「その暗号鍵を傍受されたらどーなるのさ」
という素朴な疑問を持つ人もいるかと思い、補足。

この場合の暗号鍵(すなわち、このIT専門家の語るところの暗号鍵)とは、暗号用と復号用、2つで1セットとして、送信側は「公開された」暗号鍵で暗号化して送信するというもの。受信側は、これを復号用鍵で復号することになる。
この流れなので、傍受した人が復号するのに必要な復号用鍵は、一度もネット上を流れないため、全通信を傍受しても中身は見られない、ということになるわけだ。

「絶対安全」と断言すると「破られない暗号は無い」みたいなツッコミがありそうかな、と思われるかもしれないが、SSL等の暗号は因数分解を「短時間で」解くアルゴリズムが未だ発見されていない、ということに依拠していて、円周率計算みたいに、スパコンで時間をかければ、解けなくはない、というレベルだということ。
だから、正確には「現実的にはムリ」ということだ。

 まさに、この「新盗聴法」は、「高度な組織的犯罪」に対しては無力であり、むしろ、一般市民を監視するための法律でしかないということになる。

 そして、この盗聴の管理に使われる予定の「特定電子計算機」。これに至っては、まだ存在もしてないのに、「完全無欠」の予定だそうだ。そんなことを前提すること自体、世界中のクラッカーの標的になりそうな話だが、その問題は置いておいても、いわゆる「情報漏洩」で圧倒的な率を占める、「人為的ミス」の可能性については、「そういうことがないよう努力する」という回答のみ。これには失笑するしかない。

 さらに、共産党の仁比議員が、「別件盗聴」の問題姓を指摘された。
 つまり、この新盗聴法では、犯罪に関わりがあるということにして、裁判所から盗聴の許可を取り、別件の市民活動や企業活動などについて盗聴することが、いくらでもできる制度設計となっている点だ。なんといっても、「盗聴される側」に知らされることはないのだから。

 もっとすごいのは「司法取引」で、誰かの密告により逮捕された場合、その密告をおこなった人物は開示されないそうだ。むろん組織犯罪の場合「お礼参り」を防ぐという意味では当然だが、別の点で言えば、誰かの「司法取引による密告」で冤罪に墜とされた場合、弁護側は、誰がどのような嘘の証言をしたのかを知ることすらできないのである。シャレにならない。
 いうまでもなく、「取調べの一部のみの可視化」、とりわけ「恣意的な可視化」が大問題であるのは、足利事件や今市事件でも明らかになったとおりである。
 しかも、この可視化は、「別件逮捕」の場合はもちろん、実質的に強制的な「任意同行」などではなされない。そのあたり、法案賛成のはずの日弁連の認識とも食い違っていることが明らかに。
 要するに、きわめて安易に、警察・検察性善説に立った法案ということであるのが、改めて浮き彫りになるような審議だった。

 しかも、これだけ法務委員会で問題が噴出しているのに、強引に質疑は打ち切りとなった。打ち切りに反対したのは、共産党の仁比議員と民進党の小川議員のみ。有田議員は打ち切りに賛成。
 そして、打ち切りが決まって、採決前の、仁比議員の強力な反対答弁に傍聴席から拍手。(自民党の席からも拍手している議員がいたのにはちょっと驚いた)
 次に立ち上がった小川議員は苦渋の顔で「賛成答弁をします」。

 傍聴席から「えーっ」というざわめき。しかしその答弁は苦渋に満ちた表情で、到底、賛成答弁とは思えないほど、新刑訴法の問題点を丁重に解説したもので、最後に付け足しのように、「プラスの部分もあるので」。ものすごい圧力があったことが伺える。

 それから自民党議員の賛成答弁。これも、到底、賛成答弁とは思えないほど、盗聴の問題点や、司法取引の危険性、今市事件を引き合いに出しての一部可視化の問題などを踏まえての話に、反対答弁かと思うほどの内容だった。
 もちろん、結論としては「プラスの点がある」「適正に運用されることを期待する」という締めでの賛成答弁なのだけれど、賛成派ですら、かなり問題があることを認めざるを得ない法案であることは明らかだったということだ。

 締めに、有田議員から付帯決議の提案と可決。この付帯決議とは、要するに「適切な運用を期待する」というようなもので、まあ、言ってみれば「言い訳」みたいなものだ。そもそも、大阪地検特捜部の証拠改ざん事件やら、数々の冤罪事件での自白の強要やら、検察官の偽報告書提出などの、検察の不正の問題がきっかけで論議になった刑訴法改正なのに、警察・検察の権限を大幅拡大し、あげくに「適切な運用に期待する」というのは、茶番としか言いようがない。
 
 むろん、自公で強行採決に持ち込めば、もっと早く通ってしまったかもしれない法案を、多くの反対があったこともあり、民進党(当時の民主党)がヘイトスピーチ法案の審議を(ある意味、セットにして)優先してくれたこともあり、この極悪な刑訴法の採決がここまで伸びたというのは事実である。
 しかも、民主党(当時)は、この自民党が通そうとしていた刑訴法そのままではなく、いわゆる「民主党案」と言っていいほど違うものまで提示していた。それがある時期、突然、民主党改正案をほとんど引っ込めて、自民党案丸呑みに近いものになってしまった。
 そこにどのような「政治的」な圧力や裏話があったかは知らない。支持団体との関係などがあったなどという話は入ってきている。しかし、審議すればするほど問題のある法案であることがはっきりしており、民主党案とまったく違うものに、なぜ賛成したのか。審議を尽くさなかったのか。
 民進党が、この法案に結果として「賛成」したことは、事実として残る。陸山会事件などがあっただけに、今回の民進党の対応は、検察・法務省と喧嘩したくない、阿った、と思われてもしようがないものだった。そして、もし、そうだとしたら、ある意味、バーターよりタチが悪いともいえる。

 5/19日参議院法務委員会の中継録画はこちら

 なお、言うまでもなく、この法案には冤罪被害者の方たちも、反対しているが、江川紹子さんは、「一時はどうなるかと思ったが、なんとか成立しそうで、ホッとした」 とまでツイートするほど、この法案の成立にきわめて熱心であったことと、法案の問題点を指摘されると、それまでの「録音録画はゼロであったから3%は大きな前進」と事実に反する主張を行い、あげくに、盗聴の拡大や司法取引の問題については、「監視については、八木さんのような方の力が必要」と、無責任甚だしいコメントをされていたことは、ここにあえて記録を残しておく。

 そして、この刑訴法は、24日、衆院本会議で採決され、自民党、公明党、民進党、おおさか維新などの賛成で成立した。(反対は、日本共産党と社民党だった)

【追記】
・アムネスティ「たった2%の可視化では冤罪は防げない」http://www.amnesty.or.jp/news/2015/0317_5191.html

・『冤罪のリスクを上昇させる刑訴法の改悪をなぜ止められないのか』ゲスト:指宿信氏(成城大学法学部教授)司会:神保哲生、宮台真司 http://www.videonews.com/commentary/160521-01/

・元検事市川寛のブログ 「日本版司法取引の問題点」http://ameblo.jp/ichikawa42/entry-12058905265.html
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5月10日院内集会「刑事訴訟法等の改悪を許さない緊急集会」レポート

 少し遅くなりましたが、5月10日に参議院議員会館で行われた「刑事訴訟法等の改悪を許さない緊急集会」に関してのレポートです。

 平日午後5時という時間帯にもかかわらず、会館講堂には300人以上の方たちが詰めかけ、ほぼ満席。この問題への関心の高さが伺われたのはうれしいことです。

 議員会館ということもあり、福島瑞穂氏や山本太郎氏、小川元法務大臣、共産党からは 仁比聡平議員、清水忠史議員など、多くの議員の方々のスピーチもありましたが、この集会にテレビ局も入って、ニュースでの報道までが行われたのは、青木惠子さんがはじめて公開の場で話をされたということがあったでしょう。
青木さんと桜井さん
 青木さんは、大阪・東住吉冤罪事件の「被告」として、保険金殺人の犯人として、無期懲役の有罪判決を受け、20年にわたって収監されたのち、再審となったものですが、既に検察は、特別抗告を断念、有罪立証を行わないとしており、(だったら無罪論告しろよ)、裁判所も刑の執行停止を決め、再審無罪が確実視されている事件です。

 日本においての刑事裁判は、テレビドラマでも「99.9」とタイトルをつけられるほど、起訴有罪率が圧倒的に高く、しかも無実を訴え続けたとしても、再審の壁は、ほとんど絶望的と言ってよいほど高いものなのですが、この事件においては、そもそも何の物的証拠もなかったうえ、警察・検察の主張した「放火の手口」が、科学的根拠がないどころか、物理的に不可能である、ということが立証されてしまった、というのは大きいでしょう。

 それでも、そのような警察・検察による「妄想」にすぎない「放火の手口」で、虚偽の自白調書が作られてしまったがために、青木さんとその内縁の夫であった朴さんは、20年もの獄中生活を送ることになったわけです。まして、青木さんの場合は「我が子殺しの鬼母」にされてしまったわけですから、その苦痛はあまりあるものがあります。

 その青木さんが、被疑者を誘導して、自白ができあがっていく過程について、迫真の証言をされました。娘の死に激しく動揺し、自分を責める心境になっている母親が、体調が悪いときも信じてもらえずに厳しい取り調べを続けられ、さらに、刑事に「(娘を)助けられなかったということは、殺したも同様だ」などと執拗に言われて、そういう(自分が殺したも同様)という心境にさせられてしまった経緯。さらに、調書は、「3月..」「もうちょっとあとじゃないのか」「5月...」「もうちょっと前だろう」(だったら4月しかないよね)というような、誘導によって、ひとつひとつのディテールを「喋ったことにされ」、調書ができあがっていった過程。
 だからこそ、密室での取り調べはすべて録音録画されるべきだし、弁護士の立会いも必要、と涙ながらに、青木さんは訴えられました。

 この青木さんを支える形で共に壇上に上がった布川事件元被告の桜井昌司さんも、強く訴えかけます。「これだけ冤罪事件があったのに、さらに、改悪される刑事訴訟法の運用がまともにできるわけがない。日弁連が賛成しているのが信じられない」

 これと前後しますが、この青木さんのスピーチの前に、つい先日、裁判員裁判で、これまた、物証無しの自白だけで無期懲役刑を宣告された今市事件の弁護団一木明弁護士のスピーチも恐るべきものでした。
一木明弁護士
 この事件、私も、「裁判員裁判・物証無し自白だけ」という点に不自然さを感じていましたが、詳細を聞いて啞然。

 つまり、2005年に発生した事件から8年も経ってから、2013年に被疑者は逮捕されるのですが、なんと容疑は「商標法違反」。つまり、被疑者の母親が露天で売っていた品物の中に偽ブランド品があったということで、母親と、その荷物を運んだだけの被疑者を逮捕・起訴したわけですが、その「商標法違反」で逮捕したにもかかわらず、この起訴後勾留で、実質的に、殺人罪の取り調べを行ったわけです。

 ポイントは、名目上は「殺人罪」での逮捕ではないので、録音も録画も行わず、国選弁護人も一人しかつけられていなかったこと。
 もうひとつは、この被疑者は、母親の仕事を手伝っていたというのも、荷物を運んだ程度。その実態は、いわゆる引きこもりに近いニートで、社会性が欠如しているタイプであったことから、長期拘禁の中での、厳しい、かつ、誘導的な取り調べによって「殺人を自白した」というものだ。
 そして、「その自白の部分」が録音録画され、裁判員に呈示されることで、有罪判決を生み出したというわけです。
 いうまでもなく、その自白も、検察官が『否認していれば死刑になる。しかし、自白すれば懲役20年ですむ』などと脅迫・利益誘導し、最初は客観的状況と食い違うことを「供述」していたのを、『それは違う。こうだったろう』と誘導してつくっていったそうですが、しかし、その場面はもちろん録画されていないのです。

 その有罪判決後に、裁判員の一人は「録音録画がなければ、判断できなかった」と述べたといいます。
 (もっとも、被告が真犯人だとすれば、その供述には矛盾があることは、法医学的に指摘されているのですが)

 本田教授は「足利事件」や「袴田事件」の再審請求でDNA型の再鑑定を担当した法医学者。これまでに出廷した栃木県警の警察官の証言などによると、女児の遺体の髪に付着した粘着テープからは女児のDNA型のほか、県警による鑑定の際に誤って混入した鑑定人2人のDNA型が検出された。被告のものは検出されなかった。

 本田教授の証言によると、裁判に検察側から証拠提出された県警の鑑定結果を、弁護側の依頼を受けて約1週間前に確認したところ、女児と鑑定人だけでは説明できないDNA型の付着物があることに気づいたという。

 被告は捜査段階で、「05年12月2日未明に茨城県常陸大宮市の山林でナイフで女児の胸部を刺し、死亡させたうえ、遺体を山林斜面に投げ入れた」と自白したとされているが、本田教授はこの供述の矛盾点も指摘。「殺害現場には1リットル以上の血液が流れたはずで、山林にほとんど血痕がないのはありえない」と述べた。胸の傷や遺体発見時の体勢などから、「あおむけの状態で殺害し、その後、ソファや車のシートで寝かせていたと考えられる」と指摘した。

 死亡推定時刻も、検察側の主張と異なる1日午後5時~2日午前0時ごろだと本田教授は説明。検察側が「スタンガンによるもの」と主張する遺体の首の傷については、「爪のひっかき傷と考えるのが妥当」と語った。
  出典:朝日新聞 2016年3月8日 http://www.asahi.com/articles/ASJ3846Y1J38UUHB010.html


 この「自白の録音の信憑性」問題は、すでに、DNA鑑定という決定的な証拠が出たことで無罪が確定した足利事件でも問題になっています。足利事件の被告菅谷さんも、検察の厳しい取り調べに耐えかねて、「泣きながら自白しているテープ」が存在するのです。弁護団ですら、「その部分だけ聞いたら、誰だって、菅谷さんが犯人だと思い込むだろう」というような録音が。
 
 つまり、「泣きながらの自白(あるいは、うなだれての自白)」が、「真犯人が観念して自白」しているのか、「真犯人ではないが、精神的に疲れ切って(あきらめて)、嘘の自白をしているのか」は、一部だけの録音録画ではわからないわけ。

 だからこそ、取り調べのすべて、もっと厳密に言えば、逮捕の瞬間から護送のパトカーの中までも含めた録音録画でないと、可視化の意味はないのです。

 それどころか、このケースは、別件逮捕を利用して、殺人の取り調べを行い、問題部分の録音録画をかわす、という「手法」が早速使われているという点で、ある意味、新刑事訴訟法が、これからどれだけ「悪用」されうるかという点で、示唆的であると言えます。

 これらのスピーチのあとで、元・日弁連事務総長の海渡雄一弁護士が、「修正案を提示していきたい」と言われ、即座に他の参加者に「廃案しかありません」とぴしゃりと言われていたこと、また、小川敏夫参議院議員(元法務大臣)が、民進党内で、執行部の判断に委ねようという風向きに抗い、廃案のためにものすごく頑張っておられるということが印象的な集会でありました。

 そうなのです。廃案しかないのです。
 一部では「ヘイトスピーチ対策法」とセットで可決などという話もあがっていますが、それとこれとは全く別の話。世界の趨勢に反するヘイトスピーチの規制は当然として、それと「セット」でこのような法案が可決されてしまっては、後世への禍根となるでしょう。 

絵本「放射能ってなんだろう 〜 ちいさなせかいのおはなし」

 熊本地震、というより、大分や阿蘇も巻き込んでいるのですから、九州中部地震とした方が良いと私などは思ったのですが、やはり、あまり大事にはしたくないということでしょうか。
 確かに、お亡くなりになられた方の数は、大惨事というほどではないかもしれませんが、被災の大きさや、今も続く余震、今後のことなどを考えると、あまり「熊本」限定にしない方が良いような気が、老婆心ながらいたします。

160503.jpg それにしても、今回の地震、テレビの画面の被害情報や震度を示す速報の中に、頻繁に、原発に影響がないことを知らせるものが多かったのが象徴的でした。まさに、今の私たち、原発安全神話が崩れ、地震と言えば、まず原発を心配する、という感覚が「普通」になってしまったということでしょう。

 それでも政府の方針は、原発再稼働である以上、私たちも、地震のたびに、あるいは天災やテロのたびに、「原発の被害」を心配しなくてはならないというわけです。
 
 というわけで、「子供の日」を前に、この本をご紹介します。
 「放射能ってなんだろう? ちいさなせかいのおはなし」

 元原発技術者であった小倉志郎氏が、子供向けにわかりやすく、「放射能がなぜ危険なのか」ということを解説された絵本です。
 そういえば、私たち大人だって、「放射能が怖い」というだけで、なぜ、どう怖いのか、わからずに、ただ「おばけ」のように怖がっている方もおられるかもしれません。子供にきちんと説明できるというのは、案外、抜けているところかもしれませんね。
 というわけで、子供の日を前に、絵本のご紹介でした。

パナマ文書についてのあれこれ

 パナマ文書なるものが、世界を騒がせております。
 パナマに拠点を持つ巨大法律事務所モサック・フォンセカ法律事務所から流出した(内部リーク説と、ハッキング説があり、同法律事務所は当然ながらハッキング説を主張)1150万件、2.6テラバイトに及ぶ膨大な資料のことです。

 誤解があるようですが、もちろん、これらのデータの大半は、合法的な投資のためのものであり、同社が脱税やマネーロンダリングといった非合法活動を大々的に展開していたというわけではありません。実際に、金融ファンドを運営するにあたっては、こういったタックスヘイブン制度を使わないと、ファンドの収益の大半が税金で持って行かれてしまって、運用に支障をきたすことから、タックスヘイブンそのものが悪というわけでもありません。
 http://mossfonmedia.com/wp-content/uploads/2016/04/Statement-Regarding-Recent-Media-Coverage_4-1-2016.pdf

 とはいえ、一部にでも、脱税や資産隠し、マネーロンダリングの疑いがあれば、各国がこぞって調査を始めるのは当然でしょうし、たとえ違法でなかったとしても、政治家などが資産を公開する義務がある国でその資産を正確に報告していなかったり、明らかに通常の政治活動で得られるとは考えられない金額の資産を運用していたとすれば、道義的責任は免れないでしょう。
 だからこそ、各国では、調査が始まっているというわけです。

 税逃れ監視強化を協議…「パナマ文書」でG20(読売新聞)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160409-00050179-yom-bus_all

 そして、現段階では、日本の企業や個人に関しては、公表されていません。
 日本の企業や個人名として、以下で検索されるとして、現段階でネットで上がっているのは、2013年のオフショア・リークスの件ですので、デマではありませんが、「パナマ文書」のものではありませんので、ご注意。

 それにしても、タックスヘイブンと呼ばれる地域は世界各所にあるものの、これがパナマって言うのが、いろんな意味で良かったですね。「パナマ文書」にしても、「Panama Paper」と呼ぶにしても、わかりやすくて、書きやすい。
 これがこれが同じ租税回避地でも、アンティグア・バーブーダとかセントビンセント・グレナディーンだったりしたらと思うと、舌を噛みそうでわかりにくくてしょうがありません。

 とはいえ、このモサック・フォンセカ、本社がパナマにあるといえ、実際には、各国に40以上の支社を持ち、英領バージン諸島のタックス・ヘイブンで登録している30万社に及ぶ取引先を持っているのですから、単なる「法律事務所」という言葉でイメージされるような「オフィス」ではなく、日本の巨大法律事務所をもはるかに凌駕する、ちょっとした大会社です。

 ですから、同社から「流出した」データというのも、単に、パナマのカンパニーに資産を預けている会社や個人のデータだけではないというところが、今回のミソとなっているわけですね。
 http://www.theguardian.com/news/2016/apr/03/what-you-need-to-know-about-the-panama-papers

 もっとも、パナマ文書については、すでに興味深い記事がいくつも出ておりますし、すべての文書が公開されるのは5月になりますので、ここではちょっと、雑学程度のメモを記しておきます。

 この事件までは、パナマと言えば、運河か帽子しか思いつかなかったという方もおられたかもしれませんが、じつは、パナマ帽というのは、南京玉すだれと同じで、パナマで作っているのではなく、隣国のコスタリカで作っています。
 で、パナマが国際金融都市になったのは、実は割合新しく、1970年代以後のことです。

 それまでのパナマは文字通り、運河しかないようなところで、しかもその運河はアメリカ合衆国の所有、という状態でした。というより、もともとコロンビア領だったところを、運河利権のためにアメリカに独立「加勢」されて、独立したようなものだったのです。

 そのパナマ運河をアメリカから取り戻し、さらに、パナマを国際金融都市として発展させたのが、いまでも、パナマで圧倒的人気を持つ、故オマール・トリホス大統領でした。

 このオマール・トリホス大統領、じつは軍事クーデターで大統領になった将軍です。
 中南米で軍事クーデターというと、チリやブラジルのクーデターのせいで「極右ファッショ系」のイメージが圧倒的に強いのですが、実は、このような例外もあるのです。

(※このような例外としては、ペルーのベラスコ政権や、1992年のベネズエラのチャベスによる軍事クーデターの試みなどがあります)

 トリホス自身は共産主義者ではなく、実際に、トリホス政権下では共産党は非合法でしたが、(ただし、それまでの政権下とは違って弾圧はなかった)、いわゆる左派的な反米ナショナリストとして、貧困層への支援、国内産業の充実に力を注ぎ、その中で打ち出したのが、パナマシティを国際金融都市として、運河だけに依存しない国作りだったわけです。

 この過程で、トリホスは、アドバイザーを務めていた詩人で数学者・哲学者で元パナマ大学教授のホセ・デ・ヘスス・(チュチュ)マルティネスの仲介でキューバにも接近します。この時期以後、アメリカの苛烈な経済制裁の一方で、キューバはパナマのフリーゾーンを利用して、諸国と貿易を行うことができたというわけです。
 その後、トリホスは「謎の飛行機事故」で死亡し、これはCIAによる暗殺とほぼ見なされています。

 後の、1989年の米軍のパナマ侵攻事件は、米国がパナマ運河の返還を目前に、トリホスの後を継いだ、反米的なノリエガ将軍を追放し、パナマに親米傀儡政権を作ろうとしたということと、このキューバの重要な貿易ルートを断つという意味合いもあったわけですね。

 というような歴史的経緯もあって、話題のモサック・フォンセカ法律事務所も1977年創立というわけです。

 パナマ文書については、当座は、5月の全文書公開や、各国での調査がどうなっていくかをゆっくり見据えていったほうが良いと思いますが、とりあえず、興味深い記事をいくつかご紹介しておきます。

 南ドイツ新聞によるパナマ文書ポータル(英文ですが、似顔絵が秀逸です)
 http://panamapapers.sueddeutsche.de/en/
 
 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)によるパナマ文書ポータル(英文)
 https://panamapapers.icij.org/
 
 ロイター通信によるパナマ文書特設ページ http://jp.reuters.com/news/world/panama-papers
 
 朝日新聞によるパナマ文書特設ページ http://www.asahi.com/topics/word/パナマ文書.html
 
 パナマ文書はどうやって世に出たのか|ニューズウィーク日本版
 http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/04/post-4850.php
 
 「どうも。名無しです。情報興味ある?」パナマ文書をリークした人物の最初のコンタクト(GIZMODE)
 http://www.gizmodo.jp/2016/04/panama_papers.html

師走も半ばを過ぎて

12月も半ばを過ぎました。
昨日は暖かい日でしたが、今日は少し風の冷たい日でした。
とはいえ、今年はどうやら暖冬だそうです。

今年もいろいろなことがありました。

最近の個人的大ヒットは、スープジャーです。
別名ランチポットともいう、400ccぐらいの1人分用の小型の魔法瓶なんですが、これがもう、すごく便利。
朝に、ありあわせの野菜を刻んで、スープの素と熱湯を注いでおくだけで、火を使わなくても、お昼に、おいしくて栄養たっぷりの野菜スープが食べられます。

お米や押し麦を大さじ2杯ぐらい入れておくと、超簡単にリゾットも作れます。
一晩水に漬けておいたレンズ豆を入れておくと、さらに栄養のある豆入りスープもできます。

その他にも、夜の間に、麹とごはんから甘酒を作ったり、自家製ヨーグルトを作ったり、と、その保温機能を生かしていろいろなことができて、本当に重宝しています。
一人暮らし、もしくは、小家族の方には、おすすめです。

などという、ほんわかした話題ばかりでもないのでして....。

先日のパリ同時多発テロ事件の影響で、フランスの地方選では、マリーヌ・ルペン率いる極右の国民党が大躍進。
フランス以外のヨーロッパの国でも、同様の傾向が出てきそうです。それこそ、テロリストの思う壺、になっています。

これを受けるように、米国でも、共和党のドナルド・トランプ候補が、イスラム教徒の入国禁止などという暴言を吐いて、物議を醸しつつ、支持率をとんどん上げて、40%を超えたとか。

このドナルド・トランプ氏。80年代に不動産王として脚光を浴びた人で、当時、絵に描いたようなトロフィー・ワイフの写真が出回ったものです。
一時期、破産も伝えられましたが、いつの間にか復活していて、今度は、露骨に人種差別を口にする極右の候補者として、台頭してきたようですね。

彼の発言を聞いていると、米国の石原慎太郎、という感じです。
こういった人に、それなりに支持が集まるというあたり、やはり、アメリカの右傾化も相当なものだと思います。

共和党の他の候補も、マルコ・ルビオとかテッド・クルーズとか、極右に近いような人たちばかりで、ジェフ・ブッシュがまだしもまともに見えるところが、もうなんともアレです。

とはいえ、その右傾化。
トランプ氏を「アメリカの石原慎太郎」なんて書きましたが、その石原慎太郎を長らく東京都知事に頂いてきた私たち東京都民、ぜんぜん笑うことはできません。

また、フランスの極右のリーダー、マリーヌ・ルペンから、「モデル」とまで呼ばれちゃってる安倍首相を総理大臣に頂いている私たち日本国民、もっと笑うことはできません。

ただ、日本もそうなのですが、テロへの恐怖以上に、やはり社会に閉塞感が強くなっているということが、大きな背景としてあるような気がいたします。
格差がひどくなり、未来が見えず、希望も持てない社会では、まず、自分より弱いものへの攻撃という形で、そのやりきれなさや鬱憤をぶつけてしまう人たちが出てきてしまう。

スペインやギリシアでの左派躍進と、コインの裏表。結局は同じ構造なのではないかと思うのです。

そんな中、先日亡くなられた野坂昭如氏が、その遺稿で「戦前がひたひたと迫っている」(新潮45)と書き残されたそうですが、こういうときだからこそ、ひとりひとりが、しっかり希望を持って、明るくいきたいところです。

そんなわけで、来年を元気に迎えられるように、12月のライブも盛りだくさんの歌を歌います。
ぜひ、お聞きにいらしてくださいね。

そうそう。それから、夫婦別姓について言えば、スペイン語圏はみんな夫婦別姓ですが、家族の結束や絆は日本より強いですよ。

◆12月23日(水) 六本木 ノチェーロ
(東京都港区六本木6-7-9 川本ビルB1) お問い合わせ/03-3401-6801
1st 19:30 2nd 20:45 3rd 22:00(入れ替えなし) Charge:2,600円(おつまみ一品付)
アクセス/日比谷線・大江戸線六本木駅より徒歩2分   地図

六本木駅至近の最高の立地の音響の良いステージで、美しい歌曲の数々をじっくりお聴き頂きます! 
今月は水曜日ですので、お間違いなく!!

ギター福島久雄さん。
プロフィール

PANDORA

Author:PANDORA
ラテンアメリカと日本を拠点に活動する音楽家・作家 八木啓代のBlog
公式サイト http://nobuyoyagi.com

★CD情報
新作CD”Lagrimas”試聴やご購入はこちらから

★新刊情報
禁じられた歌ービクトル・ハラはなぜ死んだか(Kindle版)
長らく絶版状態だった書籍をリクエストにより電子書籍で再版いたしました。八木啓代の原点です。
検察崩壊 失われた正義(毎日新聞社)
5刷。この一冊が検察にトドメを刺すことになるかもしれません
リアルタイムメディアが動かす社会(東京書籍)
超濃ゆいメンバーによる講義録!
ラテンに学ぶ幸せな生き方(講談社)
なぜラテン人は自殺しないの?に応えて3刷!好評発売中!
キューバ音楽(青土社)
ラテン音楽ファン必読!キューバ音楽のすべてが理論も歴史もわかります。浜田滋郎氏激賞
貧乏だけど贅沢(文春文庫)
沢木耕太郎氏との対談収録
ハシズム!(第三書館)
共著で橋下大阪市長を解剖します。

★講演情報
6月3日(金)大阪ホテルサンホワイト・キャッスルホール
「ラテンに学ぶ幸せな生き方」
6月10日(金)トークイベント「日本このままでいいんですか」w/孫崎享、木内孝胤
6月25日(土) シンポジウム「キューバ円卓会議」
★ライブ情報
6月8日(水) 六本木・Nochero
Vo. 八木啓代 G. 福島久雄
6月18日(土) 朝日カルチャーセンター横浜教室
Vo. 八木啓代 G. 福島久雄
ライブ&講演詳細はこちら



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